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独立こそ人の力を借りるべき理由を看護師専門カウンセリング運営・市岡めぐみさんに聞いた

独立こそ人の力を借りるべき理由を看護師専門カウンセリング運営・市岡めぐみさんに聞いた

「独りで立つ」と書いて、独立。

自分自身が事業者となるからこそ、自分1人で全てのことをやらなければならない。……そう考えている人も多いのではないでしょうか?

今回お話を伺ったのは、看護師専用オンラインカウンセリングサービス「セラとぴあ」を運営する、市岡めぐみさん。

元々はヨーガ療法士だった市岡さん。ヨーガを教える仕事を通じて、感情労働者である看護師のメンタルケアの重要性に気づいた市岡さんは、カウンセリングという手段を用いて新たに事業を立ち上げました。

独立・起業をして事業を作るなら、全てを自分1人で行おうとせず、時には人の力を借りた方がいいと語る市岡さん。

その理由は、市岡さんのキャリアと「セラとぴあ」の成り立ちにありました。

<プロフィール>
市岡めぐみさん
看護師専用オンラインカウンセリング セラとぴあ運営責任者
ヨーガ療法士

2009年からヨーガ療法士として活動を開始。
病院やクリニックで働く看護師や、学校の教員などを対象にヨーガセラピーを行う。
2012年に、心療内科・緩和ケア医である黒丸尊治氏の主催するセミナーを受講し、カウンセリングなどを学ぶ。

現在は黒丸氏とともに、看護師専用のオンラインカウンセリングサービス「セラとぴあ」の運営に携わる。

「感情労働者」である看護師たちの心を救え! 市岡さんが看護師専用のカウンセリングサービスを作った理由

――まずは、市岡さんの現在の活動について、教えてください。

市岡さん
看護師専門のカウンセリングサービス「セラとぴあ」(以下、セラとぴあ)を運営しています。

近年、コロナ禍があったこともあり、看護師の皆さんを取り巻く環境にスポットが当てられる機会が増えてきました。

しかしコロナ禍を別としても、看護師という職業は非常にハードです。

その理由は、看護師は「感情労働」と呼ばれ、精神力やメンタル的な負荷の大きい仕事だからです。

――感情労働、ですか?

市岡さん
はい。肉体労働や頭脳労働という言葉は、聞いたことがあるのではないでしょうか。

建設業や製造業といった、体を動かす職業が肉体労働。事務職やエンジニアなどといった、デスクワーク系の職業が頭脳労働と呼ばれています。

そしてもう1つ。
自分自身の感情をコントロールする必要がある仕事を、感情労働と言います。

主に飲食や販売といった接客業や、福祉、そして看護師を始めとする医療職がこの感情労働に該当します。

病院に通院したり、入院している患者さんは、病気やケガという大なり小なりの“不自由さ”を抱えています。

その“不自由さ”から来るストレスによって、時に、周りにいる医師や看護師の皆さんに心無い暴言を吐いてしまうことがあります。

それでも患者さんに優しく笑顔で接することを求められるのが、看護師という職業です。

また、苦しい思いをされている患者さんに共感しすぎてしまい、バーンアウトをしてしまう人も少なくありません。

――通常の怪我や病気と異なり、心やメンタルの傷は目に見えないですからね。気がついたら燃え尽きて(バーンアウトして)しまったという人も多そうです。

市岡さん
まさにその通りで、気づいた時にはもうメンタルがボロボロになってしまっている、という人も少なくありません。

そんな看護師の皆さんのメンタルを守っていけるようなサービスを立ち上げたいと思い、作ったのが、セラとぴあなんです。

独立は1人じゃない。人との出会いが事業を動かす

――市岡さんはいつ、そうした看護師のメンタルクライシスの問題に気がついたのでしょう?

市岡さん
セラとぴあを立ち上げる前、私はヨーガ療法士として、いろいろな人にヨーガを教えてきました。

病院やクリニックでセラピーを開催してたこともあり、そこで看護師の皆さんと関わる機会が多かったことがきっかけですね。

――ヨーガといえば、瞑想や身体的エクササイズを行うイメージがあります。セラとぴあではカウンセリングをされていると伺いましたが、なぜヨーガではなくカウンセリングをされているのでしょうか?

