会社が嫌いなわけじゃない。
仲間がいた。安定があった。愛着があった。
でも独立しないと、できないことがある。手に入らないものがある。
そんな思いで、会社を「卒業」していった先輩起業家に、話を聞いた。
慣れ親しんだ環境から一歩踏み出す時、胸に去来したものは。
浅草のレンタル着物店/小杉 盟子さん
航空会社の地上職を6年続けました。最高に楽しい仕事でしたけど、早番遅番休み!みたいな極端な生活サイクルは辛くて、結婚後は派遣で9時17時の仕事をしてました。それでも、こども3人の育児をしているとバタバタです。何より「ママ、ママ」と泣いてる小さい子を置いていくのは、親として罪悪感がありました。
家族との時間を大切にした働き方をしたいと、漠然と焦っていた頃です。浅草で人力車を引いている夫に「浅草で着物レンタルのお店をやったら?」と提案されました。「はあ?」と思いましたけど、よくよく考えると、自宅も浅草。家族と離れているから罪悪感を抱くわけであって、仕事も浅草ならちょうどいい。時間の融通も利きます。それから大学で学んだ国際関係学。外国からのお客さまが多い浅草で、文化の壁を感じさせない接客ができるんじゃないかと。
場所柄、外国人観光客も多い。「着付けて終わりではなく、着物という文化を知っていただくよう心がけています」。
国籍や文化の違いを理解しながらお客さまの好みをキャッチするのはチャレンジですが、面白いです。昔から接客が好きなんです。一番好きなのは、着付けて送り出したお客さまが、喜んで帰ってくるのをお迎えする時。自分のほうが喜んでるんじゃないかと思います(笑)。時間の融通も、会社員時代に比べればすこぶるうまくいっています。なんと言っても、こどもの学校の個人面談に行ける。これ大事です。
PROFILE
小杉 盟子さん(40歳)
美麗Kimono&Culture/東京都墨田区
幼少時から着物に親しむ。米国留学後、航空会社に勤務。地上職として接客の経験を積む。結婚後は派遣で秘書の仕事を続けていたがこども3人の育児との両立に悩む。2014年、夫の提案を機に浅草で着物レンタルのお店を始める。夫が浅草で営業している人力車とのコラボも。
構成・文/東 雄介
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2019.冬号
「安定、肩書、仲間・・・雇われるよさもあったけど『私、会社を卒業しました!』」より
撮影/刑部友康、片桐 圭、阪巻正志、宮田昌彦
アントレ2019.冬号
「安定、肩書、仲間・・・雇われるよさもあったけど『私、会社を卒業しました!』」より