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「人と人とがもっと向きあえる」世界へ。 小林嶺司のアフリカでのコミュニティ作り

「人と人とがもっと向きあえる」世界へ。 小林嶺司のアフリカでのコミュニティ作り

インターネットの進化は、人の暮らしを変えました。
今はいつでもどこでも、知らない人とでも
コミュニケーションをとることができます。
しかしその便利さは、逆に人と人との関係を希薄にし、
一種の「寂しさ」を感じる人が増えていると言います。

今回お話を伺ったのは、小林嶺司さん。

現在小林さんは、アフリカ・ケニアで
マイクロファイナンス事業の立ち上げに奮闘しています。
その根底には、
「人と人とがもっと向き合えるコミュニティをつくりたい」という
小林さんの切なる思いがありました。

<プロフィール>

小林 嶺司さん
NG'ARA&NG'ARA AFRICA Ltd. Co-Founder & CEO
株式会社IPPOME(イッポメ) 代表取締役

1989年生まれ。
法政大学在学中の20歳の時に世界一周のバックパックの旅に出かけ、
帰国後に大学を中退し、株式会社IPPOME(イッポメ)を設立。
Webマーケティング事業、シェアハウス事業、ゲストハウス事業を手掛けた後、
2018年にアフリカに渡り、NG'ARA&NG'ARA AFRICA Ltd.を設立。
現在、アフリカ・ケニアでマイクロファイナンス事業のスタートアップに奮闘中。

世界一周の旅で気づいた「コミュニティ」の大切さ

-現在に至るまでの経緯を教えてください。

小林さん

大学は情報工学部に入学しました。ちょうど世の中にインターネットが流行りだした時期でしたが、大学ではインターネットの歴史など知識的な説明が中心でした。もっと実践で使える知識や技術を学びたいと思っていた私は、20歳の時に世界一周のバックパックの旅に出ていろんな刺激を受け、帰国後に退学してしまいました。

-なぜ大学を辞めてしまったのですか?

小林さん

自分で独立して覚えた方が早いと思い、仲間とともに会社を作ってWEBマーケティングの事業を始めようと思ったからです。退学後に1年間アルバイトをして開業資金を作り、2012年7月に株式会社IPPOME(イッポメ)を設立しました。

はじめのうちはWEBマーケティングの仕事をしていたのですが、ある方から鎌倉の物件を転貸させてもらったことをきっかけに、「1192シェアハウス」というシェアハウス事業を始めることに。最終的には13棟のシェアハウス物件を提供できるようになりました。

-シェアハウスは好評だったんですね。このビジネスを通して実現したかったことは何ですか?

小林さん

実は世界一周の旅での経験から「地域のコミュニティがつくりたい」と思うようになっていました。その頃、まわりの若者たちの中には「この先どう生きていけばいいのかわからない」と迷っている人がいました。そういう若者たちの「帰れる場所」を作りたいと思い、シェアハウス事業を通してコミュニティを立ち上げました。

コミュニティを始めてみると、「家族とうまくいっていない」という人が何人かいました。インターネットの影響で、まわりの人とのコミュニケーションがうまく取れない人が増えていたんですね。そういう人たちは、ちょっとツンケンしたり、人に当たったりと、寂しさを違う形で表現します。その気持ちを感じ取って向き合ってあげる。そういう「安心して帰れる場所」があれば、その人たちはもっと前に向かって進めるんじゃないか。そう仮説を立て、コミュニティを広げていきました。その後、5年間取り組んでみましたが、その仮説は正しかったと確信しています。

アフリカの人たちの考え方を、根本から変えたい

-シェアハウス事業を順調に進めていたのに、その後アフリカに渡ったのはなぜですか?

小林さん

実は、バックパッカーとして訪れた時から、いつかはアフリカに戻りたいと思っていたからです。アフリカの空気感が好きだということと、「今はまだまだだけど、そのうち日本を追い越せる国になるよ」という人がアフリカには多く、みんなが前に進もうという気持ちを持っているところに心を動かされました。いつかこの国に戻って、アフリカの人たちと同じ目線で何かをやりたい、とずっと思っていました。

2017年3月にシェアハウスの事業譲渡を決めたので、その後いろいろと準備をし、2018年9月にアフリカへ渡りました。

-アフリカに渡ってから、どうされたのですか?

