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2020年6月12日に成立した「第2次補正予算による経済支援策」を税理士が解説

申告・納税

前回はコロナショックを乗り越える資金繰り対策として「新型コロナウイルスに対する情報収集術」をお伝えしました。
https://entrenet.jp/magazine/23821/

そこでは経済支援策を「国」「地方(都道府県市町村)」「それ以外(民間・大学等)」に整理するとわかりやすいとお伝えしました。

今回はその中で一番予算が大きい「国」からの支援策である『第2次補正予算による経済支援策』についてポイントを絞って解説していきます。

今回の補正予算は6月12日に成立され、追加の歳出は一般会計の総額で約31兆9,000億円と、補正予算としては過去最大となります。

自身(自社)でも受ける事ができる支援策をみつけてコロナ危機を乗り越えていきましょう。

過去最大の補正予算。まずは全体像を知ろう

新型コロナウイルス感染症対策関係経費として、総額約31兆9,000億円となっています。
その内訳としては、次の項目が挙げられています。
※詳細を検索しやすいように、予算を経済産業省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省の各省別に整理してみます。

経済産業省管轄 【予算額︓15兆168億円】

1.資⾦繰り対策 【10兆9,405億円】
2.持続化給付⾦ 【1兆9,400億円】
3.家賃⽀援給付⾦ 【2兆242億円】
4.中⼩企業⽣産性⾰命推進事業による事業再開⽀援 【1,000億円】
5.中⼩・⼩規模事業者向け経営相談体制強化事業 【94億円】
6.感染症対策関連物資⽣産設備補助事業 【22億円】
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/hosei2.html

※各支援策の詳細を知りたい方は経済産業省作成のパンフレットをご覧下さい。
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf

厚生労働省管轄【4兆9,733億円】

1. 検査体制の充実、感染拡大防止とワクチン・治療薬の開発 【2,719億円】
2.ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保【 2兆7,179億円】
3.雇用調整助成金の抜本的拡充をはじめとする生活支援【1兆9,835億円】
  内訳としては、雇用調整助成金の抜本的拡充 【7,717億円】や、
  新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(仮称)の創設【5,442億円】など
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/02index.html

文部科学省管轄【1,617億円】

 困窮学生等に対する支援【153億円】
 文化芸術・スポーツ活動への緊急総合支援【580億円】など
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420672.htm

農林水産省管轄【658億円】

 内訳としては、経営継続補助金【200億円】
 肉用子牛生産の奨励金【108億円】
経営維持・再建のための資金繰り対策の強化【349億円】など
https://www.maff.go.jp/j/budget/r2hosei.html

この他、新型コロナウイルス感染症対策として使い道を明確に定めない「予備費」として10兆円が確保されています。
巨額の10兆円が今後どのように使われるか注目です。

注目の支援策(経済産業省管轄)

今回の支援策は、前回の4月の補正予算で成立した支援策がより手厚くなったり、新しい支援策も数多くあります。
特に注目の支援策をみていきましょう。

①家賃支援給付金


経済産業省PR資料:
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei2_yosan_pr.pdf

地代や家賃負担の軽減を目的とした給付金(=返済不要)となります。
今回の法人や個人事業主の方にとっての最大の目玉は「家賃支援給付金」ではないでしょうか。
※記事執筆時の6月15日時点では「詳細な条件や申請方法等については、決定次第、速やかに、経済産業省HP等で公表させていただきます。」とされています。
今後の動向に注視しましょう。

ポイント①:「給付金」とありますので返済不要の経済支援策となります。
ポイント②:法人で最大600万円、個人事業主で最大300万円の給付される可能性があります。
ポイント③:給付対象となるかの判定には、前年同月の売上高との比較が用いられます。

②生産性革命推進事業(ものづくり補助金等の特別枠追加等)


経済産業省PR資料:
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei2_yosan_pr.pdf

こちらの支援策は簡単にまとめると「販路開拓や設備導入、IT導入をする企業や個人事業主が一定の審査をクリアすると、その費用を国が補助しますよ」といった内容です。

今回の補正予算では、国が企業や個人事業主に補助する金額に特別枠が設けられたことで上限が増額しています。

また一定の感染防止対策費については事業再開枠として国が全額補助するといった制度となっています。

「持続化補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」は以前からある制度だったのですが、名前は知っていても使ったことがない。もしくは初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。

ポイント①:返済不要
これらは「補助金」ですので、国が企業や個人事業主の行う事業に対して、原則、返済が不要なお金を支給してくれる制度です。

ポイント②:概算払い(前払い)の利用が可能なケースも
基本的に補助金は支給されるまえに補助事業を行い一時的な金銭支出が発生します。資金繰りの問題で申し込みを躊躇していた方もチャレンジできる可能性が広がります。

ポイント③:採択率の高さ
通常「補助金」は予算があるため、受給対象となるか厳正な審査があります。審査によっては申し込みはしたものの残念ながら支給されないケースも多くありました。

令和元年度補正予算の事業として実施された第1回目の「小規模事業者持続化補助金」の「コロナ特別対応型(第1回締切分)」では、申請数6,744件に対して5,503件(採択率81.6%)の採択事業者が決定されました。

