カフェは、食事メニュー中心のレストランに比べて参入障壁も低く「理想の空間を提供したい」というモチベーションで開業する方も多いです。しかしカフェでの就労経験がないまま脱サラして開業するとなると、ノウハウがなく失敗してしまうリスクもあります。
この記事ではカフェの開業で失敗してしまう要因や、開業までの手順、カフェのフランチャイズに加盟するメリットやデメリットについて紹介します。
※記載されている内容は2023年6月時点の情報です。最新の情報については必ず公式サイト等で確認してください。
カフェの開業希望者が目指す独立の姿
カフェを開業したいと考えている方には、さまざまな理由があるかと思います。
- コーヒーや紅茶などこだわりのドリンクを提供したい
- オリジナルのスイーツや軽食を提供したい
- お客様に喜んでもらえる落ち着いた空間を作りたい
- コンセプトを決めてそれに人々が集う場所を作りたい
- ソーシャルメディアで人気になるカフェを作りたい
自分にとって理想のカフェ空間を作り上げれば、必ずそれを気に入ってリピートしてくれるお客様が集まり、カフェ開業が成功するはずだと思いますよね。自分の好きな空間を作り上げ、お客様に喜んでもらえて事業になるのであれば、理想的な独立のスタイルとなるでしょう。
しかしカフェの開業には理想だけでは成功するものでもなく、現実的な経営やマーケティングの知識がないと失敗に終わってしまうこともあるのです。
カフェで開業する難しさ・失敗する原因
カフェの経営には家賃、人件費、商品の仕入れ原価、水道光熱費、広告宣伝費などあらゆる経費がかかります。当然、売り上げが順調に推移しなければ赤字が続き、毎月の経費はもちろん、開業資金の返済すら困難になり、カフェ事業を続けられなくなってしまいます。利益が出なければオーナーの生活資金確保もままならなくなります。
カフェ開業で失敗する原因の具体例から、カフェオーナーとして成功するためのヒントを探していきましょう。
事業計画が甘く、資金調達できない
カフェ経営で資金不足に陥る理由の一つが「事業計画の甘さ」です。
開業前には「どのくらいのお客さんにどんなサービスを提供し、どれくらいの対価を受け取るか」といったことをプランする事業計画を立てます。そして開業後も、実際の状況に合わせて計画を修正していき、事業を継続できるよう工夫していきます。しかし、その事業計画が楽観的過ぎたり、実情に即していないものだったりすると、思うように客数を伸ばせなかったり、食品を大量に廃棄しなければならなくなったり、スタッフ不足に陥ったりします。
資金不足を招かないためには、十分な資金を調達することが失敗しないための近道です。単純に席数のみで客数を見積もったり、楽観的な客単価をもとに売り上げを試算したりするのではなく、季節や天気による変動やリスクも見据えて、現実的な事業計画を作成するようにしましょう。融資先やフランチャイズ本部に相談することで、事業計画書の書き方のアドバイスをもらえることもあるので、不安な場合は相談してみると安心です。
集客できなかった
カフェを成功させるためには、集客力があることが重要なポイントとなります。魅力的なメニューや空間を作ったとしても、周辺の競合店舗と差別化できていなければ、お客様は競合に流れてしまうこともあります。
カフェの魅力を知ってもらうために広告宣伝を行うにも、それぞれ広告費がかかります。現在はソーシャルメディアを使って無料で情報発信することもできるので、まずはそのようなツールを生かして積極的に発信していくようにすると良いでしょう。自身の営業力やマーケティングの能力に自信がない場合は、集客についてのサポートが充実しているフランチャイズ本部への加盟を検討してみるのもおすすめです。
お客様の本音に気づけなかった
お客様がそのカフェに来店し、どう感じてまた来店したいと思ってくれたかという本音から目を背けていては、リピーターは減り、売り上げも悪化してしまいます。
カフェ開業の失敗の原因はそれぞれのお店によって異なります。お客様が感じていることに気がつくことができないと、客数は次第に減っていきます。
- 注文した商品が好みと違った
- コスパが悪いと感じた
- 店内やお手洗いの清潔感のなさが気になった
- 従業員の接客態度が不満だった
- 商品が提供されるまで時間がかかりすぎた
- 駅から遠く、駅に近いチェーンのほうがいい
- 駐車場が狭くて停めにくかった
これらのネガティブなお客様の本音は、面と向かって教えてもらえるものではありません。お客様アンケートを実施するのもいいですが、まずはGoogleマップやグルメサイト、ソーシャルメディア上で残された口コミを真摯に受け止め、どう改善していくか考えてアクションを起こすようにしましょう。フランチャイズ本部のサポートや運営マニュアルを活用しながら、スタッフの教育やオペレーションの確認など加盟店で責任をもって対応する必要があることを意識することも失敗を防ぐことにつながります。
