エステサロンのなかでも、最近よく耳にするのが「無人エステ」や「セルフエステ」という形態です。ITや美容機器の技術革新によって可能になったエステですが、低価格であることもあり「本当に儲かるのか?」「開業してもすぐに失敗するのでは」と疑問に感じることもありますよね。この記事では無人(セルフ)エステをフランチャイズで経営していく上で知っておきたい情報についてまとめています。
無人(セルフ)エステとは
無人エステとはセルフエステとも呼ばれ、通常であればプロのエステティシャンが行っていた施術を顧客自身で行うエステのことを指します。美容機器の使用方法を説明したり、受付にスタッフがいる場合もありますが、完璧な無人経営を行うサロンもあります。
施術の種類として、痩身・フェイシャル・脱毛・ホワイトニングなどがあげられます。
市場の規模や動向について
無人(セルフ)エステの市場規模は今後も成長が見込まれます。エステサロンというと、金銭的に余裕のある層が利用することが想像されますが、無人エステであればエステティシャンの人件費がかからないこともあり、低価格で提供できることから、若年層やライト層など幅広いニーズに対応できるためです。
月々の費用が定額の中で「マシンの使い放題」や「通い放題」などのサロンが増え、「自分のニーズに合ったものを好きなだけ」という価値への期待が高まっています。
顧客が座って施術を行える場所が確保できれば十分であることが多く、利用時間も通常のエステサロンより短時間です。通常のエステサロンのような横になれるベッドを数台ほど置ける広いスペースが必要なく、長時間の接客や施術が必要ない場合が多いため、回転率も高いです。人件費をはじめあらゆるコストを削減できるため開業しやすく、今後店舗数が増えていくことが見込まれています。
無人(セルフ)エステをフランチャイズで開業するステップ
無人(セルフ)エステをフランチャイズで開業するステップは以下のとおりです。加盟するフランチャイズ本部によって若干の違いはありますが、基本的にはこのような流れです。
無人エステを始めるならば、自力で開業するよりもフランチャイズに加盟することでよりスムーズに開業できるでしょう。
無人エステでは、提供する美容機材のクオリティ確保や仕入れだけでなく、スマートロックや予約のシステム、ブランド力や口コミによる集客など、フランチャイズを利用するメリットが大きいです。自力で開業しようとしても「どんな機材をどれくらい用意したらいいか」「機材のメンテナンスをどうしたらいいか」「予約や利用状況を無人でどう管理したらいいか」など不明な点も多いと思います。フランチャイズならば本部のサポートやシステムが用意されているため、そのような疑問を解決してくれるでしょう。
フランチャイズビジネスの市場規模やメリット・デメリットなど、基本的なことから知りたい方は、まずこちらの記事を読んでみてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
無人(セルフ)エステのフランチャイズ開業にかかる資金
低コストで経営できる無人エステですが、フランチャイズ開業や運営にかかる資金はどれくらいが見込まれるでしょうか。
開業資金
無人エステの開業資金として必要な金額は、500万~1,000万円程度といわれています。内訳としては、物件取得と機材設備のコストに占める割合が大きいでしょう。しかしこちらも前述した通り、従来のエステサロンに比べて広いスペースが必要ないため、通常のエステサロンよりも初期費用のコストが抑えられる傾向にあります。
個人開業に比べてフランチャイズの場合は、本部に支払う加盟金や保証金、研修費用などが発生します。しかしフランチャイズであるからこそ、機材の仕入れルートがあって低コストで導入できるというメリットもあります。
自力で機材を購入する場合に比べて、フランチャイズだからこそ抑えられるコストがどれくらいになるか見積るとより判断しやすいでしょう。
ランニングコスト
開業した後のランニングコストとして考えられるのは、物件の家賃、機材や設備のレンタル費用やメンテナンス費用、水道光熱費、広告宣伝費、受付や清掃などのための人件費などが考えられます。
月々のランニングコストは平均金額は100万~150万円程度といわれています。加えてフランチャイズの場合は、売り上げの金額に応じたロイヤリティや、予約システムの利用料などを本部に支払う必要があります。
無人(セルフ)エステを開業するメリット
次に、無人エステを開業するメリットについて整理して考えてみましょう。
継続的な定額収入が見込める
無人エステは、顧客が毎回の会計を必要としない月払いなどのサブスクリプション契約で成り立っていることが多いです。そのため、利用者数(会員数)×月額料金で安定した定額収入が継続して見込めるメリットがあります。収支計画が立てやすく、事業計画も立てやすいため経営に専念しやすいと考えられます。
自己資金に合わせた開業ができる
