新聞やニュースでフランチャイズという言葉をよく聞きます。
コンビニエンスストアなどの「フランチャイズ開業オーナー募集!」というような広告を目にする方も多いでしょう。
しかし、意外に詳しいことは分からないというのが正直なところではないでしょうか。
今回はフランチャイズについて解説していきます。
フランチャイズとは?
日本のフランチャイズ市場は、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会による2018年度(2018年4月から2019年3月)の統計データによると、チェーン数1,328となっています。また、店舗数は26万4,556店で10年連続の増加、売上高は26兆2,118億円と9年連続で増えており、一大成長産業となっています。
独立・開業しようとする場合、一からすべてを自分で用意してスタートするのは大変です。
しかし、すでに知名度のあるブランド・商品・サービスなどを利用することができれば、負担を軽減でき成功する確率は高くなります。
これらを利用して独立・開業するために、その権利を持っている企業と行う契約をフランチャイズ契約と呼ぶのです。
このような企業がすでに持っている商号・商標などを使用する権利、開発した商品やサービスをお客さまに提供する権利、経営ノウハウなどを総称してフランチャイズ・パッケージと呼びます。
こちらの記事では、フランチャイズについて初心者向けに解説しています。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
フランチャイジー(加盟店)とは?
フランチャイジーとはフランチャイズを展開する企業と契約を結んだ“加盟店”を指します。
フランチャイズのコンビニエンスストアやラーメン店、マッサージ店などで独立・開業しようとする人は「ノウハウを持っている企業(以下、本部)」との間でフランチャイズ契約を結ぶことでフランチャイジー(加盟店)となり、そのノウハウ・システム・サービスなどを利用して開業できることになります。
市場で評価され、すでにブランドとなっている商号や商標、商品やサービスを利用できるのが最大の強みです。
実証済みのビジネスモデルであるため、事業を黒字化しやすいといえます。
フランチャイジー(加盟店)とフランチャイザーの違い
フランチャイジー(加盟店)に対して、本部のことを“フランチャイザー”と呼びます。
一般的に本部は加盟店に対して自社が持つ商号・商標や開発した商品・サービスなどの使用を許可するだけでなく、フランチャイズ・パッケージと呼ばれる営業ノウハウや専用の機器やシステム、時にはスタッフの教育方法などを一括して提供します。
加盟店は加盟金やロイヤリティ(売り上げの数パーセント)を本部に支払うことで、本部のブランドやノウハウを使って効率的かつスピーディーにビジネスを立ち上げることが可能です(※本部により異なる)。
本部にとっても、加盟店が増えることはより大きなビジネスをより早く展開できるという利点があります。
フランチャイジー(加盟店)と代理店は何が違う?
フランチャイジー(加盟店)は、加盟時に本部へ支払う加盟金や保証金などが必要になります。また、ロイヤリティなど毎月の売り上げの中から本部に支払うお金も出てきます(※本部により異なる)。
本部の制度にもよりますが、マニュアルやノウハウが確立されているため、加盟店はこれに倣って経営できるという側面もあります。
それに対して代理店は商品の販売やアフターサービスを委託契約によって請け負うため、初期費用がかからない、もしくはかかったとしてもごく少額になります。
また設備に関しても自宅を活動拠点にするなど、自分の資産に応じて対応することが可能です。
一般的には、営業範囲の制約などがないことも多く、地域やさまざまなルールに縛られず自分の経営判断や営業力で自由に活動できます(※本部により異なる)。
しかし、フランチャイズのようにすでに実証済みのビジネスモデルをパッケージで提供してもらえるわけではないため、マニュアルや本部のサポートが一切ない場合もあります。
つまり、代理店の場合は“売れる商品の見極め”“販売方法”を自ら考えなければならないということです。
経験がない人にとっては大きな障壁となるでしょう。
しかし、経験と力のある人なら、自分の頑張り次第で成功をつかむチャンスとなり得ます。
フランチャイジー(加盟店)になるには
一般的にフランチャイジー(加盟店)になるには、その本部が行う加盟希望者向けの説明会に参加し、本部を理解することから始まります。
加盟希望者向けの資料を本部から取り寄せて、資料を読んだ後に面談形式の説明を受けるということもありますが、加盟検討時に重要なのは契約の中身と本部のサポートなど、条件面をきちんと確認することです。
フランチャイジー(加盟店)となって失敗しているケースの中には、加盟契約書をよく読まずに加盟したために、加盟後に本部とトラブルになるというケースが意外に多いからです。
