前回の「“芸人イチの嫌われ者”エハラマサヒロさんは、スピード感のある仕事に夢中_前編」では、フリーになって3か月目のお笑い芸人、エハラマサヒロさんに、スピード感のある仕事を楽しんでいる現状をお伺いしました。
今回はエハラマサヒロ流のポジティブ思考で、独立・開業に悩む人向けのアドバイスをいただいてきました。前向きに仕事・人生を楽しむエハラさんは“努力したら僕ぐらいになら誰でもなれる”と、周りの人にも人生を楽しんでもらいたいという。本記事は“アンチ・エハラ”の方、今の生活で良いんだっけ?と思ったことのある人には是非、読んでいただきたい内容となっています。
新しいことは“怖くて当たり前”それを克服するための”変化癖”
―アントレStyle Magazineの読者には、会社員として長く働いてきて、起業したい気持ちもあるけれど、なかなか一歩踏み出せないという方も多いのですが、そういう方にメッセージをいただけますか?
新しいことに踏み出すときは“怖い”と思うので、変化癖を付けるようにした方が良いです。
僕はお笑い芸人を目指してNSCっていう養成所を経て吉本工業に入りました。まずはネタを作るところから始めたんですが、メディアに出るようになったら色んな仕事が入って来るようになったので、毎日、現場に行って、言われたことを「はい分かりましたと」言って動いて、くらいついていくのに必死でした。ほとんど会社員と一緒なんですよ。
芸人の仕事は安定していないから、仕事がなくなったら怖いと思うんです。会社員でも、業績によってはいつクビ切りにあうかも分からないっていう人もいるんじゃないですか?芸人も同じです。
「来年には俺、仕事がなくなっているかもしれないな」って思いながら、“とりあえず、ずっと仕事をしている”。そんな状態で数年が過つうちに少しずつ、仕事先の人たちに信用してもらえるような関係性ができてきた時に、ふと、「あと何年この生活を続けられるんだろうな?」って思ったんですよ。そのときは20代後半でしたけど、「50歳、60歳になっても、こういう生活をしているんだろうか?」って考えちゃったんです。
50歳、60歳になった芸人の自分を想像しても「絶対に師匠にはなっていないな、ということは引退するときが来て、どこかのタイミングでセカンドキャリアに切り替えるんだろうな。ということは、その時に何かできていないと絶対にダメだから、今から準備しておかないといけない」って思ったんですよね。
目の前の仕事をこなしていた所から、新しい道を作りにいくっていう初めての変化が僕はミュージカルだったんですよ。今も芸人っていう肩書きで周りからは見られていますけど、僕の中で、それは“転職”だったんですよ。
この頃から常に思っていたのは、“変化は怖い”っていうことです。安定した仕事があるのに、それを捨てて収入ゼロの道でイチからスタートするっていうのは、本当に怖い。でも、その新しい道の方が伸びるという可能性も、おおいにあるわけですよ。
だから、生きる上で、仕事をしていく上で大事なのは“変化癖を付けること”なんです。
みんな、自分がずっと進んできている道の途中で急にバーンって扉を閉じられた瞬間に初めて、「大変だ!別の道にいかないと」って動き出そうとするんですよ。そういう壁は人生のどこかで絶対に来るんです。でも、“いつ壁にぶち当たるか分からなし、何もなく進み続けられたら良いな”と思いながら走っているんですよ。だから「その壁が来た時、どうする?急に扉を閉じられたとき、何をする?」って想定して道を作っておいた方が良いんです。
頭ではそれが分かっていても、それは“いま”やるのには時間がない、遊びたくなっちゃう。だけど、本気で考えて、その道を1回作ってみると、「あれ?この道も意外と良いかもしれないな」って思うことがあるんです。そうなると、「じゃあ、こっちの道も良いかもしれない」って次の道も出てくるんですよ。
1つのことしかやっていないと気付けないけど「別の道で上手くいくこともあるんだ。ゼロから始めたのに、これまでの道だと5年かかって辿り着いたところに、こっちの道からは2年で辿り着けた!ということは、上手く行っているんだな、そうか、この道の方が自分には向いていたのか」って分かることもあるんです。それこそ僕は、ミュージカルなんて見たことも出たこともなかったけど、こっちの方が向いていたの?意外とお笑いの能力を使えているんだ。それならこの道にも進んでみようか、ってなりました。挑戦できる変化癖が付いたら、意外と“踏み出す怖さよりも希望の方が勝つ”ようになるんです。
何か新しいことを始めるときって、不安が9割、希望が1割なんですよ。それが変化癖を付けると、どんどん不安の割合が減って、“不安が7割、希望が3割くらいになるようなら多分ほとんど成功する”んです。不安が7割のものが成功したら、もうほとんどのことを挑戦できるようになる。だから最初の変化は本当に小さいことで良いから、何かやってみることですね。
―「変化癖を付けたいけれど何をしたら良いか分からない」「やりたいことが見つからない」という人は、どうしたら良いでしょうか?
