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世界一なんて、他人が決めた物差しでしかない。世界一の寿司職人が目指す、更なる”高み“

世界一なんて、他人が決めた物差しでしかない。世界一の寿司職人が目指す、更なる”高み“

あなたが独立して、その道でもしも「世界一」になったらどうしますか?

類まれな実力があり、誰もがあなたの腕を認める。地位だって名声だってある。

当然お金には困らないし、もしかしたら一生遊んで暮らせるだけのお金がもらえるかもしれない。

もしもそうなったら、仕事なんてやめて遊んで暮らしますか?

今回お話を伺ったのは、大阪は港区弁天町にある「すし活」初代当主・川口正弘さん。

川口さんは世界各地で寿司を披露したり、国内外問わず、テレビや雑誌、新聞などのマスコミに多く取り上げられています。

そんな世界的に有名な川口さんですが、まだまだ自分は道半ばだと言います。今、何を追い求めているのでしょうか。

<プロフィール>
川口正弘さん・寿司茶屋すし活 初代当主。

18歳から寿司職人の道を志し修行を始め、25歳の時に独立を果たす。「すし活」の初代当主として大阪は弁天町に店を構える。同店では、国内外問わず訪れる常連客で、賑わいを見せている。

また、さまざまなテレビ番組や大会にも参加。2012年10月20日(土)に日本テレビ系で放送された「世界に挑め!オールJAPAN」(http://www.ntv.co.jp/svf/20121020.html)では、同番組内の「寿司世界頂上決戦」に日本代表として参加し、大会最高得点を樹立。

名実ともに”世界一”の寿司職人である。

下手なら即クビ!? 完全実力主義の寿司職人の世界で、自分の店を持つまで

―川口さんが寿司職人の道を志したきっかけを教えてください。

川口さん
小さいときから漠然と「手に職を付けて、何かしらの道でプロになりたい」と思っていました。料理を志すようになったのは、「包丁人味平」というマンガを見てからです。マンガを通して、料理の力で「人を笑顔に、幸せにできる」と思ったんですよね。そこで高校を卒業してすぐに、18歳でこの世界に飛び込みました。

―以来、ずっとこの道一筋なんですね。

川口さん
はい。18歳から今まで41年間、ずっとこの道一筋です。

―川口さんは今でこそ、世界一の寿司職人と言われていますが、この世界に入りたての時は当然素人ですよね。どんな下積み時代を送ってきたのでしょうか?

川口さん
寿司の世界、職人の世界というのは、本当に厳しい世界です。最初はもちろん包丁なんて持たせてもらえず、雑用から始まります。当然、入りたてが先輩に直接教えてなんてもらえませんから、先輩たちの仕事を「見て」学んでいきます。雑用をしつつ「見て」仕事を盗んで、時間を見つけて自分なりに練習をしていくんです。

ある時、先輩から「これやってみ」と何かしらの仕事を任されます。その時にいいパフォーマンスができれば徐々に仕事を任せてもらえるし、できなければ雑用のまま。そういう世界でした。

―本当に厳しいんですね(笑)。

川口さん
はい(笑)。だから辞めていく人もたくさんいましたよ。実力が全ての世界なので、たとえ職人として他店から転職してきたとしても、実力が伴っていなかったら即クビになることだってありましたし。

―川口さんはどうやって生き抜いてきたんですか?

川口さん
練習あるのみですよね。普通に仕事をこなしつつ、先輩たちの技術を盗んで就業後に練習したり。後はたまの休みの日に先輩たちと飲みに行っていろいろコツを聞いてみたり。今の時代からすれば泥臭いのかもしれないですが、昔はインターネットもないですし、自分より上手な先輩からいかに情報を得るかがとても重要なんです。もはや、飲み会1つでさえ気が抜けませんでした。

先輩たちとの人間関係を構築しつつ、数少ないチャンスを確実にものにしていく。自分のスキルを磨いてお店で活躍するためにどうするべきかを考えながら、仕事をしていました。

―その後は店長さんになるんですか?

川口さん
なる人もいますが、私の場合は1年おきにお店を変えていたので、違いますね。

―1年おきにお店を変えるんですか?

川口さん
はい。料理というのは1年間の流れがあるんですよ。春夏秋冬でそれぞれ出す料理や仕事の内容が異なります。1年いると、ようやくそのお店の流れが分かるというわけです。私はいろいろなお店に1年ずつ在籍して、点々としていました。18歳から技術を磨いて、7年経った25歳の時に、初めて自分のお店を開きました。

利益重視の資本主義より”幸せ主義”。経営未経験の職人がぶつかった壁

―25歳で独立されたのは、どういう経緯があったんですか?

川口さん
ある新しいお店が梅田でオープンする話があって、そこで店長をやってほしいと言われたんです。ですが、その時に知り合いから「店長はつらいだけだから、どうせなら独立したら?」とアドバイスを受けたんですよ。店長というのは、実際に自分も手を動かして料理をしますが、基本的には経営者と従業員の中間で店をマネジメントする人なんですよね。お店の体制にもよりますが。

だったら自分の意志で経営もできる、本当の意味で自由な独立の道を選んだんです。

―独立してからは、どんな苦労があったのでしょう?

川口さん
今言ったように、自分でなんでも自由にできる分、必ず経営も考えなければいけないというところですかね。私は18歳から寿司の技術を磨いてきましたが、経営の勉強は全くしていませんでした。まぁ今でもあんまり数字得意じゃないですし(笑)。それに寿司職人としての腕も当時はまだまだでしたから。

―そんな中で、どのようなお店を作っていったのでしょうか?

