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マッチングサービスから、インフルエンサー事務所へ。「Coupe」が事業を転換した理由

マッチングサービスから、インフルエンサー事務所へ。「Coupe」が事業を転換した理由

以前「あるWebサービスを作った女子大生が起業した」というニュースが、ネットを中心に話題になりました。

今回お話を伺ったのは、そのサービスを作り上げた株式会社Coupe(クープ)の代表・竹村恵美さん。

竹村さんは、大学4年生で美容室とサロンモデルのマッチングサービス「Coupe」を立ち上げました。

SNS・ネットを中心に話題を呼んだニュースでしたが、現在その「Coupe」はインフルエンサー事務所に形を変えています。

なぜ「Coupe」は大胆な方向転換を行ったのでしょうか?

<プロフィール>
竹村恵美(たけむら・めぐみ)さん
株式会社Coupe(クープ)、COUPE MANAGEMENT代表取締役兼エンジニア

1991年生まれ。中学3年時にドイツ、高校3年間はスイスで過ごし、立教大学文学部に進学。

アナウンサーになるためレッスンに励むが、大学3年生のときIT企業でインターンを始めたことがきっかけで、プログラミングを始める。

その後、大手インターネット会社でのインターンを経て、大学4年生の2014年12月に美容室とサロンモデルのマッチングサービス「Coupe」を立ち上げる。

2018年4月からは、SNSやライブ配信に強いモデルを抱えるインフルエンサー事務所「COUPE MANAGEMENT」の運営も開始した。

就職ならいつでもできる。大手の内定を辞退してまで選んだ、起業という選択肢

ー大学4年生で株式会社Coupeを立ち上げた竹村さん。学生時代から起業を考えていたのでしょうか?

竹村さん
いえ、大学時代まではアナウンサー志望だったので、起業なんて考えてもみませんでした。

大学1年生の時からアナウンサースクールに通い、結構がんばって勉強していたのですが、いざ3年生になって就職試験を受けている時に「なんか違うな」と思ったんです。

ーそれで、アナウンサーになるのはやめようと。

竹村さん
はい。次に何を目指そうか悩みつつ、とりあえずIT企業でフランス語通訳のバイトを始めてみました。

高校時代までヨーロッパにいたこともあり、大学ではフランス語を専攻していたので、フランス語は得意だったんです。

そのバイト先でプログラマーの方がいたんですけど、黒い画面にカラフルな文字をバーッと書きながらプログラミングしている姿を見て「カッコいい!」って思ったんです(笑)。

私も試しにやってみようと思って、10日間のプログラミングスクールに通ったんですけど、実際に勉強してみたらものすごく楽しかった。

ーマスコミからIT系へ、方向転換したんですね。

竹村さん
はい。

それで就活に活かすためにも、自分で何かWebサービスを立ち上げようと、考えたんです。

ちょうどそんな時、幼馴染みだった友達が美容師になったんです。とはいえまだ駆け出しのアシスタントだった彼女は、通常の業務に加え練習の毎日。

そんな彼女が私に「サロンモデルを探すのが大変なんだよね」とつぶやいていたんです。

私はアナウンススクールで、読者モデルをやっている綺麗な子たちをたくさん知っていたので、彼女に紹介することにしました。

その時に「この需要(美容師とサロンモデルのマッチング)を解消するWebサービスを作ったらいいんじゃないか」と、思いついて作ったのが「Coupe」だったんです。

最初は「就活の自己PRで使えるな」ぐらいの気持ちで始めたサービスだったんですが、SNSでバズって、自分でもびっくりするくらいにたくさんの方たちに「Coupe」を使っていただけるようになったんです。

ーなるほど。では、その後は美容師とサロンモデルのマッチングサービスを運営しながら就活も続けていたと。

竹村さん
そうですね。「Coupe」の運営は楽しかったのですが、この時はまだ「Coupe」だけで仕事をしていくとは思っていなかったので、大学3年生の秋からはインターネット広告事業を運営する、大手の会社でインターンを始めました。

しばらくして、その会社から内定をいただいたんです。

絶対に入りたいと当時思っていた会社だったので、もちろん内定を承諾してそのまま就職するつもりでしたし、会社の最寄り駅から数駅程度の場所に引っ越しもしました。

ですがある時、その会社が副業を禁止していることを知ったんです。

私としては「Coupe」を続けたかったですし、知り合いのIT企業の方からも「もったいない! それなら起業した方がいいよ」って言ってもらって。

それで「確かに就職ならいつでもできるし、チャレンジしてみよう」と思ったんです。

そして、内定を辞退することを決断し、大学4年生の2014年12月に会社を登記しました。

「Coupe」の強みを活かす。美容師とサロンモデルのマッチングから、インフルエンサー事務所へ舵を切った理由

ー起業後は、事業を軌道に乗せることはできたのでしょうか?

竹村さん
それがめちゃくちゃ大変で…。事業も一時は継続困難な状況にまで追い詰められました。

というのも美容師とサロンモデルのマッチングを「無料」で運営していたんです。

利用するユーザーが増えてきたら有料にしようと計画していたのですが、思うようにマネタイズができなかったんです。

なぜならユーザーである美容師さん(主にアシスタントの方たち)に会員費を支払っていただくにしても、一個人にそこまで高い金額を請求することはできません。

実際にユーザーであるアシスタントさんたちに話を聞いても「サロンモデルを紹介してもらう度にお金を払うなら、歩いて探した方がいい」という方が多くて。

「美容師とサロンモデルのマッチングサービス」そのものには需要があったんですが、残念ながらお金を支払ってくれるユーザーの獲得が見込めず、今後ビジネスとしてやっていくのは正直かなりキツイなと思いました。

ーサービスに需要があっても、ビジネスにできない。なんとももどかしい結果になってしまったのですね…。その後はどうされたのですか?

