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鎌倉と投資の二軸で「複業」する。川村達也が目指す「縛られない」働き方

鎌倉と投資の二軸で「複業」する。川村達也が目指す「縛られない」働き方

人は誰でも、生きていく上で何かしらの制約条件を受けます。
それは仕事だったり、家族だったり、生活拠点だったり。
誰でも何かしらに縛られて生きている、と言ってもいいのかもしれません。

今回お話を伺ったのは、川村達也さん。

現在川村さんは、「鎌倉」「投資」の二軸で、3つのビジネスを並走させ「複業」しています。
その裏には、川村さんが目指す
「自由度高く、縛られない」働き方がありました。

<プロフィール>

川村 達也さん
複業家
ベンチャーキャピタルファンド運営
マイクロステイ株式会社 代表取締役
川村公認会計士事務所 代表

慶応義塾大学を卒業し、大手メーカーで5年営業をした後、
2年半で公認会計士の資格を取得し、監査法人に転職。
鎌倉へ移住後、監査法人を退職し独立。
現在は「鎌倉」「投資」の二軸で
ベンチャーキャピタルファンドの運営、
「暮らしに試住のレイヤーを創る」取り組み、
不動産投資型クラウドファンディング支援の3つの事業で「複業」している。

鎌倉への移住が「複業」を生み出すきっかけに

-現在に至るまでの経緯を教えてください。

川村さん

大学を卒業するとき、将来何になりたいとかまだありませんでした。就職活動をする中で出会った会社に「ここでなら素直に働く場としてアリだ」と思い就職しましたが、5年ほど営業として働いた後、退職しました。

-せっかく就職したのに、なぜ辞めてしまったんですか?

川村さん

仕事をする中でたまたま会計に興味を持ち、どうせやるなら極めようと公認会計士を目指すことにしたからです。2年半勉強に専念して合格し、監査法人に就職しました。

-監査法人に入社されてからは、どうされたんですか?

川村さん

妻から「鎌倉に住んでみよう」と誘われ、鎌倉に移住することになります。私は東京生まれの東京育ち。東京は、いち早くモノも情報も集まり快適です。「東京がすべて」と思っていたのですが、東京に手が届く範囲であれば、少し離れたところに住むのもいいかなと思い、鎌倉に引っ越しました。

引っ越してみて気づいたのが、鎌倉に住む人たちの魅力でした。東京は、勤めている会社とそこで何をしているかで仕事を捉えている人が多い印象ですが、鎌倉には「何かいろいろやってます」という人が多いんです。

それぞれ得意分野をベースに「鎌倉をよくしたい」「鎌倉に貢献したい」と集まっていろいろやっている。そんな鎌倉の人たちと関わる中で、自分自身も「自由度高く、何かに縛られない働き方がしたい」という姿が見えてきたので、監査法人を辞め独立しました。今思えば、鎌倉の人たちと出会えたことが、その後の私の「軸」のひとつになりました。

投資の仕事も始め「複業」の働き方へ

-「鎌倉」という軸は移住がきっかけで生まれたんですね。「投資」というもうひとつの軸はどのように生まれたんですか?

川村さん

「投資」は、監査法人時代にたまたまベンチャーキャピタル(VC)のファンド監査を担当することになったことから始まります。当時はVCなど全然知らない世界でした。監査を通してVCを知っていく中で、こんな面白い仕組みはないと感じていました。その後、気づいたら、私の仕事の7割ほどがファンド監査になっていました。

「監査としてではなく、ファンドの中で仕事をしてみたい」と外部に話していたこともあり、あるタイミングで「一緒にやってみようよ」とお声がけいただき、それがきっかけでVCの仕事を始めました。あれから10年になりますが、今では私の「軸」になっています。

-鎌倉と投資の二軸での「複業」にこだわるのはなぜですか?