小林さん

アフリカに着いてすぐ事業開始のための準備を始めたのですが、会社設立に5か月、ワーキングパーミット(労働許可証)の取得に5か月かかり、10か月ほどは何も進みませんでした。

2019年6月にようやく事業の検証がスタートできるようになり、現地でいろいろなビジネスを試し、9月にマイクロファイナンスにしようと決め、10月から実装を始めています。

-「マイクロファイナンス」にした理由は何ですか?

小林さん

アフリカには、「ずるがしこく生きよう」とする文化が根底にあります。たとえば通信販売で商品を購入しようと思っても、「商品を先に送るか、先に送金するか」で揉めます。商品を先に送るとその商品をもって逃げ、お金を払わないリスクがあるし、お金を先に振り込めばその逆のリスクがある。人と人との間に信用がないんですね。そのため、あらゆるところで取り引きが滞り、制限され、経済が停滞しています。そこを根本的に変えたい、と私は思っていました。そのためには、お金に関する取り組みがいちばん早いと考え、「マイクロファイナンス」の事業を始めています。

事業拡大のためにお金を使ってもらおうと考えていましたので、真面目に事業をしようとしている人には積極的にお金を貸すようにしました。そして期日に正しくお金を返してくれる人には、どんどん金利を安くして融資額も大きくする仕組みにしました。そうすることで彼らの考え方が変わり、「真面目に事業をしていれば、この人たちはお金をどんどん貸してくれるし金利も下がる」と理解してもらおうと考えたのです。

逆にお金を返してくれない人には厳しく対応するようにしています。まず、お金を返せない人と返したくない人をはっきりと分け、返せない人には、どういう期間だったら返せるのかを確認し契約を結びなおし、返したくない人はブラックリスト化して対処しています。真面目に事業を伸ばそうとする人が増えてきていて、いい傾向はできてきていると思います。

-日本でのビジネスとは全く違う取り組みですが、これまでの経験は活かされていますか?

小林さん

実は日本でのシェアハウス事業もアフリカでのマイクロファイナンス事業も、根底の「コミュニティ」の考え方はつながっています。

日本では「人と人とのつながりを大事にし続ける」という考えを社員ひとり一人が体現することで、コミュニティに広がっていきました。だから事業は何でもよかったと思いますし、家という「箱」はなくても大丈夫でした。事実、事業譲渡したシェアハウス事業では、今でもコミュニティは続いています。

ただアフリカだと、もともとのベースが違います。人と人との間に信用がない。そこを根本から変えるために、マイクロファイナンスという事業を介してコミュニティを作り、思いを伝えていこうとしています。取り組み方は異なりますが、根本の考え方はつながっているのです。

最終的には、アフリカ全土にコミュニティを広げていきたい

-これまでのビジネスの中で最も苦労したことは何ですか?

小林さん

シェアハウス事業では、「物件探し」にいちばん苦労しました。

シェアハウスに住んでみたいという人はたくさんいたので需要があるのはわかっていたのですが、シェアハウスにできる空き家がなかなか見つかりませんでした。当時はまだシェアハウスの知名度がなく、「シェアハウスってなに?」という人が多かったので、周辺住民に説明してもなかなか理解してもらえませんでしたし、不動産屋さんも転貸物件を探してくれず、苦労しました。

アフリカのマイクロファイナンス事業では、資金調達に苦労しています。

マイクロファイナンスでお金を貸し出すためには、その原資を集めなければいけません。これまでは自己資金で対応してきましたが、今後はひとりあたりの貸出額を5,000円から1万円にしていく上、毎月300人の顧客が増えていく計画ですので、さらに大きな原資が必要です。

そこで、2020年1月から、カンボジアの先駆者の方と現地のベンチャーキャピタル(VC)に資金を入れていただきます。最初はお金持ちの個人やVCから資金調達していきますが、1億円を超えると個人の投資だけでは難しく、法人、銀行からの資金調達が必要になります。資金需要はものすごくあるので、これから実績を積み上げて信用を高めていかねば、と考えています。

-今後はどのような活動をしていく予定ですか?

