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irODORu projectが“心を元気にするフィットネス”を信念にする壮絶な理由

irODORu projectが“心を元気にするフィットネス”を信念にする壮絶な理由

信念。

いかに強く、自分だけの信念を持っているのか。それは予測不能な独立・起業を成し遂げる上で、そしてこの世の中を生き抜いていく上で、大切な1つの武器と言えるでしょう。

今回お話を伺ったのはirODORu projectのMiuさん(写真左)とARISAさん(写真右)。

こちらが笑顔になってしまうような、素敵なスマイル。しかし2人には、その笑顔からは想像もつかないような壮絶な過去があったのです。

「“心を元気にするフィットネス”を実現したい」。過去を乗り越えた彼女たちの言葉には重みがあり、その奥には強い信念を感じました——。

<プロフィール>
irODORu project
Miuさん/ARISAさん

フリーランスのフィットネスインストラクターユニット。
それぞれの経緯から「心を元気にするフィットネス」をテーマに、身体の健康はもちろん心の健康を大切にするための活動を展開している。

心を癒やすことも「人を助ける仕事」。妹を亡くして気づいたこと

——irODORu projectとして活動されるMiuさんとARISAさん。まずはMiuさんから、現在のお仕事について教えてください。

Miuさん
フリーランスのフィットネスインストラクターをしています。

大手のフィットネスジムに2年半勤めた後、昨年の11月に退職。以降はフリーランスとして、トレーニングにダンスエクササイズを加えた、独自のレッスンを展開していて。

身体を動かすのは好きだったんですが、まさか自分がこの道に進むとは昔は思っていなかったですね。

というのも小さい頃に自分が小児喘息を患っていたり、親が医療系の仕事に就いていたりした関係で、私も医療の道に進んで「人を助ける仕事」がしたいなと思っていて。

だから大学も、慶應義塾大学の看護学部に進学していたんですよ。

——なぜ看護からフィットネスに?

Miuさん
きっかけは大学2年生の時に、年子の妹が自ら死を選んでしまいました。

それから心にぽっかり穴が空いたようで、毎日が無感情のままに過ぎていって。単位を取るためだけに、授業と試験をこなす生活がしばらく続きました。

半年ほど経って、所属していたチアサークルの友人に学園祭でのステージを見にこないかと誘われたんです。妹のことがあってからサークルにも行けてなかったのですが、どうにかその学園祭には足を運んで。

そしてそのステージを見た時、感動してしまったんです。久しぶりに感情が生まれました。精神的にものすごく救われたというか……心を動かされて。

身体をケガしていたわけではありません。当時の私も、そしてきっと妹も。どちらかというと心が傷ついてしまっていたんです。

今まで身体を治す職業に就くための方法を学んできたけれど、心を癒やすことも「人を助ける仕事」だと、チアのステージを見た時に気がつきました。

誰かの心を元気にできるような、前向きにできるような。そんな仕事がしたいと思うようになって。

スタジオレッスンのフィットネスインストラクターの道を選んだんです。

スタジオレッスンではお客さまのみなさんと一体感や達成感を得ることによって、身体の健康はもちろん、心も元気になれる手段としてぴったりだと思いました。

自分を救った“チアスピリット”と、心身を病んでしまった母を救ったフィットネス

——ARISAさんも、現在までの経緯を伺ってもよろしいでしょうか?

ARISAさん
私も現在Miuと同じく、フリーランスのインストラクターをしています。

この道を選んだ経緯は、Miuと同様少し複雑なのですが……(笑)。

慶應義塾大学付属の中等部に入学してすぐ、自営業をしていた父の事業が立ち行かなくなり、ある日突然いなくなってしまいました。

行き場を失った私は母と一緒に、水戸にある祖父母の家に引っ越しました。水戸から田町の学校まで、片道2時間半かけて学校に通う生活が始まりました。

幸い様々な方のご厚意もあり、学校を辞めずに済んだのですが、家庭環境が良いとは言えず。加えて母は父のことで心身を病んでしまったんです。

学校にも馴染めず、家にも学校にも、どこにも居場所がないような生活が続きました。

——Miuさん同様、ARISAさんも壮絶な経験をされていたんですね……。その状況からどう変わっていったのでしょう?

ARISAさん
転機になったのは高校に進学した時。部活でチアダンスを始めました。そこで学んだ“チアスピリット”(※)や、部活の仲間に支えられ、いろんな意味で苦しい中でもなんとかがんばってきて。

大学生になると日吉のキャンパスに通うようになり、そのタイミングで1人暮らしをすることになりました。

家族と離れて暮らすといい意味で距離感ができて、この頃から少しずつ家族と向き合えるようになっていって。

母も、いつしかフィットネスジムに通うようになり、そこでできたコミュニティに関わることで心も身体も徐々に元気になっていきました。

私はもともとチアをやったりと運動は好きだったのですが、この母の一件からフィットネスの仕事に興味を持つようになったんです。

※笑顔でパフォーマンスをし、観客や選手、そして自分を含めた仲間を元気付ける人。もしくはその姿勢など

——そしてフィットネスインストラクターになったんですね。

ARISAさん
はい。母がフィットネスを通して元気になっていく姿を見ていたことや、自分自身がチアや“チアスピリット”で元気を取り戻した経験から、人に元気や笑顔を与える仕事がしたいと思うようになって。

それでフィットネスインストラクターの道へと進みました。

就職して4年と少し勤めた後、2019年の7月に独立し現在へと至ります。

「心を元気にするフィットネス」を目指して、フットワークは軽く。より高い自由度で。

——それぞれの経緯があり、フリーランスのフィットネスインストラクターになられたお2人。そんなお2人はどこで出会ったのでしょう?

