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大切なのは、相手を理解しようとする姿勢。マジシャン・JUNYAに聞く、人との距離の縮め方

大切なのは、相手を理解しようとする姿勢。マジシャン・JUNYAに聞く、人との距離の縮め方

見ている人を「あっ!」と驚かせることができる、マジック。

トランプやコイン、輪ゴムなど身近にある道具を使って披露した経験のある人もいるのではないでしょうか。

巧みな話術やテクニックで成功させれば、観客を魅了し、たちまち人気者になれるのがマジックの良さ。

それは遊びの中だけでなく、ビジネスの世界でも言えることだと、今回お話を伺ったプロマジシャンのJUNYAさんは言います。

JUNYAさんは、1000種類を超えるレパートリーのマジックを武器に国内外で活躍するほか、企業向けセミナーや経営コンサルタントを行うなど多方面で活動されています。

その全ての仕事には、マジックで学んだ「人の心を理解しようとする姿勢や話し方」が活かされていると話すJUNYAさん。

今回は、その真意について伺うとともに、ビジネスシーンに役立つマジシャンならではのコミュニケーション術を伝授していただきました。

<プロフィール>
JUNYAさん
サプライズクリエーター/マジシャン

16歳でタレント事務所に所属し、舞台・ドラマ・映画・CMなどに出演。19歳でマジックに出合い、マジックの実演販売の経験を経てお客さまを5秒で惹きつけるスペシャルトークを習得。

デパートのマジック用品売り場で修行後、芝居とマジックの融合、ストーリーマジックショーを行い、2002年にプロマジシャンとしてデビュー。

国内外のステージ、テレビ等で自身のパフォーマンスのみならず、独特のアイディアでイベントに応じたオリジナルマジックを考案するのを得意としている。

過去には映画、ドラマの『TRICK』の演出構成を含めたマジックアドバイザーや、iPad、タブレット、VRなど最新のハイテク機器を使用したマジックも考案し、数々のマジシャンに提供。世界150ヶ国で放送されているNHKWORLDでも演出構成を行っている。

また、マジックで得たテクニックをビジネスに活かし、コミュニケーションをより円滑に行うための手段を、企業セミナーや経営コンサルタントなどを通して伝えるなど、幅広く活動している。

人に「ものの数分で」感動や笑顔を与えられる。役者からマジシャンへ転身した理由

ープロのマジシャンとして国内外で活躍されているJUNYAさん。現在に至るまでの経緯をお聞かせください。まず、マジックに興味を持ったのはいつごろなのでしょうか?

JUNYAさん
マジックに興味を持ったのは、18歳の時です。

それまではタレント事務所に所属して、役者として活動していました。

ーなぜ役者の仕事を?

JUNYAさん
人を喜ばせるための仕事がしたかったからです。

というのも僕は生まれた時から体が弱く、病気がちで、幼少期から何度も入退院を繰り返していました。

5歳の頃には小児がんの疑いもあり、なかなか幼稚園に行けずに寂しい思いをしていたんです。

病院には重い病気を患っている子がたくさん入院していましたから、なかには亡くなってしまう子もいて…。

「僕も死んじゃうんじゃないか」と不安に怯えながら過ごしていました。

幸いにも小学校に上がる頃にはだいぶ体調が回復して、無事に退院することができたのですが、僕は死んでもおかしくない病状から偶然「生かされた」だけなんですよね。

病気に対する不安から笑顔が消えて、症状が悪化していくこどもたちを、入院生活中何人も見てきてそれが頭から離れなかった。

だから残された限りのある人生で、みんなを笑顔にできることをしよう、と心に決めたんです。

ーそれで役者を志したのですね。しかしなぜマジックを学ぼうと思ったのでしょう?

JUNYAさん
18歳の時に新宿のデパートでマジック用品の実演販売をしていた、あるマジシャンと出会ったことがきっかけでした。

たまたまデパート内のマジック用品売り場を通りかかった僕は、お店の前でパフォーマンスを披露しているそのお兄さんのマジック見た時、マジックそのものはもちろん、それ以上に「人を惹きつけるトーク力の高さ」に衝撃を受けたんです。

