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個人事業主と法人の違いとは。法人化を検討すべき損益分岐点について

個人事業主と法人の違いとは。法人化を検討すべき損益分岐点について

起業する時、個人事業主がいいのか、法人がいいのか、どのように決めたらいいのでしょうか?

個人事業主と1人株主の法人事業を比較すると、一番大きな違いは、お金を出し入れする“所得”ポケットが、個人は1つしかないのに、法人は個人と法人の2つ持てることです。

所得は、売り上げから費用(経費)を引いた残りであり、所得税がかかるのはこの部分です。

個人事業主は、期の間に売り上げが増え、所得が増えると所得税も増えますが、手取り収入も増えます。

経費が変わらないとすると、売り上げが減ると収入も減ります。

一方、法人の場合は、役員報酬は定期同額給与といって、定時株主総会で決められた報酬額を期の途中で増減することはできません。

決算前に利益が増えそうだとわかっても、役員に賞与を出すことはできません。

資金繰りが厳しくても、役員報酬を下げたり止めたりすることはできません。

個人事業主と法人の違い

事業規模がある程度大きくなったとき、今後も個人事業主のまま続けるのか、法人にしたらいいのか、どのような基準で考えたらいいでしょうか?

個人事業主が法人化する理由

そもそも、個人事業主が法人化する理由としては、主に下記の3点が挙げられます。

1) 取り引きを法人に限定している取引先がある
2) 所得が増えたので、節税したい
3) 会社として永続的な事業をしたい

取引先や事業規模の変化によって、法人化が視野に入ってきます。

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人の違いは、いくつかありますが、法人化する場合の留意点は下記の通りです。

1) 設立時に費用がかかる
2) 法人としての信用度が増す一方、責任も大きい
3) 個人は稼いだ分が全て収入になるが、法人は役員報酬額を期の途中で変更できない
4) 社会保険、税負担が増える
5) 複式簿記、決算書、確定申告事務が複雑になる

個人事業主は個人の責任のもとに比較的自由に事業を行うことができます。

しかし、法人は日本で唯一、人間以外に人格を有する存在です。法人は法人としての責任が生じ、住民税を別途納める必要があるなど、会社法に従い事業を行わなければなりません。

個人事業主が法人化することのメリット

個人事業主が法人化した場合の、主なメリットは下記の通りです。

1) 取引先や金融機関からの信用が高まる
2) 一定以上の所得では、個人事業主よりも税負担が軽くなる
3) 法人の経費負担で退職金の準備ができる
4) 社会保険に加入できる

取引先や金融機関からの信用が高まる

不動産やリースの契約を結ぶ際、法人でないと取引をしてもらえないケースが多々あります。これは、個人事業主と法人の信用度の違いによるものです。

先述した通り、法人は人格を有しており、たとえ創業者であっても、その存在は切り離して考えられます。分かりやすい例で言うと、代表者が死亡したとしても、法人は消滅しません。

一方で、個人事業主はその存在が個人に依存しているため、事業主が死亡したり重病にかかったりすると、ほとんどの場合その事業は廃業となります。

取引をする側からすると、法人の方が未払いや行き倒れのリスクが低いと考えるのが妥当です。

一定以上の所得では、個人事業主よりも税負担が軽くなる

個人事業主は事業の売上から必要経費を差し引いた額に対して所得税が課せられます。この際、必要経費の中に個人事業主自身の給与を含めることはできません。また、所得税率は収入によって変動し、5〜45%ほどのレンジがあります。

一方で、法人の場合は必要経費の中に役員報酬として経営者の給与を含めることができ、事業の売上から必要経費を差し引いた額に、法人税が課せられます。中小企業の法人税率は所得が800万以下の場合は19%、800万を超える場合は23.2%です。

事業の収入に対して支払う税金を比べると、収入額によっては法人のほうが税負担が軽いのです。

ちなみに、法人で支払われる役員報酬は会社員が受け取る給与と同じ扱いになるので、住民税や所得税がかかります。しかしながら、給与には「給与所得控除」という、給与の全額が課税対象になるのではなく、一定の金額を差し引いた金額が課税金額になる、という制度が適用されます。

これらの要素を加味した上で、税負担のシュミレーションをしてみると、法人化した方が税負担が軽くなるかどうかが分かりますよ。

法人の経費負担で退職金の準備ができる

個人事業主にはそもそも退職金という概念がありません。法人の場合は、経費として退職金を計上することができます。さらに、受け取った本人にとっても、退職金は普通の給与よりも税負担が軽いのです。

社会保険に加入できる

個人事業主であっても国民健康保険や国民年金への加入は必須ですが、法人格に成り上がった場合、組合が運営する健康保険や、厚生年金に加入できます。

健康保険や厚生年金の方が補償内容が充実しているので、従業員を雇用する際のメリットにもつながります。

【合わせて読みたい】
個人事業主の社会保険は従業員が5人以下でも加入できるのか? 加入義務や要件は?

個人事業主が法人化を検討する損益分岐点とは

個人事業主と法人の一番大きな違いは、個人事業主の報酬が課税対象となるかどうかです。

一般的に、個人事業主の所得が700万円〜800万円を超えると、法人化するメリットがあると言われています。

注意いただきたいのは、収入(売り上げ)ではなく、所得でこの金額を超えるかどうかです。

例えば、個人事業主の課税所得が700万円の場合、細かい計算は省きますが、所得税の税額速算表によると、所得税は税率23%で約100万円となり、手取りは約600万円となります。

所得税額=課税所得A × 税率B-控除額C

所得税額 約100万円=700万円 × 23%-63.6万円

実際には、役員報酬額の設定により変動する社会保険料や住民税、その他の法人税を考慮する必要がありますが、試算上では、個人事業主の所得が700万円を超えると法人化した方が、税負担は少なくなるといえます。

もうひとつ検討すべきなのが、消費税です。

個人事業主と資本金1,000万円未満の法人は、前々年度の課税売り上げが1,000万円を超えると消費税の納税義務者になります。

開業1、2年目は2年前の売り上げがないため、消費税の納税義務はありません。

1年目の売り上げが1,000万円を超えていれば3年目から消費税の納税義務が発生します。

個人事業主から法人化すると、消費税の課税期間がリセットされます。

個人事業主で、売り上げ1,000万円を超えた2年後に資本金1,000万円未満の法人を設立すると、さらに2年間は納税義務が生じないことになります。

実際の消費税の納税額は、売り上げ時に受け取る預かり消費税と仕入れ時に払う支払い消費税の差額となります。

また、課税売り上げ高5,000万円以下の事業者は原則課税と簡易課税のどちらかを選択できます。

所得税と消費税負担を考慮し、売り上げが1,000万円を超えた2年後もしくは所得が700万円を超えたあたりが、法人化を考慮するタイミングかもしれません。

組織化して事業を存続させるなら法人化を

個人事業主から法人化するメリットは、事業を継続して行い、ある程度の所得を維持できるのであれば、法人化することによって、計画的に個人と法人により多くのキャッシュを残せることです。

社員を雇用し、組織として持続的に成長し続ける事業を行いたい場合は、早めに法人化し、組織として整え、財務基盤を盤石にするほうがいいでしょう。

PROFILE

経営コンサルタント 奥野美代子

外資系の高級消費財ブランドで、日本進出の子会社立ち上げから26年間マーケティングマネジャーとして、ブランドPR、販売促進、店舗開発、リテール支援を行うなど幅広い経験を持ちます。
独立後は、中小企業診断士とFPのノウハウを生かし、経営者の法人と個人の財務コンサルティングやリスクマネジメント、事業計画策定、マーケティング支援など幅広い支援を行っています

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