少子高齢化が進む昨今、高齢者向けのサービスは増えてきています。高齢者向けのサービスがどれほど需要があるのか、開業したらどのようなメリット・デメリットがあるのか、開業にあたり知っておきたいポイントとあわせて解説していきます。
日本の介護・福祉業界の現状
高齢者向けのグループホームを経営するうえで、日本の介護・福祉業界の現状を把握するのは重要です。それらを把握するためにも、増加傾向にある高齢者の人口や、国がどれほどの予算を確保しているかをご紹介していきます。
高齢化社会で増え続ける利用者
65歳以上の高齢者数は、2025年には3,677万人となり、2042年には3,935万人とピークを迎えるといわれています。また、75歳以上の高齢者数は2025年には2,180万人となり、2055年には2,446万人とこちらもピークを迎え、全人口に占める割合は25%を超える見込みがあります。さらに、65歳以上の高齢者数のうち認知症高齢者が増加していく予測があり、2025年には人口の約20%ほどが認知症高齢者になるといわれています。
このように高齢化はさらに進んでいる社会背景があるため、高齢者のグループホームの利用者は増加の一途を辿っており需要が高まってきているのです。
参考:厚生労働省|介護分野をめぐる状況について(P.13より)
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社会保険料で賄えるビジネス
訓練給付金は「障害福祉サービス関係予算額」から捻出されており、予算額は年々増加し直近13年間で約3倍にまで増加しています。
令和5年度の予算は1兆5,079億円で、前年と比べて869億円も増加しています。
厚生労働省|令和5年度障害保険福祉部予算案の概要(P.1より)
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高齢者向けのグループホームは大きく分けて2種類
高齢者向けのグループホームには、大きく分けて2つの種類があります。「認知症高齢者グループホーム」と「障がい者グループホーム」の2種類です。それぞれどのようなグループホームで、どのような人が対象なのかご紹介していきます。
認知症高齢者グループホーム
「認知症高齢者グループホーム」とは、認知症高齢者が家事を分担しながら共同生活を送る施設です。施設の規模は大きすぎず、少人数で家庭的な雰囲気があります。「調理、買い物、洗濯などの家事」は入居者同士が共同で行っています。このような環境で無理のない範囲で家事などを行うことが、認知症の進行予防や症状の緩和に効果があるといわれています。
基本的に、認知症高齢者グループホームに入居できる対象者は要支援2・要介護1以上の認定を受けた認知症を患っている65歳以上の方です。ほかにも、介護保険で定められている特定疾病が要因で介護が必要だったり、40歳以上64歳以下でも若年性認知症を患った方であれば対象になります。
障害者グループホーム
「障害者グループホーム」とは、「知的障害」「精神障害」「身体障害」のある方が集まり共同生活を送る場所で、障害者総合支援法による「障害福祉サービス」の1つです。
障害のある方が病院を退院したり、施設を退所したりしたあとに地域生活へ移行するためのサポートをすることが、障害者向けのグループホームの目的です。グループホームには障害のある方の生活面の支援するために、サービス管理責任者や世話人が配置されています。
以下のように障がい者総合支援法に定義されている障がいを患っている方が、障がい者向けのグループホームに入居できる対象者です。
- 障がい者手帳を持っている方
- 障がい支援区分の1~6に認定されている方
- 身体障がい者においては65歳未満であり、障がい福祉サービスなどを65歳の前日まで利用したことがある方
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業するなら
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業するには、どれほどの費用がかかるのでしょうか。成長中の事業とはいえ、あまりにも費用がかかりすぎるようだと始めようがありませんよね。人の命を預かるサービスだからこそ、設備に関して明確な基準が定められています。認知症高齢者グループホームをフランチャイズで開業する際に知っておきたいポイントをご紹介していきます。
開業にかかる費用
認知症高齢者グループホームの開業には、以下のような初期費用がかかります。
ランニングコスト
認知症高齢者グループホームは、ランニングコストとしてフランチャイズ本部に支払うロイヤリティ以外に以下のような経費がかかります。
設置基準
認知症高齢者グループホームは病院と違い、一軒家のような落ち着いた物件を用意することが推奨されています。
居室は1人一室の個室が原則とされており、入居者の私物を収納するスペースに配慮したうえで4.5畳以上の広さを確保するよう定められています。入居者に必要と判断された場合にのみ、2名一室の設置が認められます。
共用施設として入居者が共同で日常的に利用する食堂、台所、便所、洗面設備、浴室、消防設備(スプリンクラー)などの設備を整備します。場合によっては、段差解消工事や車椅子対応設備を導入が必要になります。これらの共同施設は、利用者の生活スペースとして確保するよう規定されており、従業員用の事務スペースや書類保管庫などと分離させなくてはいけません。
人員配置基準
グループホームの人員配置については厚生労働省が「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」にて定めています。
- 共同生活住居ごとに介護職員を配置する
- 「日中の時間帯」は、入居者3人に対して1名以上の配置が義務付けられている
- 夜間及び深夜の時間帯を通いて介護職員を1人以上配置する
