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営業権の譲渡とは? メリット・デメリットと評価額の決め方を解説

営業権の譲渡とは? メリット・デメリットと評価額の決め方を解説

経済のグローバル化やIT化の進展などの影響で経営環境変化のスピードが速まるなか、生き残りを図るために“事業の選択と資源の集中”を模索する企業が多く存在します。

そして、事業の選択と資源の集中の一環として「営業権譲渡による事業譲渡」を実施する事例が増加しているのです。

今回は営業権の譲渡について、メリット・デメリットのほか、譲渡金額の決定方法などについて解説します。

営業権の譲渡とは?

企業が営業活動を行うために保有している財産的価値の総称を“営業権”と呼びます。

企業が利益を生み出し企業価値を高めることに対して機能しているもののことであり、現金資産・在庫商品・固定資産などの“有形財産”と、技術・ノウハウ・ブランド・良好な取引先の存在などの“無形財産”が存在します。

企業の価値を高めることに影響をしている無形財産は“のれん”とも呼ばれます。

“営業権の譲渡”とは、企業が事業の全部または一部を売却する際に、営業権全体を買い手先企業に引き渡すことを指します。

事業の売却に関しては営業譲渡と事業譲渡という2つの言い方があります。

両者の違いは適用される法律の違いです。売却された事業を引き受ける側が“個人”である場合は商法が適用されるため“営業譲渡”と呼ばれ、“法人”である場合は会社法が適用されるため“事業譲渡”と呼ばれます。

つまり、個人・法人から個人へ売却が行われる場合は営業譲渡となり、個人・法人から法人へ売却が行われる場合は事業譲渡となるのです。

営業権譲渡によるメリット・デメリット(売り手企業)

営業権譲渡による事業譲渡を行う場合、売り手企業に生じるメリット・デメリットとして以下のことが挙げられます。

メリット

1.不採算事業を切り離せる

複数の事業を営んでいる場合に、不採算事業を企業本体から切り離した上で採算の取れる事業に経営資源を集中させ、収益性を向上することができます。

2.まとまった資金が得られる

事業の売却を行うことでまとまった資金を調達することができ、それを残った事業や新規事業に投下し、収益性の向上や事業の拡大を図ることができます。

デメリット

1.従業員や取引先への配慮が必要である

売却した事業は売却後も買い手企業の事業の一部として存続するため、売却後に混乱しないための対応が売り手企業に求められます。

残された従業員や取引先に対して的確な説明を行い、理解を得なければなりません。

2.契約の手続きや登記の移転対応が必要である

事業の売却にあたっては、事業に関わる契約や登記などを買い手企業に移転する対応が必要となります。

3.競業が禁止される

営業権譲渡による事業譲渡を行った場合は、譲渡した事業と同一の事業を譲渡後20年間、同一の市区町村および隣接した市区町村で行うことができなくなります。

4.譲渡益が発生した場合は課税される

営業権譲渡による事業譲渡により売却益が生じた場合は、それに対して課税されます。

営業権譲渡によるメリット・デメリット(買い手先企業)

一方、買い手先企業に生じるメリット・デメリットは以下のことが挙げられます。

メリット

1.短期間で必要な経営資源を入手できる

市場でのシェア拡大・新市場への参入・新規事業開発などを行う場合、必要な経営資源を入手し経験を積むなど体制を整える時間が必要です。

他社の事業を買収し営業権を引き受けることで体制を整える時間を短縮でき、機会損失の防止や早期の利益化を実現できます。

2.節税効果がある

事業の買収により引き受けた営業権のうち資産価格の存在しない無形財産(のれん)に関して、5年間を限度として減価償却を行い損金として計上できるため、節税効果があります。

デメリット

1.契約の手続きや登記の移転対応が必要

事業に関わる契約や登記などの移転は、買い手企業も一定の対応を行う必要があります。

2.許認可を引き継ぐことができない

営業権を引き受けた場合でも許認可は自動的に引き継げないケースが多く、その場合は新たに申請する必要があります。

3.まとまった資金が必要

事業を買収するための資金調達が必要となる場合があります。

営業権の価値(譲渡金額)はどうやって決めるのか

営業権の譲渡金額の決定について統一化されたルールは存在せず、売り手側と買い手側との交渉により決定します。

一般的には有形財産の時価純資産額に無形財産(のれん)の価額を加えて決定します。

時価純資産額とは、貸借対照表上の全資産を時価で評価した上で合計し、同じく時価で評価した全負債の合計を差し引いた金額のことです。

“のれん”の価額は一般的に、当期純利益の過去数年間における平均額に一定年数を掛けて計算します。

一定年数とは事業譲渡が行われなかった場合に、その後の一定期間安定的に過去と同水準の当期純利益を得られていたであろうことを根拠に決定され、事業の競合状況などを勘案して2年から5年程度の期間で決まることが多いようです。

営業権譲渡の流れ

営業権譲渡による事業譲渡は、以下の1〜5の流れで行われます。

1.買い手企業候補を選定する

事業譲渡の交渉を行う買い手先企業の候補を選定します。相手を一から探す場合は、M&A専門の仲介業者などを利用するのが一般的です。

2.買い手先企業がデューデリジェンスを行う

事業譲渡の条件交渉に入る前に、買い手企業がリスクの存在などを確認するためのデューデリジェンス(売り手先企業の査定)を行います。

デューデリジェンスは財務面と法務面について行われることが多いです。

財務面では収益力・コスト構造・簿外債務の有無などについて確認し、法務面ではコンプライアンスに対する状況や将来の訴訟リスクなどについて確認します。

デューデリジェンスは公認会計士や弁護士などの専門家に依頼して行うことが一般的です。

3.条件交渉を行い、営業権譲渡契約書を作成する

売り手企業と買い手企業との間で事業譲渡の条件や価格の交渉を行い、合意が得られた場合は、譲渡日や譲渡方法を明らかにした営業権譲渡契約書を作成します。

これらの対応も、公認会計士や弁護士などの専門家の助言を得ながら行うことが一般的です。

4.株主総会での承認を得る

売り手企業は事業譲渡を行うことに関して株主総会の承認が必要となります。

最終的な手続きを行う前に、買い手企業と合意した営業権譲渡契約書の内容を株主総会に報告し承認を得ます。

5.譲渡手続きを行う

営業権譲渡契約書に記載された営業権譲渡日に営業権の引き継ぎや代金の受け渡しに関する手続きを行います。

それらが終了することで、営業権譲渡による事業譲渡が完了します。

まとめ

営業権譲渡による事業譲渡は、企業が収益性や経営の安定性を高めるための手段として有用な選択肢です。

その際の譲渡金額に大きな影響を与えるのが、企業価値を高めることにつながる無形財産(のれん)の存在です。

そのような無形財産の存在を認識し価値を高めていくことが、企業の成長へとつながると言えるでしょう。

PROFILE

大庭経営労務相談所 代表 大庭真一郎

東京生まれ。
東京理科大学卒業後、民間企業勤務を経て、1995年4月大庭経営労務相談所を設立。
「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心として、企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。中小企業診断士、社会保険労務士。

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2020年7月13日

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