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「空き家」にまつわる諸問題の解決に、ワンストップで対応 社会起業家からのメッセージ

生ボイス

NPO法人空家・空地管理センター/埼玉県所沢市
代表理事

上田 真一さん(32歳)

1984年、埼玉県生まれ。オハイオ州立大学卒業後、ベトナム大手旅行代理店に就職し、不動産事業の立ち上げに携わる。2010年、父親が経営する不動産会社に入社し、新規事業としてNPO法人空家・空地管理センターを設立。東京・埼玉を中心に1000軒を超える空き家に足を運び、管理、活用のノウハウを築く。15年、新宿に「空き家相談センター」を開設し、全国展開に向けて躍進中。著書『あなたの空き家問題』(日本経済新聞出版社)や講演を通じて、提言活動も積極的に行っている。

ここ数年、空き家問題がクローズアップされている。全国の空き家数は約820万戸(2014年総務省調べ)で、今後も急増、33年には2000万戸を超えるとの予測がある。率にして3割。つまり、3戸に1戸が空き家になるという時代を迎えるわけだ。なかでも、社会問題として深刻化しているのが「放置空き家」で、管理不足による草木の繁茂や、シロアリをはじめとする害虫発生、劣化した住宅部材の落下などが近隣地域に悪影響をもたらしている。
「空家・空地管理センター」の代表を務める上田真一は、そうした社会問題の解決に挑むパイオニアだ。13年、低額の月極め空き家管理プランを開発し、事業をスタート。当初は手探りで大変なこともあったが、高まる需要に応える格好で、その活動範囲は大きく広がってきた。最近では管理だけでなく、相続トラブルや税金問題、空き家の活用に関するさまざまな相談事にも、構築した協力会社とのネットワークを生かし、ワンストップで対応している。上田が理念に掲げているのは、「放置空き家ゼロ」。昨年からは、対応エリアを全国に広げて活動を加速させており、不動産業界に新たな風を起こしつつある。

空き家ビジネスを通じて、この社会問題の深刻さを喚起していく。それが、根本的な解決につながる道となる

━ なぜ、空き家ビジネスを?

父が不動産会社を営んでおり、継ぐ前提で入社したのが28歳の時。それまでにも不動産業には携わってきたので、業界を取り巻く時代の変化は感じていました。人口減少による住宅需要の落ち込みや、不動産投資の市場縮小など、「このままいくとジリ貧になる」という危機感が、まずあったんですね。「何か新規事業を」と思って、不動産業を細分化し、分析してみると、明らかに衰退する市場、伸びる市場が見えてきたんです。

そこで注目したのが、空き家の急増。
なかでも放置された空き家は、危険性や景観の乱れなど深刻な問題を抱えていて、放っておけないと。住宅の専門知識を持ち、加えて司法書士、弁護士などの専門家や建築業界とのネットワークがある不動産業界が、先んじて取り組むべきビジネスだと考えたのです。

━ 空き家管理を始めた当初は、苦労もあったと聞いています。

管理に入った空き家の隣人から、「大変なシロアリ被害に遭った。どうしてくれるんだ」と延々クレームを聞かされたり、時には台風のなか、劣化した屋根が飛ばないよう必死で作業したりと、けっこうヘビーな案件が続きまして。今ならノウハウがありますけど、最初は「どこまでやるか」の線引きができていなかったから、心身共にきつかったですね。

現場では、空き家の所有者が抱える種々の問題にも直面します。よく「空き家なら売ればいい」と言われるんですけど、実際は、そんな簡単な話ではないんですよ。所有者間での権利関係が複雑、相続でもめる、遺品整理に時間がかかるなど、空き家を活用しようにもできない事情は多々あるのです。活動を続けて分かってきたのは、この問題を根本的に解決するには管理だけではダメで、所有者が抱える諸問題をサポートする体制づくりが重要だということです。

━ それで「空き家相談センター」を開設し、活動を広げてこられた。

「空き家を相続したが、どう対処すればいいのか」といった相談が急増するなか、それらを受け止める窓口って、ほとんどないのが現状です。手間も時間もすごくかかるビジネスなので、誰もやりたがらない。だからこそ、そこに着手する意義があるし、先々、市場も取れるだろうと考えています。

相談センターの窓口業務には、当社の資格試験である「空家空地管理士」に合格した人が就き、より具体的な相談となれば、各分野の専門家や、造園、建築などの協力会社につないであらゆる相談に応じています。でも、十分なスキルを持つ人材はまだ圧倒的に不足しているので、現在は、その育成に力を入れているところです。

━ 全国の放置空き家ゼロを目指して、今後はどのような活動を?

まずは、名古屋、大阪、福岡と、相談センターを順次開設していきます。地域のことを一番分かっているのは地場の不動産会社ですから、対応エリアの全国展開には、協力会社の拡大が必須になります。ただ、空き家ビジネスは、手間や時間からすれば収益性は低いので、「地域や困っている人の役に立ちたい」という思いがなければ続きません。いたずらな拡大ではなく、“質”を大切にしたいです。

あと、重要なのは啓蒙活動。空き家問題は、もはや人ごとではない事態なのですが、そういう意識を持つ人がまだまだ少ない。何となく現状放置すれば資産価値は下がるし、地域にも迷惑がかかる。あげく壊すとなれば、大量の産業廃棄物も出る。どこを取ってもいい話ではないでしょう。皆が当事者意識を持たないと、放置空き家をなくすことはできないんです。私たちの事業や情報発信が、社会を動かすきっかけになれば――そんな思いで走っている日々です。

取材・文/内田丘子 撮影/刑部友康

※本記事は取材当時の情報を基にしており、団体名、サービス名、法令等が現在と異なる可能性があります。しかし、取材時の想いや状況を正確に伝えるため、内容をそのまま掲載しています。ご了承ください。

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アントレスタイルマガジン編集部

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