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経営者の役割を従業員に押し付けない。起業以来4年間追い続けた、キャリアと子育ての両立

経営者の役割を従業員に押し付けない。起業以来4年間追い続けた、キャリアと子育ての両立

働き方改革、一億総活躍社会といったキーワードが叫ばれる昨今、仕事と家庭との在り方が国を挙げて見直されようとしています。

今回お話を伺ったのは、株式会社プラスカラー代表取締役の佐久間映里さん。

佐久間さんは「キャリアと子育ての両立」をテーマに、企業の広報の立ち上げや女性の採用活動を支援する株式会社プラスカラーを2013年に設立しました。

全ての女性が輝く社会を作る。キャリアと子育てを両立する。佐久間さんが自身の理想を実現するために挑戦し続けた4年間を紐解いていくと、ある1つの答えが見えてきました。

従業員との付き合い方に悩む、経営者の方は必見です。

<プロフィール>
佐久間映里さん・株式会社プラスカラー代表取締役
大学卒業後大手求人広告を扱う会社の営業職として入社。2009年、モバイルを主軸とした事業を展開するITベンチャーへ転職。
モバイルサイト構築とモバイルプロモーションの営業、人事部で採用担当を務めた後、広報に異動。
2013年に独立し、株式会社プラスカラー設立。

子育てをしながらでも最前線で仕事がしたい。キャリアと子育ての両立のために選んだ、独立の道


―佐久間さんが独立に至った経緯を教えてください。

佐久間さん
私は起業する以前から、キャリアと子育ての両立の難しさについて問題意識を感じていました。

どれだけ優秀なキャリアを積んだ女性でも、出産を経て産休育休を挟んでしまうと、子育てに時間が取られてしまい、会社に復帰した後も時短勤務になってしまうことが多いんです。

すると必然的に最前線で働くことが難しくなってしまいます。

会社員時代にこどもがいたわけではないですが、いずれこどもを産みたいと思っていました。それでも自分のキャリアと子育てを天秤にかけたくはなかったんです。

「子育てをしながらでも最前線で、裁量権がある仕事をしたい。」

そんな想いから、29歳の時「キャリアと子育てを両立する環境を作る」ことをテーマに独立を決め、株式会社プラスカラーを立ち上げました。

―会社員を続けながら、ご自身の理想を叶えることは難しかったのでしょうか?

佐久間さん
裁量権を与えるのが会社である以上、それはなかなか難しいですね。

もちろん全ての会社がそうであるというわけではないのですが、日本ではキャリアと子育てを両立できる環境のある会社はまだまだ少ないと思います。

ならばいっそ、自分で会社を立ち上げて、自分で裁量を決められる環境を作っていけばいいのではないかと考えたのです。

―では、プラスカラーのスタッフはどのような方たちなのですか?

佐久間さん
現在弊社では7名の女性スタッフが働いており、そのほとんどが子育てをしながら時短勤務で働いています。

もちろん広報や採用の領域を中心に、子育てをしながらも責任の大きい仕事ができるよう、日々奮闘しています。

子育てとキャリア。両立して活躍する女性を生み出す環境をどう作るか?


ープラスカラーの発足から丸4年以上経ちますが、これまでさまざまな問題に直面してきたのではないかと思います。会社にとって特に大変だった問題はなんでしょうか?

佐久間さん
やはり会社のテーマである「キャリア×子育て」の両立、そしてそのテーマに沿った組織作りですね。

先程お話した通り、弊社ではスタッフが全員女性なので、彼女たちにどうコミットしてもらえるかが難しい問題です。

限られた制約の中で、どう責任を持って仕事に臨んでもらうのか。そこは常に悩んでいますね。

ーそれは時短勤務で仕事にコミットできる時間が短いから、ということでしょうか?

佐久間さん
そういった表面的な問題もありますが、もっと本質的な問題もあります。

そもそも「子育てをする女性が仕事に”コミット”して働く」とはどういうことか、という難しいテーマが根底にあるんです。

例えば、「この仕事を今日中に全うしなければならない」というタイミングで、保育園などから急に呼び出しがかかったとします。

でも母親の代わりはいないので、当然こどもを迎えに行きます。しかし、仕事も待ってはくれないし、彼女たち自身、責任を全うしたいと思っている。そんな状況で、どうするのか?

仮にこどもを優先したとして、会社としてどうカバーするのか。

私たちは会社として、そうした状況をカバーできるような存在になりたいと思っていますが、やはり一筋縄ではいかないんですよね。

ー問題がケースバイケースになりがちですからね。

佐久間さん
そうなんです。

例えば、こどもの預け先ひとつとっても、保育園や幼稚園、実家など全員の環境は同じではありません。

したがって問題が起きた時、対応がそれぞれの事情によって異なります。問題を一元管理できないという点において、次の手をどう打つのかがとても難しいのです。

そうした現状に対して、弊社では社員同士のスケジュールを柔軟に調整するようにしています。基本的にはこどもの事情重視で、仕事は誰かがフォローできるよう属人的にならないよう配慮しています。

もちろん、基本的には裁量権の大きい仕事であることには変わりありません。

ーこれは子育てをする女性が多い会社ならではの課題かもしれませんね。

佐久間さん
はい、まさに弊社のように女性の活躍を望み、子育てをしているスタッフが多い会社は、この課題に悩んでいると思います。

そういう意味では私たちがこの壁を乗り越えられれば、今後の日本社会においてダイバーシティが促進される1つの例になるのではないかなと思っています。

ー他に課題に感じているところはありますか?