いくらフランチャイズが実証済みのビジネスモデルで黒字になりやすいといっても、経営者としての努力が欠けていれば成功は難しくなります。
フランチャイズのビジネスパッケージを有効に活用しつつ、しっかりと経営者としての自覚を持ち、経営に臨むようにしましょう。
フランチャイジー(加盟店)のメリット
フランチャイジー(加盟店)には、どんなメリットがあるのでしょうか。フランチャイジー(加盟店)として独立・開業するのは、自分一人だけで独立・開業するよりも難易度は低めです。理由は、以下で紹介しているようなメリットがあるからです。
フランチャイジー(加盟店)としての独立・開業を考えている人は、どんなメリットがあるのか理解したうえでスタートしましょう。
フランチャイズのブランドやシステムを使える
フランチャイジー(加盟店)側の1つ目のメリットは「フランチャイズのブランドやシステムを使える」ことです。
ブランド価値の高いフランチャイジー(加盟店)でオーナーになる場合、開業時から商品やサービスが認知されている状態で経営を始められます。そのため、集客には困りにくいでしょう。
またフランチャイズでは、本部によりますが本部が持つ独自システム(独自の管理ツールなど)を使うこともできます。
ノウハウやサポートを受けられる
フランチャイジー(加盟店)側の2つ目のメリットは「ノウハウやサポートを受けられる」ことです。
本部が蓄積した成功パターンをマニュアル化した経営指導や、それまでの経営で培ってきたノウハウなどを提供してもらえます。また、本部の情報だけでなく、他の加盟店の成功事例なども参考にできます。たとえ未経験の業種であっても、成功法則を分析できているため、初心者でも始めやすいといえます。
苦手な業務を本部が代行してくれることも
フランチャイジー(加盟店)側の3つ目のメリットは「苦手な業務を本部が代行してくれることもある」という点です。
例えば、営業活動を本部が行い、顧客を紹介してくれるケースもあります。また、新サービスや商品の開発・ブランドや企業の広告宣伝などマーケティング関連の業務も、基本的には本部が行います。
ただし、本部によっては、営業の代行費用やマーケティングの費用を支払わなくてはいけないこともあります。「本部が苦手分野を代行してくれることもあるけど、すべてが無料とは限らない」と覚えておきましょう。
フランチャイジー(加盟店)のデメリット
フランチャイジー(加盟店)側にも、デメリットはあります。
フランチャイズは企業のブランドを保つため、どの店舗でも一定のレベルのサービスを提供しています。そのため、加盟店は本部で定めているルールやマニュアルに沿って営業する必要があり、本部で決められたルールの範囲内で運営しなければなりません。人によっては、自由度は低いと感じられるでしょう。
他にもデメリットがあるので、順にチェックしていきましょう。
ロイヤリティや加盟金の支払いが発生する
フランチャイジー(加盟店)側の1つ目のデメリットは加盟時に「加盟金や保証金、研修費などの費用」が、また、開業後には「月々のロイヤリティや諸経費などの費用」が発生することです。
加盟店として独立・開業するためには、ロイヤリティや加盟金を本部に支払う必要があります。
加盟金は、加盟時に支払うもので、開業時にかかる初期費用のうちの1つです。ロイヤリティは、システム利用費・会員費と呼ばれることもあり、毎月、本部に一定額を納める費用のことを指します。
フランチャイザー(加盟店)として、さまざまなメリットを享受するために必要となる金額ということになります。
また、業態・業種や本部によって金額は変わります。加盟金・ロイヤリティともに、本部によっては無料ということもあります。加盟先を決める際は、コストに合ったサービスを提供してくれるかを1つの判断基準にして選びましょう。
マニュアルやルールがある
フランチャイジー(加盟店)側の2つ目のデメリットは「マニュアルやルールがある」ことです。
例えば、営業時間や休日を変えられなかったり、店舗の内外装もブランドイメージを全店舗で統一するために自由に決められなかったりすることがあります。
加盟店の経営者でも、本部のルール内で経営していく必要があるため、その店舗ならではの強みを押し出していくことは難しいでしょう。ただし、本部によっては屋号や扱う商品・店舗内外装を自由に決められるケースもあります。加盟前によく確認し、自分にとって必要なものを検討するようにしましょう。
解約金や競業避止義務などのリスクも
フランチャイジー(加盟店)側の3つ目のデメリットは「解約金の発生や競業避止義務などのリスクがある」ことです。
加盟契約時に交わした契約期間を満了する前に、途中解約してしまうと解約金がかかってしまいます(解約金は、本部によって変わります)。
また、競業避止義務を守らなかった場合は、違約金や損害賠償金を請求されたりします。これは、加盟契約満了後に、本部と競合するような事業を興したりしてはいけない、というものです。加盟契約時には、契約書の内容を入念にチェックして、トラブルにつながらないように注意しましょう。
