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起業家・先輩から学ぶ

人間本来の共同性に満ちた「お互いさま経済」の創造に挑む 社会起業家からのメッセージ

人間本来の共同性に満ちた「お互いさま経済」の創造に挑む 社会起業家からのメッセージ

一般社団法人起業支援ネットワークNICe/東京都目黒区

代表理事 

増田紀彦さん(59歳)

1959年、東京都生まれ。地方新聞社を経て、87年、株式会社タンクを設立。採用広報の企画制作などに取り組む。97年、本誌『アントレ』創刊に携わり、以降、起業家や独立希望者を支援する活動に奔走。2007年、経済産業省委託事業「起業支援ネットワークNICe」のプロデューサーに就任し、10年に同事業の民営化を果たす。「つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!」をスローガンに、講演活動を中心に全国各地を飛び回っている。

本誌『アントレ』の歩みとともに、20年以上にわたり起業・独立支援に携わってきた増田紀彦が、志を同じくする仲間と「起業支援ネットワークNICe」を設立したのは2010年。活動主体は、その名のとおり、起業家や独立を目指す人々を全国レベルで“つなぐ”ことにある。
 強い連携をつくるために、ネットコミュニケーション(SNSやウェブサイト)と、リアルコミュニケーション(「頭脳交換会」と呼ばれる勉強会、交流会など)の双方を展開しており、何より特徴的なのは、特定の地域や業種、世代といったあらゆる「境」を排している点だ。誰しもがそれぞれに持つ情報や知恵を循環させることで相互支援体制を築き、それをもとに新しい事業や市場の創出、地域社会の活性化を促していく。約10年間の活動から実を結んだ事例は、優に100を超えるという。
 活動の背景には深刻なデフレスパイラル、他者を顧みない冷えた経済環境に対する強い危機感がある。増田が提唱する「お互いさま経済」は、そこに歯止めをかけるための活動でもある。「何か一緒にやろうぜ、もうけようぜ」――目指しているのは、人間本来の共同性に満ちた経済社会の創造だ。

自分と他者の価値、強みを知り、皆が独立心を持てるような社会に。
それが、21世紀型の経済を牽引するエンジンになる

━ 前身は経済産業省の委託事業だったとか。そこから自身で「NICe」を立ち上げた経緯は?

起業支援ネットワークを整備する国の事業で、その時代から旗振り役を務めてきました。事業構想としては「政府初のSNSをつくる」だったんですけど、当時から自主的にリアル活動も推進し、集まった会員数は6000人を超えたでしょうか。起業家はもちろん支援者、独立を目指す人など、すごい集団が形成されたのです。

それが09年の政権交代の影響もあり、民営化にストップがかかった。大切な税金を使ってここまでいい仕組みをつくってきたのに、そして何よりユーザーが求めている場なのに。もったいないでしょう。頭にきちゃって、「だったら俺がやってやる!」と(笑)。国の看板も金もなし、会員もリセットで裸の状態になりましたが、「むしろここからが本番」と応援してくれる有志の存在があったから、再出発できたんです。

━ 実際にはどのような活動を?

通常の活動にはリアルとネット、会員同士の連携による新規事業、新商品の開発支援があります。なかでも中心的なのは、リアル活動としての「頭脳交換会」。異地域・異業種・異世代の人々が集まり、互いの経営課題の解決策を探し合ったり、情報や知恵を循環させながら新たな事業アイデアを出し合ったりする勉強会です。これ、言うはやすしで“異”の世界を結ぶのってすごく難しいんですよ。例えば、豪雪地帯の苦しみとか、0.1円の動きが死活問題に直結する製造業の大変さとか…知識として知ってはいても、属性が違えば実感値は持てないものです。

でも、頭脳交換会を続けて分かったのは、多くの知恵が集まると必ず成果が上がるということ。解決策にしてもアイデアにしても、実はとんでもない異世界から出てきたりする。ゾーニングされちゃった国土の弊害で、今の日本は新しいものを創出しづらい環境にあるけれど、境や際を突破すれば大きなチャンスがある。これは、僕自身が得た気づきでもあります。

━ 災害復興支援活動にも取り組んでいらっしゃいます。

人命救助、インフラの復旧…と、復興支援には段階がありますが、NICeが本格的に取り組むべきは経済の復興支援だよねと。仕事や会社を失った人たちに対して、起業という選択肢があることを伝えるセミナー活動や、事業計画の作成、資金集めなどに対する具体的な支援をしています。始めた当初は、「NICeは震災復興をする団体じゃないでしょう」という声も出たんですけど、生活も経済も傷んでいるわけでしょ。経済はつながっているから避けることなどできないし、復興の1つの手段として起業を提示するのは、まさに僕らの仕事。会員たちの経験やスキルを生かせます。なので、現在は単純な義援金集めではなく、事業プランに対してお金や人を出すという、ピンポイント型の支援に特化しているところです。

━ この先に見据えているのは?

先述の頭脳交換会をより積極的に進めて、ここに、地域の金融機関や団体との強い協力体制を築いていきます。地域の経済を元気にするところから、つまりボトムアップで日本経済にアプローチしたいのです。そして、属性を超えた「つながり力」、いい人間関係で結ばれたネットワークは、経済面にだけでなく、素晴らしい力をもたらすことを伝えたい。互いが互いの価値を見つけ合える場は、自分の強みも他者の強みも教えてくれる。そうすれば、何かに依存せずとも、一人一人が独立心を持てるんですよ。なおかつ、そういった独立心を尊ぶ土壌が形成されれば、社会は本当の意味で豊かになると信じています。

※NICeとは、National Incubation Centerの略称

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取材・文/内田丘子 撮影/刑部友康 
アントレ2019.夏号 THE INNOVATION【志こそが人を熱くする】より

 

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