突然ですが「ショッピングをしに行くと、いつも同じような服ばかり買ってしまう」という人は、少なくないのではないでしょうか。
もしあなたが独立・起業に興味があるなら、その行動はもしかすると黄色信号かもしれません。
そう語るのはカラーコンサルタントの内藤弘子さん。
カラーコンサルタントとして専門学校で講師業や、一部上場企業のコンサルティングや研修を長年担当されてきた内藤さん。
そんな内藤さんに伺ったのは色と仕事との関係性。一見全く関係なさそうな両者ですが、実は意外な共通点があるそうです。それは一体どのような点でしょうか。
内藤弘子さん
カラーコンサルタントイタリアはミラノでファッションバイヤーとして勤務。帰国後にはパーソナルカラーコンサルティングを学び、スタイリストやカラーリストの専門学校で講師として活躍。
一部上場財閥系企業をはじめ、さまざまな企業のカラーコンサルティングや研修などを担当する。
日本人にもっとファッションを楽しんでほしい。内藤さんがカラーコンサルタントになるまで
――カラーコンサルタントとして活躍されている内藤さん。まずは現在の事業、カラーコンサルタントというお仕事について、お聞かせください。

パーソナルカラー診断をはじめとするさまざまなメソッドを使って、その人に合う色やファッションスタイル、アクセサリーやメイクまで幅広く提案しています。ファッションに興味がある人もない人も服ってどうしても自分の好みの色や形のものばかり手に取ってしまいがちですよね。
でも自分では「絶対似合わないだろうな」と思っていた色でも、実際に着てみると意外と似合った、ということもよくあるんです。
私はスタイリングを通して、それぞれの似合う色や洋服、アクセサリー、メイクを提案し、その人のまだ見ぬ可能性を模索しています。
カラーコンサルタントの仕事というのは、いわば「色で人を元気にする仕事」だと私は解釈しています。
――現在の活動をされるようになったのは、いつ頃からなのでしょうか?

結婚、出産でキャリアが空いてしまった時期もあるのですが、1991年に資格を取得して、カラーコンサルタントとしてのキャリアをスタートしているので、30年ほどでしょうか。元々は母がブティックを経営していた関係で、幼い頃からファッションが身近な環境で育ちました。
今の仕事をするきっかけになったのは、学生時代に母の仕事関係の取引先にお誘いいただいたイタリアのミラノでお仕事をはじめたことでした。

現地のミラノの街にいたおじいさんやおばあさんが、とてもファンキーで素敵だったんです。ファッションの国・イタリアということもあり、自分が着たい色の服を自由に着て、楽しそうに生活をされている姿が印象的でした。
一方日本では、ファッションを楽しんでいる年配の方はそう多くはいらっしゃらないなと気づいてしまったんです。
――たしかに日本はそもそも着物文化の方が歴史が長いですし、国民性も相まってファッションを楽しむという価値観は、イタリアに比べると希薄かもしれませんね。

そうなんです。ファッションを楽しんでいるミラノのおじいさん、おばあさんたちを見て「私もこうなりたい!」と、思うようになりました。
ファッションは、人が自由に自分の個性や時には生き様さえも表現できる、とても素晴らしいツールです。
日本人ももっと自由にファッションを楽しんでほしい。そんな思いを抱いて帰国した後に現在のカラーコンサルタントの仕事を始めました。
着てる洋服の色が、そのままの自分の人生を表す? フットワーク軽く、人生を楽しくするために必要なこと
――1991年に開業されたというと、まだ世の中的にも「パーソナルカラー」などの概念が定着していなかったのではないですか?

そうですね。当時は今のように「パーソナルカラー診断」が一般層に流行っていたわけではありませんでしたね。ですが、専門学校の講師や大手企業の社員のスタイリングや社員研修など、ありがたいことにお仕事はたくさんいただけていました。その後、2007年まで仕事を続けて出産を機に、一時仕事から離れていましたが、復職し現在に至ります。
――キャリアに間が空いたとはいえ約30年もの間、人のファッションをアドバイスをされてきた内藤さん。そんな内藤さんから見て、独立・起業をする上で大切なことはなんだと思いますか?