佐久間さん
ここまでお話したバックグラウンドから「女性だけの組織で事業を回す」ことと「やりたい事業をやる」ことの間に、どうしても理想と現実の大きなギャップがありますね。

本当の理想は「女性だけで、女性をターゲットにした事業をやる」ことです。

でも実際は「女性だけで事業をやること」に精一杯で、本来私たちがやりたいと思っている、【働き続けたい女性が自分らしく働けるサポートをする】事業をやるまでには行き着いていません。

私は「女性だけで、女性のための事業をやる」ためには、2段階の壁があると思っています。その第1段階が、まずは女性だけで今ある事業を回すこと、弊社の場合は広報の支援事業なんだと思います。

それができないと、その次の「自分たちのやりたい事業を回す」フェーズにまで行けないのです。

ー佐久間さんが考える「やりたい事業」とはなんですか?

佐久間さん
弊社の現在の取り組みですと、女性のキャリア支援事業です。

弊社が推し進めているキャリア支援の事業は、主に女性をターゲットにしています。

広報支援の事業は企業相手がメインのビジネスですが、キャリア支援の事業は女子学生をターゲットにしており、彼女たちがより輝ける企業へ就職できるよう支援するビジネスです。

とはいえ、広報支援の事業に比べて利益を出せているわけではないので、まだまだチャレンジの事業です。

これからこのキャリア支援の事業をどう成長させていくかを考えています。

経営者の役割を従業員に押し付けない。従業員の「事情」との付き合い方


―キャリアと子育てを両立するという非常に難しいテーマで起業をされた佐久間さんですが、創業してからこの4年間、1番学びがあったことはなんですか?

佐久間さん
当たり前な話ではありますけど、経営者と従業員は本質的に全く違うものなんですよね。

昨今、「経営者目線」を持って仕事することを従業員に求める風潮がありますが、それはお互いの意思疎通ができていない場合においては非常にナンセンスだと思います。

経営に携わっていない従業員に対して「経営者の目線を持て」と言うのは無理がありますし、従業員からしてみても迷惑な話だと思います。

つまり、本人が望まない限り経営者の役割を従業員に押し付けてはいけないと思うんです。経営者の役割は、経営の仕事をきちんと全うすることだと思うんですよね。

―そうお考えになった理由はなんでしょう?

佐久間さん
弊社で働くスタッフが女性で、ほとんどが子育てをしているからという点が大きいですね。

人間は誰しもそれぞれの目的を持って仕事をしています。

「生活するため」
「たくさんお金を稼ぎたい」
「自分がおもしろいと思える仕事がしたい」
「こどもはいるけどお金を稼ぐために仕事をしたい」…。

こうしたそれぞれの事情を持った従業員と、会社を運営する経営者の利害が一致するから会社は回っています。

しかし経営者の立場からすると、そうした従業員の事情をおざなりにしてしまい、どうしても多くを「求めすぎてしまう」傾向があります。

繰り返しになりますが、私が運営している会社は子育てをしながら働く女性が非常に多いです。そのため一般的な企業に比べて、従業員の事情が多くある方だと思っています。

その多くの事情がある従業員を批判するのではなく、「それぞれに事情があって、時にはその事情を優先しながら働くことは当たり前なんだ」と思うこと。

頭では分かっているつもりだったのですが、そのことに気づくのに随分時間がかかりましたが、この4年間を通して、従業員との付き合い方に気付かされ、受け入れることができました。
これが私にとって会社を経営してきた中での一番の学びかもしれません。

―子育てをする女性と仕事をする上で、どうしても彼女たちの事情を優先する場面は出てきますからね。

佐久間さん
そこに改めて気づけたことで、私が起業したきっかけである、子育てをしながら最前線で仕事をしたいというビジョンに1歩近づけたような気がしました。

仕事も一生懸命がんばって最前線に立つけど、時にはこどもや家の事情を優先したり、逆に仕事をがんばらなきゃいけない時は、家族に協力してもらったり。

従業員だけじゃなく私自身も、自分の中の優先順位を状況に応じて付け替えていって、その優先順位を会社として尊重する。

従業員に合わせた仕事との付き合い方を許容するのが、私たちの会社の在り方なんじゃないかなと今は思っています。

―これからのプラスカラーにかける思いを教えてください。

佐久間さん
今なお問題が山積みで正直まだまだだな、と思うことが多いのですが、問題を1つ1つ乗り越えるための方法を日々模索しています。

そんな中でも「子育てをする女性がキャリアを作っていく」ことを諦めずに続けていくことは、これからの社会において大きな意義があると感じています。

女性が子育てでも仕事でも輝ける社会を作る。まずは私たちプラスカラー社員一人ひとりが、そんな社会の前例となれるように、少しずつでも前進していきたいと思っています。

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