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地域ぐるみで子供たちに届ける 「安全で豊かな放課後」。社会起業家からのメッセージ

生ボイス

NPO法人放課後NPOアフタースクール/東京都港区

代表理事 平岩国泰 AGE.41

1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、丸井に入社。人事、経営企画などに携わり、2004年、長女の誕生をきっかけにアフタースクールの活動を始める。2年連続でグッドデザイン賞を受賞し、2009年、NPO法人化。追って2011年に会社を退職し、常設のアフタースクール開校を機に活動を加速させる。その数11校(2015年11月現在)となり、50社を超える企業との連携子育てプロジェクトも広がりを見せている。文部科学省中央教育審議会の専門委員も務める。

学校が終われば、ランドセルを放り投げて友達と自由に遊びに行く︱︱そんな古き良き小学生たちの光景は、すっかり鳴りを潜めてしまった。
子供を巻き込む凶悪事件の増加、激しさを増す中学受験など、子供たちの放課後は窮屈になるばかりだ。そこに危機感を覚え、「安全で豊かな放課後を届けよう」と改革に挑んでいるのが、平岩国泰率いる「放課後NPOアフタースクール」である。

 活動の柱は、小学校が有する安全性と様々な施設を活用したアフタースクールの運営で、提供するプログラムは実に400種類以上。地域の大人たちや、その道のプロが“市民先生”となり、衣食住にまつわることからスポーツ、文化、音楽など、たちにあらゆる本物の体験機会を提供する。加えて、学童保育の預かり機能という点で、待機児童の問題解決にも一役買う。また、企業や行政と連携した子育てプロジェクトも実績を重ね、加速しているところだ。

 娘の誕生を機に、平岩が活動を始めて10年。折々の困難を経てきただけに「やっとここまできた」と、その言葉は重い。小さな一歩でも志を掲げ、行動し続けることで、社会課題に一つ風穴を開けた手ごたえを、今感じている。

日本の小学校の「放課後改革」に挑戦する

━ 最初は大変だったとか。

アフタースクールは、アメリカの多くの小学校に存在し、放課後を支えるインフラとして機能しています。それを日本にも広げたいと考えたわけですが、前例がなく、こと行政や教育委員会相手の活動は実績重視になるので、入り口に立つまでが大変でした。

アフタースクールの趣旨に賛同してくれる地域の市民先生はすぐに見つかったものの、場所の提供を頼みに行った小学校はどこも門前払い。結局、公民館で始めることにしたんですけど、今度は肝心の子供たちが集まらない。

相当くじけていたところ……チラシを見た民生委員の方が「いい活動じゃない。子供を集めてあげるわよ」と、力添えをくださったのです。

第一回、公民館でやったのは3カ月間の「食のプログラム」で、和食の職人さんとともに体験する料理づくり。集まった子供は4人、本当に小さな一歩からのスタートでした。

━ 手ごたえを感じ始めたのは?

まず初回で、子供の確かな変化を目の当たりにしたこと。食のプログラムに、小4の男子が参加したんですけど、全然元気がなくて。でも途中で、実は思いの外食材に詳しいことがわかり、それを市民先生に褒められ、一番弟子に任命されたんですよ。自信がついたのか、プログラムが終わる頃には見違えるほど元気になり、親御さんからもすごく感謝されたのです。

子供たちの“いいとこ探し”をして、褒めて伸ばしていけば必ず真っすぐに育つ。親や先生とはまた違う第3の大人として、子供たちに豊かな放課後を提供する意義を確信できたのは大きかったです。だから、どんどんプログラムを増やしていきました。

参加した子供たちが友達を連れてくるようになり、市民先生をはじめとする支援者も増え、ようやく2年後には地元の小学校に入ることができた。そうなると学校側で参加募集をかけてくれるので、門前払いからすれば大進歩です(笑)。

━ 追って、常設のアフタースクールも開校されています。

法人化したのは2009年。「組織として活動を続けていく」覚悟をしてのことですが、この時、僕はまだ会社勤めをしていて、週1回の活動でしたし、さて具体的にどう展開していくか、なかなか先が見えなかったんですよ。志は強くても、結局は二足のわらじを履く自分が至らないのかと、自責の念に苦しむ時期もありました。

 そんななか、最初に常設のアフタースクールを開校するチャンスをくれたのが私立の新渡戸文化小学校です。組織としてはまだ体を成していなかったのに、「毎日子供たちを見ていたい」という僕らの思いをすくい上げてくださった。

メディアによって後押しされたことも大きいです。やっぱり継続は力なりで、続けていればおのずと行く道は開かれるし、周囲もちゃんと認めてくれるものです。

━ 日本でも社会インフラとして機能するといいですよね。

はい、僕らが目指すところです。アフタースクールがすべてだとは思っていませんが、豊かな放課後づくりのための一策として、安全な場である小学校を使い、地域ぐるみで子供を育てるというこのモデルを広げていきたい。自分たちの組織をスケールアップさせることが目的ではなく、全国の方々が立ち上げられるよう支援していきたいのです。

そして、これからは 「放課後にもっと予算をつけましょう」という行政へのロビイングとともに、社会の問題意識を喚起していくような活動にも注力したいと思っています。

そもそもは、生まれた長女のために「人生をかけた最高のプレゼント」をしたくて始めた活動ですが、結果的には、それが自分の将来をもかける大仕事になったというわけです(笑)。

取材・文/内田丘子 撮影/押山智良

※本記事は取材当時の情報を基にしており、団体名、サービス名、法令等が現在と異なる可能性があります。しかし、取材時の想いや状況を正確に伝えるため、内容をそのまま掲載しています。ご了承ください。

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アントレスタイルマガジン編集部

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