手段と目的。
何か達成したいことがあるから独立・起業をするのか。はたまた、独立・起業そのものが目的なのか——。
独立・起業における目的の設定は、開業後の人生を大きく左右することでしょう。
今回お話を伺ったのは、マンガ家/イラストレーターのなつきゆかさん。
現在『おにいのカノジョに恋をした僕』という作品をLINEマンガにて連載中のなつきさんですが、実はもともとはイラストレーターでした。そしてイラストレーターからマンガ家へ転身したのには、ある“目的”があったからだそうです。
今回はなつきさんのキャリアを振り返るとともに、マンガ家になった理由と目的、そして代表作『おにカノ』へ懸ける想いを伺いました。
なつきゆかさん
マンガ家/イラストレーター
幼い頃からイラストを描き始めるが、高校時代にある理由からイラストを描かなくなってしまう。高校卒業後、プログラマーとして就職。就職してから3年半後、イラストレーターになることを決意し再び絵を描き始める。2011年にイラストレーターとして独立。
その後しばらくはイラストの仕事をしつつ、Twitterにてストーリー性の強いイラストを描き始める。そのイラストから人気を博し、始まったのが『おにいのカノジョに恋をした僕』。現在は同作品をLINEマンガにて連載中。
イラストを描き溜めたノートを破り捨てられた——。なつきさんがプログラマーになり、再び絵の世界に戻ってくるまで
——現在マンガ家として活躍されているなつきさん。絵を描き始めたきっかけはなんでしょう?
きっかけは特にありません。物心ついた時からもう、絵を描くことが大好きでした。家でも学校でも、ずっと絵を描いていたのを覚えています。
だからもともとマンガ家やイラストレーターなど、絵に関する職業に就きたいと思っていました。でも家族に「絵では食べていけない」と言われ続けて、諦めてしまって。
そして高校生の時に、絵を描くこともやめてしまったんです。
——なぜでしょう?
ある日家に帰ると、今までノートに描いてきたイラストやマンガを家族に全て破り捨てられていました。「まだこのノート、使えるやろ」って、何も描かれていないページだけを残して渡されて。
勝手に中を見られたことも、描いてきたものを失ったことも、怒りすら通り越して「無」になり。それがきっかけで絵を描くことをやめてしまいました。
——なんと言ったらいいのでしょうか……。その後は?
高校を卒業してすぐプログラマーとして就職しました。もともとPCを触ることも嫌いではなかったですしこの先もPCの知識は役に立つだろうと思って。
高校もIT系に強い学校に進学して、その流れでプログラマーになりました。大学や専門学校に行かなかった理由は、早く家を出て自由になりたいという気持ちが強かったからです。
その会社には3年半ほど勤務して退職しました。仕事は嫌いではありませんでしたが、人間関係に疲れてしまって。
——そして再び絵の世界に戻ってきた、と。
はい。会社をやめて何をしようかを考えた時に「また絵を描きたい」って思ったんです。もう家は出ていたし、今度こそやりたいことをやって生きていきたくて。人間関係にも疲れてしまったので、家で誰とも会わずにできる仕事がしたかったんですよね。
とはいえ高校時代から数年間、絵を描いていなかったので正直最初の頃の絵はひどかったです(笑)。
それでも「やりたいことができなければ、生きている意味がない」と思っていたので、貯金が尽きて食べていけなくなったら死ぬくらいのつもりで、がむしゃらに。安いイラストの案件をこなしながらいろんなコンペに応募していました。
そして貯金残高数千円、いよいよ来月の家賃が払えない……というところで乙女ゲームのキャラクターデザインが決まりどうにかなりました。
会社をやめて約1年後のことでした。