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質を上げるのも量を捌くのも、どちらも「技術」だ。縫製職人・永澤慎梧さんの飽くなき探求

質を上げるのも量を捌くのも、どちらも「技術」だ。縫製職人・永澤慎梧さんの飽くなき探求

手に職をつける。

独立・起業を考える方の中には、自らの技術やスキルを使った独立を検討される人も、少なくないのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、縫製士の永澤慎吾さん。永澤さんは埼玉県川口市に「永澤縫製所」を構え、服のリペアやアパレル商品の縫製を行っています。

クオリティの高いアウトプットだけが「技術」ではなく、数多くの仕事を行うのもまた「技術」。

今回はそんな技術とビジネスをテーマに、縫製職人である永澤さんにお話を伺いました。

自らの技術で独立を考える「職人型独立」を目指す人は、特に必見です。

<プロフィール>
永澤慎梧さん
縫製士/永澤縫製所 代表

高校卒業して就職した後、20歳の時にミシンを使い始める。
その後転職を経て独立。
現在は埼玉県川口市に実店舗「永澤縫製所」を構え、洋服の修理を始め、“縫うこと”を中心とした事業を展開する。

未経験からのスタート、永澤さんが縫製士として独立するまで

――縫製士として活躍されている永澤さん。まずは縫製士としての仕事、そしてこの永澤縫製所の仕事について教えてください。

永澤さん
一番多いオーダーは服のリペアです。

またブランドさんからのご依頼で、服を作る際の縫製の工程も担当させていただいたり、古い服のリメイクなどもしています。

リペアだけに留まらず、「服を縫うこと」にまつわる仕事を手広く行っていきたいと思い、この永澤縫製所を開業しました。

――独立を考えたのはいつ頃なのでしょう?

永澤さん
高校の頃から、漠然と「手に職をつけたいな」と思っていました。ただ当時はどんな仕事が自分に合っているのか、まだ分かっていなくて。

とりあえず高校を出てすぐ、自動車の整備を学ぶ学校に入ったのですが、あまり続かなかったんです。

一方でファッションは好きだったので、学校をやめて原宿のアパレルショップで販売として働き始めました。

販売の仕事をしながら、店の裏でミシンを使って裾上げをするようになったのですが、今思い返せばそれがミシンとの出合いでしたね。

――学生の頃から縫製士の仕事をしたかったわけではなく、働いていく中で縫製を見つけたんですね。

永澤さん
はい。そこからミシンの面白さに気づいて、服のリペアを専門にやっている会社に転職をしたんです。

入社後は「補正場」と呼ばれる、百貨店の裏でミシンを使える場所があるのですが、先輩社員の人に教えていただきながら経験を積んでいきました。

その会社で働きつつ、リペアの副業を始めました。副業の仕事の量が徐々に増えていったことで独立を決めたんです。

質を上げるのも量を捌くのも、どちらも「縫製技術」。縫製職人の、飽くなき探究心

――高校生の頃の「手に職をつけたい」という思いを、縫製という形で叶えることができたんですね。しかしなぜ、縫製だったんでしょうか?

永澤さん
パッと見た印象で、縫製の仕事は「なんか単純そう?」と思われるかもしれませんが、実はとても奥深いものなんです。その奥深さに魅せられてしまったからかもしれません。

特に面白いのは「縫製の技術そのもの」にもさまざまな種類があること、そして「技術には限界がない」ことですね。

――どういうことでしょうか?

永澤さん
まず「技術」と言ってもいろいろ種類がある、ということからお話しましょう。

「縫製の技術」と言って思い浮かべるのは、おそらく縫うことにおける完成度やクオリティ、質の高さではないでしょうか。

例えばリペアなら「破れや傷があったなんて分からないほど、丁寧に修繕されている状態」を、高い技術と呼びますよね。

もちろん、出来上がりのクオリティを担保することは、とても大切です。

しかしクオリティを重視するあまり、仕事の1つ1つに時間をかけすぎてしまっては、事業としてお金を稼いでいくことは難しくなってしまいます。

つまり「量をこなす」こともまた、大切な「縫製の技術」なんですよね。

――質と量、どちらも大切であると。

永澤さん
はい。「プロの仕事」として縫製をしている以上、時間の制約があるのは当たり前です。

綺麗にできたとしても時間をかけすぎてはいけないですし、とはいえ短時間でできたとしても出来上がりの質が悪いなら、それはプロの仕事ではありません。

限られた時間の中で、最良のアウトプットを追求する「技術」には、本当に限界がないなと、日々痛感しています。

でもだからこそ、僕が縫製の仕事を飽きずに続けてくることができたんじゃないかなと思うんです。

――技術に限界がないからこそ、仕事を楽しむことができたんですね。

永澤さん
ええ、だからリペアを依頼された服を実際に見て「どうやって直そうか……?」と考えている時が一番楽しいですね(笑)。

セオリー通りに攻めるのも良し。時に斬新なアイデアでアプローチしてみるのも良し。直しが必要な現状から、頭の中に描いた完成形へ、最短ルートで近づけていきます。

今は会社を辞めて独立しているわけですから、どんなアプローチをするのかも、もちろん全て自分次第です。

そうして出来上がった大切な洋服が、またお客さまに長く使っていただけると思うと、何物にも替えがたい楽しさとやりがいを感じるんですよね。

自分の「やりたい」には、パワーが宿っている。外堀を埋めて、自ら逃げ道を塞いでいく

――永澤さんのこれからの展望を教えてください。

永澤さん
ありがたいことにご依頼を数多くいただいていて、今は目の前の仕事にかかりきりになってしまっているのですが、せっかく1年前にこの場所にお店を構えたので、もっとお店のことを周知していきたいですね。

思い立った時にすぐに行動できる、機動力こそがフリーランスの最大の強みだと思うので、面白そうなことにはどんどんチャレンジしていけたらと思います。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

永澤さん
今振り返ると、結構早い段階から周りに「独立考えてるんだよね〜」と言っていた気がします。

永澤さん
するとしばらくして、友達から「そういえば独立の件ってどうなったの?」と、聞かれることが多かったんですよ。

普段から周りに自分のやりたいことを話していると、自然と自分の中でもそういうマインドになっていきますし、時に周りの人が自分を突いてくれるので、だんだん逃げ場がなくなっていきます(笑)。

独立したいなと思っている人は、これを逆手に取って、やりたいことはどんどん自分から宣言していった方がいいんじゃないかと思います。

自分が「やりたい」と思った気持ちには、パワーが宿っていますから。その気持ちを忘れないうちに、鉄は熱いうちに、とりあえず周りに話すなりノートに書くなりしてしまう。

日常的にそうした行動ができていれば、自ずと独立への道が開けてくるのではないでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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