川口さん
最初は本当に小さいお店からスタートしました。そこが手狭になってお店の物件を変えました。最終的には従業員を15名ほど雇う、そこそこ大きなお店になったんです。ですがその頃になると、「お客さまのためにいいものを出す」というよりは「なんとかして15人分の給料を稼がなきゃ」という思考になっていってました。

出来る限り素材を安く仕入れて、客の回転率を上げて、とにかくお金を稼ぐ。自分は休む暇なく働かなければならない。

独立する時に思っていた自分の理想のお店像からは、遠くなっていったんですよね。

―自分や自分のお店を守るためには、利益を生み出さないといけませんからね。

川口さん
そうなんです。そしてそんな仕事が続くと、やっぱり身体も調子が悪くなっていきました。「やっぱり自分には利益重視の経営は合わない。原点に戻ろう。」そんなふうに思いました。

その後一度店を畳んで、今の経営スタイルにシフトしていきました。現在は、独立して最初に店を立ち上げた時とさして変わらない規模の大きさで、スタッフも私と2代目と、私の妻の3人だけです。

川口さん
今度は、小さくてもお客さまの満足度が高く、ファンになってもらえるようなお店作りを目指しました。そのほうがお客さまも喜んでくれますし、やってる私ももちろん楽しい。小さくてもそんな環境を作りたかったんです。利益重視の資本主義よりも”幸せ主義”を第1にお店を作っていきました。

全てはお客さまに喜んでもらうために。世界一の寿司職人が目指す、さらなる高み

―資本主義より”幸せ主義”ですか。海外から来られる熱心なファンの方がいらっしゃるこの「すし活」にぴったりの言葉だと思います。
(取材当日、なんとイタリアのミラノから来られた方が、隣で食事を楽しんでいらっしゃいました。)

川口さん
うちのお店では、一見さんお断り、週3日(木・金・土)、営業時間は17:30〜21:30までの4時間のみです。

川口さん
おそらく普通の飲食店じゃ考えられないと思います(笑)。実はここまで営業日や営業時間を絞っているのも、お客さまの満足度のためなんです。

―具体的に教えていただきますか?

川口さん
まず、うちのお店では本当に良質な素材しか出さないようにしています。質の良い素材の買い付けや量を考えると、物理的に毎日は営業できません。

川口さん
さらに、寿司職人の命とも言える包丁。ここまでピカピカに研ぐのは、相当な時間が必要です。

また、うちの店ではお客さまはみんな顔なじみで、コミュニケーションを楽しみながら料理をお出しします。

そして基本的に、お客さまには事前予約をしていただき、来店する時間に合わせてあらゆる準備をします。
ネタの“熟成“やシャリの用意、お酒の温度調整…。どれをとっても「口に入る、その瞬間が1番おいしくなるよう」逆算してお出しするんです。

ここまでの入念かつ丁寧な準備をするには、必然的に営業する時間を削るしかない、ということなんです。

―なるほど…。よく、わかりました。「すし活」では、寿司を味覚で楽しむのはもちろん、視覚、聴覚、触覚、嗅覚と5感を刺激するような仕組みを多数取り入れているように思いました。そこに対するこだわりを教えてください。

川口さん
料理は、5感で楽しむエンターテインメントなんですよ。

川口さん
例えば、タブレットの画面に絵を写し、そのうえに透明なお皿を置いて涼し気に料理を盛り付ける。人参を輪切りしたものの中に大根を入れて、花火を表現したり、日本刀のような長い包丁で、大根を切ったり。

川口さん
魚の血を取って生臭さを消して旨味だけを残し、魚が苦手な人でも寿司を楽しんでもらったり。(写真上が血を抜いて熟成させた完成品、下が元の魚の身)世界最高得点を取ったシーンや技をタブレットで見てもらって自慢する(笑)。まだまだ伝えきれないほど、「食」って本当にたくさんの楽しみ方があると思うんですよね。

毎日の食事がこんなにもおもしろいエンターテインメントに変わる。だからこそ、嬉しいことにお客さまが何度もうちの店を訪ねてきてくれるんですよ。

おかげさまで、国内外のテレビなんかで賞をたくさんもらうことができましたが、これも言ってしまえば、今来てくれてるお客さまのためなんですよ。

「いつも行ってる『すし活』のおっちゃんがテレビに出て活躍してる!」そんなふうに見てもらえたらお客さまも嬉しいと思うんです。

そしてまた「テレビ見たよ!」ってうちに遊びに来てもらえるじゃないですか。

―お客さまのことを、本当に大切にされているんですね。さて、世界一の腕だと認められた今、川口さんは何を見て、どこを目指しているんですか?

川口さん
自分をもっと極めたいです。そしてもっとお客さまに喜んでもらいたい。もっとおいしいものを作りたいですし、もっと上のステージに行きたい。世界一なんて所詮、他人が決めた物差しに過ぎないんですよ。それに世界一になりたくてこの世界に入ったわけじゃないんです。

自分たちがやりたいように料理を作って、お客さまに喜んでもらう。それを繰り返してたらいつの間にか賞をたくさんもらって世界一になってた。それだけなんです。

料理はもっとおいしくなると思ってますし「食事」というのはもっと楽しくなる。おいしくて楽しくなる可能性をこれからも追いかけていきたいですね。

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豊田 淳さん(29歳)

東京都杉並区
大学卒業後、大手広告会社に就職。トップクラスの営業成績を叩き出し、新人賞を獲得。東京に転勤後、ピエロの養成学校に通うべく脱サラ。現在はフリーランスのピエロとして、結婚式などのイベントでのパフォーマンスや、飲食店に飛び込んでの「流し」も行う。
(さらに…)

2020年3月31日

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