「ものづくり補助金」も令和2年4月28日に発表された補正1次公募でも採択率62.5%と過去と比較しても高めです。

参考:ものづくり補助金の過去の採択結果

③資⾦繰り対策 (⽇本政策⾦融公庫等による資⾦繰り⽀援(実質無利⼦・無担保・既往債務借換等)

4月に成立した補正予算同様、資金繰り対策としてはやはり金融機関からの融資が柱になっている事業者の方が多いかと思います。

支援策を関単に説明すると、

・実質無利子となる可能性あり。
・平時より融資の審査ハードルが下がっている(提出書類の簡素等)。
・平時より多く借り入れができ、長く返済期間が取れる。
・既往債務も有利な返済条件で借り換えが可能になるケースがある。

といったところでしょうか。


経済産業省PR資料:
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei2_yosan_pr.pdf

ポイント①:利子補給による実質無利子化が3年間可能なケースあり
ポイント②:特別貸付では既往債務借換も可能
ポイント③:据え置き期間5年以内(=元本の返済を止められる期間)

資⾦繰り対策 (⺠間⾦融機関を通じた資⾦繰り⽀援)


経済産業省PR資料:
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei2_yosan_pr.pdf

ポイント①:信用保証協会付融資の既往債務の借り換えが可能です。また、一定の要件を満たした場合には借り換えについても保証料補助や実質無利子化の対象となります。

ポイント②:2020年5月1日より制度開始になった支援策がありますので、それ以前にコロナ関連で融資を受けた方や各自治体の融資制度を利用した方は現状の支援制度もチェックしてみましょう。

資⾦繰り対策 (中⼩企業向け資本性資⾦供給・資本増強⽀援事業)


経済産業省PR資料:
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/hosei/pdf/hosei2_yosan_pr.pdf

支援策の内容は、日本政策金融公庫等が民間金融期間が資本とみなすことができ、長期間、元本返済のない資本性劣後ローンを供給することとなっています。

平時より資本性劣後ローンというものはありましたが、今回1.2兆円の予算が投じられたことから利用対象となる方が広がることでしょう。

ポイント①:資本性劣後ローンは原則として「貸付期間が5年1か月以上の長期」で「期日一括返済=償還」の融資です。償還までの間は資金繰りが改善する可能性があります。
ポイント②:一般的には通常の融資より金利が高くなってしまう可能性があります。また返済までの期間が長いので利息の負担は重くなります。
ポイント③:新型コロナウイルス感染症特別貸付で据え置き期間を5年取るよりは、民間金融機関からの追加融資が受けやすくなる可能性があります。

注目の支援策(厚生労働省管轄)


https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/02index.html

厚生労働省では「感染拡大の抑え込み」と「社会経済活動の回復」の両立を目指すための対策を強化するとしています。

今回この中で着目したいのが、雇用を守るための支援としての「雇用調整助成金」「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」です。

厚生労働省:資料1-3 雇用調整助成金の拡充と新たな個人給付制度の創設について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11521.html

休業手当を受けられない労働者個人を給付対象とする「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」が今回新たに創設されました。

支給新型コロナウイルス感染症等の影響で、事業主に休業させられている期間の全部または一部について、賃金(休業手当)を受けることができなかった労働者に対し、休業前賃金の80%(月額上限33万円)支給されるといった制度になります。

今までは「雇用調整助成金」という制度により、企業側が国に申請をすることにより休業手当分の助成金を受けることが可能だったのですが、企業側で当該助成金の申請を選択しないケースもあり、休業手当を受給できない労働者の方もいるという問題もありました。

それを補完するような制度として「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」が今回新たに創設されました。

そして「雇用調整助成金」では、1人あたり1日8,330円としていた助成金の上限額を1万5,000円(月額上限33万円)まで引き上げられました。

厚生労働省:雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

ポイント①:「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」では労働者にとっては、休業前賃金の80%に対する支給を労働者自ら申請可能です。
ポイント②:「雇用調整助成金」では休業手当に対する助成金の上限額が引き上げられたので、労働者は休業手当が休業前賃金の100%の水準でもらえる可能性があります。
ポイント③:企業側では、助成率があがったので休業手当を休業前の水準の賃金を満たすまで支給することも検討しやすくなりました。

情報の海に溺れないで! 迷ったら専門家に相談を!

過去最大の補正予算の支援策は、広範囲に及びます。

支援を受けたいと思っていても最新情報を収集するのが大変かと思います。

本記事を執筆している6月中旬現在では、支援策によってはまだ詳細な条件や申請方法等が明らかにされていません。

すぐに支援を受けられるようにするために準備を進めていきましょう。

そのために大事なことは、

①支援策の全体像をつかみ、自身(自社)が対象となりそうなものを把握する。そのためには、各省庁ごとのホームページ等をチェックし網羅的に情報を収集する。
②支援策を受けるために必要な書類を調べる。わからないことがあれば各支援策の窓口等に問い合わせてみたり、専門家に相談する。
③申請のためのスケジュールを立てる。※申請期限に注意

本コラムでも引き続き、その時その時で最新情報を発信していきます。情報収集につとめ正しい情報をつかんで危機を乗り越えていきましょう。

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

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PROFILE
齋藤雄史

税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。
ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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