M&Aと聞いてどんなことを思い浮かべますか?一言で説明すると、M&Aとは企業の買収などのことを指します。M&Aが行われる背景には、企業の思惑や戦略が大きく関わっており、M&Aの目的によって、その手法も異なってきます。本記事では、「そもそもM&Aとは」という基本的な部分から、そのメリットやデメリット、さらに手法について解説していきます。興味のある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
M&Aとは?
M&Aとは『Mergers and Acquisitions』の頭文字をとった略語です。『Mergers and Acquisitions』を直訳すると『合併と買収』ですが、具体的には、企業や事業を合併することや買収することを指します。では、どういった目的でM&Aを実行するのでしょうか。
M&Aの4つの目的とは?
企業がM&Aする背景には、売り手側・買い手側双方にさまざまな目的があります。その中でも主な目的は以下の4つです。
・後継者問題の解決
・経営再建
・企業の成長戦略
・個人の人生戦略
どれも企業や個人にとって非常に重要なことです。特に売り手側企業にとって『育て上げてきた会社を売却するという決断に踏み切ること』は非常に難しいことですが、M&Aで解決できるならば、と選択をする経営者も多くなっています。
1.後継者問題の解決
M&Aで事業を売却する目的の代表ともいえるものに『後継者問題の解決』があります。後継者問題とは『中小企業において、事業を今後も継続して取り組める体力や成長力に問題はないものの、後継者がいないことによって廃業に陥ってしまう可能性がある状態』のことをいいます。単純に、創業者が業務にあたれない年齢になってきた場合にも後継者問題は発生します。
後継者問題に悩んでいる企業は、M&Aを利用して企業や事業を売却することで、後継者問題の解決をはかります。
2.経営再建
経営再建もM&Aの目的の一つになります。経営再建とは『企業の売り上げや利益が長期間低迷している状態からの脱却を目指すこと』を指します。
M&Aで事業を売買することで、相手企業とのシナジー効果を見込み、業績が回復する可能性も大いにあります。技術力や商圏、人材リソースなど自社の足りない要素を持っている企業と合併することで、再構築する手段です。
3.企業の成長戦略
M&Aで事業を買収することで、大きく成長できる可能性があります。M&Aにおける買い手側企業には、売り手側企業の技術の獲得や、優秀な人材の確保、販路獲得など、事業拡大に直結する多くのメリットがあります。また、他業界に新規参入しようと計画している企業にとっても、大きな効果があります。自社で一から作り上げていくよりも、その業界に属している既存企業を買収することで、開発コストも大きく下げられるためです。
自社の成長戦略に沿ったM&Aをすることが、効率よい成長には非常に有効的です。
4.個人の人生戦略
M&Aは企業だけでなく個人にとっても、一つに選択肢になります。近年では、起業したいサラリーマンが『スモールM&A』をすることも多く見受けられるようになってきました。法律上で明確に規定された用語ではないため、事業者によって定義は異なりますが『スモールM&A』とは、スモールビジネスにおけるM&Aのことを指し、一般的に企業の譲渡・買収価格が1億円以下のM&Aや、年間売上高が1,000万円~5億円ほどの企業のM&Aが分類されます。
もちろん個人事業も対象であるため、個人で始めたWebメディアの売却や、リフォーム事業を売却するという人生戦略のもと、起業する経営者も存在しています。
M&Aのメリット・デメリット
M&Aにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。もちろん売り手・買い手双方にメリットがあるからこそ、M&Aが行われます。しかし、もちろんデメリットもそこには存在します。ここでは、M&Aのメリット・デメリットを解説していきます。
M&Aのメリット
まずはM&Aのメリットについて売り手と買い手に分けて解説していきます。
■売り手側のメリット
・後継者問題の解決
・廃業コスト(法的手続きに関わる費用、在庫・設備の処分、物件の原状回復など)がかからない
・従業員の雇用が守られる
・事業拡大の可能性がある
・売却益(キャピタルゲイン)の獲得
・個人保証の解除
以上の5点が主なメリットになります。多くの経営者が悩んでいる後継者問題の解決や、M&Aによる廃業回避によって、廃業コストはかからないことが大きなメリットになります。また、事業を継続することも可能なため、(買い手企業との契約次第ですが)従業員の雇用を守ることができたり、買い手企業のリソースを活用した事業拡大の可能性を残すことができます。
■買い手側のメリット
・販路の拡大
・事業の多角化
・技術力向上
買い手側のメリットには『販路の拡大や事業の多角化、技術力の獲得・向上』などがあげられます。これ以外にも、多くの業界で深刻な問題となっている人材不足も、M&Aによる人材確保で回避できます。