Miuさん
私たちは2人とも同じ大学に通っていたのですが、年齢も離れていることもあり、実は大学時代には接点はなくて。きっかけはEXERGiRLS(※)の結成でした。
ARISAさん
私たちは会社員のインストラクターとして働く中で、自分たちの仕事の「限界」を感じていて。

※現役フィットネスインストラクターらで結成された、フィットネスユニット。18人のメンバーで構成されている。MiuさんもARISAさんもこのユニットのメンバー。

——限界、ですか?

ARISAさん
はい。その1つが、フィットネスジムに「通ってくださっている人」にしかアプローチができないこと。

運動は言うまでもなく人間にとって必要不可欠な要素ですが、構造上、フィットネスを実践するまでのハードルが高すぎるんです。

私たちとしては「もっと誰もが気軽にフィットネスができる環境」を作りたかった。

「EXERGiRLSの活動を通して、その課題をクリアできるのでは」という期待を抱いてユニットに入ったのですが、結成してすぐコロナ禍に見舞われ……。リアルなイベントや啓蒙活動がしづらい環境になってしまったんです。

Miuさん
ARISAは日頃から、そういった現状の限界や課題意識をSNSで発信していて。

正直最初は顔見知りくらいの関係だったのですが、彼女の言葉に共感することがたくさんあり、思い切って連絡をしてみました。

話してみるとお互いの考え方や思想はとても近いものがあり、すぐに「一緒に何かできないかな」と考え始めて。

——これまでのお話から、お2人が意気投合するのは想像に容易いです。それで結成したのがirODORu projectだったと。

ARISAさん
はい。フィットネスを通じて、身体だけでなく心を元気にしたい。「心を元気にするフィットネス」を合い言葉に活動していくことにしました。

見ながら一緒にできるフィットネスの動画を発信したり、そして洋楽ではなく邦楽を使ったフィットネスを作ったり。

——フィットネスといえば洋楽が流れているイメージがありますが?

Miuさん
私たちは「心を元気にするフィットネス」をコンセプトにしているので、より元気になれるよう日本語の歌詞で歌われた楽曲を使っていきたいなと。

運動中、歌詞の言葉が、よりダイレクトに自分の中に入ってくるようにしたくて。

また昨今の事情で営業がしづらくなってしまっている、ライブハウスにも協力を仰いで会場を提供していただきました。

——つまり、ライブハウスでフィットネスを?

ARISAさん
ライブができずに空きスペースになってしまっている会場に、人を集めて。ソーシャルディスタンスを保ちながらフィットネスを行いました。

今の時代に促したやり方を模索しながら、これからもフィットネスの楽しさを伝えていきたいですね。

——irODORu projectを結成するフットワークの軽さや、コロナ禍の中でできることを探して実行する自由度の高さ。まさにフリーランスならではの仕事のやり方・組み立て方だと思います。

Miuさん
たしかにそうかもしれません。洋楽ではなく邦楽でフィットネスをやることも、楽曲の著作権周りなどのハードルが高く、会社が経営するジムだといささか厳しいものがあります。

その点、私たちは直接アーティストの方に企画の意図を説明した上で、楽曲使用の許可をいただき使用させていただいています。

「心を元気にするフィットネス」というコンセプトを実現するためにできることは、今後も身のこなしは軽く、高い自由度で活動していきたいですね。

ARISAさん
irODORu projectとは、人生を「彩る」ことと「踊る」ことをかけていて。

今後もさらにいろんな手段を使って、フィットネスの経験がない人にその楽しさを伝えていけたら良いなと。

踊ることで人生が彩られる人が、1人でも増えていったら嬉しいですね。

——最後に、読者へメッセージをお願いします。

Miuさん
私は妹を失った時に「これまで当たり前に続くと思っていたことは、何かの拍子にいとも簡単に崩れてしまうんだ」と、初めて実感しました。

昨今のコロナ禍もしかりですが、明日何が起こるかなんて誰にも分かりません。もしかしたら明日、命を終えることだってあるかもしれない。

もしそうなったとしても、今の自分のやりたいことをやっていれば後悔はないと思います。振り返った時、後悔がないって思えるような人生を送れたとしたら、それはとても素敵なことだと思います。

ARISAさん
irODORu projectの活動以外にも、もちろん仕事をしています。忙しくはありますが、充実した楽しい日々を送っています。

その根底にあるのは、やっぱり仕事へのやりがいや意義を感じているからだと思っていて。だから大変な時や辛い時も、根っこにある信念を再確認できると不思議とまたがんばる力が湧いてくる。

もし独立・起業をするなら「自分が何のためにがんばっているのか」を具体的に言語化できるような、そんな自分だけの信念が必要なのかもしれないですね。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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