2022年12月に発表された、2023年(令和5年)税制改正大綱。
税制改正大綱とは、毎年改正される税金に関する制度と取り決めのこと。
税金に関するさまざまなことが決定されるため、自分で納税をしなければならないフリーランスや個人事業主、起業家にとっては非常に注目すべきことです。
今回、やさしいお金の専門家・横川楓先生にお話を伺ったのは、2023年(令和5年)の税制改正大綱について。
特に今年は10月から施行されるインボイス制度元年。税制改正大綱には、インボイス制度に関する改正点もいくつかありました。重要トピックをまとめてご紹介します。
横川楓さん
やさしいお金の専門家・金融教育活動家
一般社団法人日本金融教育推進協会 代表理事
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学。
24歳で経営学修士(MBA)を取得。
実家は会計事務所を経営。
同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかるさまざまなお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。
ファイナンシャルプランナー(AFP)や、SDGs検定、マネーマネジメント検定等の資格を取得し、2022年1月に一般社団法人日本金融教育推進協会を設立。
同法人の代表理事を務める。
横川さんのインタビュー記事はこちらから!
「収入=給与」に縛られない。経済評論家・横川楓さんに聞く、独立・起業に必要な2つの条件
庵(いおり)
イラストレーター
都内に住む27歳のフリーランスイラストレーター。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、独立を決意する。
毎年12月に改正される、税制改正大綱とは
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/04taikou_mokuji.htm

今回のテーマは2023年の税制改正大綱について。
庵ちゃんはそもそも、税制改正大綱って何か知ってるかな?

「ぜいせい・かいせい・たいこう」……。あんまり聞き馴染みのない言葉です!

税制改正大綱というのは、毎年改正される税金に関する制度のこと。
税金って、私たち国民の生活に大きく影響を与えるものだから、毎年現在の世情に合わせて、細かく制度が改正されているんだ。
例年、12月にまとめられた案が、翌年1月からの通常国会で審議されて、4月から施行されるというのが慣例で、2023年の税制改正大綱も、2022年12月に発表されたよ。
その内容は、これから始まる通常国会で審議されていくんだけど、おおむね大きな変更がなく通過することも多いんだよ。
というわけで今回は、2023年の税制改正大綱で改正される中で、フリーランスや個人事業主、そして一国民、一消費者として関係があるものをいくつかピックアップして紹介していくね。

それは必見ですね! 横川先生、よろしくお願いいたします!
フリーランス必見! 2023年スタートのインボイス制度にも改正あり?

2023年から始まる税金の制度で、大きな変革となるのは、やはりインボイス制度。
そのインボイス制度について、いくつかこれまで予定されていた制度から、大きく2つの変更点があったので、紹介するね。
①免税事業者からインボイス登録をした人は、3年間消費税が2割になる(2割特例)

元々免税事業者だったけど、課税事業者への登録をした人は、3年間支払う消費税が2割になることが発表されたよ。

2割というと?

例えば年間1000万円の売上があった場合、本来支払うべき消費税はその10%である100万円。
でもそれが2026年までの3年間は、2割の20万円に減額されたんだ。

もう1つはなんでしょう?
②1万円以下の少額取引はインボイスを発行しなくてもよい。

これまでの制度では全ての取引においてインボイスを発行し、課税事業者はその消費税を払わなければならなかったんだ。
でも新たに、1万円以下の取引についてはインボイスを発行しなくてもよくなったんだよ。
他にも、これまで課税事業者への登録は2023年3月までにしなければならず、それ以降になる場合は「困難な事情」を記載しなければならなかったのだけど、今回の税制改正大綱によって、その「困難な事情」を記載しなくてもよくなったんだ。
とはいえ課税事業者となり、2023年10月からのインボイス制度に対応するには、登録作業は必須だから、きちんと済ませておこうね。
エコカー減税に贈与税、相続税も変更あり!

他にも何かありますか?

フリーランスや個人事業主はもちろん、会社員の人にも関係してくるのが、エコカー減税(※)の期間延長。
ただし制度自体は2026年まで延長したんだけど、減税の上限額が年々下がっていくから、もし減税している間に車を購入したいという人がいたら早めに購入した方がいいと思うよ。
加えて電気自動車、ハイブリット車に適応される、グリーン化特例(※)も期間が延長したよ。
※エコカー減税……排出ガス性能及び燃費性能に優れた自動車に対し、自動車重量税を減税する制度。
※グリーン化特例……電気自動車、燃料自動車、プラグインハイブリッド車、天然ガス自動車の自動車税が優遇される制度。

事業で車を使う人、もしくは使う予定のある人は急いだ方がいいかもしれませんね!

他には教育費、結婚・子育て資金の一括贈与が非課税になる制度も、それぞれ延長になったんだ。
まず教育費に関する一括贈与について。
祖父母、もしくは父母から贈与、相続される場合、こどもの教育費に限ったお金のみ、1500万円まで非課税となる制度が2026年まで延長になったんだ。

本来なら確か、110万円を超えると贈与税が発生するんでしたよね。

その通り。また同じく結婚・子育てのための資金としても、1000万円までなら非課税になる制度があるんだけど、これも延長されたよ。
こっちは期限が2025年までとなっているから、注意してね。

他にもありますか?

あと今回の税制改正大綱での、大きな変更点はつみたてNISAについて。これはかなり大きな方向転換を果たしたんだ。
つみたてNISAが何がどう変わったのかについては、次回より詳しく説明していくね。
そして2023年はインボイス制度元年。
フリーランス、個人事業主にとっては非常に大きな転換期になるから、いろいろ戸惑うこともあると思うけど、課税事業者になる人はぜひ3月までにインボイス登録と、帳簿づけをしっかりやっていこうね。

横川先生、今月もありがとうございました! 来月のつみたてNISAの変更点についてのお話も楽しみです!
構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram