近年は産業構造の変化や後継者不足によって事業継続が難しくなり、M&Aで会社を第三者に譲る企業が増えています。
他社のビジネスを取り込み自社の成長を図るなどの目的でM&Aを活用する企業も増えてきました。
そこで今回は、M&Aのプロセスをステップごとに解説していきます。
M&Aとはなにか?
M&Aは「Mergers(合併) & Acquisitions(買収)」の略称で、「合併と買収」を意味します。
日本では買収(企業が別の企業の経営を支配することを目的として株式を取得すること)の意味で使われることが多いためピンとこない方もいるかもしれませんが、合併(2つ以上の企業が1つの企業に統合されること)もM&Aなのです。
ステップ1:M&Aを行う目的を明確にする
まずはM&Aをする目的を明確にします。銀行や証券会社などからすすめられた、という理由からM&Aを行うケースも多々ありますが、自社が抱える経営課題に合うかどうかを判断するためにも、M&Aを行う目的を明確にします。
M&Aの代表的な目的は、おもに以下の4つです。
1.優秀な人材の確保
自社が単独で成長する以上のスピードを得るために、事業買収によって専門性の高い人材を獲得することができます。
2.市場規模の拡大
同業他社の事業買収により、現在の既存事業における市場シェアの拡大を図ることができます。
3.新規事業分野への進出
異業種の事業買収により新規事業に進出して、自社にはない他社の最新技術や長年の営業で蓄積された熟練の技術を獲得することができます。そのため新規事業進出におけるリスクを避けたり、事業が軌道に乗るまでの時間短縮が見込めます。
4.後継者不足による事業承継
社員や経営者の関係者に事業承継すべき人材がいない場合、M&Aによって第三者に譲渡することがあります。
ステップ2:M&Aの対象となる企業を探す
次に、M&Aの方法を決めて対象となる企業を探します。
M&Aにはおもに3つの方法があります。
1.国が運営している「事業引継ぎ支援センター」に相談する方法
47都道府県に設置されている公的機関「事業引継ぎ支援センター」の事業の1つに、後継者不足の中小企業と創業希望の個人をマッチングする「後継者人材バンク」があります。
上手に活用すれば優良な事業を買収できる可能性も高くなるでしょう。
注意点は実施している範囲が狭いことと、公的機関であるため、かゆい所に手が届くようなサポートが期待できないことです。
2.銀行・証券会社・弁護士などに相談する方法
普段からの付き合いがある銀行や証券会社、弁護士などに相談する方法もあります。
自社の経営状況を良く知っているため相談しやすい反面、M&Aの専門ではないため売却を考えている企業のネットワークが弱く、希望に合う企業が見つかりにくい点に注意しましょう。
3.民間のM&A仲介会社に依頼する方法
民間のM&A仲介会社に依頼する場合、幅広いネットワークで相手先を見つけることができます。
初期段階の相談からM&Aの成立まで専門的なアドバイスを受けることができるので、成約までの期間が短くなり、成立する確率が高まります。
注意点として、仲介会社の見極めに時間を要する可能性が挙げられます。
普段からの付き合いがないぶん、自社の経営状況や課題を理解して適切な相手企業とのマッチングを行ってもらえる仲介会社を選ぶことが大切です。
ステップ3:M&Aの具体的な手続き
民間の仲介会社に依頼する標準的なM&Aの手続きは以下のとおりです。
1.買収・合併希望事業条件を提示
買収希望事業の規模、業務内容、買収費用、自社の企業概要などを仲介企業に提示します。
2.該当企業情報提示
仲介会社を通じて、希望条件に合う複数のM&A希望企業から匿名で事業の概要(収益状況・業種・所在県など)の提示を受け、次に進む企業を判別します。
3.秘密保持契約書を結ぶ
仲介会社と秘密保持契約書を結び、M&A希望企業の詳細情報の提示をしてもらいます。秘密保持契約書を結ぶことによりM&A希望企業の秘密保持に対する責任を負います。
4.M&A希望企業と交渉
仲介会社を通じて、お互いの条件提示などを行い、具体的な事業買収の話し合いに入ります。この時点で相手企業の情報を詳細に調査する手続きも並行で進めます。
5.株主総会の特別決議を経て最終合意
M&Aを経営陣で合意した後に、株主総会の特別決議を得る必要があります。
M&Aを行う際の注意点
1.時間がかかる
M&Aでは、買収・合併した事業の債権・債務、雇用契約について存続企業側が個別に契約し直す必要があるため、多大な手間がかかります。
2.リスクがある
買収では簿外債務や不要資産ごと買い取ることになるので、重大なリスクを抱えることもあるでしょう。
また、買収ではのれん(ノウハウや将来性、ブランド力などの無形資産)を買収金額に上乗せすることが多いですが、のれん代は毎年減価償却費として費用計上するので、償却費を上回る利益が出なければ、費用が利益を上回り経営が悪化する恐れがあります。
合併ではお互いの株式の評価や合併比率で揉めてしまい、合併が白紙に戻ることも考えられます。
まとめ
M&Aは上手に活用するとシナジー効果や経営基盤の強化につながりますが、誤ると経営基盤が弱まるなどの逆効果にもつながってしまうので、慎重な対応と知識が必要です。
そのためには、法的な専門知識の豊富なM&Aアドバイザー、弁護士などの専門家とともに進めることをおすすめします。