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会社経営と社会的意義の両立のコツを、シングルマザー向けシェアハウス経営者に聞いた

会社経営と社会的意義の両立のコツを、シングルマザー向けシェアハウス経営者に聞いた

独立・起業の動機は、人によってさまざまです。

とにかく自分の事業を大きくしたい、という方もいらっしゃれば、自分の利益以上に事業を通して社会へ貢献したいという気持ちをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

今回お話を伺ったのは、神奈川県伊勢原市で、不動産業を営む竹田恵子さん。

竹田さんの会社では、いわゆる一般的な不動産業に加え、シングルマザー向けのシェアハウスの運営もされています。自身もシングルマザーだった経験から「彼女たちの役に立ちたい」と思い、プロジェクトを立ち上げました。

一方、社会的意義はあるものの、会社経営との食い合わせが悪く、結局立ち行かなくなってしまう事業も数多く存在します。

今回は竹田さんに、そんな会社経営と社会的意義のある活動の両立について、お話を伺いました。

<プロフィール>
竹田恵子さん
株式会社めぐみ不動産コンサルティング 代表取締役

不動産業界で11年ほど営業職を経験した後に、独立。
自らがシングルマザーとして働きながら子育てをしていた経験を持つ。

独立後は不動産売買、賃貸事業を営む会社を設立。その傍ら、自らの経験からシングルマザー向けのシェアハウスを開業。

2023年春には、こども食堂としての役割も果たす飲食店を開業予定。

「住宅的弱者」の住まいはどうなる? 自分がシングルマザーになって気づいたこと

――まずは竹田さんの現在のお仕事について、教えてください。

竹田さん
不動産の売買業や賃貸業といった事業を行っています。

当社ならではの特色としては、神奈川県から「住宅確保要配慮者居住支援法人の指定」(以下、「居住支援法人」)を受けています。

外国人や高齢者、障がい者、シングルマザーなど「住宅的弱者」と呼ばれる人を対象に、その人たちが安心して住むことのできる場所を提供しています。

他には、シングルマザーも入居できる、空き家を活用したシェアハウスの運営、そして2023年の春からはこども食堂の機能も有した、飲食店も開業する予定です。

――なぜ独立して、不動産業を営みながら「住宅的弱者」の支援をされることになったのでしょうか?

竹田さん
私自身がシングルマザーとして、働きながら子育てをしていた経験があるからです。

前職で、不動産業界の営業職として働いていた時に、私もシングルマザーになりました。以来、子育てと仕事を1人で行うようになって。

不動産業界で働いていく中で、こどもたちやシングルマザーに目を向けた商品、物件って本当に少ないなと感じていました。

もちろん会社は、利益を追求しなければ成り立ちません。そして可能であれば、その利益を大きくしたいと考えるのが定石です。

つまり「あまりお金にならないから、そうした商品や物件が少ない」わけで、その理屈は分かるのですが……。

とはいえ自分自身が当事者である私にとっては、ずっと疑問符が頭の中にあったんです。

私たちのようなシングルマザーが一緒に支え合える、そんな環境を作ってみたいなと。

それで39歳の時に、独立を決意したんです。

誰かが「我慢」している時点で、事業としては破綻している。会社経営と社会的意義の両立のコツ

↑シェアハウスで暮らすこどもたちとの1枚。

――では独立をして、シングルマザー向けの物件を作りたかったということでしょうか?

竹田さん
それだけではないですが、シングルマザーも入居できる空き家を活用したシェアハウスの事業は、独立してやりたいことのうちの1つでした。

というのも、私には、起業して作った会社で挑戦したい「2つの方針」があって。

1つはシングルマザー同士が協力できる環境(シェアハウス)を作ること。そしてもう1つは、こどもの食の貧困問題に向けた事業(こども食堂)を作ること。

そこでまずは、シングルマザーも入居できる、空き家を活用したシェアハウスの運営から始めてみたところ、神奈川県から「居住支援法人」にならないかとお誘いを受けたんです。

――非常に社会的意義のある事業だと思います。しかしそれと会社経営を両立していくのは、なかなか簡単ではないと思いますが……?

竹田さん
確かにそうかもしれませんね。

さまざまな解釈、答えがあるとは思いますが、私はそうした事業と本業である、不動産の売買業、賃貸業はいい意味で切り分けて考えており、まずは本業に力を入れて会社の体力を安定させるよう努めています。

事業だけでなく、ボランティアに対しても言えることですが、自分の生活がままならない人に、ボランティアはできません。

いくら人のために何かしたいと思っても、自分の足でしっかりと立てていなかったら、結局全てが中途半端になって、結局破綻してしまうんです。

――自分の理想を叶えるために、まずは現実に目を向ける。竹田さんで言えば、シングルマザーをはじめとする「住宅的弱者」が住みやすい環境を作るために、あえてそれを専業にするのではなく、本業の不動産業にも力を入れているんですね。

竹田さん
はい。

それに空き家を活用したシェアハウスの運営は、大きなお金を生み出す事業ではありませんが、だからといって赤字でもいいというわけでもないんです。

利益は小さくてもちゃんと黒字にすることが、経営者の責任だと考えています。

なぜなら、もし私が会社経営の第一線から退いた時、この事業がもし赤字をずっと出してしまっていたら、きっと誰もこの事業を引き継ぎたくないと思うんですよね。

結局そうなった時に居場所を失って困るのは、入居者であるシングルマザーやそのこどもたち。

彼女らを守るためにも、必ず黒字経営にしなければなりません。

結局、誰かが「我慢」しなければならない状況は、事業として破綻してしまっています。

自分の理想を追い求めるからこそ、丁寧に経営することを心がけています。

事業は自分のやりたいことじゃないと続かないし、続けるためにちゃんと回る形にしないといけない

――竹田さんの今後の展望について、教えてください。

竹田さん
先ほど挙げた2つ目の方針である、こどもの貧困問題に向けた事業として、こども食堂の機能を有した飲食店を、2023年春頃にオープン予定です。

こども食堂としてだけではなく、一般のお客さまも入店できるような場所にする予定です。現場に立つスタッフも、現在運営しているシェアハウスに居住している方から募集し、シェアハウス内で雇用も創出していけたらなと。

また、これからはシングルマザーだけでなく、高齢者へと領域を広げていきたいですね。

認知症や孤独死など、高齢者を取り巻く問題は数多く存在します。そうした問題に空き家を使ったシェアハウスが、1つの選択肢になればいいなと思っています。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

竹田さん
起業をして何年と経って思うことは、事業は自分がやりたいことじゃないと続かないですし、続けるためにはちゃんと回る形にしないといけないということ。

そして何より大切だなと感じるのは、自分が笑顔を忘れずにいられる仕事であること。

自分が笑顔になれないようじゃ、きっとお客さんも笑顔にはできません。

だから明るく元気に前向きに、仕事をしていて笑顔になれる、皆さんにとってそんな独立・起業ができれば、長く続けていけるのではないでしょうか。

取材・文=内藤 祐介

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