起業家とは、自分で事業を興す人のことです。特に、根深い社会課題を解決しようとしたり、今までにない面白い何かを創ろうとしたりする人を指して“起業家”という言葉を使う人も多いでしょう。本記事では起業家の意味や似た言葉との違い、起業家として成功する人の特徴について解説します。起業家としての精神や能力を育むために、今日から始められる6つのことも紹介します。
起業家とは?よく似た言葉との違いは?
起業家とは自分で事業を興す人のことで、似た言葉として“企業家”“実業家”“事業家”などが挙げられます。どれも事業を興したり進めたりする人のことですが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。
起業家とは
起業家とは自分で事業を興す人のことで、アントレプレナーとも呼ばれます。事業を承継する人や、既存の企業の社長などは、起業家とはいいません。斬新なアイデアを出す人や、ベンチャー企業・スタートアップを立ち上げる人を指して起業家と呼ぶケースが多いですが、起業するすべての人が起業家にあたります。
企業家とは
企業家とは、企業を経営する人のことです。英語にすると「entrepreneur(アントレプレナー)」であり、起業家と同じと感じるかもしれませんが、企業家は“すでに企業を立ち上げて経営している人”を指します。
明確な定義があるわけではありませんが、“企業をどう展開させていくか先を見据え、アクティブに経営を進めていく人”を企業家と呼ぶことが多いようです。
実業家とは
実業家とは、主に生産・流通・販売などの事業を進めている人のことです。次に紹介する“事業家”と比べると、事業の範囲が限定されているのが特徴でしょう。特に複数の事業を立ち上げている人を指して、実業家と呼ぶことが多いです。
事業家とは
事業家とは、事業を行う人のことです。起業家や企業家に近い意味の言葉ですが、特に“事業を進める能力の優れた人”を指すことが多いようです。
【10の特徴】起業家として成功する人はここが違う!
起業家として成功する人とは、どのような人でしょうか。起業する領域やタイミング、一緒にビジネスを進めていく仲間などによって、求められる資質は変わってきます。
これから紹介する10の要素は、起業家として成功するために大切なことです。すべての資質を備えている必要はありませんが、自分はどの要素が強い・弱いのかを知り、自分に足りないものを身につけていきましょう。
自分の利益よりも、相手の利益を優先している
起業家として成功する人の1点目の特徴とは、“自分の利益よりも相手の利益を優先している”ことです。どのようなビジネスでも、クライアントやエンドユーザーに利益を出さなければいけません。自分にとって利益のない商品やサービスにお金を出してくれる人などいないからです。相手が利益を得られることで、自分も利益を得られるのです。
目先の利益を確保することも大切ですが、長期的な目線を持つことも欠かせません。相手の利益とは何かを考え抜き、ときには目先の利益を犠牲にしてでも、それを提供するための工夫を凝らすことが大切です。
自己管理を徹底している
起業家として成功する人の2点目の特徴とは、“自己管理を徹底している”ことです。疲れたときや苦境に立たされたときでも自分を律し、やるべきことをやり続けなければ、事業を大きくすることはできないでしょう。
成功する起業家や出世する会社員には、運動の習慣がある人が多いといいます。昔から“健全な精神は健全な肉体に宿る”というように、運動を習慣づけることで、自己管理能力を高められるでしょう。
とにかく広くアンテナを張っている
起業家として成功する人の3点目の特徴とは、“とにかく広くアンテナを張っている”ことです。起業家として成功するためのヒントは、どこにあるかわかりません。自分の事業とは全く異なる領域の成功例を参考にし、ビジネスを立ち上げる人もいます。
社会全体や各業界の動向、トレンドなどをキャッチし、そこから学ぶ姿勢が大切です。
よく調べ、よく考えている
起業家として成功する人の4点目の特徴とは、“よく調べ、よく考えている”ことです。起業家として成功するには、受け身でいてはいけません。気になることはすぐに、理解できるまで調べましょう。
世の中には、調べても答えが出てこないことの方が多いです。答えのない問題にぶつかったときは、情報を集めて整理し、自分なりの答えを出すことが大切です。調べてわかることや自分の経験を組み合わせて仮説を立て、仮説が正しいかどうかを検証することで、起業家としてのセンスが研ぎ澄まされていくでしょう。
適度な自責思考を持っている