その人の喋りを聞いていると、マジックに全く興味がなくても、いつの間にか「マジック道具を買ってみたいな」という気持ちになっているんですよ。

「このトークスキルを身に付けたら、芝居にも活きる」と考えた僕は、教えを請うためにいてもたってもいられず、実演が終わるまで何時間も待って弟子入りを志願しました。

すると、お兄さんは僕のことを快く迎え入れてくれまして、そこで手伝わせてもらうことになったんです。

それからは“師匠”の実演販売や他会場でのショーを見て、エンターテイナーとしてのパフォーマンススキルを勉強しながら、役者とマジシャンを両立する生活が続きました。

マジックを習いたての頃は日給2,000円で、当時は茨城から新宿まで通っていましたから、交通費だけでマイナスだったんですよ(笑)。

それでも「これはマジックを会得できるチャンスだ」と思いながら、役者の仕事以外でスケジュールが空いている日は全て師匠のもとで修行していましたね。

ただある時、ふと気づいたんです。

役者って、ひとつの物語を通してお客さまに感動や勇気を与えることができる素晴らしい職業なのは間違いない。けどマジシャンは、その全ての感情や影響をものの数分で人に与えられる凄い仕事なんだなって。

感動を与え、笑顔を生み、単純に驚かせることもできる。そんなマジックに僕自身が惹かれるようになって。ステージを経験し、自分の力で人を喜ばせるようになっていくにつれ、徐々に本業が役者からマジシャンにシフトしていきましたね。

コミュニケーション能力の基本は、どれだけ相手の意図を汲むことができるか。プロマジシャンに学ぶ、人の心をつかむ会話術

ープロのマジシャンとしてデビューしたのはいつ頃だったのですか?

JUNYAさん
24歳の頃ですね。その時には役者も辞めて、完全にマジシャン1本で活動していくようになりました。

もともと僕は19歳で初ステージが決まり、早い段階から人前でのショーを経験することができたこともあって、すでにマジシャンだけで生活できるぐらいにはなっていましたから。

そしてありがたいことに、その初ステージをきっかけに、ショーを見てくださったお客さまからの依頼も増えまして。それ以降の仕事は、そういった紹介で決まったものがほとんどなんです。

ーでは、ご自身で営業されたことはあまりないんですか?

JUNYAさん
自分からは全然してないですね。

これまでの出会いやご縁でお仕事につながっている感じなので、関わってくださった方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

ただ僕自身、どの人との出会いに対しても1度きりで終わりにするのではなく、「次につながるように必ず爪痕を残す」ことは心がけています。

ー“爪痕”というと?

JUNYAさん
相手に「この人を使いたい」と思ってもらう、ということです。

ビジネスでのプレゼンテーションを例にお話しましょう。

どんなプレゼンでも、企画を出す時には相手が何を求めているのかを感じ取り、その人に最適な答えを提案することが大事になります。

しかし、相手が本当に欲しい答えは、あくまで相手の中にしか存在しません。

だから相手との会話やコミュニケーションの中で、何を望んでいるかを正確につかみ、予想する。

そして最低3つは出せる答えを準備し、聞かれた時にすかさず提案できれば「お、この人わかってるね〜。使ってみたいな」と思ってもらえます。

ただ、気をつけてほしいのは、決して「自分よがりになってはいけない」ということ。

相手のことを気にせず、聞かれる前から「この考えどうですか?」「こういう企画もありますよ」とガンガン提案し過ぎてしまうと、鬱陶しく思われる可能性がありますし、そもそもその企画が求められている答えですらないかもしれない。

なので、アピールしたいがあまり暴走するのではなく、聞かれた時にすぐ答えられるぐらいの方が好感を持ってもらえると思いますね。


▲商品パネルから、ハンバーガーを取り出すマジック

ーそういったコミュニケーションや準備が大切な部分は、ビジネスもマジックも同じなんですね。

JUNYAさん
そうですね。

実際、マジックで人の心を動かせるかどうかは準備によって8割決まりますし、実際にステージに立つ時も、その場にいてくださるお客さまとの関係性や空気づくりも大事な要素です。

18歳からお世話になった師匠からも、マジックの技術より、そういった対人とのコミュニケーションのことを多く教わりましたから。

僕は現在、マジシャンのかたわら、企業向けのセミナーや経営コンサルタントもさせていただいているんですけど、それらは全てマジックで学んだ知識があるからこそできていることなんです。

というのも、これは先ほどのプレゼンの話にもつながることですが、どんなビジネスでも、大きく言えばどの国においても、「人の心を理解するために相手を敬う、立てる、大事にする」ことは共通して大事なこと。

すなわちコミュニケーション能力とは、どれだけ相手の意図を汲めるかということと、どれだけ自分の意図を相手に分かりやすく伝えるかなんです。

マジックの本質は「言葉」の中にある。ビジネスでも活かせる、マジックの真髄

ーもしよろしければ、会話の中で距離を縮めるための、マジシャンならではのテクニックを教えていただきたいです!