事前のリサーチ不足
カフェ開業が失敗してしまう理由の1つに、開業前のリサーチ不足もあります。
- 競合店舗が多すぎて差別化がしにくいエリアだった
- 人口が多いエリアだが人通りの多い道に面していない2階で認知を得られにくかった
- 郊外店なのに駐車場が確保できなかった
- オフィス街にあるため休日の集客に苦戦した
- 周辺店舗と同じメニューを高価格で設定していた
これらの理由は、開業場所を決める前に気づけていれば、対策できたことです。「ちょうどいい居抜き物件が見つかったから」「家賃が安かったから」という理由で出店場所を決めるのではなく、あらゆる情報を考慮して計画を立てるようにしましょう。
カフェを失敗させないためには立地がとても重要であることを理解し、周辺の人の動きや人口密度、競合店舗の客層や提供商品など、状況を入念にリサーチするようにしましょう。フランチャイズ本部のシミュレーションを参考に、自分自身で確認することも怠らないようにすることが成功のカギです。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
カフェ開業の手順
カフェを開業するためには、具体的にはどのような手順が必要なのでしょうか。
開業するカフェの目的と形態を決める
まずはカフェを開業する目的を明確にしましょう。それに応じて、店舗の規模や提供するメニューを考えます。
「こだわりのコーヒーをまずはたくさんの人に楽しんでもらいたい」という目的であれば、スタンドタイプや移動式のカフェでも目的を叶えられます。「富裕層を狙って高単価の商品を中心に提供し利益を上げたい」ということであれば、店舗空間や設備など競合カフェにはない高い付加価値がないと難しいでしょう。
「フランチャイズに加盟してブランド力を武器に開業したい」「自由度に憧れがあるから自力で起業したい」など、独立のスタイルはさまざまです。自分が開業する目的をしっかりと事業計画に落とし、どんなカフェで勝負するのか決めます。
事業計画書を作成する
事業計画書は、経営を失敗しないためにも、資金調達の際にも必須となります。
「開業にあたり初期費用でどれくらいお金がかかるのか」や、開業後の売り上げや経費の見込みを記載した資金計画は、経営に失敗しないためには特に重要です。商品の原価率や利益率も考慮して価格設定を行います。
想定する客層や競合との差別点、カフェのコンセプトや看板メニューについても計画しておきましょう。フランチャイズに加盟する場合は、事業計画書の書き方などアドバイスをもらえることもあるので、事前にフランチャイズ本部に相談してみると安心です。
資金調達を行う
カフェの開業には形態や店舗の規模によって異なりますが、500万円以上はかかることが多いようです。自己資金ですべてをまかなえない場合、日本政策金融公庫などを通して資金調達することになるでしょう。
日本政策金融公庫は日本政府の管轄によって運営されているので、一般の金融機関よりも返済条件が緩和されていることが多いです。またフランチャイズに加盟する場合は、既にしっかりした事業計画があることや、経営の実績があるため、通りやすい傾向もあります。フランチャイズ本部によっては、融資の受け方に関してアドバイスをもらえることもあるので相談してみましょう。
物件の取得や開業準備
資金調達のめどがついたら、物件の取得や開業準備に進みます。
内装やキッチン設備の選定、メニュー開発、飲食店営業許可の取得、公式Webサイトやソーシャルメディアアカウントの開設、店舗営業オペレーションの想定、従業員の採用、教育マニュアル作りなどあらゆる開業準備を計画的に行いましょう。フランチャイズ本部では、物件選定や集客しやすいエリアの条件などの知見があるため希望エリアでの出店についてシミュレーションをしてもらえることもあります。また内外装の工事業者を紹介してもらえたり、既に実績に基づいたメニュー開発が充実したりしているため、開業準備は比較的早く進められます。
カフェ開業の成功にはフランチャイズがおすすめ
これまで紹介した通り、カフェの開業には入念な事業計画の準備やエリア選定が重要となります。個人で独立するにはノウハウがない場合も、フランチャイズ加盟店として出店することで、失敗のリスクを抑えて開業できるためおすすめです。
フランチャイズに加盟してカフェを独立開業するメリット
フランチャイズでカフェを開業する1番のメリットは、フランチャイズ本部が持つブランドとネームバリューを看板に出店できることです。さらに開業時や運営時のマニュアルや、売り上げを上げていくノウハウがあるため安定して経営していけるでしょう。困ったときに相談できる心強さもあります。
