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なぜ福井県のデザイン会社が古民家再生プロジェクトを実施したのか、その理由を代表に聞く

なぜ福井県のデザイン会社が古民家再生プロジェクトを実施したのか、その理由を代表に聞く

コロナ禍で事業者支援の一環として始まった、事業再構築補助金。

新規事業の展開や、事業の転換などをする際に活用できる補助金です。とはいえ、補助金の支援を受けられるからと言って、闇雲に新規事業や事業転換を行ってしまっては失敗する可能性も……。

今回お話を伺ったのは、前田聰一郎さん。

福井県でデザイン会社を経営する前田さんは、この事業再構築補助金を活用し、江戸時代後期に建てられた自身の母の生家を、コワーキングスペース兼会社の事務所としてオープンさせました。

デザイン会社とコワーキングスペースの運営。実はその2つの事業には、前田さんの根底にある仕事への考え方が共通していました。それは一体なんでしょうか。

<プロフィール>
前田聰一郎さん
株式会社Idea Craft 代表取締役

広告代理店をはじめ、様々な会社での勤務経験を経て、35歳の時にデザイナーとして独立。2020年には福井県越前市に株式会社Idea Craftを設立。Webサイトや印刷物のグラフィックといった制作だけでなく、顧客の目的に応じた戦略部分にも参画する事業を手がける。

2022年夏、事業再構築補助金を活用して、江戸時代に建てられた自身の母の生家を、コワーキングスペース兼会社の事務所としてリノベーション。古民家再生プロジェクトや地域のコミュニティにも事業の幅を広げる。

「作って終わり」なデザインにはしない。前田さんが「制作だけに留まらない」デザイン会社を立ち上げた理由

――福井県で株式会社Idea Craftを経営する前田さん。まずは同社の事業について、お聞かせください。

前田さん
Webデザインや印刷物(紙)のグラフィックなどの制作を手掛ける、いわゆるデザイン会社です。

ただ、一般的なデザイン会社と異なるのは、制作部分だけに特化するのではなく「なんのために制作するのか」という目的をお客さまと確認、言語化する点です。

そして、そのためにどんな企画や制作物が最善なのか、方向性を決め実際に運用した後、効果を解析、改善するまでの流れを一貫して行っています。

「デザイン会社だからデザインだけを担当する」のではなく、もっと本質的にお客さまのビジネスに寄り添った「経営パートナー」を目指しています。


https://icraftlab.jp/

――前田さんが同社を起業するに至った経緯を教えてください。

前田さん
大学を卒業してから転職を繰り返し、様々な会社で勤務を経験しました。およそ7、8社でしょうか。ですが、どの会社にもあまり馴染めなかったんです。

そしていよいよ転職する会社がなくなり、デザイナーとして独立することになりました。

……と、端的に言えばこういった流れなのですが、もう少し補足します(笑)。

僕は会社員として働いている中で、ずっと自分の中で疑問に感じていたことがあったんです。

――疑問、ですか?

前田さん
「1日8時間も働くのに、どうして憂鬱な気持ちで働かなきゃいけないんだろう」と。

1日の3分の1もの時間を仕事に割くなら、自分がやっていて楽しいことや、やりがいを持てることを仕事にしていたいじゃないですか。

そう思ってしまったのは、僕がどの会社の仕事も正直なところ、そこまで好きになれなかった、というのが大きな原因の1つかと思いますが……。

要するに「自分の人生と仕事を一致させる」ような、そんな生き方がしたいなと思うようになったんです。

そのためには、会社という他の誰かが作った枠組みに入って、自分がその会社のルールに合わせるのではなく、仕事と人生を一致させられるくらい楽しめる環境を自分で作った方がいいんじゃないかと。

幸い、会社員時代にデザインについて触れる機会もありました。そこでデザイナーとして独立することを決意したんです。

――自分の人生と仕事を一致させる、という思想のもと、生まれたのが「制作だけに留まらないデザイン会社」だったと。

前田さん
そうですね。

ただ「制作して終わり」では、あまり本質的ではないというか……僕らの制作したものがお客さまのビジネスに活かされてなんぼだと思うんです。

独立して起業し、会社を作って事業をしているのですから、本当の意味でお客さまの役に立つ仕事がしたいなと。

そういう本質的な部分は、とても大切にして事業を運営していますね。

デザインと古民家再生。2つの事業の意外な共通点

――昨年から古民家再生事業にも幅を広げられたと伺いました。

前田さん
古民家再生事業については、いろんなタイミングが重なったのも大きかったですね。

まず経緯について、お話しします。

会社の規模感やデザイン会社という事業内容的にも、コロナ禍以前からオフィスはなくても事足りていました。

とはいえ、会社としての「拠点」が欲しいなとは、ずっと思っていたんです。

そこで事業再構築補助金(※)を活用して、江戸時代後期に建てられ、繊維問屋兼住居として使われていた僕の母の生家を、コワーキングスペース兼会社の事務所にリノベーションしました。

※2021年に始まった補助金政策。業態転換や新たな事業へ進出、転換する際に国から支援される補助金のこと。詳しくはコチラから。

――会社の事務所としてだけでなく、コワーキングスペースとしても活用しようと考えた理由はなんでしょう?

前田さん
この場所が、社内の人だけでなく地域社会の様々な人が集まる交流接点になるといいなと思ったんです。

そのための取り組みとして、積極的にこの場所を活用してイベントを開催しています。

「あそこっていつも何かやってるよね」というイメージを少しずつでも抱いていただければ、いろんな人がこの場所に集まってきやすくなります。

前田さん
人が集まれば、僕たちの会社の仕事に限らず、ここで生まれたご縁によって仕事ができることがあるでしょうし、この場所が起点となって様々な可能性を生み出せるなと。

それはゆくゆくは地域社会への貢献にも繋がるだろうなと思い、挑戦しました。

独立・起業をするなら、事業を通して1人でも多くの人を幸せにしてほしい

――この古民家事業も、「人生と仕事を一致させる」という、前田さんの根底の考え方に通ずるものがありますね。

前田さん
そうですね。

やっぱり独立・起業をしたなら、お客さまはもちろん地域社会の人も含めて、僕らと少しでも関わってくれた方全員に、事業を通してちょっとでも幸せなことやいいことがあって欲しいんです。

街全体の幸福度を上げられるような会社になりたいし、そんな会社でありたいんですよね。

古民家事業はそのきっかけの1つです。お客さまや地域社会に価値のあることは、これからも積極的にしていきたいですね。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

前田さん
どんな事業で独立・起業をされるのか、それは人それぞれだと思いますが、ビジネスの本質は「誰かの役に立つこと」だなと改めて思います。

当たり前な話ですが、だからこそ大切なのは目的、つまり誰のどんな役に立ちたいのか、という点を忘れないことではないでしょうか。どんな事業を選ぶかというのは、あくまでそのための手段でしかないんです。

いきなり独立・起業をしなくても、まずは小さくても自分の身近な人の課題を解決することから取り組んでもいいかもしれません。あまり気負いすぎず、気軽にできることから始めてみてはいかがでしょうか。

取材・文=内藤 祐介

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