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“睡眠専門のパーソナルトレーナー”ヒラノマリに聞く、プロ選手と仕事をするための矜持

“睡眠専門のパーソナルトレーナー”ヒラノマリに聞く、プロ選手と仕事をするための矜持

一流のトッププロと仕事をする、ということ。

独立・起業を考えている方の中には、自身も何かの「プロ」として、様々なその道の「プロ」と一緒に仕事をしたい、と考えている方もいらっしゃるはず。

ビジネスの世界においても、スポーツや芸術の世界においても、一流のプロと仕事できるのは、自分もまた一流でなくてはなりません。

今回お話を伺ったのは、スリープトレーナーのヒラノマリさん。スリープトレーナーとはいわば「睡眠専門のパーソナルトレーナー」。

ヒラノさんは第一線で活躍するスポーツ選手のコンディションを、睡眠という領域から支えています。

今回はそんなヒラノさんのキャリアとともに、一流の選手たちと仕事をする上で大切にしていることを伺いました。

<プロフィール>
ヒラノマリさん
スリープトレーナー

3歳から8歳までアメリカ・ロサンゼルスで育つ。自身も睡眠で悩んだ経験から睡眠学に興味を持つ。
日本大学法学部卒業後、某大手インテリア会社に入社。
一般のお客さまから会社役員、大使館の大使など幅広い顧客を担当し、小学生から80代のお客さまのベッドや寝室全体のコンサルティングを経験する。

スポーツ観戦が好きだったこともあり、サッカーのクラブワールドカップで海外の有名クラブチーム相手に果敢に挑戦する日本人アスリートの姿に感銘を受け、2017年より、日本では珍しいアスリート専門に睡眠指導を行う『スリープトレーナー』として活動をスタート。

ショールームでの販売経験を活かした具体的なアドバイスは、プロサッカー選手をはじめ多くのプロスポーツ選手にも好評を得ている。

「睡眠」は全てを司る! ヒラノさんがスリープトレーナーと会社員を両立するまで

―現在に至るまでの経緯を教えてください。そもそも睡眠について興味を持ったのはいつ頃からでしょうか?

ヒラノさん
最初のきっかけは小学生の時ですね。

私は親の仕事の関係で、3歳から5年間アメリカ・ロサンゼルスで過ごしていました。その後、帰国して日本の学校に転入したのですが、最初はアメリカの学校生活との違いや帰国子女として特別扱いされることになかなか馴染めなくて。

ストレスから、一時的に不眠症に悩まされていたことがあったんです。その時から睡眠に興味を持つようになりました。

―ではその時からスリープトレーナーと言いますか、睡眠に関する仕事に就きたいと考えていたのでしょうか?

ヒラノさん
いえ、当時は弁護士を目指していたんです。

というのもアメリカ時代に、双子の妹が向こうの学校でいじめられていたことがあって。でも私ではいじめっ子の男の子たちに「力」で勝つことはできなかった。そんな時に『名探偵コナン』(青山剛昌/小学館)で弁護士という職業を知ったんです。

「弁護士なら、私でも法律という武器を使って妹を守れるかもしれない」。そう思い、17年間ひたむきに弁護士になるという夢に向かって勉強していたんです。

日本の学校に転入してからの不眠症は、日本での生活を長く続けていくうちに治っていったのですが、次は受験生活で睡眠不足に悩まされるようになっていきました。

―弁護士になりたいと強く思うゆえの、弊害が起こってしまったのですね。

ヒラノさん
はい。当時はとにかく睡眠時間を削ってむちゃな勉強をしていたので、結果もあまり良いものとは言えず…。

受験を終えてしばらく経って当時を振り返った時に、うまく行かなかった原因は睡眠にあるんじゃないかと思ったんです。

また大学までの生活で「人間関係」というものが、私の中で大きなテーマの1つだったことから、次第に人と接する仕事がしたいと思うようになっていきました。

そこで弁護士ではなく就職活動をスタートさせ、大手インテリア会社に就職しました。

―就職後は営業職としてご活躍されていたんですよね?

ヒラノさん
はい。就職した会社ではソファやベッド、照明、カーテンなどを扱っていました。

そこで、スリープトレーナーとしていろいろなアスリートの方にアドバイスをさせていただく上で大切な知識や経験を得ることができましたね。

その後、転職し、現在では一般のお客さまの他に、ホテルの客室のベッドやインテリアのコンサルティング、営業をしています。

選手と接する上で、恥ずかしくない人間性を磨く。スリープトレーナーとしての誇り

―現在、会社員とスリープトレーナーとして活動を両立されていると伺いました。なぜスリープトレーナーとしての活動を始めようと思われたのでしょう?

