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ハンドメイド起業コンサル・山口実加が、作ることと同じくらい売ることへ情熱を燃やす理由

ハンドメイド起業コンサル・山口実加が、作ることと同じくらい売ることへ情熱を燃やす理由

副業解禁、そしてコロナ禍を経て需要が拡大しつつあるハンドメイド業界。

大きな初期投資をかけず参入できる手軽さから、女性を中心に人気を博しています。

今回お話を伺ったのは、ハンドメイド作家/ハンドメイド起業コンサルタントを務める山口実加さん。

山口さんは2013年からハンドメイド作家として活動をスタート。当初は会社員としての仕事と両立しながら、2017年に独立・起業をしました。

しかしこれまでの山口さんのキャリアは決して平坦なものではなかったそうです。

ものづくりへの情熱と同じくらい「売ること」にも力を入れるべきだと、山口さんは語ります。今回はそんな山口さんのこれまでのキャリアとともに、ハンドメイド作家として、そしてハンドメイド起業コンサルタントとして大切にしていることを伺いました。

<プロフィール>
山口実加さん
株式会社ラシエスタ代表取締役
ハンドメイド作家/ハンドメイド起業コンサルタント

東京藝術大学卒。
Webデザイナー職として会社勤めをしながら、2013年にハンドメイド作家として活動をスタート。
2017年に独立し、株式会社ラシエスタを設立。

2018年から楽天市場に出店を開始。開店半年で月商100万円を突破する。
現在は作家活動を行う傍ら、ハンドメイド作家向けの物販スクール事業も展開する。

藝大を出ても“アーティスト”にはなれなかった。山口さんがハンドメイド作家として独立するまで

――ハンドメイド作家業、作家向けの物販スクール事業などさまざまな活躍をされている山口さん。まずはハンドメイド作家になった経緯から聞かせてください。

山口さん
元々ものづくりが好きでした。

出身が東京藝術大学の美術学部先端藝術表現科というところでして、木材や鉄などを使った立体物を作っていたんです。

大学在学中はそうした作品を生み出すアーティスト志望だったのですが、正直それで食べていけるほどにはなれなくて……。

結局就職して、会社員としてWebデザインの仕事をするようになったんです。

とはいえ、自分の中でものづくりの情熱がどこかでずっと燻っていました。そんな時に出合ったのが、ハンドメイドだったんです。

――では最初は、会社員としての仕事と並行して、ハンドメイドを始められたんですね。

山口さん
はい。平日は普通に会社の仕事をして、就業後や休日に作品を作って展示会などで売って……といった具合にですね。

学生時代はインテリアに使えるくらいの規模のものを作っていたのですが、当時住んでいた部屋の広さ的にも経済力的にも、ハンドメイドのアクセサリーなどが自分のスタイルに合っているような気がしました。

何より、自分の名前で創作活動ができることが嬉しかったですね。

「またものづくりができる」というワクワクした気持ちで、展示会に出展したのですが……最初は全く売れなかったんです。

――なぜでしょう?

山口さん
「自分の作りたいものだけ」を作っていたからだと思います。ポーチやキーチャームなど「自分が」作ってみたいと思うものだけを作っていたんですよね。

初めての展示会でよく覚えているのが、私のブースは全く売れておらず人もいないのに、2個隣のブースはものすごい人だかりだったんです(笑)。

「なんで私のブースには人がいないのに、あそこのブースはあんなに人がいるんだろう?」と、自分なりにその理由を調べ始めました。

そして臨んだ半年後の展示会では、昼食の時間どころかトイレに行く暇もないくらい忙しくさせていただいて。今思えば、この時の失敗と成功の体験が今の物販スクール事業にも活きていると思います。

活動を始めて約4年後。2017年4月に独立して、株式会社ラシエスタを立ち上げました。

1週間で100万円売り上げても赤字になる? 実店舗からネットへ活動の拠点を移した理由

――では独立後、すぐに物販スクール事業を?

山口さん
いえ、最初はハンドメイドの仕事だけをしていました。

独立してしばらくは、百貨店やデパートなどに出店させていただいて。1週間店頭に商品を置かせていただいて、売って、といった具合に。

大体1週間で、100万円から200万円程度売り上げていましたね。

――独立してからすぐそれだけ売り上げられているなら、かなり幸先が良かったのではないですか?

