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更年期課題への使命感から社内起業し独立。TRULY代表・二宮未摩子さん、原動力と勝算

更年期課題への使命感から社内起業し独立。TRULY代表・二宮未摩子さん、原動力と勝算

原動力。

困難がつきものの独立・起業において、事業の内容が自らの原動力と結びついているものであればあるほど、その事業の成功率は上がると言っても過言ではないでしょう。

今回お話を伺ったのは、株式会社TRULY代表取締役CEOの二宮未摩子さん。

二宮さんが運営する株式会社TRULYでは、主に更年期など他人に相談しにくい女性の悩みを、オンライン・オフラインなど専門家に相談したり、悩みを打ち明けたりと、さまざまな方法で解決するサービスを展開しています。

そんな株式会社TRULYの事業は、実は二宮さん自身の経験から着想され、前職時代の社内起業を経て形になったという経緯があったそうです。

今回はそんな株式会社TRULYの事業と誕生の経緯、そして二宮さんを突き動かす原動力と同社の勝算について語っていただきました。

<プロフィール>
二宮未摩子さん
株式会社TRULY代表取締役CEO

2007年に某広告代理店に入社。
会社員時代は、営業職として主に美容健康領域の会社を担当する。
新規事業部に異動後、現在のTRULYの原型となるアイデアが採用され、社内ベンチャーとして発足。自身は、出向という形で同事業に参画する。

前職を退職後、現在は株式会社TRULY代表取締役CEOを務めている。

社内ベンチャーとして発足し、独立。二宮さんがTRULYを立ち上げるまで

――株式会社TRULY(以下、TRULY)代表取締役CEOとして、活躍されている二宮さん。まずはTRULYの事業についてお聞かせください。

二宮さん
TRULYとは、更年期など他人に相談しにくい女性の悩みを、あらゆる方法で解決するためのサービスです。

更年期を始め、フェムテック(※)、性に関することなどの情報発信をしているメディア運営や、産婦人科や医療の専門家に相談ができるチャットサービスや相談型e-ラーニングを展開しております。

※フェムテック(Femtech)とは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を合わせた言葉。主に生理や月経、妊活、出産、更年期といった女性のさまざまな課題の解決の役に立つ製品やサービスのこと。


TRULY公式サイトより

――元々この事業は、会社員時代に社内起業という形で立ち上げたと伺いました。

二宮さん
はい。前職の広告代理店時代に、新規事業の事業開発をプロデュースする部署に配属されたことがきっかけで、新規事業の企画をコンペに出すことになりました。

コンペのテーマは「シニア市場の事業開発」。
私は、それまで営業職として美容健康系のクライアントの開発業務に携わっていたことから「そっちの方面(美容健康関連)で企画を考えてほしい」と上長からオーダーをされて。

それで考え出したのが、今のTRULYの原型となるものだったんです。

――なぜ更年期の問題に着目を?

二宮さん
理由は大きく2つあります。

1つ目の理由は、私自身がPMS(月経前症候群)や妊娠中のつわりなど、女性ホルモンに関する不調を経験してきたからです。

私は前職に入社をしてから2年ほどで、妊娠しました。

当時は広告代理店の営業職という職業柄、徹夜で仕事をするなんてこともしょっちゅうありました。そんな激務の中、妊娠中のつわりがひどくなってしまい、会社の仕事から離れることを余儀なくされてしまったんです。

とはいえ私自身、当時は女性の身体に関する知識が足りず「なぜ自分がこんな辛い思いをしているのか」を、言語化することができなくて。だから夫や上長にも、自分の不調を適切な言葉で伝えることができなかったんです。

そうした経緯があり、一度キャリアを止めてしまったこと。そして復帰してからも身体の不調に悩まされ続ける日々を送っていました。

PMS、妊娠を経験してきた私が、次に悩むことになると予想されるのは、きっと更年期の問題だろうと。

――それで更年期に関する事業を考えついたんですね。2つ目の理由はなんでしょう?

二宮さん
2つ目の理由は、私がリサーチした時に、更年期に関するサービスが全然なかったんですよね。

世の中が更年期に対してタブー視しているというか……。

女性からして(男性もですが)、どこか更年期というものが受け入れ難いものなのだなと、リサーチをした時に肌で感じたんです。

だから更年期に対して、正しい知識を得られるサービスを作りたいと、そう思ったんです。

結果、TRULYの企画は社内で採用され「株式会社TRULY」として起業することになりました。私は会社に所属しつつ、出向という形で事業に参画。

現在は前職を退職し、TRULYの事業一本にコミットしています。

「自分ごと」の中に、事業の勝算があることを信じて――。

――事業の立ち上げ方には、さまざまな方法があると思います。「何が売れるか」「どんな層にどんな需要があるのか」といった市場調査から逆算して、事業を考えるパターンもありますが、二宮さんの場合はどちらかというと「原体験」が大きいんですね。

二宮さん
もちろん社内のコンペで企画を出す以上、一通り市場調査はしましたし「他社がどんな層に何をしているか」は、かなり気にして見ていました。

でも最後に決め手になったのは、やはり強烈な原体験と当事者意識ですね。

もう「やらない理由がないな」と。

他の誰でもない私自身も女性ホルモンの課題を多く抱えているのに、世の中にその課題を解決するためのソリューションがこれといってない、という状況にもう……使命感を感じずにはいられなくて。そういった強い感情が、私を突き動かしてくれたんですよね。

だから前職を退職することに関しても、なんの迷いもありませんでした。

――会社員時代からTRULYを企画して、起業をしていく中で苦労したことはありますか?