フランチャイザー(本部)のメリット
フランチャイザー(本部)にも、さまざまなメリットがあります。これからフランチャイザー(本部)として、ビジネスを検討している人は順にチェックしていきましょう。
短期間でビジネスを拡大できる
フランチャイザー(本部)側の1つ目のメリットは「短期間でビジネスを拡大できる」ことです。
自社の社員が運営する直営店の店舗数を増やすのではなく、フランチャイズ展開なら加盟店が、店舗の土地代や建設費・運営費などを支払うため、経費を使わずに店舗を増やすことができます。加えて、フランチャイジー(加盟店)側からロイヤリティ・加盟金をもらえるので、収入も得られるのです。
また、開店の準備などをすべて自社でやるよりも、フランチャイジー(加盟店)にノウハウを提供し、準備をしてもらう方が並行して複数の店舗の開業準備ができるため、効率的であるといえます。
店舗が増えれば、認知度も高まりますし、仕入れ量が増えて仕入れ先と価格交渉をすることも可能になるというメリットもあります。
コストをかけずに済む
フランチャイザー(本部)側の2つ目のメリットは「コストをかけずに済む」ことです。
直営店で店舗数を増やす場合は、その店舗で働くスタッフを採用し、人件費をフランチャイザー(本部)が負担しなければなりません。また、事業や本部にもよりますが店舗の取得費や内外装費も必要です。
しかし、フランチャイズ展開していくのであれば、その店舗の人件費や不動産はフランチャイジー(加盟店)が負担することになります。自社従業員を増やさず、店舗の不動産取得費・内外装費などもかからずに済めば、コストをかけずに店舗を増やすことができるのです。
フランチャイザー(本部)のデメリット
フランチャイザー(本部)にはメリットばかりではなく、デメリットもあります。これを知らずにフランチャイズ展開していくと、後から苦労することにもなりかねません。以下では3つのデメリットを紹介しています。これからフランチャイザー(本部)として、ビジネスを行っていくならポイントを押さえておきましょう。
フランチャイジー(加盟店)の教育コストがかかる
フランチャイザー(本部)側の1つ目のデメリットは「加盟店の教育コストがかかる」ことです。
フランチャイジー(加盟店)の教育に加えて、マニュアル作成・加盟契約書の作成などの仕組みづくりも必須です。フランチャイジー(加盟店)には、未経験の状態で加盟契約する人もいます。自社ノウハウ・経営スキルなどを教えるとなれば、吸収するまでに時間もかかるでしょう。
きちんと加盟店を教育し、サポートできる人材(スーパーバイザーなど)を用意するともなれば、それに伴って人件費もかかります。
フランチャイジー(加盟店)のコントロールが難しい
フランチャイザー(本部)側の2つ目のデメリットは「加盟店のコントロールが難しい」ことです。
フランチャイズは均一の料金やサービスを広い範囲で提供できるのが魅力です。ただし、加盟店によっては、料金やサービスの「質」が変わる場合もあります。適度に人材育成する時間・教育する時間を設けても、全店舗の状態を完全に統一化するのは難しいです。
もしも、うまく教育できていない店舗があり、その店舗が不祥事を起こしたら本部も打撃を受けます。
ノウハウが流出するリスクも
フランチャイザー(加盟店)側の3つ目のデメリットは「ノウハウが流失するリスクがある」ことです。
ノウハウの流失を防止するために加盟契約を締結しますが、それでも必ずノウハウが流失しないとは言い切れません。そのためにも、リスク管理をどのように徹底するかを明確にしておく必要があります。
フランチャイジー(加盟店)は別経営者となるため、事業がうまくいかなければ、訴訟のリスクもあります。そのため、リスク対策・仕組みづくりを徹底する必要があります。
フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)は、対等なビジネスパートナー
最初に触れたように、日本のフランチャイズ市場は一大成長産業です。とはいえ、冒頭の統計データにあるとおり、廃業している加盟店も少なくないのが現状です。
フランチャイジー(加盟店)のオーナーは、本部から雇われた店長ではありません。本部から提示される収益シミュレーションなどに頼り切っているようでは、成功は難しいでしょう。
現実には、売り上げの変化・廃棄ロス・人手不足などさまざまな問題が日々、生じます。その結果、収益予想と実際の売り上げに誤差が生じ、経営が成り立たなくなるケースも少なくありません。
本部と加盟店は、あくまで事業者同士の対等なパートナーです。契約は経営者として自己責任において行うもののため、契約内容をしっかりと把握するのは当然でしょう。店舗の立地や顧客の傾向なども、本部の話だけでなく、自ら現地に赴いて調査を行うなどして検討する必要があります。スタッフの教育・現場の把握・顧客の傾向分析とその対策など、工夫しながら経営していきましょう。
<文/ほのゆき>