また、事業所ごとに生活サイクルに応じて日中・夜間・深夜の時間帯を定める必要があります。「日中の時間帯」においては、出勤している介護スタッフの勤務時間の合計が24時間以上になり、常に1人以上確保しておく必要があります。
参考:厚生労働省|指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準
下記記事ではフランチャイズの仕組みを解説しています。参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業するメリット
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業するのには、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な4つのメリットをご紹介します。
専門性が必要な場面で役立つ
認知症高齢者グループホームの開業には、集客以外に実地指導を受けたり、資料・申請書の作成をしたりなどの業務が発生します。介護福祉施設の集客には、専門性が高いチャネルに出稿したり、病院や他の介護施設などといった特別なルートでの集客が必要になります。また、資料や申請書の作成には書かなければいけない項目が多く、誤った情報を書いてしまうと二度手間になったり、法律に違反することになってしまいます。しかし、フランチャイズで開業すればこのような専門性が必要なものでも、提供してもらえるノウハウをもとに効率的に行えます。
専任のアドバイザーに相談できる
認知症高齢者グループホームの開業するにあたり、フランチャイズ本部から専任のアドバイザーを用意してもらえるケースがあります。介護や福祉に関する知識がなかったとしても、専任のアドバイザーに業界やサービス、関連法案についてなど、さまざまな相談に乗ってもらえるでしょう。何かあったとき、フランチャイズであればすぐに頼れる人がいるのは、これから認知症高齢者グループホームを開業したいと思っている方にとって大きなメリットといえるでしょう。
保険請求業務や電話対応などの代行
認知症高齢者グループホームを開業すると、保険請求業務や電話対応などの業務も行わなくてはなりません。しかし、日々目の前の介護者に集中して業務にあたっていると、なかなかこのような事務仕事に充てる時間が確保しづらい場合もあるでしょう。フランチャイズで開業すれば、このような業務を代行してくれるフランチャイズ本部もあります。
指定許可申請のサポート
認知症高齢者グループホーム開業には指定許可申請が必要になります。指定許可申請が通ると、介護保険法に基づく介護事業者としての指定を受けられるようになります。フランチャイズ契約をして開業すればこのような申請もサポートしてもらえるので、開業がスムーズに行えるようになるでしょう。
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業するデメリット
フランチャイズで認知症高齢者グループホームを開業すると、メリットだけでなくデメリットとも向き合わなくてはなりません。認知症高齢者グループホームをフランチャイズで開業するデメリットを2点ご紹介します。
後々の方針が合わなくなる
人の命を扱う認知症高齢者グループホームの経営は、センシティブな面も多々あります。このときフランチャイズ本部と自身の経営方針が合致しなかったり、開業したエリアでのビジネス需要がフランチャイズ本部が計画したものでは合わなかったりなどの行き違いが発生するリスクがあります。
思ったほど収益があげられない可能性も
せっかく開業しても、介護スタッフを十分に集められなかったり、入居者を集められなかったりすると、思うほど収益があげられない可能性があります。特にフランチャイズの場合、売り上げが出なくてもロイヤリティの支払いは発生する契約内容になっていることが多いので、赤字になってしまうリスクがあることを十分に理解しておく必要があります。
認知症高齢者グループホームの難点と失敗を避けるコツ
認知症高齢者グループホームを運営していくにあたり、難点や失敗しないためのポイントをお伝えしていきます。
監査と実地指導の対策をみっちり行う
より良いケアを提供するために、認知症高齢者グループホームでは監査や実地指導を受けることになります。その場で指導がある場合もあるので、実地指導の対策を講じてサービスの品質向上につなげられるようにしましょう。
関連法案や業界の動向をよく調べておく
福祉や介護についての法律は、人口の変化に伴い日々更新されていきます。前年度まではOKでも、今年度からはNGなどという法律がなかにはあるかもしれません。関連法案や業界の動向については常にアップデートしていきましょう。
スタッフケア、待遇改善
認知症高齢者グループホームの運営の継続は、スタッフありきです。そのため、スタッフのケアや待遇については手厚く行うことをおすすめします。資格取得のサポートや福利厚生を充実させるなどの取り組みをして、入居者にはもちろん、スタッフにも良い環境で仕事をしてもらいましょう。
事故・事件を起こさない取り組み
認知症高齢者グループホームは人の命を扱う職業です。そのため、人員配置や業務割り当てについてはオーナーの匙加減で決めるなどせず、管理者含め十分に話し合いをして、事故や事件が起きないよう最新の注意を払った取り組みをしましょう。
士業家に相談できるようにしておく
認知症高齢者グループホームのような社会福祉事業は、国の予算を使えます。しかし、そのためには書類を提出したり、ホームを建設できる場所が決められていたりなど制限があります。これらの規制は専門性が高いため、本部へ相談はもちろん、士業家にも相談できるようにしておくと安心です。
まとめ
認知症高齢者グループホームは、少子高齢化のような社会背景から国家予算が確保されている事業です。そのため、業界としても安定しているといえ、新規参入を検討している人が多い業界といえるでしょう。しかし、その一方で人の命を預かる責任ある仕事でもあります。フランチャイズ本部への相談はもちろん、士業家にも相談しながら慎重に事業を運営していきましょう。
<文/ちはる>