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脱サラ・起業前に知っておきたい健康保険と保険証について

独立ノウハウ・お役立ち

会社員として働いていれば、すべて会社が健康保険の手続きを行ってくれます。保険料は給与からの天引きで支払うことができ、保険証も更新時に会社から渡されます。

ところが脱サラ・起業をした場合は、健康保険や年金の手続きをすべて自分で行い、保険料も毎月、自分で管理して支払わなければなりません。

自治体によっては、保険料の未納が続くと、短期保険証という期間の短い(6ヵ月)保険証になってしまう可能性もあります。そうなると、6ヵ月ごとに更新手続きをしなければならないだけでなく、うっかり更新を忘れて医療機関を受診した場合には、治療費全額を支払わなければなりません。

脱サラ・起業をする際には、自分と家族の健康を守るため、これまでの健康保険がどのように変わり、どのような手続きと支払いに変わるのか知っておかなくてはいけません。また同じように手続きが必要な国民年金についても解説します。

会社員の健康保険

健康保険とは、病気やケガによってかかる医療負担、それらによってこうむる休業、また出産や死亡といった事態に備える公的な医療保険制度です。加入者による保険料によってまかなわれる制度で、加入が義務付けられています。

会社員のときに加入していた健康保険は、大きく2つに分かれます。

主に中小企業が加入している“協会けんぽ”と、大手企業が自ら運営している健康保険組合です。健康保険組合は、常時700人以上の従業員がいる事業所、または同種・同業の事業所が集まって3,000人以上の従業員がいる場合に設立できます。事業主の申請により、厚生労働大臣の認可を受けて、健康保険組合を設立します。事業所の実態に合った、健康保険の仕事を運営することができます。

また公務員や教職員の場合は共済組合となります。

どちらも健康保険料は、給与の○%と計算され、給与からの天引きとなります。

また、保険料の半分は事業主(会社)の負担となり、扶養家族の保険料はかかりません。

この健康保険の最大のメリットは、傷病手当金と出産手当金です。該当するときに申請をすることで支払われます。

傷病手当金は、業務外の病気やケガなどで会社を休んだ場合に、その間の収入を補うため、賃金を元に計算された手当が最長1年6ヵ月支給されます。

出産手当金は、出産の前後会社を休んだ場合に賃金を元に計算された手当が支払われます。

「傷病手当金について」(全国健康保険協会)

「出産手当金について」(全国健康保険協会)

個人事業主や自営業者の健康保険

一方、自営業者の健康保険は国民健康保険(通称「国保」)です。医療機関にかかったときの自己負担額は3割で、負担割合については会社員の健康保険と変わりません。

しかし、国民健康保険の保険料には、扶養家族分はカバーされません。扶養家族がいる場合は「一人分の保険料 × 本人と家族の人数」となります。

扶養家族が多いと、たとえ本人の所得が少なくても保険料は高額となるわけです。脱サラ後に、国民健康保険料の高さに驚く方も少なくありません。

また、傷病手当金や出産手当金はなく、病気やケガになって仕事ができないという期間が発生すれば収入が途絶えてしまいます。そのため、民間の医療保険などで補うなど検討する必要があります。

「国民健康保険の保険料・保険税について」(厚生労働省)

脱サラ後に加入できる3つの健康保険の選び方

脱サラ後には、必ずしもすぐに国民健康保険に加入しなくてはいけないわけではありません。会社員時代に加入していた健康保険を任意継続するなど、加入できる健康保険は、次の3つから選択をすることができます。
脱サラ・起業前に知っておきたい健康保険と保険証について

