出る杭は打たれる。
そんなことわざがある通り、日本は特に「人と違うこと」を、是とされる社会であるとは言えないのかもしれません。
しかし独立・起業をするなら、人と違って当たり前。むしろ違わなければ生き残っていくことはできません。
今回お話を伺ったのは、表現ファシリテーターの菊地雄亮さん。
元ダンサーで起業家の菊地さんは「表現力」を養うためのワークショップや、ダンススクールなどを全国各地で実施し、受講者は累計1.5万人と人気を博しています。
今回はそんな菊地さんの事業について、そして独立・起業に必要なことを、菊地さんらしい着眼点から語っていただきました。
菊地雄亮さん
表現ファシリテーター/ダンスインストラクター
株式会社トゥーマイヒーロー代表取締役
小学生の頃から俳優を目指し、芸能事務所に所属。
大学時代からダンスに没頭し、学生ダンス連盟の会長を務める。
就職後、社内ベンチャーという形で現在の事業の原型を作る。
2021年に独立、起業。
「人は生まれながらにして表現者である」という自身の考えをベースに、TO MY HERO projectを立ち上げ、企業研修やこども向けワークショップ、ダンススクールなどを展開している。
「僕の経験が誰かの役に立ったことが嬉しかった」――菊地さんが起業するまで
――表現ファシリテーター/ダンスインストラクターとして活躍する菊地さん。なかなか聞き慣れない肩書きですが、どのような活動をされているのでしょうか?
主に2つの事業を行っています。
1つ目は、こども向けのワークショップ。
ダンスや演劇、絵など手段はさまざまなのですが、いずれも「表現力」を養うためのプログラムを用意しています。
対象者は幼稚園児から大学生まで、総受講者は累計1.5万人ほどで、日本全国各地で実施しています。
2つ目は、ダンススクール事業です。
こちらは関東を中心に25店舗ほど展開しており「人を魅了する人材の育成」をテーマに「挨拶や返事ができるようにする「人の本気を馬鹿にしない」「感謝の気持ちを忘れない」といった、人間教育を主体としたダンス教室を運営しています。
――いずれも「表現」や「ダンス」という要素が、重要なキーワードになってきそうですね。なぜ「表現」や「ダンス」を使った事業を考えたのでしょう?
一番最初のきっかけは、大学生の時にサッカークラブのこどもたちに、ダンスを教えた時のことでした。
サッカークラブの監督さんから「ダンスを使って“感情を解放する方法”を、こどもたちに教えてほしい」と依頼されたんです。
当時の僕は、いち学生で今のようなカリキュラムなどもなかったんですが……。とりあえず僕が思うようにレッスンをしてみたんです。
すると、こどもたちの感情表現が、レッスン前と後で大きく変わったんですよね。
――どのように変わったのでしょう?
ダンスレッスンを通して、こどもたちが「自分の思っていることを、相手に適切に伝えられる」ようになったというか……。
なんというか、こどもたちの表現の“殻”を破ってあげられるお手伝いができたような気がして。
それに元々僕は、こどもの頃から俳優志望だったんです。実際に小中学校の頃は子役として、ずっと仕事をしていました。
高校の頃に役者の仕事は辞めてしまったのですが、大学に入ってからも「何か表現活動がしたい」という思いから、ダンスを始めることになって。
そんな僕の培ってきた経験が「誰かの役に立った」というのがとても新鮮な経験でしたし、純粋に嬉しかったんですよね。
この時の原体験が、今の事業にも強く活きています。
――そこからすぐに独立を?
いえ、大学を卒業して一度就職しました。
就職先は、学校の部活やスポーツクラブ、企業の研修などで利用する合宿施設を運営している会社でした。
そこで僕は新規事業を立ち上げる部門で、合宿に来た人や企業へ向けて、プラスアルファで何かを学べるようなプログラムを作り、営業し、ワークショップを行っていました。
会社の中で社内ベンチャーとして出資してもらって、事業化していったんです。
事業そのものは上手くいっていたのですが、コロナ禍が転機となり、事業を縮小せざるを得なくなってしまって。
それでもこの事業に可能性を感じていた僕は、会社から事業譲渡していただき、起業。2021年に株式会社トゥーマイヒーローを立ち上げました。