起業家として成功する人の5点目の特徴とは、“適度な自責思考を持っている”ことです。自責思考とは、何か問題が起きた際に、その原因を自分自身に求める考え方です。これとは反対に、原因を他人のせいにするような考え方を“他責思考”といいます。
本当に自分に原因があるかどうかはさておき、自責思考でいることは大切です。他人を変えるのは難しいですが、自分を変えるのは自分次第だからです。例えば他人がミスをしたときでも、「自分がこのように指示していたらミスは起こらなかったかもしれない」と考えることで、再発防止に向けたアプローチができます。
ただ、過度な自責思考は自分を追い詰めることにつながりかねません。何でもかんでも自分のせいにするのではなく、「自分にできることはないか?」「自分に改善点はないか?」と考える姿勢を持つことが大切です。
仲間意識や責任感が強い
起業家として成功する人の6点目の特徴とは、“仲間意識や責任感が強い”ことです。チームを組んで起業するなら、起業家はリーダーとして、メンバーをまとめあげなければなりません。メンバーが失敗したときは、リーダーとして失敗した本人と迷惑をかけたクライアントへのアフターケアをしましょう。
一人で起業するとしても、仲間意識や責任感は重要です。興した会社の社員は自分だけかもしれませんが、パートナーやクライアント、エンドユーザーはいるはずです。彼らを巻き込みながらビジネスを進めていくことで、自社のファンは増え、事業は加速度的に大きくなっていくはずです。
“迷ったらGo”で行動する
起業家として成功する人の7点目の特徴とは、「迷ったらGoで行動する」ことです。起業のためのアイデアを考えたり、事業拡大のためにリスクを取ったり、ビジネスを進めていると迷うことはたくさんあります。しかし、いつまでも迷っていては、ライバルに先を越されてしまうでしょう。
考えなしに決断を下すのはいけませんが、基本は“迷ったらGo”の精神で、スピーディに判断することは大切です。短時間で情報を集め、決断を下すことで、“起業家としての直感”も磨かれていきます。直感を磨くことで、判断の正確さとスピードも上がっていくでしょう。
リスクや失敗を楽しめるマインドを持っている
起業家として成功する人の8点目の特徴とは、“リスクや失敗を楽しめるマインドを持っている”ことです。起業家にはリスクを取らなければならない場面もありますし、成功よりも失敗が多いのが普通です。リスクを取ることを極端に恐れたり、失敗するたびに絶望したりしていては、身も心ももちません。リスクや失敗を楽しめるマインドを、少しずつでもつくっていきましょう。
何より、人は成功よりも失敗から多くを学びとります。“ただで転んでたまるもんか!”という精神で、失敗を次に活かしてみてください。
夢想家に見えて、実は現実主義
起業家として成功する人の9点目の特徴とは、“夢想家に見えて、実は現実主義”であることです。起業家は、世の中にまだないソリューションを創る人です。実現不可能に見えるアイデアを出し、世間から夢想家だと笑われることもあるでしょう。
しかし、起業家を夢想家と笑っている人が、イノベーションを起こしたり社会課題を解決したりすることはありません。
もちろん、その夢のようなアイデアを現実にするにはどんな技術が必要なのか、コストはどのくらいかかるのか、資金調達はどうするのか、どういう人が指示してくれるのか。現実を見て考えなければなりません。
夢想家としての熱い想いと、現実主義者としての冷静な視点を併せ持つのが、真の起業家といえるでしょう。
自分のことを深く理解している
起業家として成功する人の10点目の特徴とは、“自分のことを深く理解している”ことです。自分はどのようなことにやりがいを感じるのか、どのような強みと弱みがあるのか、まずは自己分析をしてみましょう。自分のことを深く理解することで、ライバルに負けない“自分だけの武器”が見つかるはずです。
何より、起業家はいくつもの困難を乗り越えていかなければなりません。自分のことを深く理解していなければ、熱量を維持できるだけのビジネスやアイデアを見つけられないでしょう。挫折から立ち上がったり、適度に休息を取ったりするためにも、自分のことを知るのは大切です。
起業家精神を育むには?今日からできる3つのこと
起業家として成功するためには、マインドがとても大切です。起業家精神を育むことができれば、スキルを身につけるための勉強にも身が入るでしょうし、ビジネスの支援者や仲間も見つかりやすくなるでしょう。
起業家精神はどうすれば育まれるのか、今日からできる3つのことを紹介します。
まずは自分の好きなこと、気になることを見つけよう