M&Aのデメリット
次にM&Aのデメリットについて売り手と買い手に分けて解説していきます。
■売り手側のデメリット
・雇用・労働条件の変更
・取引先の契約打ち切り
・想定していた価値以下での売却
売り手側のデメリットには『買い手側企業の労働条件と適合するために労働条件が悪条件に変更されること』や『既存の取引先との契約が打ち切りになる可能性』などがあげられます。また、想定していた価格よりも低い価格で事業を売却することになる可能性も大いにあります。
■買い手側のデメリット
・人材の流出
・想定した成果が出ない
・のれんの減損
買い手側のデメリットは『労働条件の変更等により、人材の流出が発生すること』や『売り手企業とのシナジー効果を期待したにも関わらず、思ったとおりの成果が出ないこと』があげられます。また、会計上のデメリットとして『のれんの減損リスク』があげられます。のれんの減損とは『M&Aの際に算出したのれんの価値を再評価したうえで、正当な価値に書き直すこと』です。のれんとは『ブランド力・ノウハウ・取引先との関係性や従業員のスキルなどといった無形固定資産』のことで、企業の時価純資産評価額と実際の買収価額の差額がのれんとして計上されます。
M&Aの主な手法7つ
ここまでは、M&Aの目的やメリット・デメリットについて解説してきました。では、実際にどのような手法があるのでしょうか。M&Aの手法は『買収』『合併』『分割』の3つに分類されます。『買収』とは、株式取得などにより企業全体もしくは事業などを取得することです。『合併』とは、2つ以上の企業が1つになることです。『分割』とは、事業全体もしくは一部の事業を分割して他の企業に引き渡すことです。
『買収』『合併』『分割』もさらに分類できます。それぞれの主な手法を以下の7つに絞ったので、それぞれ解説していきます。
買収
・株式譲渡
・新株引受
・株式交換
合併
・吸収合併
・新設合併
分割
・吸収分割
・新設分割
どれもM&Aの手法として有名なものなので、覚えておくとよいでしょう。
1.株式譲渡
株式譲渡とは『売り手側企業の株主が保有する株式を買い手側企業に譲渡すること』です。株式譲渡は、規模の拡大や組織再編、事業承継、他業界への新規参入などさまざまな目的で行われます。
2.新株引受
M&Aにおける新株引受とは『第三者割当増資』のことを指します。第三者割当増資とは『売り手側企業が既存株主以外の企業や個人に新株を発行し、買い手側の企業がその払い込みを行うこと』です。
3.株式交換
株式交換とは『売り手側企業の既存株主が、保有株式を買い手側企業に譲渡し、買い手側企業がその対価として自社株式を割り当てる手法のこと』を指します。
4.吸収合併
吸収合併とは『合併する際に既存の1社のみ存続すること』です。存続する企業以外のすべての企業が解散・消滅し、事業は(権利・義務すべて)存続する企業に継承することになります。
5.新設合併
新設合併とは『合併するすべての企業が解散し、新しい企業を設立すること』です。吸収合併と異なり、元あった企業で存続する企業はありません。
『Webメディア事業』などゼロからプロジェクトを立ち上げると収益化まで時間とお金がかかる事業には、新設合併は有効的な手段です。
6.吸収分割
吸収分割とは『企業全体もしくは一部の事業を既存の他の企業に引き渡すこと』です。さらに吸収分割も2つに分類され『分社型吸収分割』と『分割型吸収分割』があります。
分社型吸収分割とは『引き渡した事業の対価を売り手側の企業が受け取ること』です。分割型吸収分割とは『引き渡した事業の対価を、売り手側の企業の株主が受け取ること』です。
事業のブランド化や競争力強化を行いながら、グループ全体の価値向上を期待する場合に有効的な手段です。
7.新設分割
新設分割とは『企業全体もしくは一部の事業を新しく設立した企業に引き渡すこと』です。新設分割も吸収分割と同様に『分社型新設分割』と『分割型新設分割』の2つに分類されます。それぞれの内容も吸収分割度と同様に、対価を受け取る対象が異なります。
企業内の組織再編を行う場合や合弁会社を立ち上げる際に、有効的な手段です。
M&Aとは何かを知り、目的に合った手法を選ぼう
ここまで「そもそもM&Aとは」という基本的な部分から、メリット・デメリット、手法などについて解説してきました。M&Aは、企業や個人の目的を達成するために一つに手段にすぎません。もしM&Aを考えている方がいたら、本当にM&Aをするべきなのか一度考えてみるのもいいかもしれませんね。
近年では、個人のM&Aも増えてきました。起業したい人が、ビジネスの初動を速くするための手段としては非常に効果的かもしれません。M&Aの他にも、副業から始めることや、フランチャイズビジネスを始めることも一つの手段です。
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