働き方の多様化が進んでいる現代。1つの業種に収まらず、副業というセカンドワークを取り入れていることが当たり前と化してきています。実際に、本業に差し支えなければ副業を認める企業が増加しているのも事実。
しかし、いざ何かに手を付けようにも「果たして本業と両立できるのか?」、「自分が副業に向いているのか?」と、スタートを踏み切れない人もいるのではないでしょうか?
今回は、千葉県山武市にある「中央建設株式会社」取締役をしながら、リラクゼーションサロン「MUU越谷駅前店」のフランチャイズオーナーを務めている伊庭恵美さんに、副業についての考え方を伺いました。
本業の新事業につなげるための「お試しツール」として始めた副業
―副業はいつごろから始めたのでしょうか?
2016年8月からMUUのフランチャイズオーナーを始めました。本業(中央建設)では約20年間経理を担当していたので、リラクゼーションサロンを運営したのは初めてでしたね。
―どういったきっかけで始めようと思ったんですか?
本業の新規事業のお試しとしてですね。本業の仕事は建設業なのですが、今後は県や市から委託される公共工事の数は減っていくので。
そこで、その穴埋めじゃないですけど、社長と「会社として違った職業がほしいね」と話をしていたのをきっかけに副業を始めてみたんです。
今は新事業のお試しという形で個人的にやらせて頂いてますが、将来的には会社としての新事業につなげていけたらなと思っています。会社として育たなければ、本当に個人としての副業で終わってしまうので。
―なるほど。副業といってもたくさん種類はありますが、なぜMUUを選んだんですか?
1番の理由は、私がマッサージ好きだからです。そしてマッサージ好きゆえの悩みがあったんです。
というのも、私がマッサージを受けに行く時、スタッフのレベルが全く違うことがあるんです。そんな差があるのに、同じ金額を出すと損した気分になるんですよね。
それに対してMUUは、個室で女性が通いやすいというのと、研修がしっかりしていてスタッフのレベルが一定というポイントが魅力的に感じたので、もう即決でしたね。
違う業種の考え方を取り入れることで、新たな発想が生まれる
―本業とは全く異なる業種に着手することによって、何か得られたものはありますか?
違う業種の考え方を今の仕事に取り入れると、今までになかった発想が生まれるんですね。なので視野を広げるという意味では、新事業に結び付きやすくなるんじゃないかと感じています。
それに加えて、これまでの本業で提携を結ぶスタッフとMUUのスタッフ、またはその系列の各オーナーの方々といった異なる世界の人たちと接することによって、本業スタッフとのコミュニケーションの取り方が変わってきたという部分もありますね。
―ご自身は施術をやられるのですか?
いえ、基本的に私はMUUの中ではオーナーとして運営・売上や備品の管理のみ行っているので、施術自体はやっていません。
もちろん、中にはオーナー兼施術者としてやられる方はいると思うのですが、副業としてやるとなると時間的に難しいんですよね。
なので、運営・管理という部分を徹底して、スタッフがしっかり施術できる環境づくりというのを意識して取り組んでいます。
―やはり、本業と副業の時間の使い方というのはとても難しいと思うのですが、どのようにスケジュールを組んでいるのですか?
本業で経理をしているのが私だけなので、自分の仕事量を調節することができるんです。なので、他の事務スタッフが会社にいれば、仕事の合間を見てMUUに顔を出しに行くという感じですね。
副業って聞くと本業の仕事が終わった後、あるいは休日に作業しているという風に思われがちですが、私は平日の昼間や夕方に行っているので、休日は家の家事やプライベートに専念することができるんです。
好きの延長で履く「二足のわらじ」は楽しい!
―副業をしていると、プライベートの時間も仕事に費やすイメージがありますが、平日に両方こなすとは驚きです。ちなみに、副業の勤務先はどこですか?
埼玉の越谷です(笑)。なので、本業の会社がある千葉県山武市からは車で約1時間半かかりますね。
ですから、副業のお店に顔を出すのは月3~4回で、週1回を目指してスケジュール調整しています。スタッフがしっかりしているから任せられるというのもありますし、オーナーという立場なので、そのくらいの頻度がちょうどいいとも本部から言われていますので。
―なるほど。では、「二足のわらじ」とよく言いますが、副業を始める際は大変だなぁと不安に思うことはありましたか?
いちからお店を始めるとなると大変だとは思いますが、私の場合はもともとMUUの直営店だったお店から譲渡されたので、スタートの時点ではそこまで大変だとは思いませんでしたね。
時間の融通がきくので動きやすいというのもありますし、移動距離に関しても、気分転換のドライブにはちょうどいいので逆にリフレッシュできます。何かトラブルが起こった場合は本部に対応してもらえます。
なので、全体を通しても大変と思うことはありません。むしろ、大変だと思う時こそ楽しくやろうと思っています。2つの仕事をしている以上、仕事量が増えるのは当然ですし、楽しむくらいの気概がないと副業は続きませんから。
私の場合は、いろんな方々とお話しさせて頂くことが好きなので、副業という新境地に足を踏み入れることでたくさんの人に出会えることが本当に楽しいです。
―やはり、楽しいと思える部分がなければ継続することって大変ですよね。ここまで続けてきて、収入の面はイメージ通りに得られていますか?
まだ始めたばかりなので、正直そんなに儲かってはいません(笑)。でも、体制を整えてしっかりと集客をしていくことができれば自ずと増えていくとは思います。
ただ、副業なら尚更そうなんですが、収入を増やそうと思ってやるよりは、好きの延長で始めた方がうまくいくし、長く続くとは思いますね。
「いろんな仕事をしている人はパワフルでカッコいい」。今後はそういう人生へ
―そのように好きで続けている副業がいずれ本業に…という考えはお持ちですか?
それは考えていません。あくまで本業がメインとしてあるので、そこから独立することはないですね。
ただ、もちろんMUUを軌道に乗せて2店舗目も出したいという目標はあるので、その流れで経営がうまくいった場合は、そのまま個人で運営していくのか、法人化するのかはその時に考えたいと思います。
―では、もし今後また何か副業に挑戦しようとは思いますか?
そうですね。次は自分の趣味を仕事としてつなげられたらと思っています。個人的に10年間くらい着付け教室に通っているので、着物に携われるようになりたいですね。
やはり、私の周りにも副業をしている方がいるのですが、そういう人って考え方がしっかりしているし、何より生き方がパワフルでカッコいいんです。なので、私もいくつになってもいろんな仕事をしていたいなとは思っています。
(取材・文=佐藤主祥 https://twitter.com/kazu_vks)