二宮さん
特に苦労したのはやはり「数字」ですね。

これまでは、1人の会社員として仕事をしていたので、会社の会計やファイナンス(資金調達の方法と運用の方法の考え方)に触れる機会が全くありませんでした。

ほぼ全くファイナンスが読めていない状態でありながら、経営者としてベンチャーキャピタルと対峙しなければならないのは……本当に苦労しました(笑)。

――会社を続けていくためには、経営者として逃げられない領域ですね。

二宮さん
ええ、だから必死になって勉強しました。

先輩の経営者やファイナンスに詳しい仲間に聞いて、とにかく勉強して。周りの人の意見も参考にしつつ、昔に比べるとかなり自分なりの意思決定ができるようになったと思います。

数字以外でも大変だったことを挙げたらキリがないのですが、そんな中でも自分がどうにかここまでやってこれたのは、やはり事業へ対する使命感、熱量があったからだなと。

――二宮さんがそこまでの熱量を持っているからこそ、周囲の人がサポートしてくださったんですね。

二宮さん
本当にありがたい限りです。私にとって女性ホルモンの不調は、人生を左右するほどに影響が大きかったので。

更年期は女性だけでなく、男性も迎えます。

最近テレビの有名な男性タレントの方も、自身の更年期についてお話されていましたが、「いつもと“何か”が違う」「なんか身体の調子が悪い」といった不調の原因が分からないって、本当に辛いことなんですよね。

過労やストレスなど、原因となり得る要素は数多く存在しますから。

でも「原因」が更年期によるものだと分かれば、今度はそれを「どう乗り越えるか」というマインドに切り替えて行動していけます。

私自身、PMSやつわりのメカニズムをもっとよく知っていたとしたら、もっと適切な言葉で自分の状況を周囲の人に伝えることができましたし、周りの力を借りられたかもしれません。

そう思うと、もっと更年期について皆さんに広く知っていただきたいなと。

――経営者の二宮さん自身が「自分がお金を払ってでも、その事業やサービスを受けたい」と思えるような強烈な当事者意識を持っていることが、TRULYの事業として強みなのではないでしょうか。

二宮さん
そうかもしれませんね。

事業を考えていく上で「私がユーザーだったら、TRULYにどんなコンテンツやサービスがあったらいいか」は、常に意識しています。

事業を「自分ごと化」するからこそ、「じゃあこれからどうしていけばいいのか」という道筋が自然と見えてくるというか……。

思えば私にとっての「自分ごと」が、TRULYの原型でした。それが、ユーザーにとって「自分ごと」な課題を解決できたらいいなと。

そんな「自分ごと」に事業の勝算があることを信じて、これからもより質の高いサービスを作っていきたいと思います。

独立・起業においては、中途半端な“勉強”よりも、見切り発車的“勢い”の方が大切

――二宮さんのこれからの展望を、お聞かせください。

二宮さん
更年期に悩む人にとって、少しでもラクになるためのヒントを提供していけたらと思っています。

そのために今よりも多く個人ユーザーを増やしていきたいですし、法人向けのサービスも広げていきたいです。

またTRULYで働いてくれている社員やチームのメンバーがより働きやすい会社にしていけたらと思っています。

更年期は、人生の中のただの「通過点」に過ぎません。

更年期の不調をゼロにすることは難しくても、自分に合った適切な方法で、更年期を楽しく過ごせる人を1人でも増やしていけるよう、お手伝いできたらいいですね。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

二宮さん
先ほど「ファイナンスについての勉強に苦労した」と申し上げておいて、アレなんですが……。

もしご自身の中でやりたいことがあるのなら「勉強や準備が整ってから」ではなく、ある程度見切り発車で、事業を始めてしまった方がいいと思います。

なぜなら今、起業時のことを振り返ると「もしこの大変さの全てを知っていたら、起業なんてしなかったかも……」と思う瞬間が少なからずあるからです。

中途半端に知識や勉強したことで踏みとどまるより、思い切って事業を始めてみるくらいの勢いの方が独立・起業では大切だったりします。

まずは事業を始めてみて、その都度課題ができたらそれを1つずつこなしていく。こと、独立・起業に関しては、ご自身の勢いを大切にしてはいかがでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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