起業家精神を育む前に、まずは自分の好きなこと、気になることを見つけてみましょう。これは、ビジネスにつながるものでなくても構いません。“ビジネスになりそうなものを見つけよう”と考えると、視野が狭くなってしまいます。
ビジネスになりそうなものではなく、自分の好きなことや気になることを探してみるのをおすすめする理由は、今は何がビジネスになるかわからない時代だからです。好きなものや気になることへのアンテナを張ることは、起業するためにアンテナを張ることの練習にもなります。
ビジネスにならなくてもいいから、何かに没頭してみよう
好きなことや気になることを見つけたら、ビジネスにならなくてもいいので、それに没頭してみましょう。何かに没頭する経験は、起業家にとってかけがえのないものです。集中力や課題を見つける力、人を巻き込む力など、さまざまな能力が育まれるでしょう。
好きなことに没頭し、「もっとこうしたらよいのに」と考えていくうちに、好きなことがビジネスにつながるかもしれません。“好き”“気になる”という感情を起点にすることには、バイアスがかかりやすくなるデメリットもありますが、熱量を高く維持できるメリットもあります。
利益よりも、“面白いか”“人の役に立つか”で考えよう
起業家には、目先の利益を捨ててでも、顧客の利益を優先しなければならないときがあります。今のうちに、“自分の利益を後回しにする練習”をしておきましょう。
例えば起業のアイデアを思いついたら、それがお金になりそうかと考える前に、“面白いか”“人の役に立つか”を考えてみてください。面白くもなく、誰の役にも立たないものに、お金を払う人はいないでしょう。“面白いか”“人の役に立つか”の答えがどちらもNoなら、それはビジネスとして成り立ちません。
自分が”好きなこと”でも、ビジネスとして成り立たなければ意味がありません。切り口を変えることでニーズを見つけられないか、何かを足し合わせたらビジネスの種にならないか、自分が”好きなこと”と世の中のニーズをつなげられるよう、エンドユーザーに求められるサービスを考え抜きましょう。
起業家としての能力を身につけるには?日常の中でスキルアップを
起業家としての能力を身につけるために有効なのが、普段の生活や仕事に対する姿勢を変えてみることです。日常生活を、起業家としての能力を養うための“練習の場”にしてしまいましょう。
どのようなことを意識して日常生活を送ればよいのか、3つの心得を紹介します。
起業家としての質問のしかた・態度を身につけよう
起業家としての考え方を身につけるためにも、人を巻き込んでビジネスを行っていくためにも、質問のしかたや態度は大切です。質問のしかた・態度ができていないだけで、“この人は見込みがないな”と思われてしまうこともあります。
人に質問をする前に、まずは自力で調べたり考えたりしてみてください。調べてわかることを、人に聞いてはいけません。調べた結果、答えがわからなくても、自分なりに考えてみることはできます。
考えてもわからないことや、自分の考えに不安があるときは、相手に自分の考えを共有したうえで質問しましょう。「私はこう考えたのですが、あなたはどう思いますか?」「自分で調べたり考えたりしてみたのですが、この部分がどうしてもわからなくて…」といった聞き方をしてみてください。
自分なりに考えてみることで思考力が養われますし、周囲からの評価も高くなるでしょう。
経営者視点を養うなら、“副業”がおすすめ
経営者視点を養うためにも、リスクヘッジのためにも、まずは“副業”でスモールスタートするのがおすすめです。いきなり独立して起業してしまうと、うまくいかなかったときに後戻りができません。会社員としての収入も得ながら副業をする方が、気持ちにも余裕を持って事業を進めていけるでしょう。
余裕のないことが態度に出てしまうと、商談や営業も不利に働きます。視野も狭くなり、チャンスを逃すリスクも高くなります。副業として事業を進めるうちに人脈やスキル、経営者としての視点など、独立するときに役立つ資産が蓄積されていくでしょう。
日々の仕事に、主体性を持って取り組もう
ビジネスの練習は、やはりビジネスの場でするに限ります。会社員として携わる仕事に主体性を持って取り組むことで、起業家になった際に役立つ知識や経験も得られるでしょう。ここで大切なのが、経営者視点を持ちながら、会社員としての仕事に取り組むことです。
例えば、営業活動の際にも、売ろうとしている商材が自分で作ったものだと思ってみる。自分の成績ではなく、顧客の役に立つことを一番の目的にしてみるなど、気の持ち方だけでも学びとれるものはあるはずです。
起こしたいビジネスがある!起業家と社内起業家、どちらがおすすめ?