・国民健康保険への加入
・今までの勤め先の健康保険に継続加入する(任意継続被保険者)
・親や配偶者が加入している事業所の健康保険の扶養家族となる

国民健康保険については先ほど紹介したので、それ以外について解説します。

健康保険の任意継続

会社員時代に2ヵ月以上加入していたことと、退職日の翌日から20日以内に加入することが条件で健康保険を任意継続できます。

ただし、今までの健康保険を継続する場合は、これまで会社が半額負担してくれていた事業主の保険料負担分がなくなりますので、全額自己負担することになります。

保険料は退職時の標準報酬月額に居住している都道府県の保険料率(40歳以上65歳未満の方は、介護保険料率が含まれます)を乗じた額になります。ただし、保険料には上限があり、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていた場合は、30万円の標準報酬月額により算出した保険料となります。

また、任意継続の場合には、傷病手当金や出産手当金はありません。加入期間も2年間限定なので注意が必要です。

「【健康保険】令和5年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について」(協会けんぽ)

健康保険の扶養家族

親や配偶者の加入している事業所の「健康保険の扶養家族」となる方法もありますが、これはなかなか難しいと言わざるを得ません。

雇用保険の失業手当が日額3,611円以下(給与月額108,333円以下)のときは、扶養に入ることができますが、正社員として働いていた場合はまず無理でしょう。

自己都合退職で3ヵ月の待機期間がある人は、この期間は扶養家族になれる場合があります。しかし、これも「今後の年収が130万円未満」という失業手当を含んだ見込み額で計算されるため、会社によってはなかなか手続きをしてもらえないケースがあるようです。

現実的に考えると最終的には、「健康保険の任意継続」か「国民健康保険」への加入のどちらかの選択となります。

なお、任意継続の方が国民健康保険よりも保険料を抑えられるのは、下記のような場合です。

・扶養家族が多い場合
・脱サラ後に多くの収入が見込めそうな場合
・会社員時代に副業などで給与以外の収入が多かった場合

国民健康保険は、前年の所得が高い場合や家族が多い場合、保険料が高額となります。それぞれの保険料を試算して確認してから選択することをおすすめします。

ただし任意継続の場合は加入期間が2年間限定となりますので、その後は国民健康保険に加入することになることも認識しておきましょう。

脱サラ後の健康保険の手続きと保険証

会社を辞めた場合は、加入している健康保険に資格喪失届を提出しますが、その手続きは退職手続きの一環として会社が行ってくれます。

退職後の有給休暇消化中は要注意

健康保険証は退職日まで有効です。ただし、最後に有給休暇を取って辞めるときは、最後に出勤する日に返すように会社に指定されることがあるかもしれません。会社によっては、有給休暇も消化して、会社員としての資格がなくなってから郵送での返却で問題ない場合もあります。

もし、この有給休暇期間中にやむを得ず病院にかからなければならなくなった場合には、保険証のコピーでの診察はできませんので、対応方法を事前に立てる必要があります。

退職後の加入手続き

退職後、会社から健康保険資格喪失証明書をもらい、健康保険の加入の手続きをします。

任意継続被保険者の場合は、同じ保険に加入し続けられますので会社から書類をもらい、退職日の翌日から20日以内に加入手続きを行います。繰り返しますが、期間を過ぎてしまうと加入できなくなってしまうため、早めにすませておきましょう。

国民健康保険の場合は、居住している市区役所や、町村役場の国民健康保険課に届け出をします。そのときに必要な書類は異なりますので、二度手間にならないように事前に確認をしておきましょう。退職日の翌日から14日以内に加入手続きを行います。

保険証が手元にない期間に医療機関にかかる場合

新しい健康保険に加入手続きをしても、すぐに保険証は発行されません。

その間に万が一、病気やケガなどで病院にかかることになった場合は自分で全額を支払った後、後から申請をして7割を返金してもらうことになります。例えば、いつもは3割の自己負担で3,000円程度だった医療費も、10割負担の10,000円を支払わなければなりません。その後、再度手続きをすれば7,000円が手元に戻ります。この手続きが必要となりますので、当日受け取った医療費明細書や領収書は必ず保管しておきましょう。

