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稼ぐことが目的じゃない。親の離婚後のこどもの笑顔を守る、面会交流支援の在り方

稼ぐことが目的じゃない。親の離婚後のこどもの笑顔を守る、面会交流支援の在り方

独立・起業を考える際に切っても切れないのは「この仕事で継続的に稼いでいけるか?」という視点ではないでしょうか。

仕事と生活は密接に結びついており、生活をする以上、仕事できちんとお金を稼いでいかなければなりません。

今回お話を伺ったのは、面会交流代理人で「面会交流支援 OMI VISITS」(以下、OMI VISITS)の理事を務める、山川直明さん。

山川さんは20年勤めた会社を退職した後「OMI VISITS」を立ち上げました。しかしそれはお金を稼ぐために立ち上げたわけではないと語ります。

なぜ山川さんは「OMI VISITS」を立ち上げようと思ったのでしょうか?

<プロフィール>
山川直明さん
面会交流代理人/面会交流支援OMIVISITS 理事

京都市内のタクシー会社で20年ドライバーを務めた後、「面会交流支援OMI VISITS」を立ち上げる。

滋賀県長浜市を拠点に、離婚した家庭のこどもと非親権者の面会の支援を積極的に行う。

面会交流とは:離婚後又は別居中にこどもを養育・監護していない方の親がこどもと面会等を行うこと
出典:裁判所より

3組に1組が離婚する時代の需要。タクシードライバーから面会交流代理人へ転身した理由

―山川さんが「面会交流支援OMI VISITS」を立ち上げられるまでの経緯を教えてください。

山川さん
大学を卒業していくつかの職を転々とした後、京都市内でタクシーの運転手として20年ほど勤務していました。

大学では西洋経済史を専攻しており、卒業後はヨーロッパへ旅をしていました。そのため英語の他にフランス語、ドイツ語なども話せるので、訪日外国人を中心に観光ガイドを担当していました。

京都の街をタクシーで1日周り、観光名所にまつわるエピソードなどを紹介しながら案内していました。

―タクシードライバーだった山川さんがなぜ、面会交流支援を?

山川さん
きっかけは妻からの相談でした。

私の妻は滋賀県彦根市で弁護士をしているのですが、女性の弁護士ということで、離婚問題を扱うことが多かったんです。

離婚の問題は離婚調停が終結すれば、問題そのものが終わるわけではありません。

特に問題になりやすいのが、こどもと親権者ではない「非親権者」と面会する、面会交流だったんです。

―なぜ面会交流が問題になりやすいのでしょう?

山川さん
通常、面会交流では当事者(親権者と非親権者)たちの話し合いによって、面会の可否や頻度、日時や場所などが決定します。

ですが、そもそも当事者たちの関係が良好ではない場合、話し合いをすることそのものが困難になってしまいます。

そのため面会交流に立ち会い、当事者たちの間を取り持つ信頼できる第三者が必要になるのです。

昔と比べて離婚率は上昇し、現在は実に3組に1組の夫婦が離婚すると言われている中、面会交流の需要は確実に高まっています。

需要はあるものの、面会交流を支援してくれる団体がないと妻から相談を受け、一念発起して立ち上げたのが「面会交流支援OMI VISITS」(以下、OMI VISITS)だったんです。

