フランチャイズに加盟してオーナーとなり店舗経営をしていこうとする際には、「どの業種のフランチャイズ経営を始めるのか」という観点だけではなく「どのようなビジネスモデルのフランチャイズを選択するか」を決めなければなりません。
自分がどの業種でフランチャイズに加盟するか決めるには、さまざまな観点でフランチャイズの種類を見極めていく必要があります。
例えば、業種やオーナーシップによっての分類、ロイヤリティの支払い方法によって分類して検討するなどです。よく使われる分類方法の1つは、加盟者がどの時点でスタートするかによって分類する方法です。「ビジネス・フォーマット型」「ターンキー型」「コンバージョン型」という3つのスタート方法について述べます。
また、フランチャイズとしてチェーン展開されている業界や店舗の種類についても紹介します。
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フランチャイズビジネス3つの種類
フランチャイズビジネスには、大きく分けると3つの種類があると考えられています。
一般的なのはフランチャイズ本部が加盟店に対して開業に必要なノウハウやマニュアルを共有する「ビジネス・フォーマット型」と呼ばれるものです。
「ビジネス・フォーマット型」の他、フランチャイズ本部が開業準備をすべて行い開業時には店舗の鍵を渡すだけにしておくだけの状態にしておいてもらえる「ターンキー型」、すでに経営されている店舗を加盟店に転換させてフランチャイズ本部の持つブランド力を活かしていく「コンバーション型」があります。
フランチャイズ本部がどこまで開業準備を行うのかで、種類が区分されます。
ビジネス・フォーマット型フランチャイズとは
フランチャイズ・システムのうち最も一般的で、世界でも日本国内でも、まずフランチャイズという言葉が想起させるのはビジネス・フォーマット型フランチャイズです。
ビジネス・フォーマット型フランチャイズのシステムにおいては、フランチャイズ本部(本部事業者)が加盟店(加盟事業者)に対して店舗経営上必要なビジネス・フォーマットを伝授し、加盟者がそのビジネス・フォーマットに沿ってそれぞれの事業を行います。
グローバルビジネスにおいてフォーマット (仕様)という言葉がよく使われるのは、特にテレビやラジオ番組のエンターテインメント分野であるとされています。
例えば、欧州のある国で人気を集めるクイズ番組が、番組の使用権を持っていたとします。その使用権を米国のテレビ会社が取得し、自国の文化や視聴者の好みに合わせた形で自国版を製作した場合、使用の権利を持つ欧州のテレビ会社にロイヤリティを払う必要があります。
ここで使用の権利対象 (知的財産権の対象)となるのは、タイトルやロゴだけではなく、テレビ番組の進め方や番組内容の放映順番などの構成や実施計画です。多くの商品やサービス販売においても、テレビ番組のように進め方や順番、そしてそれを実施するための計画がとても重要となります。
すでに実績があるビジネスのフォーマットを活用できる
店舗経営にまつわるフォーマットがパッケージ化されたフランチャイズ・システムのことをビジネス・フォーマット型フランチャイズと区分します。
ビジネス・フォーマット型フランチャイズの一番のメリットは、フランチャイズ本部で検証済みのビジネス方法を得られるため、収益を出す上でより確実に進められるということです。
また、初期に膨大な資源を必要とする商品開発やブランド構築などについて悩むことなく、すでにターゲットとしている顧客層に認められているものを使える点もビジネス・フォーマット型フランチャイズの魅力です。
フォーマットをもとに加盟店が判断することもある
もちろん、ビジネス・フォーマット型フランチャイズが、いくらフォーマットのあるフランチャイズだとしても、店舗の加盟から開業までに越えないといけない壁はいくつかあります。
例えば店舗探し、店舗の内外装、そして商品やサービスの品揃えや準備などです。それぞれ加盟したオーナーが責任を持って判断します。
「ビジネスの進め方について不安があるので、より確実なモデルを活用したいが、自分の理想もできるだけ反映させたい」と思っている方には、ビジネス・フォーマット型フランチャイズの加盟を検討することを、おすすめします。
ターンキー型フランチャイズとは
ここまで紹介したビジネス・フォーマット型フランチャイズにおける「開店前の店舗準備が大変だ」という悩みを解決するフランチャイズの種類として、ターンキー型フランチャイズが挙げられます。
“ターンキー”とは英語のTurn-keyが語源で、「鍵を回して扉を開けるだけ」という手軽なニュアンスで「すぐに店舗を使用できる準備が整っている」という意味です。
ターンキー型フランチャイズとは、フランチャイズ本部の事業者が加盟希望者のために店舗や事業所にまつわるすべての決定をし、開業できる状態に店舗を用意するものです。
「加盟者が鍵さえ受け取り、店舗のドアを開ければ、その日からでもすぐ事業が始められる」という、開業準備はフランチャイズ本部にお任せのニュアンスを持ったフランチャイズ・システムです。