山口さん
それがそうでもなくて。

百貨店やデパートに出店する上で取られてしまうのが、販売手数料です。加えて現場に立つショップのスタッフの人件費も、出店者側で持たなければなりません。

そしてハンドメイドという性質上、機械的に大量生産できるものでもありませんから、商品を考えて実際に作るのも自分でやらなければならず……。

山口さん
気がつくと、売り上げがあるのにも関わらず、利益が全然手元に残らなかったんですよね。

資金繰りに苦しくなってくると、ショップスタッフの人件費の削減のために、私自らが店頭に立つなんてこともしょっちゅうありました(笑)。

昼間はショップで売って、帰ったら商品を作って。いくら働けど経営が苦しくなっていくという、負の連鎖に陥ってしまったんです。

――なるほど……。一番最悪なパターンですね。

山口さん
当時の私は一応4年間ハンドメイド作家として活動していましたし、経験を積んでいたつもりだったんですが……。

クリエイターとしてはともかく、「経営」に関しては、ただの素人だったんですよね。

「どうにかこの負の連鎖を、食い止めなければいけない」と、藁をもすがる思いで始めたのが、ネットショップへの出店だったんです。

――ネットショップのメリットとはなんでしょう?

山口さん
まず実店舗に比べて、圧倒的に販売手数料が安いんですよね。

さらに実店舗だと商品棚へのラインナップの見え方などを気にして、ある程度在庫を抱えて商品を陳列しなければなりませんが、ネットショップならそうした工数は無用です。

もちろん「売れる商品を見つけるためのリサーチ」やブランディング、認知度の拡大、商品写真の撮り方など、実店舗にはないネットショップならではの運用のコツはあるんですけどね。

山口さん
私の場合、実店舗の仕事で相当疲弊していましたし、正直かなり追い詰められていました。

だから実店舗からネットショップに緩やかに移行したというわけではなく、活動の拠点を一気にネットに移したんです。

もちろん売れるかどうか分からないという不安もあったのですが、猛勉強の甲斐もあり、出店からわずか半年で月商100万円を達成することができたんです。

クリエイターに「作ること」を諦めて欲しくない。売り方は必ずあるはず

――その経験を通して、現在は物販スクール事業を運営しているんですね。

山口さん
そうですね。私の経験を聞いたハンドメイド作家の方から「どうやって売っていいか分からない」とご相談をいただく機会が増えていったんです。

最初は「私なんかが人様に教えられることなんてあるのかな……」なんて思っていたんですが、ハンドメイドを始め、多くのクリエイターがやめてしまうのは、自分の商品を売れないからだと気がつきました。

他の誰でもない私自身が、クリエイターの夢を諦めかけていましたし、ハンドメイド作家として活動するようになってからも、さまざまな苦労をしてきました。

やっぱりクリエイターにとって「自分の商品が売れない」って辛いんですよ。

でもちゃんと正しいアプローチをすれば、ちゃんと売れるようになる。

例えば「ハンドメイド商品をネットで売る」というやり方なら、勉強は必要ですけど、1回形を作ってしまえば後は自動販売機のように、自分の商品が売れていくんですよね。

そんな私の経験や知見が、誰かのお手伝いができるならと思って、物販スクール事業も始めてみたんです。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

山口さん
ハンドメイド作家に限らず、クリエイターは「作ること」に関してとても情熱を持っていらっしゃいます。

一方で「売ること」は苦手というか「どう売っていいか分からない」という人が多いんですよね。かくいう私もそうでした。

せっかくいいものを作っても、ちゃんと売れないから自信をなくしてやめていってしまう。逆にいえば、ちゃんと売って利益を残せれば、また作ることができる。

だから「作ること」を諦めて欲しくないなと思います。

クリエイターに限った話ではないですが、売れなくて悩んでいる人はもう一度顧客の需要を洗い出してみてください。

ちゃんとお客さんのニーズに応えている商品・サービスであれば、適切な形で売る方法は必ずあるはずです!

「作ること」と同じくらい「売ること」への情熱があれば、クリエイターとして安定した独立・起業ができるのではないでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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