法人として事業を始めるためには、いくつかの手続きが必要です。
それぞれの手続きについて理解するとともに、どのような場所で手続きが出来るのかも併せて確認していきましょう。
定款の作成と認証
法人として事業を始めたいと考えた時、まずその会社がどんな仕組みで、何をやる会社なのか?といったことを決めなければなりません。
この会社の決まり事をまとめた書類を定款(ていかん)と呼びます。
定款には次のようなことが書かれています。
・名称や住所
・その会社が行う事業の内容
・出資者や役員に関する内容
・事業年度
・資本金の金額
実はこの定款で決める内容が、その後の事業展開に大きな影響を及ぼします。
まず事業の内容ですが、その会社は定款に書かれていない仕事はやってはいけません。
建設に関する内容しか定款に書いていない場合、飲食業を始めたいのであれば定款を変更する必要があります。
定款の変更には追加費用が必要ですので、最初に作成する時点で「将来的にやりたい、やりそうな仕事」についてはとりあえず定款に記載しておくと良いでしょう。
そして事業年度です。
個人事業主と異なり、法人の事業年度は自由に決められます。
世間一般では3月決算の法人が多いですが、別に7月でも、11月でも構いません。
ただし、事業年度を決めるに当たっては1つのポイントがあります。
もし従事する仕事に繁忙期があるとしたら、できれば事業年度の前半に繁忙期が来るようにしておいた方が無難です。
決算期末頃に繁忙期があると、決算の直前になって大きな売上が計上され、結果税金の負担が読みづらくなります。
その点、前半に繁忙期があれば、一年間での税負担が推測しやすくなります。
資本金の額ですが、会社法施工後においては制限が撤廃されました。
極端に言えば1円でも構いません。
ただ、後々取引先を拡大させる予定があったり、金融機関との付き合いを始めるつもりであるのならば、あまり低すぎる金額にすると信用度の点で問題が生じることもあるでしょう。
定款の作成は、司法書士や行政書士が代行していることが多いです。
また役員の構成や事業年度、資本金額の設定は税務上も大きな論点となりますので、税理士も関与することがあります。
繰り返しになりますが、ここで作成された定款の内容が後々の事業展開に大きな影響を及ぼします。
なんとなく作成するのではなく、心配であれば専門家の意見も取り入れながら間違いのない内容で仕上げるようにしましょう。
作成した定款は、公証役場で認証を受けることになります。
またその後、定款に従って出資の履行が必要です。
法務局での登記申請に必要な書類と手続き
定款の作成と認証、出資の履行を経て法務局での登記申請を行います。
かかる時間は提出する法務局の混雑度合いや時期によっても異なります。
短ければ一週間程度で終わることもありますが、もう少し長い時間がかかることもあります。
また法務局に登記申請をした日が法人設立の日となります。
例えば3月決算法人を設立する場合、3月28日に法務局で申請をしてしまうと「3月28日~31日」というたった4日間だけで1つの事業年度が出来てしまいます。
設立後に行う税務申告のことも考えると、決算期直前に申請をするのは好ましくはないでしょう。
もちろん、特別な事情があってどうしてもその日に設立をする必要がある場合にはこの限りではありません。
登記申請が完了すると、全部事項証明書という書類が発行されます。
俗に謄本(とうほん)と呼ばれたりもする書類です。
この謄本が法人設立の証拠であり、様々な手続きにおいて必要となってきます。
課税庁に対する届け出
法人設立後、速やかに課税庁に対する書類の提出が必要です。
ここでいう課税庁とは「税務署・都道府県税事務所・市区町村役場」などが該当します。
課税庁に各種書類を提出する時には、上述の謄本や定款、株主の名簿といった書類を添付する必要があります。
添付が必要な書類については、各課税庁へ事前に確認しましょう。
特に国の税金を管轄する税務署に対する届け出は大変重要です。この届け出は法人設立後、速やかに済ませる必要があります。
法人の税務申告においては、絶対に適用を受けたい特例があります。
それが青色申告です。
青色申告の適用を受けることが、健全で継続的な事業を展開するためには必要不可欠なのです。
開業初年度から青色申告の適用を受けるためには、法人設立後の一定期間内において法人設立届を提出するとともに、青色申告の申請もしなければなりません。
期限後になってしまうと開業当初に青色申告の適用が受けられなくなり、それが原因で大きな損失が生じてしまうことがあります。
また源泉所得税に関する特例の適用など、特に国税については速やかに行わなければならない手続きが多数あります。
法人設立後は速やかに課税庁への届け出を済ませる。絶対に覚えておきましょう。
なお、税務関係の手続きですので、心配であれば税理士に相談をするのも1つの方法です。
社会保険加入や許認可手続きなど
上で紹介した各種手続き以外にも、設立後には様々な手続きがあります。
全ての法人は社会保険に加入する義務があります。
地域の年金事務所や労働基準監督署、職安などに手続きが必要です。
自分でやるのが難しい場合には、社会保険労務士に頼むのも良いでしょう。
また建設業などを中心に許認可申請をすることがあります。
これらの手続きではその地域の職業団体や行政書士が代行してくれることもあります。
これら一連の手続きが滞ると、スタートダッシュで大きく躓くことになります。
自分のやろうとしている仕事の内容に併せて、確実に処理をするようにしましょう。
まとめ
法人設立に当たっては定款の作成が必要となります。
定款の内容はその後の事業展開に大きく影響するので前述した内容に注意しましょう。
登記申請後は、課税庁等に対する手続きを速やかに行う必要があります。
特に税務署に対する手続きは一定の期間を過ぎると重要な特例の適用を漏らしてしまうので注意が必要です。