あなたには長年あたためていたビジネスアイデアがあり、いよいよ実行に移そうと考えているとします。「起業の準備も整ったし、そろそろ会社を辞めよう」と思っていたとき、会社が社内起業(新規事業)コンテストを開いたとしましょう。
今まで起業の選択肢は“会社を辞めて独立すること”だけだったのに、“社内起業家として、新規事業を起こす”という選択肢が加わったのです。
起業家(アントレプレナー)にも、社内起業家(イントレプレナー)にも、それぞれメリット・デメリットがあります。自分や、自分の興そうとしているビジネスにはどちらが向いているのか考えてみましょう。
起業家(アントレプレナー)とは
起業家(アントレプレナー)とは、組織に属すのではなく、組織のトップとして事業を興す人のことです。社内起業家と比べてリソースは少ないものの、ビジネスを自由に進めていける魅力があります。
【アントレプレナーのメリット】
・自由にビジネスを進められる
・自分の好きなメンバーでチームを作れる
・成功したときのリターンが大きい
【アントレプレナーのデメリット】
・イントレプレナーよりも、使えるリソースが少ない
・起業したばかりの頃は特に、信用面で苦労しやすい
・出資を受ければ、投資家の意向に沿わなければならない
アントレプレナー最大のメリットは“自由なところ”だといえますが、出資を受けるなら、その限りではありません。投資家と自分たちで意見が合わなくても、出資を受けている以上、彼らの意向には沿わなければなりません。
社内起業家(イントレプレナー)とは
社内起業家(イントレプレナー)とは、会社に属したまま、会社の新規事業としてビジネスを興す人のことです。起業家と比べて会社のリソースや信用力を活用できるメリットはありますが、ビジネスを進めるうえでの自由度は低くなります。
【イントレプレナーのメリット】
・人手や資金など、会社のリソースを活用できる
・会社が持っている信用力やノウハウなどを活用できる
・起業が失敗に終わっても、職を失ったり負債を抱えたりすることはない
【イントレプレナーのデメリット】
・会社の新規事業であるため、自由度が低い
・経営会議をクリアしなければならず、事業のスピード感は遅め
・新規事業コンテストをクリアしなければならず、そもそもハードルが高い
アントレプレナーとイントレプレナー、どちらを選ぶか迷ったら、“自由”と“会社の保有する信用力など”を天秤にかけてみるといいでしょう。自由に起業したいならアントレプレナー、会社の看板を活用できることに魅力を感じるならばイントレプレナーが、それぞれ適しています。
起業家とは、強い意志と人生を楽しむ姿勢を持つ人
起業家は新しく事業を興す人のことですが、ただ何となく事業を興すだけでは、“真の起業家”とはいえません。真の起業家とは、強い意志を持ってビジネスを進める人のことです。苦難や失敗も含めて人生を丸ごと楽しむ姿勢を持つ人こそが、真の起業家であり、成功するまで粘り続けられる人かもしれません。
起業家として成功するうえで最も大切なことは、斬新なアイデアでも尖った感性でもなく、“粘り強さ”です。リスクを恐れず、失敗から学び続けることで、起業家としてのセンスが研ぎ澄まされていきます。誰の、どのような課題を解決したいのか突き詰めて考えることで、事業としての説得力が増していきます。
まずは世の中を見渡してみて、興味の持てる課題、解決したいと思える課題を探してみましょう。インターネットで情報を集めるだけでなく、課題に苦しむ現場を訪ね、当事者意識を少しずつ高めていってください。
“誰のどのような課題を、なぜ自分が解決するのか?”という問いにハッキリと答えられるようになったら、その人はもう立派な起業家です。<文/赤塚元基>