企業における資金調達は、「負債を増やす」「資本を増やす」「資産の売却」の3つに大別できます。資金調達の中でもポピュラーで、大きな額の調達に向いているのは融資ですが、資本を増やしたり出資者を募ったりする選択肢もあるでしょう。本記事では企業における資金調達の中から、扱いやすいものを6つ紹介します。それぞれどのような企業に向いているのか、窓口はどこにあるのかも紹介します。
企業における資金調達とは?
資金調達とは、新しく企業や事業を起こしたり、設備投資をしたりするための資金を外部から集めることです。時には苦境の中で事業を維持するために、資金調達をすることもあります。
企業における資金調達にはどんな方法があるのか、メリットやデメリットには何があるのかを、まずは簡単に確認しておきましょう。
3種類の資金調達
企業における資金調達は、主に次の3種類に分けられます。
【デッドファイナンス】
負債を増やして資金調達する方法で、「借り入れ」や「債券発行」などがこれにあたります。具体的には次のような方法があります。
・融資を受ける
・ビジネスローンを組む
・私募債を発行する など
【エクイティファイナンス】
株式発行により資金調達する方法で、次のような方法があります。
・出資を受ける
・出資者を公募する
・株主割当増資する など
【アセットファイナンス】
有形・無形の資産を売却し、現金化する方法で、次のような方法があります。
・ファクタリングを行う
・不要な設備や不動産を売却する
・リースバックをする など
資金調達をするメリット
資金調達をするメリットは、足りない資金をスピーディに調達できることです。選ぶ方法によって資金調達が完了するまでのスピードは異なりますが、資金を貯めるよりはずっと早く、資金を集められるでしょう。
ビジネスでは先行投資が必要なタイミングも多く、お金が貯まるのを待っていてはチャンスを逃してしまいかねません。
方法によっては、資金調達や、そのための審査に通ることが社会的な信用アップにつながったり、資金調達先から経営上のアドバイスを受けられたりといったメリットもあります。
資金調達をするデメリット
資金調達をするデメリットは方法により異なりますが、基本的に「負債が増える」ことでしょう。融資を受ければ、借りた金額のほかに金利も支払わなければなりません。
返済不要だったり、負債が増えなかったりする資金調達もありますが、これらの方法にも次のようなデメリットがあります。
ファクタリング:負債は増えないが、実態は借り入れに近く、手数料の支払いと調達した分の一括返済が必要
補助金・助成金:返済不要だが、手続きや審査に時間がかかる
出資を受ける:返済不要で経営上のアドバイスももらえるが、自由に経営できなくなるリスクがある
企業における資金調達の方法
企業における資金調達の方法には、さまざまなものがあります。その中でも中小企業や小規模事業者でも使いやすい方法には、次のようなものがあります。
【企業における資金調達の方法】
・融資を受ける
・資本を増やす
・資産を現金化する
・補助金、助成金を活用する
・クラウドファンディングを活用する
・ファクタリングを活用する
それぞれ、どのような方法なのか、メリット・デメリットとともに確認していきましょう。
企業の資金調達1.融資を受ける
企業における資金調達の1つ目は、「融資を受ける」方法です。簡単にいえばお金を借りる方法で、まとまった資金をスピーディに調達できるでしょう。
【融資を受けるメリット】
・ほかの方法よりもスピーディに、まとまった資金が調達できる
・手数料の安いものや返済期間の長いものが多く、返済計画を立てやすい など
【融資を受けるデメリット】
・金利がかかる
・実績の少ないうちは審査に通りづらい など
金融機関やビジネスローン
金融機関から融資を受けたり、ビジネスローンを利用したりする方法なら、スピーディに資金調達ができるでしょう。それなりの実績がある中小企業は金融機関からの融資がおすすめですが、スタートアップや個人事業主のような小規模事業者には審査に通りやすいビジネスローンがおすすめです。
ただ、ビジネスローンは金融機関からの融資に比べて、金利が高い傾向にあります。「いつまでに資金調達しなければならないのか」を念頭に、金利や返済期間、借入可能な額を比較して判断しましょう。
日本政策金融公庫からの融資
特に企業の創業時におすすめなのが、日本政策金融公庫から融資を受ける方法です。日本政策金融公庫は小規模事業者や個人企業、中小企業などを支援するため、国が設置した機関です。公的機関からの融資であるため、安心して利用できるでしょう。
資金の用途により異なりますが、保証人や担保は原則不要で、2023年3月時点だと金利も担保ありで0.3%~、無担保で0.75%~と低いです。金利が安く、返済期間も資金の用途次第では長めの設定になるので返済の負担を抑えられるでしょう。
知人からの借り入れ
ほかの方法で資金調達できなかった場合や、あと少し資金が足りないという場合は、知人から借り入れるのもいいかもしれません。知人からの借り入れなら基本的に無利子ですし、返済期間も融通してもらいやすいでしょう。
ただ、この方法で多額の資金調達は期待できません。返済が立ち行かなくなるのはもちろん、「お金を貸してくれ」と頼むだけでも、人間関係にヒビが入るかもしれません。できるだけ選びたくない方法ですし、お願いするとしても、ビジネスを興したことのある先輩や知達に依頼した方が、理解を得やすくて無難でしょう。
