あなたが人生において、大切にしているものはなんですか?
仕事で圧倒的な成果を残したいと思っている人、仕事もがんばるけれど愛する家族と、一緒に時間を過ごしたい人、趣味に没頭したい人。
人によってその答えは違いますし、きっとどの答えもその人にとっての「正解」なのです。
前回に引き続き、今回もダイキチカバーオール株式会社 代表取締役社長・小田吉彦さんにお話を伺いました。
製販分離を実現し分社化を成功させるも、新たな問題が小田さんを待っていました。その問題とは一体なんでしょうか。
そして自社フランチャイズ事業を「生きがい提供業」だと語る理由。後編では、その真意を伺いました。
小田吉彦さん
ダイキチカバーオール株式会社・代表取締役社長
大阪府生まれ。高校卒業後家業の土木業に携わった後、不動産会社の営業職に就く。
1992年、株式会社ダイキチ入社。入社と同時に新規事業フラワー事業部の事業部長に任命され、さまざまな営業方法を取り入れて業績を大幅に伸ばし、1996年11月には分社制度により法人化に成功。株式会社ベレーロの取締役営業部長となる。
1999年6月、株式会社ダイキチ カバーオール事業部営業部長に就任。
2002年6月、同事業部のダイキチカバーオール株式会社としての分社とともに、同社代表取締役社長に就任。
ダイキチカバーオール株式会社は、一体誰のための会社なのか? 盛和塾で学んだこと
―前編では、2002年に事業を法人化するまでの流れを伺いました。そこからは毎年増益増収だそうですが、会社経営も比較的落ち着いたのでしょうか?

はい、おかげさまで今年まで17年連続で増収増益を続けています。
以前のように仕事がなくて加盟オーナーさんからお叱りを受ける、といったことはなくなりました。しかし業績は一定の成長曲線を描いている一方で、また新たな課題が生まれ始めました。
それは、人間関係です。
売り上げと利益は出ているはずなのに、なぜか人が離れていく。その理由は、売り上げと利益を追い求めることに執着してしまっていたから。
社長である私がそういった価値観でいたので「売り上げと利益を立てられる人間がすごい」といった雰囲気が社内を支配していましたし、加盟してくださったオーナーさんにも、ただ仕事をお願いするだけ、のような状態になってしまって。
―売り上げや利益があっても、それだけではダメなんですね。

ええ。悩んでいた時期に出合ったのが、京セラの創業者である稲盛和夫さんが主宰する、盛和塾でした。
(盛和塾…稲盛和夫氏が主宰する、経営者のための勉強会。「心ある企業経営者こそが明日の日本を支える」との信念に基づき、全国各地区の盛和塾に多くの熱心な若手経営者が集まっている)
盛和塾では「会社の存在意義」について、塾生の先輩方と徹底的に議論することになります。
それまで「売り上げと利益」を追求することに一生懸命だった私にとって、とても衝撃的な出来事でした。
そして会社が存在する意義は「利他の心」(社会的な存在意義)に基づいていなければならない。一体誰のための会社なのか、今一度深く考え直すきっかけとなりました。
100人いれば100通りの「生きがい」がある。「生きがい提供業」の真髄
―盛和塾での学びが、小田さんの掲げる「生きがい提供業」に繋がるのですね。

はい。加盟オーナーさんは依頼された仕事だけで終わり、社員は加盟オーナーさんへの仕事を獲得してくるだけ、では文字通りお金だけの関係になってしまいます。
そういう意味で、当時の会社は「利他の心」はもちろん「会社の存在意義」すら危うい状況でした。
そこでとにかく加盟オーナーさん、社員たちと向き合う時間を増やしました。私は彼らに、どうなってほしいのか。ダイキチカバーオール株式会社と関わることでどんなものを手に入れてほしいのかを徹底的に考えました。
―それがこの経営目的なんですね。

そうです。私たちに関わる全ての人が、イキイキと暮らせるような仕組みを作る。それが私たちの存在理由だと思っています。
例えば加盟オーナーさんに対しては「FCオーナーを清掃事業経営者に育成・支援し続けることで、ご家族を含めた物心両面の幸福を追求します」と掲げています。
加盟オーナーさんと一口に言っても、その人数だけ、それぞれの人生があります。
たくさん売り上げて稼ぎたい、という方もいらっしゃれば、仕事は程々にして家族と余暇の時間を多く持ちたいという方もいらっしゃいます。
ダイキチカバーオール株式会社のフランチャイズ事業では、そうした加盟オーナーさん1人1人の「生きがい」に寄り添っています。
―具体的にどのようなことをされているのでしょう?

年に5回、大きなイベントを開催しています。
まずは1月の方針発表会。前年活躍した加盟オーナーさんの経営体験の発表やキャリアビジョンについて共有するイベントです。表彰や有給休暇の授与もあります。
3月は中期経営計画策定会。これから従業員を雇って法人化を検討している加盟オーナーさん向けの勉強会です。私が盛和塾で学んだことと同様に、経営とは「利他の心」を実践してこそ意味があります。そうした経営者としての心構えを、加盟オーナーさんと共有します。
6月は地域別バーベキューがあります。これは加盟オーナーさんの家族も招いて行います。9月は地域交流会。バーベキュー同様、お住まいの地域の加盟オーナーさんたちに、自己紹介や情報共有を行ってもらうための場所です。
そして11月はオーナー総会が開かれます。本部の人間は入れず、加盟オーナーさん同士で話し合い、そこで出た要望を本部へ送っていただきます。我々本部は、その要望に対して対応できるかできないかを速やかに、加盟オーナーさんたちにご報告します。
11月のオーナー総会以外は、私を始め、多くの本部の社員もイベントに参加しています。それに加え、毎週加盟オーナーさんと対面で話す場を設けたり、一緒に飲みに行ったりしています。
※オーナー総会で出た要望に対して、本部が速やかに対応したことによる、オーナー会からの感謝状
―加盟オーナーさんたちとの接点がとても多いんですね。小田さんや本部と加盟オーナーさんという関わりだけでなく、加盟オーナーさん同士の横の繋がりが多いのも印象的です。

加盟オーナーさん同士が助け合う文化を大切にしています。新しく加盟したオーナーさんも、長く加盟し続けてくれているオーナーさんも、みんなが楽しく情報共有しながらお仕事ができる。
そうした空気や雰囲気が、売り上げや利益だけでなく皆さんの人生を豊かなものにしてくれると思っています。
またこれは他社さんと比べても珍しいんですが、ダイキチカバーオール株式会社のフランチャイズ事業以外に、別の事業展開をすることも認めています。
仕事やプライベートも含め、様々な「生きがい」を追求している人との接点は、必ずその人の「生きがい」にも影響を与えます。
こうした取り組みが、私たちが規定する「生きがい提供業」なのです。
自分にとっての「生きがい」を見つけられたら、仕事はもっと楽しくなる!
―ダイキチカバーオール株式会社の今後の展望を教えてください。

売り上げ的な話をすれば、2025年に年商200億円を目指しています。
直近では福岡と豊橋、浜松に営業所を出店することが決まっています。また、ビルメンテナンスだけでなく、ビルそのものを扱う不動産事業への進出も検討しています。
そして何より、加盟オーナーさんの「生きがい」の実現を第一に今後も邁進していきたいですね。
―最後に、読者へメッセージをお願いします。

たくさんの収入を得ていたとしても「自分が何のために仕事をしているのか」が分かっていないと、人って辛くなってしまうんですよね。
“誰のために、何のために”をはっきりさせることで、より一層仕事もがんばれるし、何より仕事を楽しむことができます。
働く人みんなが、自分にとっての「生きがい」を見つけて、イキイキと仕事に取り組めたら素敵ですよね。