こどもを笑顔にするために。ビジネスにしない面会交流支援の在り方

―離婚にも様々な理由がありますが、当事者の仲が悪い場合、親権者の精神的なコミュニケーションコストがかかってしまいますからね。

山川さん
そうですね。特に配偶者へのDVが原因で離婚した夫婦ですと、メールや電話でコミュニケーションを取ることすら恐怖を感じてしまうケースもあります。

また私たち面会交流代理人が最も危惧しているのは非親権者による、こどもの「連れ去り」です。

普通の誘拐事件とは異なり、こどもの親ですからね。このあたりは特に気を使っています。

―たしかに離婚しているとはいえ、自分の親ならついて行ってしまいそうですね。こどもが幼いなら特に。

山川さん
ええ。だから私たちは大きく4つの支援を行っています。

1つ目は、連絡支援。先程お話した通り、当事者たちの間に入り連絡を取りもちます。

2つ目は、受け渡し支援。これは親権者の代わりにこどもを非親権者との面会に連れていき、時間になったらこどもを非親権者から預かります。

3つ目は同行支援、4つ目は施設提供支援です。面会中、同じ空間に私たちが同行し、面会のための施設を提供します。

同行支援と施設利用支援は「連れ去り」の防止のための手段でもありますが、同時に円滑な面会をアレンジするための方法でもあります。

―どういうことでしょうか?

山川さん
「面会」と聞くと、味気ない部屋に非親権者とこどもを会わせ、私たちがその様子を見守るという、どこか窮屈な印象があるかもしれません。

普段会っていない親子が、いきなり第三者の前で会っても、手持ち無沙汰になってしまいがちですが「OMI VISITS」では施設を貸し出しており、こどもと非親権者が一緒に取り組めるようなイベントがあります

例えば、シーカヤックやバイオリン、ギター作りなど、親子が一緒に楽しめるプログラムを用意しています。

―たしかに親子で「何かを一緒に作る」というのは、手持ち無沙汰解消につながるだけでなく、自然な形で絆を深めることもできますよね。一方で面会交流支援では、どのようなマネタイズ方法を採っているのでしょう?

山川さん
基本的には1回の面会あたりでいくら、という形でお金をいただいているのですが、スタッフの給与を含め、コストと収益はだいたい同じくらいですね。

ビジネス、というよりほぼ慈善事業のようなスタイルです。ただ、サスティナブルな活動にするために様々な工夫を施しています。

例えば、施設は使われていなかった空き家を改装したものですし、空き家の近くには山もあり畑もある。

都会のように居住費もかかりませんし、食費もそこまでかかりません。

またスタッフも理念に賛同したボランティア有志が集まっているので、人件費もそこまで多くかからない。

通常、面会交流支援を受けるためには、1時間で1〜2万円ほどかかるのですが、こうした工夫で相場の6割程度に料金を抑えることができています。

―営利を目的としていないのはなぜですか?

山川さん
お金をたくさん稼ぎたくてこの仕事をしているわけではありませんし、都会と違って、長浜で面会交流支援をする分には、そんなにたくさんのお金が必要なわけではないんです。

何より両親が離婚して傷ついているのは、やっぱりこどもです。親のためというよりは、こどもを笑顔にするためになるべく親の負担は減らしつつ、親と会う機会を増やしてあげたいんです。

お金を稼ぐことが全てではない。自分の事業の目的をもう一度考える

―山川さんの今後の目標はなんでしょう?

山川さん
現在は長浜で活動をしていますが、今後は名古屋や京都、大阪など都市部にも進出していきたいと思っています。

やはり人が多ければ多いほど離婚の発生件数も多くなり、それだけ両親の離婚を経験するこどもが増えますから。

しかしそのためには、都市部でもきちんと機能し継続できる仕組み作りが必要です。「OMI VISITS」の理念や良いところは活かしつつ、どれだけカスタマイズできるかが課題ですね。

―ありがとうございます。最後に読者にアドバイスをいただけますか?

山川さん
なんのために事業を立ち上げるのか、という動機ははっきりさせたほうがいいかもしれません。

私の場合は、妻から聞いた離婚した後の問題、面会交流支援の重要性、そしてこどもの笑顔を守ることでした。

正直、お金儲けのことは全然考えていませんでした(笑)。

とはいえ継続的に続けていくためにはどこにお金をかけ、どこを削れるかを考え、今のようなスタイルになりました。

自分の目的に沿った事業の在り方、規模感を想定することはとても大切です。ただ漠然と利益追求を目的にすると、なんのためにやっているのか分からなくなってしまいますからね。

自分はなんのために独立・起業をするのか。そこをもう一度よく考えてみると良いかもしれません。

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