無人エステは比較的狭いスペースでも開業できるため、自己資金に合わせた開業ができるメリットがあります。どの美容機器をどれくらいの規模で導入するかも、オーナーの希望に合わせて調整しやすく「まずは小さく始めて、軌道にのったら拡大していく」という戦略も十分可能です。
未経験からの開業も可能
美容やエステ業界が未経験であっても開業は可能です。顧客への施術に入る必要がないため手離れが早く、オーナー業に専念しやすい環境といえます。
人件費・教育費を抑えられる
無人エステの最も大きなメリットとしては、施術を行うエステティシャンの人件費や研修費を押さえられる点です。マシンの利用方法を説明したり、受付や入会手続きをする人材を用意する必要がある無人エステの形態もありますが、常に顧客と対面して施術をする必要がありません。人を雇う場合でも少ない人数で、多くの顧客を対応できるようになります。
またそれに伴って施術の研修や教育をする必要がありません。エステティシャンとしての施術スキルが求められないので、未経験の人材を雇用することができます。そのため人材の採用時のハードルを下げられるでしょう。
営業時間を長くできる
無人エステは完璧な無人運用であれば、24時間システムを導入できることもあります。空き時間にいつでも利用できることで、仕事や家庭の都合で忙しい顧客のニーズにも適しています。混雑する時間を回避して利用できるメリットもあるため、より効率的に顧客に利用してもらえるでしょう。深夜帯にトラブルがあった際の対処法などを本部に確認しておくことで安心を得られるでしょう。
省スペースでも開業可能
無人エステは前述した通り、施術用のベッドを複数配置する必要がないため省スペースで開業できます。また、現在ほかの店舗ビジネスを手掛けている経営者や会社が、空きスペースを活用して施術マシンを導入するケースもあります。同じ美容関連業である美容院やネイルサロン、着替えが発生するフィットネスジムなどは顧客のニーズや行動パターンと合致しやすく、親和性が高いでしょう。
有人エステよりも滞在時間が短く回転が速い
無人エステは有人エステに比べて、施術時間も短くカウンセリングも行われないため、顧客の滞在時間が短く回転が速いです。そのため1日あたり、1ヵ月あたりに受け入れられる顧客の数は多くなり、それだけ売り上げや利益に貢献してくれるでしょう。
従来のエステと競合しない
エステ業界全体は成熟した市場であり、すでに多くの種類や形態が存在しています。しかし無人エステは「短時間で終わらせたい」「通常のエステの営業時間に合わせられない」「自由に選びたい」「接客を受けたくない」「肌や身体を見られたくない」など、有人エステとは別の顧客ニーズにも対応していることから、既存のエステサロンと競合しにくいです。
既存エステサロンが多く乱立しているエリアであっても、無人エステの出店も検討できる可能性があるのです。
フランチャイズだからこそ得られるメリットもある
無人エステはフランチャイズだからこそ得られるメリットがあります。フランチャイズの持つブランド力や機材の調達ルートだけでなく、集客サポートや顧客管理システム、自力で制作するにはコストがかかるマシンや設備の使い方動画、メンテナンスノウハウ、人材採用マニュアルなどを提供してもらえます。
未経験でも安心して独立できるように、フランチャイズ本部がサポートしてくれる体制が整っています。
無人(セルフ)エステを開業するデメリット
メリットを紹介したところで、デメリットについても確認しておきましょう。
トラブルが発生しやすい
無人エステだからこそ起きやすいトラブルがあることも事実です。国民生活センターにも、下記のようなトラブル報告は多数寄せられています。
施術トラブル
利用者自身で機器を取り扱うため、施術後の肌トラブルなどが起こる可能性があります。例えば脱毛マシンの出力の強さを間違えてしまったり、説明した以外の使い方をされてしまったりした場合などです。常にスタッフが常駐し監視しているわけではないため、施術前には注意事項や同意書へのサインをもらうなど、リスクを回避できるようにすると良いでしょう。また、こうした対応はWEB上でも対応可能かどうか、フランチャイズ本部に確認しておくと安心です。
料金トラブル
料金設定やキャンペーン料金の適用有無、解約時の違約金などのトラブルもあります。例えば集客のために初月無料などで会員を獲得するキャンペーンを行う際には、「最低契約期間や適用条件」はしっかりと顧客と確認するようにしましょう。毎回スタッフが説明できるわけではないので、顧客との認識違いで大きなトラブルとならないように「わかりやすい説明になっているか」など、顧客目線で考えたいところです。
競業避止義務が存在するケースが多い
フランチャイズで開業する場合、一度フランチャイズで出店した業態やエリアで個人として開業できない「競業避止義務」という条項が入っている可能性があります。無人エステは開業しやすい側面がある一方で、こうした競業避止義務が発生しないかどうか、何年縛りがあるのかは加盟前に確認しておきましょう。
【トラブル回避】無人エステのフランチャイズ加盟の際はここを確認!
