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赤字会社でも株式譲渡を行える? 適切な株式譲渡の行い方とは

赤字会社でも株式譲渡を行える? 適切な株式譲渡の行い方とは

株式譲渡とは、売り手会社のオーナーがその保有株式を買い手(会社または個人)に売却して会社の経営権を譲り渡す、数あるM&A(企業の合併や買収を行うこと)手法の一つです。

その手続き方法はほかの手法に比べて簡易(ただし上場企業は除く)です。

1.双方が合意した内容の株式譲渡契約書を締結する
2.株式の対価の支払いを行う
3.支払い終了後、株主名簿の書き換えを行う

ことで終了となります。そのため中小企業が行うM&Aでは最も多く行われています。

赤字の定義とは

一般的に“赤字”とは、ある一定期間内の区切りの中で得られた収入よりも支出の方が多い状態をいいます。

その認識で“会社の赤字”を見た場合、「倒産するのではないか?」と考えるかもしれませんが、赤字でも倒産せずに継続している会社は多く存在します。

その理由は、“今年の収入”が赤字でも“前年までの収入”が黒字であれば会社の継続は可能であり、別事業で得た利益やオーナー自身の資金提供、借入金などで赤字補てんが可能だからです。

また、運送業などの減価償却が多い業種では経理上は赤字でもキャッシュフローでは黒字の場合もあります。

会社でいう「赤字=倒産」とは「事業を行う上での運転資金がなくなった状態」を指すのです。

赤字会社を株式譲渡できるのか

買い手企業が会社を買収する理由の多くは、売り手企業が所有する既存のノウハウや特許技術、営業拠点などの権利や優秀な人材を獲得することにより、買い手企業の事業発展につなげるためです。

そのため売り手企業からすると、買い手企業の需要があれば赤字会社でも株式譲渡で売却することは可能です。

赤字会社を株式譲渡するメリットとデメリット

ここでは、赤字会社の株式譲渡について売り手企業と買い手企業それぞれのメリットとデメリットについて説明します。

<売り手企業のメリット>

1.会社の借入金や資金繰り、連帯保証などからの解放

場合によっては、オーナーに譲渡代金が入る、会社に残り報酬が出る、ということもあります。

2.会社の存続ができる

対外的には株主が変わるだけで、売り手企業が持っている権利義務(資産・負債・契約関係など)はそのまま買い手企業に承継されます。そのため、従業員や取引先に対する個別の承認は必要ありません。

3.手続きが簡単

買い手企業との話がまとまれば、比較的簡単な手続きで譲渡できます。

<買い手企業のメリット>

1.買収の資金が安く抑えられる

売り手企業には借入金がある場合が多いため、借入金などの負債を負う代わりに買収資金は安くなる傾向があります。

2.人材・事業拠点・ノウハウなどの獲得

売り手企業の従業員や取引先・商材・技術・営業拠点・許認可などをそのまま引き継ぐことにより、優秀な人材・新たな事業拠点・ノウハウなどが獲得可能となります。その結果、事業の改善や既存事業との相乗効果による発展が期待できます。

3.手続きが簡単
ほかのM&Aの手法に比べ短期間でのM&Aが可能なため、事務手続きなどの負担が軽く済みます。

<売り手企業のデメリット>

1.株式の取りまとめが必要なケースがある

買い手企業から、オーナーが所持している保有割合以上の株式取得を求められた場合や、株式が複数の株主により分散しているケースでは、自分が保有しているもの以外の株式を取りまとめ、その後に譲渡を行う必要があります。

2.譲渡に関する諸条件について、オーナーの希望通りに行かないケースがある

例えば譲渡価格の引き下げなど、買い手会社に譲渡条件を下げられてしまうことがあります。

<買い手企業のデメリット>

1.売り手会社の権利義務を包括的に引き継ぐリスクがある

買い手企業は、売り手企業が事業に関して持っている権利義務の全部を包括継承します。そのため、買い手企業が把握していなかった新たな負債や簿外帳簿などが露見した場合でも、その権利を含めて引き継ぐことになります。

2.追加の買収資金が必要になる場合がある
赤字会社でも将来性や技術、ブランド力を持っている場合は売却価格が高くなることがあります。

赤字会社を株式譲渡する際の注意点

株式譲渡で、買い手企業は売り手企業の簿外帳簿などを含めた負債を包括的に引き継ぎます。

そのため、買収手続きに入る前に売り手企業に対するデューデリジェンス(買収前に行う買収対象企業の調査)を綿密に行い、その上で適切な買い取り価格を算出することが大切です。

また、買収後の事業展開や資金調達などについても、自社の事業を悪化させることがないようにあらかじめ計画を立てておく必要があります。

まとめ

株式譲渡で赤字会社を買収する場合に大切なのは、まず買い取り目的を明確にすることです。

そしてメリットとデメリットを比較し、メリットが大きい場合に買収を行うことになります。

その判断材料となるデューデリジェンスなどについては専門家に相談・依頼するのもひとつの方法でしょう。

PROFILE

FP・社会保険労務士 木村政美

2004年に、行政書士・社会保険労務士・FP事務所の「きむらオフィス」を開業。2017年より、ダイヤモンドオンラインにてコラム連載を持つ。年金や個人のマネープランの相談・講習、企業向けのメンタルヘルス研修など幅広い分野で活動している。

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