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株式譲渡を行うと消費税が発生? 課税されるものと非課税の違いとは

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M&Aを行う際にとられる手法の1つである株式譲渡。

この株式譲渡を行うと、消費税は課税されるのでしょうか。

今回は、“個人”が株式譲渡を行う場合に焦点を当てて説明していきます。

株式譲渡を行う際に発生する税金とは

株主である個人が保有する株式を“買収企業”または“新たな経営者個人”に譲渡した場合にどのような税金が課税されるのか、ケースごとに説明します。

<個人が個人に売却した場合>

・売り手の個人
1.適正価額(時価)で売買した場合
その売却益に対して所得税が課税されます。

2.適正価額(時価)より低額で売買した場合
その売却益に対して所得税が課税されます。

3.適正価額(時価)より高額で売買した場合
その売却益のうち、適正価額(時価)までは所得税が課税されます。
それを超える部分については“みなし贈与”として贈与税が課税されます。

・買い手の個人
1.適正価額(時価)で売買した場合
税金は発生しません。

2.適正価額(時価)より低額で売買した場合
時価とその購入価額の差額について、贈与税が課税されます。

3.適正価額(時価)より高額で売買した場合
税金は発生しません。

<個人が法人に売却した場合>

・売り手の個人
1.適正価額(時価)で売買した場合
その売却益に対して所得税が課税されます。

2.適正価額(時価)より低額で売買した場合
時価の2分の1未満の価額で売買した場合には、譲渡時の時価により売買したものとみなして所得税が課税されます。

3.適正価額(時価)より高額で売買した場合
その売却益のうち適正価額(時価)までは所得税が課税されます。
それを超える部分については“みなし贈与”として贈与税が課税されます。

・買い手の法人
1.適正価額(時価)で売買した場合
税金は発生しません。

2.適正価額(時価)より低額で売買した場合
時価とその購入価額の差額について法人税が課税されます。

3.適正価額(時価)より高額で売買した場合
時価を超える部分について寄付金扱いとなるため、寄付金の損金不算入制度の適用となり、損金不算入とされる部分については法人税が課税されます。

最後に、株式の売却益に対して消費税が課税されるのかというと、消費税は課税されません。

消費税が課税される資産とされない資産の違いとは

国税庁によると、消費税が課税される対象は以下のとおりです。

消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の引取りです。

※事業者:個人事業者及び法人を指します
※事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等:資産の譲渡・資産の貸付け及び役務の提供を指します

そのため、国外で行われた資産の譲渡などや、たとえ国内で行われた取引であっても事業者以外の者が行った取引などについては“不課税取引”と呼び、課税の対象とならないのです。

具体的には、以下のものが挙げられます。

1.給与収入のみの者の自家用車の売却
→事業者が事業として行うものでないため

2.寄付金・祝い金・見舞金・補助金など
→一般に対価として授受されるものではないため

3.試供品・見本品の提供
→無償で提供する場合に限る

4.保険金・共済金の受領
→資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供のいずれにも該当しない

5.剰余金の配当、出資の分配金など
→株主や出資者としての地位に基づいて支払われるものであるため

6.資産の廃棄、盗難、滅失
→資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供のいずれにも該当しない

7.損害賠償金
→心身または資産に対して加えられた損害に対するものは課税されない

8.国外取引
→国内において行われる取引ではないため

さらに、課税の対象となる資産のうち、

「消費に負担を求める消費税の性格上、課税の対象とすることになじまないもの」
「社会政策的な配慮から課税することが適当でないもの」

の2点については、非課税取引として消費税を課さないこととされています。

「消費に負担を求める消費税の性格上、課税の対象とすることになじまないもの」として具体的には、以下のものが挙げられます。

消費税の性格から課税対象とすることになじまないもの

1.土地の譲渡・土地の貸付け
2.有価証券・支払手段などの譲渡
3.利子を対価とする金銭の貸付けなど
4-1.郵便切手・印紙などの譲渡
4-2.商品券・プリペイドカードなどの譲渡
5-1.住民票・戸籍抄本の交付等の行政サービス手数料など
5-2.外国為替など

「社会政策的な配慮から課税することが適当でないもの」として具体的には、以下のものが挙げられます。

1.社会保険医療など
2-1.介護保険法に基づく居宅サービスなど
2-2.社会福祉事業など
3.助産
4.埋葬料・火葬料
5.身体障害者用物品の譲渡など
6.授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明等手数料など
7.教科用図書の譲渡
8.住宅の貸付け

また、消費税は国内において消費される財貨やサービスに対して税負担を求める“消費地価税主義”または“仕向け地課税主義”を採用しています。

そのため、輸出して国外で消費されるもの・国際通信・国際輸送などについては消費税が免除されます。

これを“免税取引”といいます。

株式譲渡を行った際の消費税の計算例

1.消費税の税率

消費税の税率は、2019年10月1日から消費税7.8%と地方消費税2.2%の計10%とされています。

ただし、食料品の譲渡などについて適用される税率は、消費税6.24%と地方消費税1.76%の8%です。

2.納付税額の計算方法

消費税の納付税額の計算方法は原則として、「売上にかかる消費税額」から「仕入れに含まれる消費税額と保税地域からの引き取りにかかる消費税額の合計額」を差し引いて計算します。

3.株式譲渡を行った場合の消費税額

株式譲渡を行った場合には、上記②にあるように、消費税の性格から課税の対象とすることになじまないため、消費税の計算はされません。

株式譲渡を行う際の消費税に関わる注意点

株式譲渡について消費税が課税されることはありませんが、M&Aの手法の1つで事業譲渡という手法があります。

この方法を採用した場合には、課税取引に分類される取引について消費税が課税されるため注意が必要です。

まとめ

以上のように、採用するM&Aの手法によっても消費税が課税されたりされなかったりと、その取扱いが異なります。

また、消費税は利益に対して課税されるものではないため、その負担が想像以上に大きくなる場合があります。

実施する際は税理士など専門家に相談しましょう。

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PROFILE
冨川和將

税理士・FP2級
全国青年税理士連盟 法対策部副部長。
起業支援、創業支援、会社設立支援、節税対策や、資金繰り計画を含めた銀行対策による融資のお手伝い、税理士の1%も経験していない、税務訴訟の補佐人としての経験を生かした税務調査対策・対応まで、幅広く経営をサポートしている。

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