開業までの初期設定がより確実にできる
ターンキー型フランチャイズのメリットは、開業準備の手軽さだけではありません。高度な専門知識を必要としているビジネスにおいて、より確実な初期設定ができるというメリットもあります。
コンビニエンスストアの例でいうと、多くの売り上げや人流予想のデータを使って品揃えや在庫数などを割り出す必要があります。小売り流通の初心者が在庫や発注管理、売上予測を実行しようとすれば、うまくいかない危険性もあります。
そのような専門的知識が必要な業種においては、ターンキー型フランチャイズを選択する人も多いです。業界への知識が乏しい場合でも、店舗経営していくにあたって、慣れながらビジネスの感覚を育てることができるため安心感が得られるでしょう。
ロイヤリティが高くなっている可能性もある
ただしターンキー型フランチャイズの場合、「フランチャイズ本部が店舗を用意する」という役務がフランチャイズ本部にとっては大きなコストとなっています。
当然その開業までの手厚い店舗準備という役務に関する代金が、開業時のフランチャイズ加盟金や、加盟後ロイヤリティとして加算されていくということも覚悟しましょう。
加盟店は業界やビジネスの理解を深めていく必要がある
また他にも、ターンキー型フランチャイズはフランチャイズ本部が開業までの準備をすることで、加盟店が業界や店舗経営の仕組みに関しての理解を深めることが難しいというデメリットも存在しています。
開業準備についてはフランチャイズ本部に任せしつつも、研修やセミナーを利用して業界やビジネスについての理解を深めていくようにしましょう。結果として店舗の売り上げアップや、ビジネスを長く続けるコツの習得につながっていくはずです。
コンバージョン型フランチャイズとは
フランチャイズの種類として3つある選択肢のうち、最後に紹介するのは、コンバージョン型フランチャイズです。
コンバージョンとは英語のConversionに由来し、「転換、変化」という意味です。そのためコンバージョン型フランチャイズを、「転換型フランチャイズ」と表現することもあります。
コンバージョン型フランチャイズは、フランチャイズ本部がビジネスの販路拡大のため、同業者を加盟の対象とするフランチャイズ・システムです。同業者が自らの姿を変え、フランチャイズの加盟店として事業を続けます。
不動産仲介会社や町の小売り販売店が、それぞれ不動産仲介ネットワークやコンビニエンスストアのフランチャイズに加盟するのが、コンバージョン型フランチャイズの代表例です。
コンバージョン型フランチャイズのメリット
コンバージョン型フランチャイズの主なメリットは、以下のようなものがあります。
・フランチャイズ本部の持つブランド力で来客数を増やせる
・共同購買システムの利用で必要資材や商品を安く仕入れられる
・最新の営業ノウハウを手にすることができる
・フランチャイズ本部が持つ管理システムを利用できる
・販売促進などのマーケティング活動を代行してもらえる
かつてはビジネス上のライバルであった同業者と協力し情報交換ができることも、コンバージョン型フランチャイズの魅力の1つです。
安定的かつ長期的に継続できる可能性も
コンバージョン型フランチャイズはこれまで経営してきた個人店の「独自性の一部を失う」というデメリットはあります。しかしフランチャイズ本部の持つブランド力を活用して、安定的かつ長期的にビジネスを継続することを目指すのならば、参加した方が良い場合が多いです。
コンバージョン型フランチャイズ・システムは、基本的にすでに同業のビジネスに取り組んでいる人に適しています。しかし、そうではない初心者にとっても「同業者にとって評判が高いなら、きっと加盟を検討する価値がある」といえるでしょう。
加盟店となる際の判断材料として、コンバージョン型フランチャイズを選択しているフランチャイズ本部が、その業界でどこまで評価を得ているのか調べてみる価値はあります。
フランチャイズが導入される主な業種とは
ここまでは「ビジネス・フォーマット型」「ターンキー型」「コンバージョン型」という、フランチャイズ本部と加盟店が、どこまでの開業準備を進めるかという違いによって、3つのフランチャイズの型を紹介してきました。
フランチャイズでは、この他にもどのような事業で経営を行っていくかという、フランチャイズ経営の店舗の種類についても理解しておきましょう。
業種と店舗の例
フランチャイズ経営としてイメージしやすいコンビニエンスストアや飲食店の他にも、さまざまな業種があります。
飲食業の例
・ファストフード
・弁当
・シニア向け宅配食
・ラーメン
・カフェ、コーヒーショップ
・キッチンカー(移動販売) など
小売業の例
・コンビニエンスストア
・ドラッグストア
・質屋、リサイクルショップ
・アパレル、専門店 など
サービス業の例
・エステサロン
・美容院、理容店
・クリーニング
・ハウスクリーニング、家事代行
・コインランドリー
・ホワイトニング
・学習塾・英語塾 など
不動産業の例
・賃貸住宅仲介業