竹村さん
ある問い合わせがきっかけで、別のマネタイズ方法を見つけることができました。

「美容師とサロンモデルのマッチングサービス」のビジネスモデルに行き詰まりを感じていた時、ちょうどInstagramが流行り始めていたんです。

「Coupe」はサロンモデルを多数抱えているということもあり、ある企業から「自社サービスのPRをしたいんですけど、人気のインスタグラマーいませんか?」という問い合わせが舞い込んできたんです。

「Coupe」には雑誌に出ているモデルもいたので、Instagramで数万人単位のフォロワーを持つ子が結構いたんですよ。

そこで「美容師とサロンモデルのマッチングサービス」とは別に、そういったPR活動を目的とした方にもモデルを紹介するようにしたんです。それでなんとか事業を継続するための収益を得ることができました。

ーなるほど。現在の事業の礎になったんですね。

竹村さん
インフルエンサーの紹介による収益が、かなり大きくなってきたので、昨年の10月頃に「Coupe」の軸をインフルエンサー事業へ振り切ることに決断し、それに伴い準備を始めました。

ー準備というと?

竹村さん
もともと前の事業でサロンモデルとして「Coupe」に登録していた子の中から、インフルエンサーに成りえそうな子を選別し、適正がある子はモデルとして事務所(Coupe)に所属してみないか、と声をかけたんです。

とはいえ彼ら彼女らはまだ「原石」なので、モデルと一緒に私たちも一丸となって、Instagramのフォロワーを増やせるよう努めました。

また「LINE LIVE」や「17Live」といった、いわゆるライブストリーミングも積極的に配信しました。

最初はうまく話せない子もいたのですが、みんなルックスはいいし、何より素直で良い子たちばかりだったので、ライブ配信で一気に人気も上がりましたね。

例えば、事務所に所属する前はフォロワー数が200人だったのが、半年間で約2万人にまで跳ね上がった、という子もいます。

この半年の準備期間を経て、現在7名のモデルが所属しています。

そして今年の4月、その子たちを広告塔にSNSやライブ配信に強いインフルエンサーのマネジメント業務を強みとする事務所として、「Coupe」は生まれ変わりました。

モデル1人ひとりの未来を輝かせる。キャリアについて考えるきっかけを提供する、事務所としての在り方


<左・「Coupe」スタッフ兼モデル・中村さん>

ーもともと「Coupe」の強みだったサロンモデルとのつながりを、インフルエンサー事業へと結びつけることができたんですね。それでは現在「Coupe」では、インフルエンサー事業のみの運営なのでしょうか?

竹村さん
いえ、従来どおり「美容師とサロンモデルのマッチングサービス」も展開しています。ただ今は特に、インフルエンサー事業に力を入れています。

ー竹村さんの今後の展望をお聞かせください。

竹村さん
「Coupe」に所属するクリエイターが、より自分の個性を磨き上げられるようにしていきたいですね。「Coupe」の強みはファッションにあると思っているので、今までよりもファッション系に特化した事務所にしていきたいなと考えています。

また「Coupe」に所属するモデルたちが、Instagramでの投稿や各SNSでのライブ配信を通じて、より輝けるような環境を作りたい。そして輝いてるモデルたちがたくさんいる事務所にしていきたいですね。

そしてそのモデルたちを応援してくださるファンの方にも「こういう生き方があるんだ」と、多様な生き方、働き方を考えるきっかけを提供できると思うんです。

ーモデルもファンも、新しい生き方や働き方を考えられるステキな場所ですね。

竹村さん
所属しているモデルにも、モデルの仕事「だけ」に専念しなくてもいいよと、いつも話しています。

例えばモデル以外に、将来的に就きたい職業や叶えたい夢があるならば、その実現と並行してがんばってほしいんです。

自身の影響力を高めることができれば、きっと別の道に進んだとしても、そのモデルを応援してくれる人は必ず出てきますから。

今は個人がメディアになれる時代。SNSを通じて知名度を高め、その後のキャリアに活かす、という方法も有効だと、私は思います。

ーありがとうございます。最後に『アントレ』読者に向けてメッセージをお願いします。

竹村さん
はい。まず私は、起業自体がリスクだとは全く思っていません。むしろメリットしかないと感じています。

普通の会社員とは確実に違うキャリアを積むことができますし、最悪自分の会社が潰れたとしても「起業して会社を経営していた」という経験は、転職活動する上でも有利だと思うんです。

よく求人広告に「チャレンジ精神のある方」って書いてあるじゃないですか?

私も月間700人以上のサロンモデル応募者と面接して、モデルとして採用するか決めています。そして、その採用基準の1つは「チャレンジ精神を持っているかどうか」です。

もちろん就職も1つの選択肢ではありますが、起業することのハードルって意外とそこまで高くないんです。

今、独立・起業に迷われている方がいるとしたら、ぜひ前向きに起業を考えていただきたいなと思いますね。

(取材・文=佐藤主祥 https://twitter.com/kazu_vks

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