円安の影響もあり、人口ボリュームの大きな新しい商圏を求めて、海外進出を考えている飲食経営者や「海外で飲食業をやってみたい」という方も多いのではないでしょうか。フランチャイズに加盟することで、フランチャイズ本部のブランド力やノウハウを活かして海外進出することも可能です。この記事ではフランチャイズで海外に向けて飲食業を始めるメリットやデメリット、注意点ついて紹介します。
海外で飲食業を開業する方法
海外で飲食業を開業する場合、数多くのハードルが考えられます。自力で個人店を開業する場合、出店する国の法律に精通し、現地のニーズや好みを理解したうえで、実際に物件を用意して店内設備を準備する方法は「まるで見当がつかない」という経営者がほとんどではないでしょうか。「現地のお客様に喜んでもらいつつ事業を成功させたい」と思っても、出店というスタートラインに立つまでの困難は計り知れません。
一方、飲食フランチャイズに加盟して、海外で開業する方法ならば、フランチャイズ本部のサポートを受けて出店のハードルを少しでも下げることができます。
飲食業のフランチャイズで海外に出店する手順
「海外で飲食をやりたい」とただ漠然と考えるのではなく、何の店をやりたいか、どこの国で出店したいかなどをまずは考えてみましょう。フランチャイズに加盟する手順としては、資料請求をして説明会に参加するところから始まります。海外への出店実績のある複数のフランチャイズ本部から比較して、自分に適したフランチャイズ本部を選ぶようにしましょう。
フランチャイズ本部との加盟契約が済んだら、下記の手順が基本となります。
国内での飲食系フランチャイズの開業と大きく異なる点は「法律上のリスクをしっかり精査すること」です。特に法的リスクの有無を弁護士などのプロの専門家に精査してもらうリーガルチェックは、国内では遭遇しえないトラブルが想定される海外出店において必須事項です。
また、海外で飲食業を開業するためには大きな資金が必要です。すべて自己資本でまかなえない場合、融資・資金調達するためにも綿密な事業計画が必要です。
下記記事ではフランチャイズの仕組みを解説しています。参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
【国別】海外で出店できる飲食系フランチャイズ
少し前の調査ですが、JETRO(日本貿易振興機構調査)の調査(※2014年3月)で外国人の好きな料理の第1位が日本料理(66.3%)という結果が出ているとおり、海外でも日本食は人気があります。定番の寿司やラーメン以外にも、うどんやとんかつ、天ぷらなど幅広い和食ブームが起きている国もあります。
アメリカでも根強い人気を誇る「Teriyaki」ソースや、インドネシア現地の辛味調味料である「サンバル」を和食に合わせる調理法など、独自のローカライズで発展する日本食の例も挙げられます。欧州ではラーメン店が人気で、日本の有名ラーメンチェーン店も進出しています。
飲食のフランチャイズで海外出店するメリット
海外で飲食店を出店する際に、フランチャイズに加盟するメリットについて考えてみましょう。
リーガルチェックや国への申請など手続きに関してサポートが受けられる
フランチャイズに加盟することで、現地で飲食業を行う際のリーガルチェックや国への申請など手続きに関して、本部のノウハウを活かしたりサポートを受けられます。他の加盟店でも実績があるため、外国人であるオーナーでも安心して開業までの準備を進められるでしょう。自力で対応する際の法律制度の認識違いや、申請漏れなどを防ぐことができます。
仕入れルートが決まっているので、安定した供給が見込まれる
飲食業にとって食材を安定して仕入れられるかどうかは、事業を継続していく上で大変重要となります。フランチャイズの場合は現地での食材仕入れルートが決まっているので、安定した供給が見込まれます。加盟店全体で取引が交渉されているので、個人店よりも有利な条件で仕入れられることも多いでしょう。
しっかりした接客マニュアルで現地スタッフに教育できる
飲食店で働くスタッフも、現地の顧客に柔軟に対応するためにも現地の人材を採用することが基本となります。日本人ならば常識として知っているような接客方法も、現地の外国人からすると見慣れず、一から百まで丁寧に教育しないと伝わらないことも多いです。
その点、フランチャイズ本部の持つしっかりした従業員マニュアルで教育できれば、接客クオリティの高い店が維持できるでしょう。異なる言語では伝わりにくいニュアンスも整っているの点も安心できるポイントです。
日本ブランドを活用できる
2013年12月に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたこともあり、国際的に見ても日本食へのブランドイメージは高いことが想定されます。現地に駐在している日本人だけでなく、地元の方からも支持されているのが和食文化と考えられます。フランチャイズならばさらにその本部のブランド力や戦略を活かせるでしょう。