企業の資金調達2.資本を増やす
企業における資金調達の2つ目は、「資本を増やす」方法です。これは先述の「エクイティファイナンス」に分類され、具体的には株式を発行することで資金を調達します。
新株を発行し、それを購入してもらえれば、購入してもらえた分だけ資金が増えます。すでに株式という対価を渡しているため、返済の必要もありません。
返済不要で、まとまった資金を調達できる方法ですが、株式の保有比率が変わってしまうのはデメリットといえます。株式の設計によっては経営権を失ってしまうこともあります。
スタートアップでよく用いられる「エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける方法」も、この株式発行による資金調達です。これらの方法における出資者の目的は、企業価値が低いうちに株式をたくさん購入し、その価値が上がってから売却した際に生じる「差益」による利益を得ることです。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからは経営に関するアドバイスをもらえますが、相性が悪いと「余計な口出しをされて、自由に経営できない」と感じるかもしれません。
【資本を増やすメリット】
・まとまった額の資金調達ができる
・返済が不要 など
【資本を増やすデメリット】
・株式の購入者が現れるとは限らない
・経営権に悪影響を及ぼすリスクがある など
企業の資金調達3.資産を現金化する
企業における資金調達の3つ目は、「資産を現金化する」方法です。これは至ってシンプルな方法で、企業内の不要な設備や不動産を売却し、資金に変える方法です。
不要な資産を売却する以外に、「リースバック」という方法もあります。リースバックとは、資産を売却した後に、売却先と、売却した資産の賃貸契約を結び、レンタル料を支払いながらそのまま資産を使い続ける方法です。例えば自社保有の事務所を1,000万円で売り、その後に月10万円の賃貸契約を結べば、事務所を失うことなく1,000万円の資金調達ができます。
ただ、資産の売却にしてもリースバックにしても、何を売るかは慎重に見極めなければなりません。例えば社用車を売ったことで営業活動の効率が落ち、買い戻すことになったとします。たいていの場合、売却額よりも購入額の方が大きいため、その差額分の損失が出てしまいます。
【資産を現金化するメリット】
・返済が不要
・経営権や負債などへの悪影響がない など
【資産を現金化するデメリット】
・大規模な資金調達には向かない
・買い戻しが必要になるリスクがある
・売却価格は実際の価値よりも低くなることが多い など
企業の資金調達4.補助金・助成金を活用する
企業における資金調達の4つ目は、「補助金・助成金を活用する」ことです。補助金・助成金は国や地方自治体による制度で、起業や事業の拡大・維持にかかる費用を支援するためにつくられました。支援制度であるため返済不要ですし、出資を受けたときのように、経営権が失われるリスクもありません。
資金を調達するには国や自治体の審査に通らなければなりませんが、審査をクリアすれば「公的機関が出資してもいいと認めた企業」ということになり、社会的な信用アップにつながるでしょう。
【補助金・助成金のメリット】
・返済が不要
・公的制度であるため安心
・審査に通ることで社会的信用が高くなる など
【補助金・助成金のデメリット】
・手続きに時間がかかり、申請から受給まで時間がかかる
・受給できる要件が決まっているため、常に利用できるわけではない
・補助金は予算が決まっているため、要件を満たしても受給できないことがある など
IT導入補助金
IT導入補助金は、ソフトウェアの導入やクラウドの年間利用料など、ITツールやそれを使うための費用を補助する制度です。補助枠により補助金額は異なりますが2023年3月時点では、最大3,000万円まで補助してもらえます。
どのような業種でも、生産性向上にはITツールが欠かせません。リモートワークや非対面化を推進するためのITツール導入も対象になるため、利用できる企業は多いでしょう。
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
雇用調整助成金は、「新型コロナウイルス感染症の影響」により令和2年4月1日から令和5年3月31日までの間に事業縮小をした場合、従業員の雇用維持を図るために、雇用調整(休業)をした事業主に、休業手当の一部を助成してくれる制度です。この制度は令和5年3月31日で経過措置が終了となります。もし該当している場合は手続きを急ぎましょう。
支給額は従業員1人あたりで計算され、企業規模により最高8,355~9,000円が支払われます。
新しい生活様式による影響を受けやすい「飲食業」や「小売業」などの企業にとっては、特に活用しやすい助成金でしょう。
「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」(厚生労働省)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、雇用の少ない地域に事業所を作る費用や、その地域に住む人を採用するための費用を助成する制度です。事業所の設置費用や採用人数に応じて、48万~1,600万円を助成してもらえます。
助成額が大きいこと、新事業所の設置や採用にはたくさんの費用がかかることから、ぜひ利用したい制度です。