ヒラノさん
社会人として働き始めてから、また新しく追いかけるものを探していたんです。

大学4年までずっと弁護士になるために勉強をしていたんですが、そういった何か情熱を持って取り組めるものを探していて。

そこから「何かに情熱を燃やしている人の近くで働きたい」と思うようになっていったんです。

かつ、自分の知見や経験を活かせるものとして考えていった結果、スリープトレーナーに行き着きました。

―スリープトレーナーとは具体的にどういった職業なのでしょうか?

ヒラノさん
一言でいうと、アスリート専門に睡眠のアドバイスやサポートをする、トレーナーです。

プロのスポーツは、単にその競技の技術が上手ければ勝てる、という世界ではありません。

競技の技術力はもちろん、体力や栄養管理、精神状態など、あらゆることを試合に向けて最高の状態に持っていく必要があります。

当然、睡眠も、試合で万全を期すためには欠かすことができない要素の1つなのですが、これが不思議と日本には睡眠に特化した専門家がいなかったんです。

(海外では20年前から睡眠のコーチがチームについていたり、管理栄養士などとは異なる独立した立場の専門家がいるのですが…)

私が得てきた経験と知見によって、選手がスパイクやラケットを選ぶのと同じように、寝具を選んだり1人1人に合った睡眠をデザインするお手伝いができるんじゃないかと思ったんです。

―スリープトレーナーとしてのお仕事の内容を教えてください。

ヒラノさん
スリープテックデバイス(※)を使って「睡眠の見える化」をしていきます。

そこで手に入れたデータによって、その日の睡眠状態やトレーニングの強度を記録した「睡眠カルテ」を選手1人1人に作成。

データをもとに「試合に向けてどう過ごすべきか」「遠征時のホテルでどう対策をするか」などをリアルタイムでアドバイスしています。

いわば睡眠専門のパーソナルトレーナーに近いかもしれません。

その他、睡眠に関する知見を活かしてイベントに登壇させていただいたり、企業の睡眠改善プログラムの監修や、セミナーを行うことも多くなってきました。

※スリープテックデバイス…スマートウォッチやセンサーなど、人の睡眠の質などを計測するためのデバイスのこと

―一流の選手たちにアドバイスをするという仕事は、選手たちとの信頼関係が成立していないといけないのではないかと思います。仕事をする上で、何か心がけていることはありますか?

ヒラノさん
開業する前の準備の段階から、睡眠についての勉強や資格取得以上に、心がけていたことがあります。

それは「選手と接する上で、恥ずかしくない人間性を磨く」ということ。

選手たちは厳しい勝負の世界で生きています。だからこそ一瞬で相手がどういう人間かを見抜く「力」みたいなものを持っていて。

そういった方々と一緒に仕事をするには、まずは自分が人間として信頼を得られるかどうか。魅力的かどうかが極めて大切だと思います。

とにかく様々な人生経験を積むこと。そして仕事の手を抜かないことはもちろん、連絡を早く返したり、なるべく密にコミュニケーションを取ったり。

そうした小さなことから、信頼を裏切らないパフォーマンスができるかどうか。それが一緒に仕事をする上で大切なことではないかと思っています。

新しいことは受け入れられづらい。辛い時に、自分に言い聞かせてきた言葉


左:リオ五輪4位のトランポリン選手、棟朝銀河選手(セイコー)
撮影:2018年冬

―ヒラノさんの今後の展望について、お聞かせください。

ヒラノさん
最近、挑戦したいなと思うことは、動画での発信ですね。

睡眠って大事だとは思いつつも、例えば筋トレのように具体的にその成果が「目に見えない」ものなんです。

その証拠に、まだまだ日本でも受け入れられていない現状があるので。

だからこそ私が専門家として知識をカジュアルに発信することで、1人でも多くの方が睡眠を見直すきっかけになればと思っています。

また日本は世界的に見ても、こどもの睡眠時間が少ないので、選手と一緒にこどもが睡眠について学べるような企画もやってみたいですね。

―最後に、読者へメッセージをいただけますでしょうか?

ヒラノさん
私は偉そうにアドバイスできる立場ではありませんが…。

1つ言えるなら、独立にしてもパラレルキャリアにしても、新しい領域で何かをチャレンジするなら、当たり前かもしれませんが、苦労はつきものです。

大変なことやしんどいことはたくさんあります。私もスリープトレーナーとして活動が軌道に乗るまで、とても苦労しました。

新しいことというのは往々にして、受け入れられづらいですから。

私はよくしんどい時に「クライマックスの前のワンシーン」だと思ってきました。
大体どんなドラマでも3話から4話で1回、ヒロインがピンチに陥るシーンがあるじゃないですか(笑)。

そう思えるようになると、自分の中の理想と現実とのギャップに、少しだけ楽になれる気がするんです。

私もがんばるので、一緒にがんばりましょう!

取材・文・撮影=内藤 祐介

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