店舗を持たず、自動車などを使って商品を販売する「移動販売」。自動車内のキッチンで商品を作って提供する形態のため、キッチンカーやフードトラックとも呼ばれ、移動式の飲食店として人気があります。そんな移動販売のフランチャイズも飲食以外に多数の業種があります。移動販売のフランチャイズに加盟して独立・開業することのメリット・デメリットはどのような点でしょうか。今回は、移動販売のフランチャイズについて詳しくご紹介します。
移動販売のフランチャイズで独立・開業すると?
移動販売は、昔、行商が地方から都市へと商品を運び、販売したところから始まり、形態が変化して今の形になったといわれています。
移動販売が定着した背景には、都市部のランチ需要があることや過疎地域の買い物難民などが増加していることなどがあります。
企業が集まる都市部のオフィス街には飲食店が多数あっても昼食休憩時はひとが殺到してしまいます。コロナ禍を経て、新しい生活様式として在宅勤務も増えたため、オフィス街だけではなく、商店街の一角や公園付近などでの出店も増えました。
このように、需要があるため移動販売は重宝されているのです。
移動販売を始めるメリット
移動販売をスタートする方法として、自力で開業する方法とフランチャイズに加盟して開業する方法があります。では、二つを比べるとどのような違いがあるのでしょうか。
続いては、移動販売のフランチャイズに加盟するメリットをご紹介します。
初期費用を抑えられる
移動販売のフランチャイズは、店舗を借りて飲食店を始めるのに比べて初期費用を抑えられるというメリットがあります。
店舗を借りる以上は賃料がかかりますが、移動販売であればキッチンカーがあれば始めることが可能です。低コストで開業でき、さらに運営していくうえでの月々の資金も安く抑えられるため、投資を回収できるスピードが早いので、独立・開業が初めての方でも始めやすいのです。
また、フランチャイズの場合は、本部が出店場所の開拓などをサポートしてくれることがあります。立地分析に基づきニーズのあるエリアを提案してもらえるのは大きなメリットでしょう。
移動販売車を安く購入できるケースも
フランチャイズ本部によっては提携している業者から移動販売車を安く手に入れることができる場合もあります。分割やローンでの販売にも対応してくれる場合は、初期費用を抑えることが可能です。また、独立・開業する際には続けることが前提で考えているものの、何らかの事情で撤退する可能性もありますよ。
その際には、移動販売車を売却できるところもメリットのひとつです。もちろん、最初からキッチンカーを購入せず、レンタルして始めるのも可能です。ただし、レンタルの場合は、自分のものではないため外装にあまりこだわることができません。レンタル会社により異なりますが、外装可能な範囲が規定で決まっていますので注意しましょう。
本部からノウハウを享受できる
移動販売は店舗運営とはまた別の知識や経験が必要になる仕事です。未経験の方には難しい部分もあるでしょう。
その点、フランチャイズに加盟すると、本部が培った効率の良い運営や評判の良い料理加工法、集客方法などのノウハウを享受できます。また、ほとんどのフランチャイズでは、営業していくうえでのサポートもあるので、困った際に頼る先ができるというわけです。
さらに、すでに確立されたメニューを受け継いで営業ができるので、売れるベースが出来上がっているというメリットもあります。集客や出店エリアの知見がある点も心強いでしょう。
営業場所を選べる
移動販売の大きなメリットといえるのが、営業場所を変えられることです。事前に営業許可を取得する必要はありますが、集客力のある場所へ自分から出向いて行って商売ができるので、売り上げアップが見込めるのです。
また、移動販売車はその存在だけも宣伝力があるので、営業場所を移動させつつ広報活動を並行して行えるともいえるでしょう。
人件費を抑えられる
初期費用や固定費を抑えられるだけではなく、人件費も抑えられます。
移動販売は基本的に車で移動し、商品を販売するスタイルです。テイクアウトがメインなため、接客サービスや電話対応などが最低限に限られます。
一人または少人数でスタートしやすい事業であるといえます。
移動販売を始めるデメリット
移動販売のフランチャイズに限りませんが、フランチャイズに加盟して独立・開業をするかどうかを判断するためには、メリットと同時にデメリットも把握し、総合的に決めることが大切です。
続いては、フランチャイズに加盟することによるデメリットをご紹介します。
メニューが限られる
移動販売の場合、調理スペースも限られ、一人で調理から販売を行うことも多いので、多くのメニューを展開できないことはデメリットのひとつでしょう。
フランチャイズによっては展開している商品の中から好きなものを選べたり、変更にも柔軟に対応できたりする本部もありますが、基本的に販売する商品は固定のことが多く、勝手に新メニューの販売はできません。
また、季節によって商品を変えたり、販売エリアによって展開するメニューを変更することも難しいでしょう。
ただし、多くのメニューを用意するとオペレーションが煩雑になり、お客さまを待たせてしまい、他の競合に客足が流れてしまう可能性もあるため、売れる商品を提供しているフランチャイズを活用するのはメリットともいえるかもしれません。