企業の資金調達5.クラウドファンディングを活用する
企業における5つ目の資金調達は、「クラウドファンディングを活用する」ことです。返済不要なうえに、商品やサービスのプロモーションにもなる一石二鳥な方法です。ただ、その分、資金調達の難易度は高く、時間も労力もかかります。
クラウドファンディングでは、商品・サービスや企画などをプロモーションし、それを応援して出資してくれる個人を募ります。支援者には出資額に応じたお礼の品や権利などを提供しなければなりませんが、株式を渡すわけではないため、経営上のデメリットはありません。
「出資してもらう代わりにお礼の品を提供する」という特性を活かし、クラウドファンディングを通販のように使う企業もあります。例えば自社ブランドの小物を1万円でクラウドファンディングに出せば、出資という名目で販売できます。これをテストマーケティングとして行っている企業もあるようです。
【クラウドファンディングのメリット】
・返済が不要
・資金調達の額を調整しやすい
・専門家のサポートを受けながら進められることもある
・商品やサービスのプロモーション、テストマーケティングにもなる など
【クラウドファンディングのデメリット】
・出資者にお礼の品や権利を提供しなければならない
・プロモーションのスキルが求められ、時間と労力がかかる
・利用するサービスによっては目標額に届かないと、集まっていた資金も受け取れない など
Kibidango
Kibidangoはサポートの充実したクラウドファンディングで、プロジェクトの成功率は約8割にもなります(2020年1年間のデータを元に算出)。
成功率が極めて高いのは、サポートスタッフの質が高いからです。Kibidangoは自社でも200件以上のプロジェクトを立ち上げ、それをプロモーションしてきました。いわば「実地で培ったノウハウ」があり、それをサポートに活かしているのです。
CAMPFIRE
CAMPFIREは圧倒的な実績を持つクラウドファンディングです。累計プロジェクト数は、7.4万件以上、支援資金総額は700億円超え、支援者数は930万人(2023年3月時点)にもなります。圧倒的な実績があることは、安心につながるでしょう。
プロジェクトを0円で掲載できること、プロモーションのためのページを画像とテキストで簡単に作れるのも、クラウドファンディング初心者にとっては安心です。
Makuake
Makuakeは新商品のテストマーケティングにおすすめのクラウドファンディングです。アクセスユーザーが1,200万人(四半期集計 2023年3月時点)おり新規顧客やファンを獲得しながら、そのデータに基づき販路拡大の戦略を立てられます。
クラウドファンディングの先にある「一般販売」を視野に入れて、資金調達とテストマーケティングを進められます。
企業の資金調達6.ファクタリングを活用する
企業における資金調達の6つ目は、「ファクタリングを活用する」ことです。ファクタリングは売掛債権(請求書)を売却し、その金額内で資金調達をします。
例えば今が3月10日で、4月末日に払い込まれる100万円分の請求書があったとします。約2ヵ月待てば100万円が入ってくるわけですが、今すぐ50万円が必要になったとしましょう。
このような「つなぎ資金」の調達に役立つのがファクタリングです。
【ファクタリングのメリット】
・資金調達までが早い
・負債は増えない
・自社ではなく、取引先(請求先)の信用情報を基に審査される
・二社(自社とファクタリング会社)間ファクタリングなら、取引先に知られない など
【ファクタリングのデメリット】
・手数料が割高
・返済は一括 など
ビートレーディング
ビートレーディングは豊富な実績を持つファクタリングです。取引実績は3.7万社以上、累計買取金額は900億円以上(2022年3月時点)です。実績の多い企業のサービスは安心して利用できるでしょう。
審査も最短5時間で、入金も即日~3日程度と早いです。「ファクタリングは初めてだが、迷っている時間がない」という企業におすすめです。
PayToday
PayTodayは圧倒的な審査スピードを誇るサービスです。独自のAIを活用した審査は、最短30分での入金を可能にしました。「とにかくすぐに資金が必要」という企業におすすめです。
手数料も1.0%~9.5%と低めに、明確に設定されているため、利用しやすいでしょう。
企業の資金調達は、状況や目的に応じて選ぼう
企業における資金調達には、さまざまな方法があります。どれを選ぶかは調達額にもよりますが、自社の社会的信用や資金調達の目的など、俯瞰した視点を持ちましょう。
例えば補助金や助成金はどんなケースでも最初に検討したい方法です。ほとんどのケースで返済不要(調達額に対して利益が出すぎると一部返済となることもありますが)となり、経営権を脅かされるようなリスクもありません。
ただ、資金調達の目的によっては補助金や助成金が利用できないこともあるでしょう。公募が終了する可能性もあります。そんなときは、調達額が大きいなら融資や資本による資金調達を、小さいならファクタリングや知人からの借り入れなどが選択肢になるでしょう。
新商品の開発が目的なら、テストマーケティングを兼ねてクラウドファンディングをするのも検討したいところです。
まずは、自社に合う資金調達方法を把握しておけば、いざというときに慌てなくて済むでしょう。
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<文/赤塚元基>