季節ごとのメニュー開発やキャンペーンなどの施策もフランチャイズ本部が行ってくれるため、オーナーはより経営に専念していけるはずです。また商品の仕入れもフランチャイズ本部のルートを利用できることで、より効率よく調達できるでしょう。こうしたサポート体制については、加盟するフランチャイズ本部によって大きく異なります。どのようなサポートが受けられるかについては、それぞれ確認するようにしましょう。
フランチャイズに加盟してカフェを独立開業するデメリット
フランチャイズのデメリットとして考えられるのは、開業時の加盟金や売り上げに応じたロイヤリティ・システム管理費など月々の支払いが発生することです。フランチャイズ本部によって金額や比率が異なるため、フランチャイズ本部を選ぶ際には事前に比較しておきましょう。
またオリジナル商品の提供が許されていなかったり、営業時間の指定があったりと、経営の自由度が下がることもあります。前述した「カフェを開業する目的」を理解し、自分の独立スタイルと一致しているかよく考えて判断しましょう。
カフェ事業を展開するフランチャイズ本部の選び方
それでは具体的に、カフェ事業を展開するフランチャイズ本部の条件を事例にて確認してみましょう。加盟料やロイヤリティ、研修制度など本部によって異なります。
以下、3社のフランチャイズ加盟条件を紹介します。金額はすべて税別表記、詳細は店舗の規模によって前後する可能性があります。
※2023年6月時点の情報です。最新の情報については必ず公式サイト等で確認してください。
コメダ珈琲(フルサービス型)
- 加盟料:300万円(2店舗目以降:150万円)
- 加盟保証金:300万円(連帯保証人2名以上)
600万円(連帯保証人1名)
600万円(連帯保証人なし) - 研修費用:50万円
- 店舗施工指導料:350万円(独立店)
200万円(ビルイン) - ロイヤリティ:1,500円(1席あたり/月額)
- その他費用:建築工事費、内装工事費、設計料、賃貸料(POSシステム・専用看板)、食器備品等
- 研修期間:約3か月間(研修センター8日間、店舗研修訳60日間、マネジメント研修約2日間)
※2023年6月現在
フルサービス型のカフェフランチャイズを展開するコメダ珈琲は、ロイヤリティが席数で固定されているため、売り上げが増加すればさらに加盟店の利益率を上げられるというメリットがあります。
社員として入社して給料を得ながら店舗のノウハウを学び、開業資金の一部を本部が負担してくれる「独立支援制度」や、新規店舗の開業時、建築費と内装費を一時的に負担する「建築支援制度」 があり、飲食店での経営経験がなかったり、一度に多額の資金調達をすることが難しい個人であっても挑戦しやすくなっています。
珈琲館(フルサービス型)
- 加盟料:150万円(2店舗目:100万円、3店舗目以降:50万円)
- 加盟保証金:150万円(2店舗目以降も同額)
- 内装設計監理料 100万円 +(@3.5万円×店舗面積坪数)※上限200万円
- ロイヤリティ:売上髙(税抜)の2%
- ネツトワーク料:月額3.6万円※2023年2月現在
- 研修期間:3か月間
※2023年6月現在
フルサービス型のカフェを展開する珈琲館は、新規事業を検討している人や、既に飲食店を多店舗展開している企業を対象としたフランチャイズ契約を募集しています。加盟時にかかる費用が比較的抑えられています。カフェ事業の成功をつかむための優良物件の提案もしてくれます。
プロント(セルフスタンド型)
- 加盟金:300万円
- 取引保証金:240万円(非課税)
- 開業費(40坪の場合):535万円(研修費含む)
- 設計監理費(40坪の場合):200万円
- 厨房機器費:950万円
- 内外装設備工事費(@65万円×店舗面積坪数):2800万円
- その他費用:物件取得費、ビル側指定工事費
- ロイヤリティ:売り上げの3%
- 宣伝販促費:売り上げの1%
- オリジナル器材使用料:月額約23万円
- 研修期間:26日間(レクチャー13日間、店舗実習13日間)
プロントでは開業後にも専門知識向上・モチベーションアップ・リーダーシップ習得などを目的としたフォローアップコースという研修を随時開講しています。
上記のように展開する店舗数による知名度やブランド力、加盟金やロイヤリティ、研修についても細かく本部によって異なっています。自分の目指す独立スタイルにマッチしているか比較してみましょう。
失敗しないカフェの開業はフランチャイズで!
この記事で紹介したように、カフェの開業は理想だけでは上手くいかずに失敗してしまうリスクもあります。参入しやすい分、競合カフェとの差別化が難しかったり、立地や物件の選択を誤ってしまったりすることもあるためです。
フランチャイズによる開業方法ならば、その失敗のリスクを最小限にして安定した経営を行える可能性が高まります。フランチャイズ本部によって加盟店へのサポート体制やブランド力、集客力、営業ルールなども異なるため、それぞれのフランチャイズ本部が掲げる方針や経営スタイルを事前にしっかり確認しておきましょう。
<文/北川美智子>