みなさんは“デューデリジェンス”という言葉を聞いたことがありますか?
日本語では“適正評価手続き”などと呼ばれ、M&Aや投資案件などで、相手側の実情を確認する手続きを指します。
分野ごとに法務・財務・税務などのデューデリジェンスがありますが、今回は法務デューデリジェンスに絞って解説します。
M&Aにおける法務デューデリジェンスとは?
法務デューデリジェンスとは、買収される会社の契約関係について、法律上のリスクを洗い出すための手続きのことです。
各種の契約書・訴訟・許認可についての検討を行い、買収後の契約の承継や許認可の継続そして訴訟を起こされるリスクなどを調査します。
違法行為などが発見されれば即座にそのM&Aの決裂につながり、契約関係もすべて引き継ぐことになるため、M&Aで成功を収めるための非常に重要なプロセスであるといえます。
M&Aでの法務デューデリジェンスの役割
先にも述べたように、一口にデューデリジェンスといっても、分野ごとに分かれています。
その中で法務デューデリジェンスは、買収される会社の契約関係の確認や許認可の引き継ぎの可否、潜在的な訴訟リスクなどを調査します。
財務デューデリジェンスは買収の価値について調査するものであり、いわばM&Aのリターンを把握する役割であることに対し、法務デューデリジェンスは買収に際してだけでなく、買収後の事業の危険性を調査するもので、M&Aのリスクを把握する役割を担うといえます。
M&Aでの法務デューデリジェンスの確認項目
法務デューデリジェンスにおいて確認する事項としては、次のようなものが挙げられます。
・会社の登記簿謄本
・株主総会および取締役会議事録
・主要契約書
・保有許認可
・人事規程などの社内規程
これらの事項を確認することで、M&Aに際して障害となる項目をチェックしていきます。
2006年の会社法制定により、株券の不発行が原則となり、非公開会社は取締役の任期を10年にすることができるようになりました。
逆にそれ以前の会社であれば、株券が発行されている・取締役の任期が2年・2年ごとの登記が必要、という原則などがありました。
そのようなことがすべて登記されているかを調べることは重要です。
商品の仕入れや販売など対外的な契約関係についても、会社が譲渡されたときに承継できるかは買収後の経営に影響を及ぼします。
飲食業や運送業などでは許認可が承継できるかなどの問題やライセンス(知的財産権)の継続的な使用の可否、違法行為、訴訟・紛争の存在などは、法務デューデリジェンスによって明らかにしていかなければならない重要な項目です。
M&Aでの法務デューデリジェンスの注意点
法務デューデリジェンスを行うにあたって、特に注意しなければならないのは、買収される会社側が結んでいる契約に入っている買収対抗策です。
その一つに“Change of control条項”というものがあります。
Change of control条項とは、M&Aなどによってある会社の実質的株主の構成が大きく変更になった場合には、その契約の相手の会社は解除することができるという条項です。
もし、取引の大部分でChange of control条項を結んでいる会社との取引であれば、Change of control条項が発動されることで既存取引のほとんどがなくなってしまうことになります。
そうなるとM&Aは失敗となるので、慎重な検討が必要です。
Change of control条項以外にも買収対抗策はいくつかありますので、専門家への相談は不可欠だと思います。
また、許認可についてはM&Aの方法によって、変更の届け出で済むのか・新たに許認可を取り直すのか、その許認可の種類によって異なるので慎重な検討が必要です。
新規に許認可を取得する場合には、書類の準備などを含め相当の時間が必要となるので、しっかりと把握するようにしましょう。
また、反社会勢力とのつながりはご法度です。
そのため、M&Aの候補先に反社会勢力とのつながりがないかチェックすることも重要となります。
買収される会社の役員、従業員に反社会勢力がいないことはもちろんのこと、取引先に反社会勢力がいないかもチェックしましょう。
こういったチェックは相手に直接質問するだけでなく、取引先を調査したりなど客観的な分析も必要です。
まとめ
法務デューデリジェンスで検討する点は、M&Aを成功させるために重要なことばかりです。会社法をはじめ、そのほかの関連した法律に対する知識が必要となります。法務デューデリジェンスを行う際には、M&Aに精通した専門家を任せることをおすすめします。
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