川村さん

何かに縛られず、自由でいたいと考えているからです。

「縛られる」とは、何かひとつのことに依存している状態のことです。そうなると、新しく何かをやりたいときに、依存していることが制約条件になる可能性があります。そうすると、人は「これはこれで仕方ない」と現状を正当化しがちです。一方、複数のビジネスを違う文脈で同時に手がけ、状況によってかけるウェイトを変えながら仕事ができると自由度が高くなります。そういう状態が「複業」であり、何か1つの事業をメインにしていないので「副業」とは異なります。

-現在のビジネスについて教えてください

川村さん

現在は、主に3つの事業を「複業」しています。

1つ目は、先ほどお話ししたベンチャーキャピタル業。文字通り「投資」軸の事業です。

2つ目は、「試住」の取り組み。これは「鎌倉」軸から生まれた事業です。実は鎌倉への移住を決める際、湘南エリアから電車通勤できるのか実感が持てなかった私は、茅ヶ崎のビジネスホテルに泊まって実際に東京に通勤体験したことがあります。このときの体験から「試しに住んでみて得られる『気づき』をサービス提供するのは価値あることなのではないか」と考え、マイクロステイを設立し「試住」のサービスを始めました。

これまでに鎌倉、葉山、秋谷・佐島、福岡県の糸島で「試住」のサービスを展開してきました。今は新たなサービス展開を検討しています。

3つ目は不動産投資型クラウドファンディング。これは「鎌倉」×「投資」の事業です。鎌倉の不動産会社とともに、鎌倉の空き家・遊休不動産と利活用したい人をつなぎ、クラウドファンディングで支援する事業をサポートしています。

-3つの事業を「複業」する中で、最も苦労したことは何ですか?

川村さん

「試住」のビジネスを始めた頃、事業を大きくしようと考え人を雇ったのですが、初めて雇われる立場から雇う立場になり、立場による考え方の違いに苦労しました。

雇われる側は「これだけの給料しかもらってないんだからこれくらいしかできない」と考えがちですが、経営者は「これだけ払ってるんだから、もっとコミットしてやってもらいたい」と思います。この差をどう詰めるかが大切ですが、はじめのうちはうまく埋めきれず、雇った人がすぐに辞めてしまいました。経営者としてはもっとやってほしいと思うが、人は思ったとおりに動かないものだ、と勉強になりましたね。

また、個人のお客様とのコミュニケーションは、苦労します。監査法人での仕事もVCもお客様は法人でしたのでわかりませんでしたが、個人のお客様は自分のお金が絡むことなので、ちょっとしたことでも気になり、人によっては感情的になり、苦情やクレームになります。個人のお客様とのビジネスは面白さも大きいのですが、辛いことも多いです。ただそれを自分が嫌だから他のメンバーにお願いするのは逃げているだけで悪循環に陥るので、そこから逃げずに向き合うことが大事だと思っています。

将来は、鎌倉や日本に縛られない働き方をしたい

-今後はどのような活動をしていく予定ですか?

川村さん

「鎌倉」と「投資」という二軸の中で、新しいことを始めたいですね。

あと、近い将来、海外に住みたいです。私自身が鎌倉に依存していると感じていることも確かです。以前「東京がすべて」と思っていた頃と同じ感覚ですね。鎌倉に住み始めて10年になり、何でも鎌倉の中で解決できてしまう今の状況が続くと、自由でいたいのに実は鎌倉に縛られているのでは、との危機感があります。

どこか別の場所に移住しようと思いますが、鎌倉のような場所は日本には他になさそうです。じゃあ海外で探してみようか、と考えているところです。海外に住めば、あらためて鎌倉や日本の良さにも気づくでしょうし。

私としては、まず動くことが先決です。動けば何かが変わるので、物理的に動かないとダメだと思っています。

-最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

川村さん

最近、「やりたいことがあるならやってみろ」「リスクをとってでも挑戦するべき」という、いわゆる起業を積極的に勧める風潮があります。確かに数十年前に比べれば、資金調達もいろんな方法でできるようになりましたし、インターネットのおかげでビジネスの広がり方も断然楽になってきています。

ただその中で成功する人はごく一部で、うまくいかない人がほとんどというのが現状だと思います。そのうまくいかなかったときに、最後の戻りどころがあるかを考えてから独立されることも大切です。それは人間関係でもいいし、資格などでもよいと思います。

私の場合は公認会計士の資格もそうですが、鎌倉という地域のつながりも大きいですね。今後何かの理由で今の仕事がなくなっても、鎌倉に戻って来たら、人の繋がりできっと何とかなる。そういう友だちや信頼できる人との繋がりは、大きいと思います。

これから独立を考えているなら、まずは立ち止まって棚卸しをして、最悪の場合の戻りどころはあるのか探してみてください。そうすれば、精神的にも健全な状態で新たなスタートが切れると思いますよ。

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