またフランチャイズ加盟する場合には、トラブル回避のために以下を必ず確認するようにします。
- 顧客とのトラブル対応について本部のサポートはあるのか
- 法的な問題が起きた際に弁護士などの手配は可能か
- リスクの少ない運営になっているか(例:安全性の高い機械を導入しているか、顧客への説明は分かりやすいものかなど)
無人エステだからこそこのようなトラブルが発生する可能性が高いと理解し、転ばぬ先の杖を用意しておきましょう。自身が顧客として施術を経験してみることもおすすめします。
無人(セルフ)エステのフランチャイズ本部選びで確認するポイント
無人エステをフランチャイズで開業したい場合、どの本部を選べばいいかについてもポイントをご紹介します。
契約内容
フランチャイズ加盟の際には、運営に関しての契約内容はしっかりと確認しましょう。本部と加盟店との契約期間や更新方法、禁止事項、競業避止義務の有無などは特にサロン経営上、重要となります。
契約内容の認識が甘かったがために不利な経営を強いられたり、経営を続けられなくなってしまうこともあります。不明点があれば契約前に遠慮なく本部に尋ねるようにし、必ず分からない点をすべてクリアにしておきましょう。
サービス内容
フランチャイズ本部が提案する顧客へのサービス内容の理解と、他の競合サロンに比べてどのような魅力があるのか、事業としての成長が見込めるか、などもしっかりと理解します。無人エステでは使用するマシンの性能やクオリティが、大きな差別化のポイントとなります。それらのメンテナンスの頻度や修理時の費用についても確認しておきましょう。
サポート体制
フランチャイズ本部が加盟店に対してどこまでサポートしてくれるかも、本部を比較する際に重要視したいポイントです。無人エステでは集客施策が売り上げを大きく左右します。本部としてどんな広告宣伝活動を行うのかどうかは、将来的な戦略も含めて問い合わせてみると良いでしょう。
また研修制度や、顧客管理や予約管理のシステムについても不明点がないようにしておきましょう。
顧客からの評判
同じフランチャイズ本部に加盟する他店舗の口コミや評判は、事前に確認しておきましょう。リアルな顧客の声を理解することで、魅力のある事業なのか、どんなリスクがあるのかを認識できます。Googleマップや美容関連予約サイトの口コミなどが参考になるはずです。
無人(セルフ)エステをフランチャイズで開業する際は、集客実績とトラブル対応について要チェック!
無人エステはフランチャイズに加盟することで、本部のノウハウを活かして未経験のオーナーでも安心して開業を実現できるでしょう。人件費や物件にかかるコストを抑えて営業時間も長く設定できるので、集客施策は事業成功のカギといえます。
新規参入しやすいとはいえ、物件は土地と賃料のバランスを考慮して選びましょう。また無人だからこそのトラブル対応の可能性も理解し、考えられるリスク対策はしておきましょう。
フランチャイズ本部のサポートが受けられるからといって本部任せにすることなく、オーナーとして責任を持って収支シミュレーションを行い、資金計画は余裕を持って進めてください。
<文/北川美智子>