海外における日本食レストランの数を比較しても、顕著に増加しています。2006年に約2.4万店であったのに対し、2013年に約5.5万店、2015年に約8.9万店、2017年に約11.8万店、2019年に約15.6万店、コロナ禍でも2021年には約15.9万店と推移しています。
参考:海外における日本食レストランの数|農林水産省 輸出・国際局輸出企画課
日本国内では作れないようなつながりができる
フランチャイズで海外進出することで、日本国内では作れないような人やビジネスのつながりが持てるでしょう。
同じ地区で営業している日本食レストランのオーナー同士で交流を持てたり横のつながりができたりすると、本部からは得られないような「現地に即した情報交換」ができることもあります。駐在職員の利用も見込まれるので、国内では会えないような人と交流が持てることも海外ビジネスの面白さといえます。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
飲食のフランチャイズで海外出店するデメリット
海外で飲食フランチャイズを展開するメリットに対して、下記のようなデメリットも存在していることは確かです。
生鮮食品が来ない、スタッフが時間にルーズ、言葉や文化の壁があって意思疎通が難しいなども考えられるでしょう。
また現地の文化・宗教上の理由で取り扱えない食材や受け入れられない調理法などもあります。現地の基準に即した対応にチューニングする必要性がありますが、知らないうちにルールを逸脱していないか自分たちの肌感覚で理解することが難しいこともあります。
参照:JETRO|海外サービス産業“課題・トラブル克服”事例調査
※リンクの遷移先はPDFファイルです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります
飲食系フランチャイズの海外出店で失敗したくない!注意するポイント
飲食のフランチャイズで海外展開するメリットやデメリットを確認したところで、注意するポイントについてもおさえておきましょう。
自分でも勉強する
フランチャイズ本部からのサポートがあるからといって、すべてをフランチャイズ本部任せにしないように自分でも勉強するようにしましょう。
言語の壁があるとはいえ、現地の法律やニュースなどはフランチャイズ本部からの情報を鵜呑みにすることなく、理由や背景まで自分で調べて理解することで知識が広がっていくはずです。フランチャイズ本部と対等な関係を築いて話し合っていくためにも、自分でもよく勉強し、最低限のことは理解できる状態を目指したいところです。
あらゆるトラブルを想定しておく
デメリットで紹介した通り、日本の常識では考えられないようなトラブルは海外ビジネスではつきものです。あらゆるトラブルを想定して「トラブルが起きたからできなかった」というのではなく、「トラブルが起きたらどうやって乗り切るか」という観点で事前に準備しておきたいものです。
店舗設備、スタッフ、食材、法律、物価高など、JETROが公開している過去の事例も参考にしてみましょう。
参照:JETRO|海外サービス産業“課題・トラブル克服”事例調査
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現地のルールを学び、溶け込む
海外ビジネスを行う上で、現地顧客をターゲットにするならばその場に溶け込む姿勢も大切です。ビジネス上でやりとりする相手だけでなく、現地スタッフや現地顧客などオーナー自ら現地の人と打ち解けあうことで、思いがけない視点からのアドバイスや応援が得られるチャンスとなるでしょう。
また、前述の「現地で信仰されている宗教や文化に即した対応」を取れるよう、現地のルールや文化をしっかり理解し、ハラール対応を検討することも必要です。
SNSのハッシュタグは現地語と日本語、英語で
集客ツールとして、SNSはいまや無視できないメディアです。InstagramやFacebookだけでなく、現地でよく使われているSNSを積極的に活用しましょう。ハッシュタグも現地語、日本語、英語で発信することでリーチは大きく広がるでしょう。SNSアカウントの発信内容なども、現地スタッフに意見を求めてよりローカライズしたコミュニケーションができるようになることが理想です。
まとめ:海外で飲食業をやってみたいなら、フランチャイズでの出店がおすすめ
海外で飲食業を開業する面白さは、日本国内で開業するよりもはるかに大きなチャンスも広がっており、グローバルビジネス成功の夢ややりがいもあるでしょう。可能性が広がる一方で、日本とは全く違う法律や商慣習、言語や文化の違いという難しさもあります。しかしフランチャイズでの出店であれば、フランチャイズ本部のノウハウやサポートを受けて個人で開業するよりもリスクを減らして開業の準備が進められるでしょう。
海外での飲食業をお考えの方は、一度「フランチャイズ」という選択肢を入れてみてくださいね。
<文/北川美智子>