これは独立・起業に限った話でもないですが、よく感じるのは「着ている洋服の色がそのまま、自分の人生を表している」ということですね。
――「着ている洋服の色が、自分の人生を表す」、ですか。どういうことでしょう?

自分に合った色を上手に効果的に取り入れている人は、長年の経験からやっぱり人生も仕事も上手くいっている(明るく楽しんでいる)印象があります。もちろん何でもかんでも派手な色を着ていればいいわけではありませんし、地味で無難な色の服を着ることがダメというわけでは全くありません。
ただ、いつも同じ色の服ばかり着るのではなく、自分の中の固まった先入観を振り払って、時には人から勧められたものを試してみたり、自分なりに似合いそうな色を探して、気軽に新しい服を手にとってみる方というのはやっぱりフットワークが軽いんですよね。
「たかが服くらい」「たかが色で」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と侮れないですよ。一事が万事です。
――人は意識しないと、ついつい自分のコンフォートゾーン(ストレスのない居心地のいい環境や精神状態)に居続けてしまいますからね。それはファッションも同じだと。

そうなんです。だから逆説的に聞こえるかもしれませんが、私は仕事ではない場面、例えば自分のこどもに「似合う色を教えてほしい」と言われても、明確な答えを述べることはありません。
仮にこどもが選んだ服が、似合わない色や形だったとしても、その似合う、似合わないは、自分で答えを出すべきだと思うからです。
なんでもかんでも診断で明確な「答え」をもらおう、というマインドセットって良くないと思うんです。
これはファッションに限った話でもなく、例えばすごい実績のある経営者に「あなたは独立・起業には向かないからやめておきなさい」と言われたら「はい、そうですか」と、自分のやりたいことを諦められるのか、という話になってしまいますし。
――たしかにそうですね……。パーソナルカラーも含めた診断は、自分を知るとても良いツールである一方で、あまりに盲信的になってしまうと、自分の可能性も狭めてしまうというか。

その通りです。……念の為補足しておきますが、仕事ではもちろんここまで極端なことを言ったりしませんよ(笑)。
でも仕事においても私は1つの明確な「答え」を打ち出すのではなく、あくまでその人にとっての可能性の中の1つの例を挙げる、くらいに留めておくようにはしています。
答えを決めつけて可能性を狭めるのではなく、1つのきっかけからその人の可能性を広げていくのが、私の役割だと思って仕事をしているので。
結局、自分の好き嫌いや、似合う似合わないを決めるのは他人ではなくて、自分なんです。
今回はあくまで服やファッションを例に挙げて話しましたが、これは仕事や働き方も同じです。他人ではなく、自分がどう思うかで進む道を決める。それが大切なことなんじゃないかと、私は思います。
最初は誰だって、ゼロからのスタート。結局は地道にコツコツ続けるしかない
――内藤さんのこれからの展望を教えてください。

これからは「デジタルカラー診断」に力を入れていきたいですね。パーソナルカラーなどの診断は基本はオフラインで行うというのが通例なのですが、これだけオンラインでいろいろできる環境が整った今ならこうした取り組みも挑戦できるんじゃないかと思います。
日本だけでなく世界中の人に色の力を使って幸せになってもらえるような仕組みを作っていきたいです。
――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

先ほども言った通りですが、大切なのは自分の尺度を決めて、自分の尺度で物事を決断することだと思います。そして自分のやりたいことや目標が遥か遠くに見えてしまって不安だという方。その方たちも安心してください。
どれだけすごい結果を残した先人たちもはじめはみんなゼロからのスタートです。
だからできることからコツコツと続けていく。結局は地道に続けていった先にしか自分の目標や理想は叶わないんですよね。
いろいろお話ししてきましたが、私もまだまだ自分のやりたいことや理想を追いかけ続ける挑戦者です。これからも自分の目標に向かって、コツコツと歩いていきたいと思います。一緒にがんばりましょう!
取材・文・撮影=内藤 祐介