ただ、持病をかかえていて早く保険証が必要なときなどは、申請のときに事情を話して、早めの保険証送付をお願いしてみるとよいでしょう。

脱サラ後の健康診断は自分で行う

健康保険と直接的に結び付かない話題ですが、健康診断についても補足します。

会社によって1年に1度かそれ以上の頻度で健康診断が行われ、無料で健康診断を受けることができます。しかし脱サラ後は、国民健康保険に加入しているからといって、無料で健康診断を受けることはできません。

健康診断をいつ、どれくらいの頻度で、どのような内容のものを受けるかどうかも、個人の責任と判断となります。

自治体によっては特定の年齢の方向けに、無料や低価格で健康診断を行えるところもあり、歯科やがん検診に対応してくれるところもあります。そのような情報は自治体のWebサイトなどでチェックし、病気を未然に防ぐため、積極的に役立てていくことをおすすめします。

脱サラ後の国民年金への加入

脱サラして手続きをしなければならないのは、健康保険に関してだけではなく、“年金”についても同じです。年金についても会社員時代は会社によって“厚生年金”として加入できていましたが、脱サラ後は“国民年金”に加入しなければなりません。

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、すべて国民年金の第1号被保険者または第3号被保険者となります。

国民年金の加入方法

国民年金も国民保険と同じように、居住している自治体の市区役所、町村役場にある窓口で手続きを行います。必要な書類は、基礎年金番号通知書、または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類です。

退職日の翌日から14日以内に手続きが必要で、本人または世帯主が行います。

「国民年金に加入するための手続き」(日本年金機構)

国民年金の保険料

国民年金の保険料は、月額16,520円です。※令和5年度(令和5年4月~令和6年3月まで)国民年金の保険料は、毎年度見直しが行われます。また年度初めに一括して支払うと、割り引きされます。

収入によって保険料が変わる健康保険と違い、国民年金は一律となります。

会社員時代に加入していた厚生年金の保険料に比べると安く感じるかもしれませんが、その分、老後にもらえる年金も少なくなります。そのため、iDeCoや小規模企業共済などの積立型の退職金制度を利用するなどして、老後の生活に備えておく必要があります。積立型の退職金制度を活用すると所得控除が受けられて、現金として貯金しておくよりも有利に老後資金を積み立てることができます。

「国民年金の保険料はいくらですか。」(日本年金機構) 

「小規模企業共済」(中小機構) 

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個人事業主が加入できる健康保険について、マイチョイスでも紹介しています。
個人事業主の保険証は?国民健康保険・加入できる組合を紹介

まとめ

この記事では脱サラした方や脱サラを予定している方のために、会社を辞めた場合の健康保険や年金制度について紹介しました。自営業の方向けの国民健康保険は、これまで会社員時代に加入していた健康保険に比べて、扶養家族がいる場合“家族の人数分、保険料を支払わなければならない”という大きな違いがあります。

そのため、家族がいれば今までの会社の健康保険を任意継続し、独身の場合は国民健康保険を選択するケースが多いようです。

また国民健康保険の手続きには退職日の翌日から14日、任意継続の場合は退職日の翌日から20日、などの決まりがあります。

特に任意継続はこの期間を過ぎると加入できませんので、注意が必要です。仕事の引き継ぎや、新たな生活の準備などで慌ただしいときですが、失念しないよう気を付けてください。

国民健康保険は、日にちが過ぎても加入できます。そのため大きな心配はありませんが、遅れた場合は遡って退職日の翌日から保険料を支払うことになります。決して加入していない間に保険料を節約できることにはなりませんので、早めに加入してしまいましょう。

また、事故に巻き込まれてケガをしてしまったり、思わぬ病気にかかってしまったりすることもあります。いつ何があるかは、誰にも予測ができません。脱サラした場合には早めに健康保険に加入手続きをして、保険証をもらい、万全の準備をしておくことがなにより肝要です。

自身の健康も家族の健康も、かけ替えのないものです。それを守るための手続きを怠らないようにしましょう。
<文/北川美智子>

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