小さなことで良いから、毎日1つ何か新しいことをしてみると良いと思います。
今まで見てきたものや聞いてきたもの、やってきたものの中でやりたいことが見つかっていないんだったら、“新しいこと”をするしかないんですよ。その“新しいこと”は、帰り道に一駅手前で電車を降りてそこから歩いてみるということでも良いし、Aさんと飲みに行ったことも、Bさんと飲みに行ったこともあるけど、AさんとBさんと3人で飲みに行ったことがないから3人で飲みに行こうっていうのも、新しいことです。
僕も、毎日1つ新しいことをして、今日やった新しいことをずっと書き残していた時期があったんですよ。“絶対に同じ日を作らない”ようにすると、そこから思いつくことがあったりするんですよね。
例えば、自分が怖いと思っている上司と飲みに行くとか、自分が飲みに行きたくない人と飲みに行くと意外と良かったりする。嫌な人から飲みに誘われたら行きたくないじゃないですか?でも自分が変化するためだと思えば、自分にもメリットがあるんだと思うから行きやすくなるし、意外と話してみたら共通点があったりして、楽しめたりするんです。嫌だと思っている人と喋る時、もう“この人は嫌な人だ”っていうマインドだから、その人が言うことを受け入れたくないんですよ。でも、新しいことを作ろうとか新しいこと見付けに行こうと思って、自分が人を受け入れられる態勢で聞いていると、相手も喋りやすくなって、意外と仲良くなるっていうケースはあるんですよね。自分のマインド次第なんで、新しいことを常にやるようにすると、何かしら光が見えてくることがあるとは思いますね。
みんな“変化”っていうと、“新しいバイトを始めないといけない”とか、“初期投資を何百万円かけて独立だ”っていきなり大きなことをしようとするんですけど、そういうことじゃないんです。消しカスで“練り消し”を作って「これ、可愛くない?」って20円で売るくらいのところからスタートしないと(笑)。売れたらそれは成功体験ですよ。
―変化癖を付けるための“今日の新しいこと”をメモっていたのはいつ頃のことですか?
僕は“継続すること”が苦手で、「自分は、何にも続かないな」と思っていたので、1週間、1カ月、3カ月、1年と、期間を決めて何かを継続してやってみようと決めていたことがあったんです。
2016年か2017年頃なんですけど、iPadを買って「今年1年は、iPadのノートに毎日1ページ、何を書いても良いから、その日起きたことを何か書こう」って決めたんですよ。それを後から見返したら、何でもない一日でも、「こんなことを考えていたんだな」とか、無理やり1ページを埋めるために書いていたながらにも、意外と良いことが書いてあったりしたんです。
人間って、毎日色んなことを経験しているのに、自分の頭に残っていないんですよね。会社員だと、定時出社とかルーティーンになっていることがあるから、何も起きていないように感じやすいと思うんですけど、見返してみると実は毎日何かしら起きているんですよ。
そうやって毎日の小さな出来事や変化を見返せる人は、気付けることが多くなるので“人よりもちょっと前に出る”んだと僕は思っています。