ルールやマニュアルに縛られる
フランチャイズに加盟せずに自力で開業すると、本部のサポートがない一方で完全に自由に経営ができます。
しかし、フランチャイズに加盟すると一定のルールに則って経営する必要が出てきます。メニューや販売の仕方に制限がかかることを避けたい方は、フランチャイズへの加盟は避けた方がいいかもしれません。
フランチャイズのルールは、その企業ブランドを守るためのルールです。顧客は、あのフランチャイズのこの商品を食べたい!あのサービスが好きだ!と思って、同じフランチャイズの別店舗も利用します。このルールがあるおかげで、恩恵も受けるものです。
そのほかにも、運営のマニュアルがあったり、本部からのサポートの対価として支払うロイヤリティの支払い義務が発生したりします。フランチャイズによって金額は異なりますが、固定費となるロイヤリティをデメリットと感じる方もいるでしょう。
しかし、メリットでお伝えしているように、ロイヤリティはフランチャイズが既に経験した成功するためのノウハウを享受できる対価です。自分が納得のいくサポートを受けられるのか、ロイヤリティはそれに対して妥当と思える金額かを判断基準にするとよいでしょう。
天候で売り上げが左右される
移動販売は外で売ることが基本です。そのため、公園やイベント会場などに出店する場合は悪天候の日はお客さまがあまり来ず、いつものように売り上げがあがらない…ということもあり得ます。逆に、オフィス街のビルの一角などに出店する場合は、悪天候で遠くのお店までランチに行くのを避ける会社員などで繁盛することもあります。
このような理由から、売り上げを安定させるのが難しいというデメリットがあります。
また、暑い夏場に狭い車内で火を使った調理をする場合は、大変暑くなりますし、逆に火を使わない料理を冬空の下で提供する場合、開けっ放しの窓から風が入り体を冷やします。
気候に臨機応変に対応する必要が出てくるところは、人によってはデメリットとも捉えられるでしょう。
主要な移動販売のフランチャイズチェーン紹介
ここからは、主要な移動販売のフランチャイズチェーンを紹介します。
A社
A社は、玄米や発酵食品、無農薬野菜などで作った、ランチを提供している企業です。利用者にも何曜日にどこに何のキッチンカーが出店しているのか地図アプリで一覧を示しているため、キッチンカーが好きなお客さまを確保しやすいでしょう。
フランチャイズに加盟することで、高品質なキッチンカーの提供、出店場所の紹介など手厚いサポートを受けられるので、しっかりとした支援の元、移動販売にチャレンジできます。
B社
2022年の開催では505もの店舗が参加する日本最大級のカレーイベント「神田カレーグランプリ」ですが、過去にこのイベントで優勝した味を移動販売で提供している、ブランド力が強いフランチャイズです。
販売場所の紹介や提携先のキッチンメーカーの準備があるうえに、サービスバイザーが365日対応なので安心してスタートできます。
C社
本店カフェで大人気のクレープを移動販売します。加盟希望の方はオンライン説明会の後に実際のキッチンカーを確認するという流れです。
販売場所は本部が出店契約を結んだ全国のスーパー等から紹介してもらえ、車両購入はゼロ金利の分割払い制度があるのも心強いでしょう。
これからの移動販売フランチャイズ
最後に、今後の移動販売フランチャイズの展望をお伝えしていきます。
移動販売フランチャイズの市場規模
近年、東京などのオフィス街を中心に移動販売は盛り上がりを見せています。また過疎部での移動スーパーは超高齢社会で社会貢献にもなっており、ニーズも高まっています。
実際に、東京都で営業許可を取得したフードトラックの数は増加傾向にあり、その背景には、ネットの普及で宣伝方法によっては移動販売でも注目を集められるようになったことが挙げられます。
また、地方の過疎部での移動スーパーは高齢者ニーズも高まっていて、地域活性化につながっているケースもあります。フランチャイズに加盟することによって出店場所の紹介を受けられたり、品質の高いフードを提供したりできていることも、移動販売の市場規模拡大に影響を与えているといえるでしょう。
進化し続ける移動販売フランチャイズ
ランチ難民や買い物難民を救う移動販売は、今後も需要がある分野であるといえるでしょう。
オフィス街だけではなく、休日には人が集まる場所へ出店するなど、お客さまの動きや変化に対応しやすいところも魅力です。
移動販売のフランチャイズは、時代の変化を反映しつつ、その時々に適した形へ変えながら今後も進化し続けていくと考えられます。
まとめ
移動販売にチャレンジしたいと考えているのであれば、まずは自力で開業するのか、フランチャイズに加盟するのかを考えましょう。
そのうえでフランチャイズに加盟すると決めるのであれば、基本的な知識を持ち、自分に適した移動販売の形を探す必要があります。
アントレでは記事で紹介した会社のほかにも、移動販売のフランチャイズ募集を掲載しています。どのようなフランチャイズチェーンがあるのか、どの程度の開業資金が必要になるのかなどをチェックすることをおすすめします。
気になるフランチャイズがあれば、説明会に参加して詳しく情報収集するといいでしょう。ぜひ独立・開業へ向けて行動を起こしてみてください。
<文/中西由貴>