起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第69回・3,580万円のブルーレイ
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
最近はTwitterなどのSNSを活用して、個人と企業(の担当者)がやりとりするようなことが増えてきました。
それだけではなく、企業同士で連絡を取り合って、何か新しいことを始めるような動きがあったりもします。
今回のクイズの話は、実際に実現はしなかったものの、企業どうしのTwitter上でのやりとりを多くの人たちが見届け、話題になった話です。
それでは解説します!
イエローハットとピザハット。そう、どちらも社名に「ハット」が入っていますよね。
イエローハットは、毎年8月10日を「ハットの日」と称して、いろいろなキャンペーンを実施していました。同じくピザハットも、8月10日ではないのですが「ハットの日」というキャンペーンを実施していました。
それに気づいたイエローハット側が、ピザハットに「8月10日のハットの日に一緒に何かしませんか?」とTwitter上で声をかけたのです。
ピザハット側も即座に反応し、帽子を使ったロゴを作ったり、8月10日を記念日として制定するために動き始めたのですが、ここで思わぬ展開になりました。
イエローハットのハットは「hat(帽子)」ですが、ピザハットのハットは「hut(小屋)」だと判明したのです。
結局、コラボの話はそこで中止となり、イエローハット単体で8月10日を「イエローハット(黄色い帽子)の日」と制定するにとどまったのだそうです。
Twitter上で応援していた人たちからしたら残念な結果になりました。しかし皮肉にも、この一連のやりとりが知れ渡ったことで、それぞれの社名の意味や由来が多くの人に知られることになったのです。
コラボがきっかけで一日だけ社名変更した例も
このような、社名や商品名を使ったダジャレのような企画・コラボは、実はいろいろなところで実施されています。名前を覚えてもらいやすかったり、拡散すれば話題にもなりやすいことから、意外と効果があるのです。
もっとも有名かもしれないのが、前アメリカ大統領の「オバマ氏」と福井県「小浜市」の話です。同じ名前ということで「オバマを勝手に応援する会」を結成した小浜市に、オバマ氏から手紙が届くなど、ニュースでも盛んに取り上げられました。結果として小浜市としては大きなPRになったことでしょう。
これはリクルート関係者から聞いた話ですが、「リクルート住まいカンパニー」が知名度アップのために、「おやつカンパニー」に「『スーツカンパニー』も誘って、日本三大カンパニーを名乗りましょう」と声をかけたことがあるとか、ないとか。これはまさに「ハット」の話と同じですね。
それ以外にも、自社の商品ですが「マルちゃん 赤いきつね」と「マルちゃん 緑のたぬき」は、「赤緑合戦」と称して、どっちの商品が好きかを投票してもらう企画を行ったりしています。
同様のパターンとして、「きのこの山」と「たけのこの里」も人気投票を行っていました。
変わり種としては、「天空の城ラピュタ」が放送されるたびにSNS上で滅びの呪文である「バルス」を発言することが定番化していますが、株式会社タニタがそれに対抗した話題もありました。
同じタイミングで「タニタ」とつぶやくというもので、「タニタの投稿数がバルスに負けたら、社名を1日だけ株式会社バルスにする」というものでしたが、結果は惨敗。実際に社名変更したそうです。
バカっぽくても、バカにできない効果がある
こうしたコラボ企画は、一見バカっぽいものも多いですが、だからこそ消費者が食いつきやすいのも事実です。今のSNSの時代には、うまく活用すればバズらせることができるかもしれませんね。
そして何より、みんなに社名や商品名を覚えてもらういい宣伝になるのは間違いありません。バルスとタニタのように、名前がなんとなく似ているだけでも何かが生まれるわけですから、シャレのつもりで皆さんも考えてみたら面白いかもしれませんね。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「同じハットが社名に付く会社同士でコラボの企画を提案した」でした。ちなみに、赤いきつねと緑のたぬきの「赤緑合戦」は、この1月末まで行われており、赤が勝てば「もっと赤いたぬき天うどん」が、緑が勝てば「やっと緑のきつねそば」が実際に商品化されるのだとか。コラボ企画、うまく活用すればいろんなことができそうですね。
構成:志村 江