JUNYAさん
わかりました。

では、「閉ざしている相手の心を開かせる」方法を教えます。

心理学などのお話でよく「腕を組んでいる人」は自分を守っている、すなわち警戒していると言いますよね。それは本当のことで、自分を守ろうとするあまり、心を閉ざしている傾向が強いんですよ。

なので、その気持ちを解いてあげることが必要になってくるわけですが、実は簡単な解き方があるんです。

JUNYAさん
マジックで説明すると、例えば、トランプを使ったマジックを披露するとします。それで「好きなのを引いてください」とトランプを広げて出せば、相手はカードを引くために手を伸ばしますよね?

元も子もない言い方かもしれないですが、その時点で「腕組み」が解けているので、すでに警戒心もほどきやすくなっているんですよ。

要は、組んだ腕を解いてあげればいいわけですから、トランプ等を使って手を出すよう仕向けるだけでいいんです。

あとはそのまま何かしらのマジックのネタを見せると「え!?」っと驚き「なんでそうなるの?」と前のめりの状態になる。

そうしてこちらに興味を持ってもらえれば、さらに心の距離はグッと縮まります。

ー言われてみれば確かに…! 何かに対して興味が向いている時って、だいたい身体を前のめりにしながら話を聞いてますよね。

JUNYAさん
そうですよね。

だから腕を組むという守りの心理状態から解放させてあげて、そこですかさず興味を抱くようなネタを突っ込む。

この流れが理解できると、初対面の人でもすぐに距離を縮められます。

また、それ以降の会話での「言葉の使い方」も重要な要素のひとつ。

例えば、相手に兄弟がいると仮定して「あなたのお兄さん“は”かっこいいよね」と言うとお兄さんだけがかっこいいと捉えられて、相手は気分を害することになる。

けど「あなたのお兄さん“も”かっこいいよね」と言ってあげれば、兄弟揃ってかっこいいと捉えてもらえるので、相手の気分は上がります。

この「は」か「も」の1文字の違いだけで、全然ニュアンスが変わってくるんですよ。

マジックというと、つい「目の前で起こる不思議な事象」に目が行きがちになってしまうと思うのですが、こうした会話の1つ1つにより効果的に人を驚かせるための仕掛けが隠れているんです。

マジックの本質は「言葉」の中にある、といってもいいかもしれません。

ですから、だいたい3つぐらいマジックを覚えるだけでも、その後のコミュニケーション能力やトーク力が変わってきます。

ちょっとした特技にもなりますし、ビジネスパーソンにもぜひマジックを実践してほしいですね(笑)。

他にない自分だけの魅力を考える。競争を勝ち抜くために必要なこと

ーマジックで得られるスキルが、ここまでビジネスにおけるコミュニケーションに直結しているとは思いませんでした。では、今後の展望についてお聞かせいただけますか?

JUNYAさん
実は来年からアメリカで定期的にショーを行わせていただく予定なのですが、さらなる飛躍を目指してパフォーマンスだけではなく、アメリカで日本食のお店のプロデュースもする予定なんです。

でも、普通の日本食のお店を作っても仕方ないので、今までにないような斬新なお店にしたいですね。

ーちなみに現段階ではどのような日本食のお店にする予定なのですか?

JUNYAさん
まだ完全には決まっていないので、今はいろんな方にお話を聞いているところなんです。

日本食のお店はもちろん、違う料理ジャンルであるフレンチのシェフのところにも伺ったりして。いただいたアドバイスをヒントに、どんなお店がいいか頭を巡らせています。

オープンする頃には「おお! これはすごい」と思ってもらえるような、新しいお店のプロデュースを目指していきたいですね。

ー最後に、アントレ読者へメッセージをお願いします。

JUNYAさん
はい。やはり人生は限られた時間しかないので、その中で自分が1番やりたいことにチャレンジしてほしいですね。

ただ、今の世の中って、同じような商品だったりサービスが溢れているじゃないですか。

その中で、何を基準にお客さまから選ばれているのかというと「この人から買いたい」と思ってもらえるような、そういう「人としての価値」の大きさからなんですよ。

同じ市場内の競争を勝ち抜くためには、なにか他にはない魅力を出していかないといけない。

それが何なのか、自分だからこそ出せる魅力や武器がどういうものかを見つけ出してから、その道で頑張ってほしいです。

文=佐藤主祥
取材・編集・撮影=内藤 祐介

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