・空き家活用 など
フランチャイズがビジネスモデルとしてよく導入されている業種は、大きく分けると、飲食業・小売業・サービス業のどれかにあてはまることが多いです。
飲食業はキッチンと飲食スペースが必要で、固定費がかかることが多いですが、最近ではテイクアウト専門店やデリバリー専門なども増えています。小売業は商品を在庫として仕入れて販売します。サービス業は、需要に応じたサービスそのものを提供します。不動産業やその他あらゆる業種で、フランチャイズが普及しています。
近年人気のフランチャイズ業種
高齢化の影響を受け、地域への貢献度が高い介護福祉サービスや、より教育にお金をかけるトレンドに乗じた学習塾・英会話スクールなどの教育関連の業種でもフランチャイズは増えてきています。
また、すでに自身で持っている遊休地などの保有不動産を活用した、コインパーキングやコインランドリーという業種にも注目です。土地があれば毎月の人件費や時間をかけずに少ない労力でビジネスができるので、加盟店が副業として経営できる手軽さも人気の理由です。
さらに店舗そのものを持たずに、自宅を事務所として訪問サービスを行う、ハウスクリーニングや修理業といった業種もあります。その場合、毎月の固定費となる家賃や光熱費も大きく削減できます。
業種によって開業資金も運営方法も異なる
それぞれの業種、店舗や商品在庫の有無によって「開業資金」や「運営方法」が全く違うということも、覚えておきましょう。
店舗が必要な場合は、店舗取得費や内装費、商品在庫がある場合は仕入れコストで大きな金額が必要となります。また業界の種類を問わず、フランチャイズ加盟時の加盟金や保証金、研修費は金額に差があるものの必要であることが多いものです。
フランチャイズ加盟を検討する際は、開業資金の額が重要となります。用意できる自己資金や金融機関からどれくらい融資を受けられるかも想定して業種を絞ると良いでしょう。
時代の変化に合わせた事業も豊富
シニア向けの宅配弁当サービスや介護福祉関係など、今後もニーズが高まりそうなフランチャイズも多く存在しています。フランチャイズ本部の直営店だけでは実現できないような、加盟店としてより地域に密着した事業展開ができるはずです。
フランチャイズ本部と加盟店は、フランチャイズ契約上は対等なビジネスパートナーです。フランチャイズ本部は加盟店の売り上げと利益に貢献するため、あらゆる事業戦略を用意しています。それらをうまく活用して、短期間で事業成長に結び付けたいところです。
どのフランチャイズに加盟するか迷ったら
どのフランチャイズに加盟したら良いか迷った際には、フランチャイズ比較サイトを参考にすることをおすすめします。
また、フランチャイズ本部の担当者の話を直接聞ける、説明会や個別相談会に参加してみることも検討してみましょう。不安に感じている点などあれば、その場で聞くことをおすすめします。フランチャイズ本部によってはオンラインセミナーなども随時開催されています。
「自己資金はあまりかけずに開業したい」
「収益はそこまで大きくなくても長く続けられる経営がしたい」
「これまでの経験や強みを活かして独立したい」
「未経験の分野でも好きなことに挑戦してみたい」
「休日を自分の好きなように設定できる経営がしたい」
など、個人的に描いている夢や自己資金の有無、働き方などの条件を洗い出してから、相談会に参加すると自分に合ったフランチャイズ本部かどうか判断しやすくなるでしょう。
フランチャイズ契約が締結されると加盟店として、店舗経営をしていく責任が発生しますが、加盟検討段階では遠慮なく、さまざまな情報を入手して考えてみることをおすすめします。
実際にフランチャイズ契約をする前には、トラブルを防ぐためにもしっかりと契約書の内容を理解することも忘れずに行いましょう。
まとめ
フランチャイズには開業までの準備をどこまでするかによって、3つに分類できます。最も一般的な「ビジネス・フォーマット型」、フランチャイズ本部が開業準備をすべて行ってくれる「ターンキー型」、すでに経営されている店舗をフランチャイズに転換させてフランチャイズの持つブランド力を活かしていく「コンバーション型」があります。
店舗経営の経験有無や、開業準備においてオーナーとして判断したいことがあるかないかで、どの型が合っているのかを見極めてみましょう。検討しているフランチャイズがあれば、どの型のフランチャイズ募集をしているのかを整理してみると、フランチャイズ本部から期待されている内容も理解しやすくなるでしょう。
また、フランチャイズの業種もさまざまで、飲食業・小売業・サービス業・不動産業などがあります。店舗そのものや商品在庫の有無で、開業資金として必要な金額も変わってきます。さらに土地を活用するタイプの業種であれば、人件費や時間的拘束力も少なくなります。
本格的にフランチャイズ加盟を検討する際には、独立への理想やできることをよく理解した上で、自分に一番適している方法を選びましょう。
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北川美智子