小林さん

まずは、いま取り組んでいるマイクロファイナンスのビジネスをケニアで軌道に乗せたいと考えています。最終的には、アフリカ大陸全体に広めていきたいですね。

実は会社の理念を、日本では「可能性を増やす」としていたのを、アフリカでは「可能性を増やす人を増やす」と変更しています。

日本でシェアハウス事業に取り組んでいる頃、自分たちだけでは理念を広めるにも限界があると感じていました。もっとアメーバ式に広げていくことが必要だと考え、アフリカでは理念を「可能性を増やす人を増やす」としました。

たとえば、アフリカで人の雇用を増やそうとしている人にお金を貸し出すのは、「可能性を増やす人を増やす」という理念から考えると、ものすごくいい取り組みですよね。このように「可能性を増やす人」をどんどん増やしていきたいと考えています。

今後は、具体的なビジョンを「マイクロファイナンスをアフリカ大陸全体に広める」としつつ、裏側の理念では「可能性を増やす人を増やす」と掲げ、コミュニティを広げていきます。

-最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

小林さん

私は自分自身の経験から、独立するなら事前準備に時間をかけるのではなく、まず独立して事業を始めてから必要なものを身につける方がよいと考えています。

たとえば英語を学ぶにしても、現地で事業をやりながら学ぶ方が、必然に迫られているので習得スピードが早いと言います。私のまわりにも、事前準備に時間がかかって独立できない人が何人もいました。もし独立するか悩んでいるのであれば、まずは一歩踏み出してみてください。たいていのことは、後から身につけても何とかなると思います。

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②Off-JT
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前回は「OJT」についてお伝えしましたが、今回は「Off-JT」について、その特性、OJTとの違いについてご紹介していきます。

実際の仕事から離れて行われるOff-JT

Off-JTとは「Off-the-Job Training」の略称で、職場から離れた場所で業務遂行に必要な基本となる知識・スキルを体系的に学習するために行う教育訓練のことを言います。前回お伝えしたOJTは仕事を通じた人材育成でしたが、Off-JTは実際の仕事から離れた、座学や集合研修を通じた人材育成と言えるでしょう。

Off-JTのメリット

Off-JTは、現場の状況に左右されず、均一な知識習得の機会を提供できる点がメリットです。OJTのように業務状況によって途切れ途切れの研修になることはなく、また外部機関の専門の講師が担当しますので、研修の質にバラツキが出ることもありません。実際の仕事から離れて行われるので、日々の業務に追われてなかなか勉強できない最先端技術やノウハウなどを、職場環境に左右されず集中的に習得することができます。

また受講者の知識の習得度合のばらつきを防止できます。Off-JTは個別ではなく集団研修となることがほとんどですから、専門知識を座学等で均一に行うことができます。受講者に対して同時に研修・訓練を行うことで、個々への「研修の濃淡」が起こりづらくなります。

そのほか、会社主体で行うため確実に研修を実施できるほか、受講者のプライベートの時間を削らなくてもすむため、受講者の負担が少なく、研修に集中できるというメリットもあります。

Off-JTのデメリット

一方、Off-JTは「習得内容を業務に反映しにくい」という点がデメリットです。その企業の実務から離れ普段取得できないものを学ぶため、実務的というよりは理論に偏っている場合もあり、うまく活用できない、あるいは活用するにしても応用が必要な場合があります。外部機関に研修を依頼または委託する場合も、その外部機関に研修成果の実務への落とし込みまで委ねることは難しく、受講者が自ら実務への落とし込みを考えなければならない場合も少なくありません。

また、外部機関に依頼または委託すれば、その分費用が発生しますし、社外施設で実施した場合は、会場費も発生します。

Off-JTの必要性

OJTで通常の業務をしながら十分な指導をすることは、簡単なことではありません。教える側は通常業務と指導の両方を兼ねる必要があり、場合によっては指導に集中できないこともありえます。また教える側は指導の専門家ではないため、人によって教え方や内容に差が出ることも想定できます。

仕事をステップアップするために必要な知識もあり、それらは都度仕事で覚えるよりも、Off-JTを利用して徹底的に学ぶやり方が適している場合もあります。

企業が従業員の成長を支援するためには、OJTとともにOff-JTも必要なのです。

Off-JTとOJTをうまく使い分け、効果的・効率的な研修を実現しよう

グローバル化や職種の垣根を超えた産業の活発化が進み、人材もそれに適した人が求められるようになりました。それにより、企業が行うべき研修も広範囲にわたっています。

実務を離れたところで、外部機関も活用しながら最先端技術やノウハウを幅広く吸収し、それを現場の実務に応用し実践する、というOff-JTとOJTを連動させた研修体系の整備が、今後はより求められてくると思います。

Off-JTをOJTと上手く使い分け、それぞれに適した内容の研修を行うことで、自社の教育研修をより効果的・効率的に実施していきましょう。

PROFILE

HIDE

元大手広告会社で人事部長を経験。新卒・中途の採用から人事制度設計、労務管理まで人事業務全般を手がける。現在はその前職での経験を活かし、各種就職・転職セミナーの企画運営から企業の採用広報の企画設計等、幅広く活動中。

2020年1月23日

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