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ビジネススキルを生かす「プロボノ」でNPO運営を支援する 社会起業家からのメッセージ

生ボイス

NPO法人サービスグラント/東京都渋谷区
代表理事

嵯峨 生馬さん(41歳)

1974年、神奈川県生まれ。大学卒業後、日本総合研究所に入社し、調査研究業務に従事。2001年、渋谷を拠点とする地域通貨「アーティストマネー」を共同設立し、現在も代表理事に就く。2005年、日本におけるプロボノの草分け的活動として、「サービスグラント」をスタート(2009年にNPO法人化)。2010年、グッドデザイン賞受賞。東京、大阪を両拠点に活動しており、プロボノワーカー登録者数は2700名を超えた。高い支援実績を誇り、国内のプロボノを牽引している。

仕事で培ったスキルや専門知識を生かして、NPOなどを支援するボランティア活動・プロボノ。ソーシャルビジネスに対する関心の高まりを背景に、プロボノもまた、広く注目されるようになった。サービスグラントは、そのプロボノワーカーとNPOをつなぐ中間支援団体の草分け的存在である。
嵯峨生馬が活動を始めたのは2005年。まだプロボノという言葉がほとんど知られていない頃だ。勤めていた日本総合研究所の仕事で、アメリカのNPO視察に赴いた際、中間支援団体「タップルート」と出合い、触発されたのがきっかけとなった。というのも、当時、嵯峨はすでに別のNPOを立ち上げており、善意や熱意だけで運営を続けるのは難しいことを身をもって知っていたからだ。
支援のかたちは、プロボノワーカーたちが有する経験やスキルを生かす「プロジェクト型助成」。例えばウェブサイトや印刷物の制作、寄付管理、事業計画立案など、具体的な成果物を提供するもので、その実績数は優に400を超えている。受益者はもちろん、プロボノワーカーにも自己成長をもたらすこの両者“益”のある事業は、ソーシャルビジネスの基盤強化に間違いなく貢献している。

社会課題を肌感覚としてとらえる人々を増やしていく。それが「社会参加先進国」に近づく一歩になる

━ この活動を始めた背景には、ご自身の経験があるようですね。

 サービスグラントの前に、コミュニティの活性化を目的にした地域通貨を発行・流通させる活動を始めていたんです。この時に実感したのは、運営過程において様々な課題が出てくるということ。NPOって最初は勢いがあっても、続けるうちに熱が冷めてきた人の活動力が落ちたり、広報や経理などといった法人運営に欠かせない仕事に手が回らなくなったりと、困り事に多々直面するんですよ。

 継続って難しいものだな、そう感じていた頃に、アメリカで知ったプロボノ中間支援団体のことをちゃんと調べてみたのです。企業人のスキルを活用し、非営利組織に実際に役立つ支援を提供する仕組み。これはいい!と。「こんな団体が日本にあったら、まず自分が使いたい」。そう思ったからこそ、活動を立ち上げたのです。

━ 滑り出しはどうでしたか?

 プロジェクトをやればすごく手ごたえを感じたし、ニーズはあると確信できました。ただ認知がないから、説明会を開いてもなかなか人が集まらず、企業との協働もまだなかったので、とにかくお金には窮しましたね。3年くらいたつと中だるみしてきて、このまま続けていけるだろうか……って。

 転機となったのは2009年。日本財団から助成金を受けたのです。ちょうど日本財団も、社会的課題に取り組むNPOなどの基盤強化に力を入れていくというタイミングで、僕らが提供する仕組みが「新しい支援のかたちとして面白い」と。これで、もう一踏ん張りしようと意を固めて法人化し、社会的に影響力のある方々にアタックして理事も集めたんです。時代の後押しもあったのでしょう、メディアにも取り上げられ、「プロボノ上陸」と銘打った大きなフォーラムを成功させることもできた。いわば“第二創業”ですね。

━ プロボノワーカーも支援先もずいぶん広がってきています。

 法人化した時期を境に、プロボノワーカー登録者数が年間約400人という規模で増え続けるようになり、従前の10倍ペース。支援先の分野としては医療・福祉、子供・教育が多いですが、本当にいろいろです。プロジェクトは案件ごとにチームを組んで臨むんですけど、大切なのは課題とゴールを明確にすること。達成する成果目標を、受益者とプロジェクトメンバーできちんと共有し、適正な時間管理をすることで、確実なフィニッシュができるのです。
 プロジェクトを経験したプロボノワーカーたちの8割以上が、リピートを望んでいます。“異業種混合チーム”で視野が広がり、スキルや問題解決力がより磨かれたりと、自己成長の確かな手ごたえを得られるようです。CSR(企業の社会的責任)の観点からパートナーとして協働してくださる企業も増えていますし、こういう広がりはうれしいですね。  

━ これからの活動イメージは?

 今、僕らは「社会参加先進国へ」という言葉を掲げています。昨今、日本は課題先進国という言われ方をしていますよね。確かに社会課題は様々あるわけですが、これらを解決するには、まず人々、皆が社会参加できるようになっていくことだと思うのです。その中で、社会課題に継続的に取り組むNPOの全体的な底上げが一つ重要なことだし、社会に対しては、NPOに対する理解やかかわりをもっと深めてほしい。

お金で支援するのでも、プロボノで支援するのでもいい。何か活動に直接かかわることで社会課題を肌感覚として持つ人々が増えれば、社会参加先進国に一歩近づけるんじゃないか、そう考えています。そのためにも、今後は縦横に広がるスケール感ある活動を目指したいですね。

取材・文/内田丘子 撮影/刑部友康

※本記事は取材当時の情報を基にしており、団体名、サービス名、法令等が現在と異なる可能性があります。しかし、取材時の想いや状況を正確に伝えるため、内容をそのまま掲載しています。ご了承ください。

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アントレスタイルマガジン編集部

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