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会社の相続をする際に弁護士が行える手続きとは

独立ノウハウ・お役立ち

「オーナー社長」にとって会社は自宅や預金と同じように大切な財産です。

しかし、自宅や預金とは異なり“会社”自体が財産として相続されることはありません。

では、会社を相続する際はどのような手続きを踏めばよいのでしょうか。

今回は会社相続の手続きや起こりえる問題にあわせて、手続きを弁護士に依頼するメリットを紹介します。

会社を相続するときに必要な手続きとは

会社の相続は大きく2つに分かれます。

1つは「オーナー社長」のうち“オーナー”の部分、もう1つは“社長”の部分です。

以下で会社の中で最も多い株式会社の相続について説明します。

オーナーの相続=株式の相続

①準共有状態で相続

前オーナーが300株の株式を保有しており、相続人が子ども3人(長男・次男・三男)だったとします。

この場合、子ども3人の権利は平等なので、多くの人は「子ども3人はそれぞれ100株ずつ相続する」と考えるでしょう。

しかし、法律のルールでは「子ども3人は、1株について3分の1ずつの持ち分で、300株すべてを共有(準共有)する」となります。

②権利行使者の指定と通知

長男・次男・三男が共有する300株について議決権を行使するためには、あらかじめ「議決権を行使する者」1名を選んで会社に通知することが必要です。

③遺産分割

相続によって発生した「長男・次男・三男が300株を共有している状態」を解消するためには、遺産分割の手続が必要になります。

④株主名簿の書き換え

遺産分割協議が成立して株式を相続する人が決まった場合は、その旨を会社に通知して株主名簿を書き換えます。以降は書き換え後の株主名簿に従って株主総会を行うことになります。

⑤遺言書がある場合

以上は遺言書がないことを前提にしていますが、遺言書で株式を相続する人が指定されていれば、遺言書に従って株主名簿を書き換えるだけです。

社長の相続=代表取締役の選任

法律上“社長”という地位はないので、“社長の相続”とは“代表取締役の相続”ということになります。

①代表取締役は相続できない

法律のルールでは、代表取締役が死亡するとその瞬間に代表取締役がいない状態になるので、“代表取締役”を相続することはできません。

②事実上”代表取締役”の地位を相続する方法

代表取締役は取締役の代表であり、取締役会で決定します。

また取締役は株主総会で決定しますが、その場合に必要な株式数は株主総会に出席した株式数の過半数です。

そのため事実上社長の地位を相続させたいのであれば、“相続によって次の社長にしたい人”が会社の株式の過半数を取得している状態を作れば良いということになります。

なぜなら、株式の過半数をもっていれば、自分と自分が代表取締役になることに賛成する人だけを取締役に選任することができるからです。

③登記

代表取締役の住所氏名は登記事項なので、新たな代表取締役を選任したら登記をしなければなりません。

会社の相続で発生する問題

遺言書がない場合、以下のような問題が生じることがあります。

後継者が代表取締役になれない

<ケース>
●相続人は長男・次男・三男
●発行済み株式が500株、うち父親が300株、長男が200株を保有
●社長は父親、長男は専務。父親は長男に会社を継いでほしいと考えている

<問題点>
前述のとおり「長男が相続で父の300株の3分の1を取得し、元々もっている200株とあわせて合計300株の議決権をもつ」というのは法律上間違っています。

父のもっていた300株は相続により、長男・次男・三男が3分の1ずつ共有します。

仮に次男と三男お互いの結託に賛成すれば共有持分の過半数となるので、次男と三男が結託して「300株の議決権は次男が行使する」と決定できます。

そうすると、長男は元々もっている200株しか議決権行使ができないので、300株の議決権を行使する次男に勝つことはできず、株主総会は次男の意向で決定することになるのです。

その結果、「後継者に予定していた長男が社長になれない」、「会社の内部留保を配当金として支払ってしまい、運転資金が不足する」という結果になりかねません。

会社が活動できない

<ケース>
●父親が代表取締役、取締役は1人だけ
●父親が全ての株式を保有
●相続人は長男と次男

<問題点>
相続が発生すると代表取締役だけでなく取締役も不在になります。

そのため株主総会で取締役を決めなければならないのですが、長男と次男の株式持分は2分の1ずつであってどちらも過半数ではないため、“議決権を行使する人”を決定できず株主総会を開くことさえできません。

その結果、会社を代表して契約をできる人が存在しないため対外的な取引が一切できない状態になります。

弁護士へ会社の相続を相談するメリット

争いを解決できる

先のような問題が発生した場合、遺産分割協議を行って問題を解決することが必要ですが、このような手続きはそもそも弁護士しか扱うことができません。

争いを見据えた対応

まだ争いが発生していない段階でも、争いに精通した弁護士に依頼すれば、争いにならないようにまたは争いを大きくしないように対応することができます。

事業承継の戦略を立てる

相続が発生してから争いにならないように対応することも重要ですが、争いを避けるために一番確実なのは、生前に事業承継を完了させるか遺言書を書いておくこととなります。

事業承継や相続では納税対策・節税対策も重要問題であるため、税理士が関与することが多いのですが、「争いにならないための戦略」を立てる専門家は弁護士です。

そのため税理士・弁護士の双方からアドバイスを受けて会社の相続対策や事業承継プランを組むことをおすすめします。

まとめ

何も対策をせずに会社を相続すると、最悪のケースでは会社の運営が止まってしまいます。

そのようなことにならないように、事前に弁護士・税理士のアドバイスを受けて事業承継を済ませておくか遺言書を作っておくことが大切です。

もし遺言書がなく事業承継が終わっていない場合は、争いが大きくならないようになるべく早い段階で弁護士に相談してください。

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PROFILE
高橋恭司

弁護士
相続事件を専門的に扱う弁護士。解決件数は700件以上。事業承継税制を利用した事業承継案件も多数取り扱う。弁護士・税理士向けの相続セミナーや書籍の執筆、社長向け相続セミナー、相続問題でのテレビ出演も多数あり。

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