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個人事業主は確定申告で赤字を「損益通算」「損失の繰越控除」することができる

独立ノウハウ・お役立ち

個人事業は確定申告を行い、税金を納めなければいけません。しかし、毎年利益が出るとも限らず、赤字となってしまう年もあるでしょう。では、赤字の場合でも確定申告をする必要はあるのでしょうか。

今回は、個人事業で赤字となった場合になぜ確定申告をするべきなのか、5つの理由を解説します。あわせて「損益通算」や損失の繰越控除についてもご紹介いたします。

個人事業主は赤字でも確定申告をすべき5つの理由

個人事業主は赤字となった場合、確定申告を行う義務はありません。赤字とは、売上金額から必要経費、さらに基礎控除や社会保険料控除などの各種所得控除を引いて出た所得金額がマイナスの状態のことです。

例えば、当期(1月1日から12月31日まで)の売り上げが300万円で、事業に支出した費用が250万円、所得控除の合計額が100万円の場合、

300万円-(250万円+100万円)=▲50万円

となり、所得金額がマイナスになります。

では、個人事業主はなぜ赤字でも確定申告をした方が良いのでしょうか。個人事業主が赤字でも確定申告をするべき理由は5つあります。

1.「損失申告」ができるから
2.源泉徴収分の還付を受けられる場合があるから
3.所得を証明できないから
4.国民健康保険の算定に影響が出るから
5.非課税証明書を受け取れないから

それぞれ解説していきます。

下記記事では、インボイス施行後初の「消費税」確定申告と、そのポイントを税理士が解説しています!

https://entrenet.jp/magazine/45020/

1. 「損失申告」ができるから

個人事業主が赤字でも確定申告をするべき1つ目の理由は、損失申告ができるからです。

赤字ならば確定申告を行う必要はありませんが、青色申告を行っている場合、赤字でも確定申告を行うことで赤字を翌年度以降に繰り越すことが可能です。これを損失申告といいます。損失申告とは、事業で出た損失を他の所得と「損益通算」しても、控除しきれない場合に行う申告のことです。

損失申告を行うことにより、翌年以降3年にわたって損失を繰り越すことができ、損失分を利益から控除することができます。

白色申告の場合、繰り越しできる損失に制限がありますが、青色申告の場合は制限がありません。

下記記事では、フリーランスになった際の確定申告について、手続きを楽にしてくれる会計ソフト8選を紹介しています!

https://entrenet.jp/magazine/40852/

2. 源泉徴収分の還付を受けられる場合があるから

個人事業主が赤字でも確定申告するべき2つ目の理由は、源泉徴収分の還付を受けられる場合があるからです。

受け取る報酬の種類によっては、報酬の支払者が源泉徴収を行う必要のあるものもあります。具体的には、特定の資格を有する人(公認会計士や弁護士など)への報酬額、原稿料や講演料などは源泉徴収の対象となります。源泉徴収とは、支払者が報酬から源泉徴収分を差し引いて、納税義務者に代わって納付します。そのため源泉徴収は所得税の先払いということになります。

しかし、他に収入がなく事業が赤字である場合、本来であれば所得税は発生しないはずです。事業に関連する原稿執筆や講演を行い、源泉徴収を受けた際には、確定申告をすることで先払いしていた源泉徴収分の還付を受けられます。源泉徴収分の還付以外にも、他に予納額があれば確定申告をすることで還付されます。

ただし、事業所得などの総合課税の所得とは切り離して源泉徴収を行う預金の利子など源泉分離課税のものは、源泉徴収があっても還付の対象外になります。注意しましょう。

「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」(国税庁)

3. 所得を証明できないから

赤字でも個人事業主が確定申告をするべき3つ目の理由は、確定申告をしないと所得の証明ができないからです。

確定申告をする際に、受付印を添付した控えをもらうことで確定申告書の控えを取得できます。確定申告書の控えは所得金額の証明資料としてさまざまなシーンで利用できます。仮に、受付印のある確定申告書の控えを紛失してしまったとしても、税務署に開示請求することで納税証明書を受け取れるので、所得金額の証明ができるようになります。

確定申告をしないということは、確定申告書の控えも取得できないということです。自身で所得を証明する書類を作成することも可能ですが、これは公的機関で受け付けられた記録がないため、客観的に所得を証明することはできません。所得を証明できないと、事業融資や住宅ローンの審査で不利になってしまうこともあります。いざ必要なときに所得を証明できる状態にしておくためにも、確定申告を行い確定申告書の控えは取得しておくようにしましょう。

下記記事では、会社員の副業で20万以下の確定申告について、申告の仕方や節税のコツを解説しています!

https://entrenet.jp/magazine/27086/

4. 国民健康保険料の算定に影響が出るから

個人事業主が赤字でも確定申告するべき4つ目の理由は、国民健康保険料の算定に影響が出るからです。確定申告をすることで国民健康保険料の軽減措置を受けられる可能性があります。

国民健康保険料には、2つの計算方法があります。所得に応じて計算する「所得割」と、加入者全員が負担する「均等割」の2つです。このうち、均等割については総所得金額が基準以下である場合には減額されます。しかし、世帯主と国民健康保険加入者の所得が不明だと減額判定は行えません。このように、確定申告をしないと算定で不利になってしまいます。

また、国民健康保険に加入している人であれば住民税の申告も必要です。確定申告をしていれば住民税が算出されます。そのため、所得税の確定申告をしないにせよ、住民税の申告だけは必要になるのです。

5. 非課税証明書を受け取れないから

赤字でも個人事業主が確定申告をした方が良い5つ目の理由は、確定申告をしないと非課税所得証明を受け取れないからです。

非課税証明書とは地方自治体が発行する書類で、住民税が非課税であることを証明する書類です。非課税証明書は保育園の入園などに必要になります。非課税証明書に関連する住民税は、住民税の申告書、または所得税の確定申告をもとに計算されます。そのため、計算のもととなる確定申告や住民税の申告書などの書類がなければ発行ができないのです。

個人事業主が確定申告で控除できる税金について、更に気になる方は下記記事を参考にしてください!

https://entrenet.jp/magazine/15430/

確定申告で損益通算ができる

売り上げから必要経費を引いた所得が赤字のとき、他の黒字の所得と通算し、赤字と黒字を相殺することを「損益通算」といいます。「損益通算」を行える所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つです。

例えば、個人事業からの収入だけでなく不動産からの収入もある場合など、個人事業で赤字が出たときには黒字である不動産所得と通算することができます。

このように、所得間で「損益通算」を行うことにより、納税額を減らすことが可能です。

「No.2250 損益通算」(国税庁)

下記記事では、サラリーマンにおすすめの副業で、確定申告あり・なし別の月3万円稼げる副業ランキングTOP10を紹介しています。

https://entrenet.jp/magazine/26493/

確定申告で赤字の損失繰越ができる

「損益通算」を行っても引ききれない損失を純損失といいます。純損失が出た場合、損失申告を行うことにより、翌年度以降3年間にわたって繰り越すことができます。純損失を繰り越すことにより、翌年度以降に黒字となった場合に過去の赤字分を控除できるので、納税額を減らすことが可能です。

例えば、当期100万円の赤字となった場合、確定申告を行うことで100万円の赤字を翌年度以降に繰り越すことができます。翌年度150万円の利益が出たとしても、繰り越した100万円の赤字を控除できるので、所得金額は150万円-100万円=50万円となります。赤字を繰り越していなかったら150万円の所得に対し税金を支払うところを、損失繰越を行うことにより所得金額が50万円となり、納税額を減らすことができます。

下記記事では、副収入分の確定申告について、ケースごとの確定申告の有無や納税方法を解説しています!

https://entrenet.jp/magazine/33482/

損失繰越をするなら青色申告がおすすめ

個人事業主が確定申告をするのであれば、「青色申告」をおすすめします。繰り返しになりますが、青色申告と白色申告で繰り越すことができる純損失に制限があります。白色申告の場合、繰り越すことのできる損失金額は災害による損失および雑損失に限られます。

青色申告の場合には、純損失の金額すべてを繰り越すことが可能です。

また、青色申告を行っている場合、純損失の繰り越しを行わず、前年の所得税から還付を受ける「純損失の繰戻し」の請求を行うこともできます。

「純損失の繰戻し」を受けるためには、確定申告の際、「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出し前年の所得税額を再計算します。

他にも、青色申告であれば青色申告特別控除や青色事業専従者給与など、白色申告にはないメリットがいくつもあります。白色申告に比べて手続きのハードルは高くなってしまいますが、会計ソフトを活用したり税理士に依頼したりなどして青色申告を検討してみてください。

「No.2070 青色申告制度」(国税庁)

「[手続名]純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」(国税庁)

また、確定申告について詳しく動画で解説していますので合わせてご確認ください。
会計の基礎知識。経費の仕訳は節税の基本です。

下記記事では、個人事業主が確定申告について相談できる相手を、税理士が解説しています!

https://entrenet.jp/magazine/22750/

まとめ

今回は、個人事業主は赤字となった場合でも確定申告を行う必要があるのかという疑問に答えるべく、5つの理由を解説しました。個人事業主が赤字でも確定申告をするべき理由に加え、「損益通算」や損失の繰越控除についてご紹介しました。

個人事業で赤字となった場合、他の所得と「損益通算」しても赤字の場合には、損失申告を行った方が良いでしょう。赤字の場合には確定申告の義務もないため、面倒な手続きをしなくなりがちです。しかし、将来利益が出た場合、節税のメリットがあります。

このとき、青色申告をしておくと純損失の金額すべてを繰り越すことが可能できるので、さらなる節税効果が期待できます。ぜひ活用してください。

<監修>
村上 年範さん/クレディ・テック株式会社 代表取締役
金融商品や不動産を活用した経営コンサルティングを得意とし、前職のプルデンシャル生命保険株式会社在籍時より担当したクライアント数は年間200社にのぼる。2013年クレディテック株式会社設立。金融と不動産を軸とし、税務・法務の観点から知識提供を行う、資産形成および財務のコンサルティングサービスを展開。海外不動産についても強いコネクションと発信力を持ち、これまでの取扱高は150MM以上。現在、「幻冬舎GOLD ONLINE」にて、幅広い資産形成ノウハウを連載中。【村上年範 運営】金融・不動産にまつわるYoutubeチャンネル
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<文/ちはる>

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