市岡さん
それは心療内科・緩和ケア医であり、セラとぴあの代表でもある、黒丸尊治先生との出会いが大きかったですね。


https://seratopia.net/about/

市岡さん
黒丸先生は、主にカウンセリング(コミュニケーション)によって、心の病を治療することを大切にされていました。

薬に頼るのではなく、カウンセリングによって心をケアする。そんな先生の考えに共感して、約10年ほど前から現在もなお、先生のもとでカウンセリングも勉強させていただいています。

そして看護師の皆さんが抱える問題を少しでも解決できないかと考え、黒丸先生と一緒にセラとぴあを立ち上げました。

――「ヨーガ療法士だから、ヨーガしかやらない」のではなく、課題を解決するために、あらゆる可能性や手段を考えるのが、市岡さんらしさなのですね。

市岡さん
言われてみると、確かにそうかもしれません。

元を辿ればヨーガ療法士という職業に就く前は、20代の頃はヨーガと全然関係のない業界にいました。その頃の私は多忙で、慢性的に体調が悪かったんです。

不調を解決すべく、さまざまな健康法を模索した結果、自分に合っていたのがヨーガでした。そしていつの間にか、そのヨーガを仕事にするようになっていました。

今回のセラとぴあも、看護師の皆さんの課題を考えるようになったきっかけは、ヨーガですが、その解決方法はカウンセリングにあると思って。

結果的に事業としては幅が広がった形になりましたが、1つのやり方、1つの事業にこだわる必要がないのが独立のいいところだなと思います。

――事業を作る上で大切にしていることがあれば、教えてください。

市岡さん
人の力を頼ることでしょうか。

「独りで立つ」と書いて「独立」なので、自分1人で全てのことをやらなければいけないと考えてしまいがちですが、決してそんなことはありません。

事業者としては“個人”だったとしても、事業に関わる取引先、お客さま、一緒にチームを組む人など、必ず周りには誰かしらいると思うんです。

その周りの人をどれだけ大切にできるか、そして誰とチームを組んで仕事をするかが非常に重要です。

セラとぴあも、黒丸先生がいてサポートしてくださったから、形にできたと思っていて。

もちろん周りに頼りすぎるのはよくないかもしれませんが、頼るべき時にちゃんと頼り、時には人の力を借りることも、事業を作っていく上では大切なことではないでしょうか。

独立・起業には「立ち止まる基準」を設けることが大切

――市岡さんの今後の展望を教えてください。

市岡さん
現在セラとぴあでは、個人に向けてオンラインでカウンセリングを行っているので、これからは法人、組織向けのサービスを立ち上げたいと思っています。

「ケアをする側」である看護師の皆さんが、ちゃんと自分のケアにも目を向けられるような、そんな社会にできるよう、これからも精進していきたいですね。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。

市岡さん
カウンセリングや心のケアを生業にする者として話をすると、独立・起業をされるなら、自分の中で「立ち止まる基準」を作っておくことが大切です。

独立・起業はもちろん会社員の方も、仕事には大きなエネルギーをかけがちですし、つい夢中になって突き進んでしまいます。

でもだからこそ、立ち止まる基準を作って欲しいなと。

先程のバーンアウトの話ではないですが、極度のストレス状態が続いた結果、気がついた時にはもう立てなくなってしまうほどのダメージを負ってしまうことって、往々にしてあるんです。

そしてダメージを負っている時というのは、何かしらのサインが必ず出ているもの。

例えば、表情に変化がなくなったり口調が変わったりと、サインは人によって千差万別。

ちなみに親しい人の話によると、私の場合は、怖い顔で鼻歌を歌い出すらしいです……(笑)。

そういうサインはなかなか自分では気付けない部分ですから、その点においても身近にいる人を頼ってみてください。

疲れた時はちゃんと立ち止まることも、事業を安定的に続けていく上で必要なことです。ぜひその辺りも意識してみてください。

取材・文=内藤 祐介

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