「内定ブルー」という言葉がある。
大学の卒業を控えた学生が、卒業後に入社する予定の会社に対して抱く迷いのことだ。
「自分は本当にこの会社でいいのだろうか?」「社会人となってうまく会社でやっていけるだろうか?」と、そんな迷いや不安に押しつぶされそうになる。
一過性で過ぎれば良いのだが、入社してからもその迷いや不安を、引きずり続ける人も少なくないだろう。
今回お話を伺った、はちるさんもその1人だ。
はちるさんは、現在システムエンジニア/メイドフリーランス・VRフリーランスとして活躍されているが、新卒で会社に入社してから心を病んでしまったという。
今回は、はちるさんが心を病み退職してから「メイドフリーランス」という仕事に至るまでのお話を伺った。
はちるさん
メイドフリーランス・VRフリーランス
システムエンジニア名古屋出身。
大学を卒業後、2016年にIT企業に就職し、システムエンジニアとして業務を行う。
精神疾患を患い2度の休職を経て、2018年6月に退職。その後「メイド服を来たフリーランス」としてエンジニア業務や、プログラミングを教える教育事業などを手がける。
現在はフリーランスのエンジニアとして活躍する傍ら、バーチャルYouTuberとしての活動や、VRゲームの開発、フリースクール「DE-SCHOOL 早稲田」(https://de.gftd.school/)でサポーターを務めるなど活動の領域は多岐に亘る。
2度の休職を経て、退職。環境の変化の大きさと、何もできない自分の無力感
―現在に至るまでの経緯を教えてください。
こどもの頃からPCが好きだったので、大学でプログラミングなどを学び、卒業後にIT企業に就職しました。入社した会社はいわゆるSIer(システムインテグレーター/System Integrator。システム構築から導入の全てに責任を持つ「事業者」のこと。SI企業とも言う)で、私はエンジニアとして取引先に常駐することになりました。
幸い、入社した会社や取引先での仕事は、激務というほどではなかったんですが、自分のメンタルがどんどん追い込まれてしまっていて、入社して約1年で休職をしてしまったんです。
―なぜ休職をされたのですか?
理由はさまざまですね。まず、私は大学まで名古屋で暮らしていたんですが、社会人になってから東京の会社に来ることになってしまったこと。
大学で少し仕事に関係するようなことをかじっていたとはいえ、会社に入るまでエンジニアとしての就業経験はなかったので、いろいろ仕事を覚えていかなければなりません。
そんな中、加えて住む場所も大幅に変わってしまったので、環境の変化に対応できなくなっていたんです。
そして私はもともと少し思い込みの激しいところがあり、学生時代から人間関係が得意ではありませんでした。
―思い込み、ですか?
はい。例えば、仕事の指摘を他の人から受けると「私は周りから、仕事ができないと思われているんじゃないか」「みんな私の悪口を言っているんじゃないか」と勝手に思い込んでしまっていたんです。
今思い返せば、別に周りの人は怒っていたわけではないと思います。むしろ新卒の私に仕事のことを教えようと、親切心でいろいろ話してくれていました。
しかし当時の私は、環境の変化を始めとするストレスで、その親切心をきちんと受け取る余裕がなかった。
朝起きて会社に行って、帰ってきてご飯食べて、泣いて、気づいたら寝ている、みたいな毎日を過ごしていたんです。
―環境の変化に戸惑ってしまうこと、何もできない自分に対する無力感。新卒なら誰もが多かれ少なかれ経験することだと思います。
きっと私の場合、人よりもその振り幅が大きかったんだと思います。だから会社のせいとか人のせいとかではなく、勝手に自分で壊れていきました。結局4カ月の休職を経て復帰するのですが、やっぱりダメで。なんとかその後9カ月がんばったのですが、再び休職してそのまま退職しました。